ホンダの電動バイク『EM1 e:』を購入【後編】Gachacoの使い勝手を体感レポート!

ホンダの新型電動バイク『EM1 e:』でバッテリーシェアリングサービス「Gachaco(ガチャコ)」を利用開始。各地のステーションでバッテリーを交換することで、充電時間ゼロで楽しめる電動モビリティーです。後編はその使い勝手について。

ホンダの電動バイク『EM1 e:』を購入【後編】Gachacoの使い勝手を体感レポート!

法人購入して早速Gachacoと契約

今回、EM1 e:の購入は法人名義にして、現在は法人向けサービスとなっているGachacoと契約しました。すると早速Gachacoからバッテリーが届きました。もともとバッテリー付きで買ったので、手元にサイズも性能もまったく同じものが2つ。

ただ、個人所有のバッテリーは、バッテリーIDが登録されていないので、Gachacoステーションでは受け付けないようになっているそうです。「バッテリーの混同にはお気をつけください」と言われました。裏側に貼ってある「G」マークのステッカーの有無(貼ってあるのがGachacoの目印)で視覚的に区別できます。

言われてみれば、不特定多数の人が使う中に自分のバッテリーがまぎれては困ってしまいます。前編でも触れましたが、バッテリーシェアリング利用が前提なら電動バイクをバッテリーレスで購入するのが安くてオススメ。Gachacoの個人用サブスクリブション・プランが始まって、ステーションが近くにあれば、バッテリーも充電器も買わずに、即Gachacoと契約する人が多くなるかもしれません。

バッテリー交換を初体験

三崎町3丁目ステーションでGachacoのバッテリー交換初体験。

とりあえずマイバッテリーは部屋に放置して、Gマーク付きのシェアリング用バッテリーで、Gachacoステーションまで交換を試しに行きました。訪ねたのはJR水道橋駅近くにある千代田区の「三崎町3丁目ステーション」。コインパーキングの脇に、満充電のバッテリーが並んだステーションが置かれています。近くには、Gachacoを使う法人向けシェアバイクサービス「HELLO MOBILITY」のBENLY e:も数台並んでいました。

まず、自分のバイクから使用済みバッテリーを取り出します。SOC(充電率)は69%で、まだまだ走れますが、Gachacoは決まった電力量の範囲内なら何回交換しても定額というサブスクリプション・プランなので、ステーションに出くわしたらどんどん変えちゃうこともOKです。

シート下からバッテリーを取り出します。わが家の体重計で実測10.3kg。EM1 e:はバッテリー1つですが、BENLY e:やGYRO e:のようにバッテリーを2つ積んでいるバイクは、同時に2つとも交換します。あまり長い距離を持ち歩きたくはないので、なるべくステーションに近づけてバイクを止めたいところです。

10円玉サイズのIDタグをステーションの端末にかざすと、「バッテリーを返却してください」と表示されて、空のスロットに青ランプが点灯。ちなみにステーションには3×4の12スロットがあって、2つが空き。つまり10個の充電済みバッテリーが待っていてくれます。

返却されたばかりだと残量が……ということもあるでしょうが、充電済みのものから貸し出されて、交換可能なバッテリーがいくつあるのかもスマホの専用アプリで確認できるようになっています。Gachacoによると、現時点ではSOC80%以上のバッテリーを貸し出し可能と設定しているそうです。

外したバッテリーを指定のスロットに押し込むと、しばらくして「バッテリーを取り出してください」と表示が変わります。再び青ランプで指定されたスロットのバッテリーを抜き出し、自分のバイクにセットすれば交換完了。SOCは100%と表示されました。

動作を確認しつつ、写真を撮りつつの作業でしたが、ガチャッと交換するだけなら、バイクを止めてから再発進まで1分もかかりません。慣れればもっと手早くできるかも。ガソリンスタンドで給油するより、スマートでクリーン、そしてクイックです。

今後のステーション設置拡大に期待

南青山2丁目ステーション。

ただし、ステーション数はまだ少なめ。Gachacoは2022年10月25日にバッテリーシェアリングサービスをスタート。その後、ステーション数を増やしていますが、いまのところ、東京エリアが22ヶ所、大阪エリアが7ヶ所(9月20日現在)。

そして私の自宅はまだステーションが設置されていない中央区。どこを使うのが便利なのか、実走してみました。直線距離で最も近いのは港区の「南青山2丁目ステーション」。南青山にあるホンダ本社ビルの敷地内。EV(4輪)用充電器のそばにありました。ホンダってことで、気兼ねしないですむのはメリット。ただし、使えるのはショールームの営業時間(10~17時)内という制限あり。

警備員の方に利用頻度を聞いてみたところ、「毎日誰かしらは来ていますよ」とおっしゃってました。「ウーバーイーツの人とアルソックの人がよく使われてますね」とのこと。警備・セキュリティサービス会社のALSOKは企業グループとしてバイクの電動化を進めているそうです。Uber Eatsは個人事業主さんでしょうか。

江戸川区の「葛西4丁目ステーション」と大田区の「平和島4丁目ステーション」にも行ってみました。どちらも店舗や企業の敷地内に置いてあって、24時間営業。当面は、自宅から8~10kmぐらいの範囲に点在する以上4ヶ所をヘビーローテーションすることになりそうです。

平和島4丁目ステーションにて。

使ってみてわかったのですが、やはりステーションの間隔が利便性を大きく左右します。自宅や職場の近く、あるいは通勤・通学の経路にステーションがなかったら、わざわざ交換のために遠回りをする必要があります。それなら自宅充電のほうが楽という人もいるかもしれません。

全国ツーリングできる日を待望してます

Gachaco企画営業部の山崎さん(右)と伊藤さん(左)。

今後の事業展開について、Gachaco企画営業部の山﨑史彦さんと伊藤俊さんのお二人からお話を聞かせてもらいました。最初に、サービス拡大へのビジョンから。

「まずは東京から普及を目指しています。利便性を考えて、3km四方に1ヶ所の割合でステーションの設置拡大をしていきたい。2023年度中に全国でGachacoステーションを50ヶ所程度、稼働させていく予定です」

東京23区の面積は約619平方km。仮に3kmメッシュでステーションを設置するなら、ざっくりですが70ヶ所あれば網羅できます。23区内のどこを走っていても3キロ以内に利用可能なステーションがあるという環境が実現したら、これはかなり安心できるでしょう。

現在のステーション設置場所(東京エリア)。

「それ以降は、設置エリア内でステーションの密度を高めていくのがいいのか、それともエリアそのものを広げていくのがいいのか、現在検討中です。今秋に実施予定のGachacoバッテリーシェアリング体験キャンペーンを通じて、参加者のみなさまの声を聞いたり、利用状況などを鑑みながら、事業計画を立てていきます」

これは完全にわがままですが、ロングツーリングをしたいので、ぜひ広域化にも期待したいところ。とはいえ、使われないステーションを増やしても仕方がありません。利便性をアップして稼働台数と利用頻度を増やし、ビジネスとして成立させつつ、次第にエリアも広げていくということになるのでしょうね。

山﨑さんには、Gachacoの作り出す社会の未来像についても話してもらいました。

「多様なