テスラがスーパーチャージャー設置場所の投票を実施中〜ユーザー本位の姿勢を象徴

電気自動車で世界を快走するテスラが、独自の急速充電ネットワークである「スーパーチャージャー」新設場所の投票を実施しています。テスラ車のオーナーでなくとも、公式サイトでアカウントを登録すれば投票可能。EVと充電インフラの関係を重視して、ユーザー本位なテスラの姿勢を感じます。

新設候補地をワールドワイドでユーザー投票

テスラのEVには、テスラ車専用の急速充電設備であるスーパーチャージャーが用意されています。2019年のモデル3発売開始に伴って日本国内でも設置が加速。今年だけでも12カ所に新設(1カ所は移設)されて、合計53カ所になりました。さらに、まだまだ増設中。
(記事末に最新のリストを紹介しておきます)

テスラ車でロングドライブすると、30分制限などなく高出力でぐんぐん充電できる快適さを痛感し、急速充電は電気自動車にとって重要な「性能」であることが実感できます。つまり、テスラでは急速充電器=スーパーチャージャー(以下、SC)は「自社EVの性能の一部」という理念をもって、独自のスーパーチャージャー、およびデスティネーションチャージング(国内で一般的な3〜6kWに比べ、おおむね8kW以上という高出力な普通充電設備)を拡充しているのです。

翻って、日本の既存自動車メーカーの姿勢をみると、日産や三菱などが自社ディーラーに急速充電器設置を進めてきたのをはじめ、各社EV車種の発売に伴ってディーラーへの急速充電器設置の重い腰を上げ始めたところ、といった状況です。公共充電インフラ拡充を担う e-Mobility Power(以下、eMP)には、トヨタ、日産、ホンダ、三菱の4社が出資してはいるのものの、とくに自動車メーカーがイニシアチブをとって、今後どしどし発売されるであろうEVの利便を高める、といった理念を感じることはできません。

eMPも頑張ってくれているとは思いますが、高速道路SAPAへの高出力器複数台設置はなかなか進まず。新設、置換されていく急速充電設備の配置や台数、出力なども、ユーザーの意見が反映されると実感できるような「窓口」はなく、密室で誰かが決めて、ユーザーに「与えられるだけ」、といっていいでしょう。

先月モデルYで利用した新潟SC。

ともあれ、ワールドワイドの投票なので日本の候補地の獲得票数は、Iida, Japan が1308票で47位(10月26日現在)となかなか苦戦中。アジア太平洋地域に絞っても韓国の各所の後塵を拝しています。テスラ車オーナーのみなさんはもちろん、日本でのEV普及を願う読者のみなさんには、どしどし日本の候補地に投票してほしい、と思います。

ちなみに、1アカウント1回(複数回投票できるようなのですが、私はまだできておらず、よくわかりません)で投票できるのは5カ所まで。さらに、候補地のリストにないけど「ここに欲しい」という場所を1カ所提案できます。新たな「場所の提案」については、私もやってみましたが、ピンポイントで指定したい場所をうまく表示(住所を入力しようとするとリストが表示されます)させることができず……。具体的には山梨県北杜市の「道の駅小淵沢」あたりをリクエストしたかったのですが、リストに表示されるのが小淵沢から10kmほど離れた公園道路の「東沢橋」という場所で。「まあ、いいか」と、ここを提案しておきました。

このあたり、上手な入力方法などあれば、コメント欄でご教示いただけるとうれしいです。

あ、あと、投票がいつまで実施されるのか聞き忘れました。改めて確認できたら追記しますが、投票する方はひとまず急いでくださいまし。

【投票ページ】
スーパーチャージャーの投票


※冒頭含め、投票ページ画像はテスラ公式サイトから引用。

テスラ車オーナーじゃなくても投票可能

さて、このSC新設場所投票。投票するためには、テスラの公式サイトでアカウントを作成して、ログインする必要があります。とはいえ、テスラ車のオーナーでなくても、アカウントは作成可能。私も、以前モデル3の見積を作成した際に作成したアカウントで、無事に投票できました。

考えてみれば「近くにSCあればテスラ買いたいけどな」と迷っている潜在オーナーも少なくないはず。EVに、テスラに健全な興味を持つ人であれば誰でも投票可能というのは、理に適った仕組みだと思います。

なにより、自動車はメーカーが作って、オーナーは甘受するモノ、とでもいえる旧来の自動車産業のあり方に比べ、性能、製造方法、事業展開あたりまでひっくるめてユーザー本意のチャレンジを具現化してきたテスラの姿勢を象徴するのが、今回のSC投票だと感じます。

今からでも、トヨタにちゃんと真似して欲しい

折しも、この記事を書こうとしていた10月24日、トヨタがモデルチェンジしたばかりのクラウンなどの開発を停止して、「e-TNGA」と名付けたEV用プラットフォームを含めて、すでに発表していたEV戦略を見直すという報道(ロイターの記事はこちら)がありました。かつて、テスラへの出資を引き上げて袂を分かったトヨタにとって、テスラの開発スピードや収益性の高さに追い詰められての方針変更は、苦渋の決断であったろうと拝察します。

電池調達のサプライチェーン構築や、そもそもEVに対する考え方など、正直言って「うーん、10年遅かった」と感じるところもありますが、モビリティがEVにシフトした後も「世界のトヨタ」であり続けるためには前進あるのみ。今からでも、テスラに学び、テスラを超えるサムシングを繰り出して欲しいと願います。

個人的には、テスラ車はモデル3でも「まだ高いなぁ」と感じています。大衆車で世界を席巻してきたトヨタには、EVでもぜひ画期的な大衆車を発売してくれたらいいな、と思います。そうなると、テスラに学ぶだけでなく、中国で新型EV『bZ3』の共同開発を進めているBYDの、来年日本発売が発表されている『DOLPHIN』あたりが格好のターゲットになる気がします。テスラとともに世界のEV市場をリードしているBYDからも徹底的に学んで、トヨタならでは、日本ならではのEVを、そして、日本のEV充電インフラのリーダーシップを、なんとかお願いしたいところです。

テスラのスーパーチャージャーは世界でもうすぐ4万台!

さらに10月21日には、EVsmartブログでしばしば翻訳記事をお届けしているアメリカの『TESMANIAN』で「Tesla Accelerated Supercharger Deployment in Q3 2022 by 32% YoY」と題する記事が公開されました。

以下、いつもの杉田さんによる日本語訳を紹介しておきます。

【元記事】Tesla Accelerated Supercharger Deployment in Q3 2022 by 32% YoY by Eva Fox on『TESMANIAN

2022年の第3四半期、テスラは世界でのスーパーチャージングネットワーク拡大のスピードを大きく加速しました。この間に312の新しいサイトがオープンし、第2四半期から8%の増加となりました。したがって第3四半期末には、世界で4,283のスーパーチャージャーステーションが存在し、昨年同期に比べて32%増加したということになります。

充電器の数自体も増えています。昨年同期に比べて33%の増加です。テスラはすでに3万8,883台の充電器を開放しており、2022年中に4万台目を狙える位置にいます。第3四半期にオープンしたスーパーチャージャー充電器の数は2,718台で、第2四半期から8%の増加でした。各サイトに配備されたコネクターは平均8.7台で、スーパーチャージャーは46カ国で展開されています。

テスラは初のスーパーチャージャーを2012年9月にオープンし、2018年6月に1万台を達成しました。2020年11月までには1万台増加して合計2万台の充電器を配備しました。しかし本当のブレイクスルーは11月に3万台を達成した2021年で、そこから1年で9,000台を増設し、9月の時点で3万9,000台を設置している2022年もまた記録を作る年になりそうです。

全国のテスラ「スーパーチャージャー」リスト

開設順名称場所タイプ公称最大出力基数開設年月
1東京-六本木東京都港区V1/V2120kW22014年9月
2神奈川 横浜神奈川県横浜市V1/V2120kW42014年9月
3東京-お台場東京都江東区V1/V2120kW42014年11月
4神戸兵庫県神戸市V1/V2120kW42014年12月
※2024/1/14閉鎖
5大阪大阪市北区V1/V2120kW42015年2月
※大阪-扇町に移設
6東京-丸の内東京都千代田区V1/V2120kW22015年3月
7盛岡岩手県盛岡市V1/V2120kW62016年1月
8仙台宮城県仙台市V1/V2120kW42016年1月
9倉敷岡山県倉敷市V1/V2120kW42016年3月
10長野長野県長野市V1/V2120kW42016年7月
11浜松静岡県浜松市V1/V2120kW42016年7月
12岐阜羽島岐阜県羽島市V1/V2120kW42016年11月
13高崎群馬県玉村町V1/V2120kW62016年12月
14福岡福岡県須恵町V1/V2120kW62017年2月
15佐野栃木県佐野市V1/V2120kW42017年9月
16御殿場静岡県御殿場市V1/V2120kW62017年12月
17甲府山梨県甲府市V1/V2120kW62018年1月
18名古屋-名城名古屋市北区V1/V2120kW62018年4月
19木更津千葉県木更津市V1/V2120kW62018年9月
20京都京都市下京区アーバン72kW42018年12月
21東京-東京ベイ東京都江東区アーバン72kW82019年10月
22広島広島市西区アーバン72kW82020年2月
23大阪 豊中大阪府豊中市V1/V2120kW82020年3月
24鳴門徳島県鳴門市V1/V2120kW82020年6月
25名古屋-星が丘名古屋市千種アーバン72kW82020年7月
26川口埼玉県川口市V3250kW42020年12月
27東京-赤坂東京都港区V1/V2120kW42021年3月
28湘南神奈川県藤沢市V1/V2120kW22021年4月
29伊賀三重県伊賀市V3250kW42021年6月
30松戸千葉県松戸市V3250kW42021年7月
31函館北海道函館市V3250kW42021年7月
32東京-代官山東京都渋谷区V3250kW42021年7月
33熊本熊本県熊本市V3250kW42021年9月
34大阪-天王寺大阪市天王寺区V3250kW52021年9月
35大津滋賀県大津市V3250kW42021年9月
36新潟新潟県新潟市V3250kW42021年9月
37鳥取鳥取県鳥取市V3250kW42021年10月
38東京 - 日比谷東京都千代田区V3250kW42021年10月
39つくば茨城県つくば市V3250kW42021年11月
40郡山福島県郡山市V3250kW42021年12月
41金沢石川県金沢市V3250kW42021年12月
42神戸 - 御影兵庫県神戸市V3250kW42021年12月
43山形山形県山形市V3250kW42022年1月
44高知高知県高知市アーバン72kW42022年1月
45札幌 - 大通北海道札幌市V3250kW42022年2月
46福井福井県福井市V3250kW42022年2月
47富山富山県富山市アーバン72kW42022年3月
48川崎神奈川県川崎市V3250kW32022年6月
49大阪-扇町大阪府大阪市V3250kW62022年6月(移設)
50高松香川県高松市V3250kW42022年6月
51京都-四条京都府京都市V3250kW62022年9月
52東京-新宿東京都新宿区V3250kW42022年9月
53東京-調布東京都調布市アーバン72kW42022年9月
54松山愛媛県松山市アーバン72kW42022年10月
55焼津静岡県焼津市V3250kW62022年12月
56神戸-北兵庫県神戸市V3250kW62022年12月
57千葉-柏の葉千葉県柏市V3250kW42022年12月
58春日井愛知県春日井市V3250kW42022年12月
59千葉-稲毛千葉県千葉市V3250kW82023年1月
60東京-世田谷砧東京都世田谷区V3250kW62023年1月
61富士川静岡県富士市V3250kW42023年2月
62伊丹昆陽兵庫県伊丹市V3250kW82023年2月
63厚木神奈川県厚木市V3250kW82023年3月
64大井松田神奈川県大井町V3250kW62023年3月
65東京-八重洲東京都中央区V3250kW42023年3月
66静岡静岡県静岡市V3250kW62023年3月
67宮崎宮崎県宮崎市V3250kW42023年3月
68東京-板橋前野東京都板橋区V3250kW42023年3月
69鹿児島鹿児島県鹿児島市V3250kW62023年3月
70岡山岡山県岡山市V3250kW42023年4月
71奈良-橿原奈良県橿原市V3250kW42023年5月
72さいたま-与野埼玉県さいたま市V3250kW82023年6月
73橋本神奈川県相模原市V3250kW42023年6月
74ひたちなか茨城県ひたちなか市V3250kW62023年6月
75飯田長野県飯田市V3250kW42023年6月
76多気三重県多気町V3250kW42023年6月
77高槻大阪府高槻市V3250kW82023年6月
78豊田愛知県豊田市V3250kW82023年6月
79所沢埼玉県所沢市V3250kW42023年6月
80東京-有明東京都江東区V3250kW82023年6月
81横浜-みなとみらい神奈川県横浜市V3250kW62023年7月
82大阪-上本町大阪府大阪市V3250kW82023年8月
83三郷埼玉県三郷市V3250kW62023年8月
84福岡 - 中洲川端福岡県福岡市アーバン72kW32023年8月
85鶴ヶ島埼玉県鶴ヶ島市V3250kW42023年8月
86浜松市野静岡県浜松市V3250kW62023年9月
87横浜 - 青葉神奈川県横浜市V3250kW62023年9月
88貝塚大阪府貝塚市V3250kW32023年9月
89秦野神奈川県秦野市V3250kW42023年9月
90名古屋 - 神宮愛知県名古屋市V3250kW42023年9月
91さいたま - 大宮埼玉県さいたま市V1/V2150kW42023年9月
92軽井沢長野県軽井沢町V3250kW42023年9月
93千葉 - 海浜幕張千葉県千葉市V3250kW62023年9月
94名古屋 - 南大高愛知県名古屋市V3250kW42023年10月
95宇都宮栃木県宇都宮市V3250kW62023年10月
96福岡 - 博多駅南福岡県福岡市V3250kW42023年10月
97東京 - 千住東京都足立区V3250kW62023年11月
98茨木大阪府茨木市V3250kW62023年12月
99青森青森県青森市V3250kW32023年12月
100松本長野県松本市V3250kW42023年12月
101東名川崎神奈川県川崎市V3250kW32023年12月
102北九州福岡県北九州市V3250kW62023年12月
103神戸 - 三宮兵庫県神戸市V3250kW62023年12月
104東京 - 豊玉東京都練馬区V3250kW42023年12月
105みえ川越三重県川越町V3250kW62024年1月
106東京 - 芦花公園東京都世田谷区V3250kW122024年2月
107大分大分県大分市V1/V2150kW42024年3月
108東京 - 六本木 P2東京都港区V3250kW42024年3月
109那須栃木県那須町V3250kW62024年3月
110名古屋-則武愛知県名古屋市V3250kW82024年3月
111東京 - 池袋東京都豊島区V3250kW42024年3月
112横浜 - 本牧神奈川県横浜市V3250kW42024年3月
113横須賀神奈川県横須賀市V3250kW62024年3月
114東京 - 杉並東京都杉並区V3250kW42024年4月
115南紀和歌山県田辺市V1/V2130kW42024年5月
116大阪-鶴見大阪府大阪市V3250kW42024年5月
117横浜-港北神奈川横浜市V3250kW62024年5月
118東京-秋葉原東京都千代田区V3250kW42024年6月
119名古屋-北愛知県名古屋市V3250kW82024年6月
120茅ヶ崎神奈川県茅ヶ崎市V3250kW42024年7月
121仙台-宮城野宮城県仙台市V3250kW42024年7月
122高山岐阜県高山市V3250kW42024年7月
合計598
※表内「名称」はテスラ公式サイトのスポット詳細ページにリンク。
※ リスト作成はテスカスさん運営の『Tesla Wiki』などを参照させていただきました。
※場所によって利用時間の制限時間などがあることにご注意ください。
(2024年9月9日更新)

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. テスラ社は急速充電網拡大にお熱ですね。判りますとも。 
    スーパーチャージャー空白地域へ一定間隔で設置するなら充分アリ、たとえば1万台当たりの電気自動車保有率が一番高い岐阜県などスーパーチャージャーが南部にしかないから飛騨高山や郡上八幡など観光地に設置するのは好都合だと思います。 
    ただ問題は高圧受電設備設置と電気主任技術者の選任になるでしょう…どちらも積雪の多い地域なんで充電設備を架台上に置き除雪体制を整えるなど要配慮と感じますが。 

    個人的見解、同社は集合住宅への基礎充電設備設置推進策がまだまだです。実際自身が電気設備を保安管理している名古屋の物件もテスラ車ユーザーが居るにも拘らず普通充電設備が付いていませんから…管理組合や管理会社への設置促進説明などソフト面が追い付いていないと感じます。自身はアイミーブ乗り電気管理技術者として高圧受電設備の残り容量を測定するなど一定のサポートはできますが管理会社への説得に限界がありまして。 
    何とかしたいのは山々ですが、ここはテスラ車ユーザーが集合住宅への普通充電器設置要望を管理会社などへ申請するスキームが欲しいです。それに対応するEV充電サービス会社も必要ですが、今一番ユーザーパワーが高いのはテスラ車ユーザー、それにこたえられる充電システム構築会社は当ブログに記事のある会社だと思いますよ。

    1. 電研鑽種ヒラタツ さま、いつもコメントありがとうございます。

      集合住宅への充電設備設置は、日本のEV普及にとって大切な課題ですよね。充電ソリューション提供サービス各社の活躍で、少しずつ状況は前進している、と感じています。方法の選択肢は広がってきているので、あとは、実際にEVオーナーとなる方がいかに増えるか、がポイントになりそうです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事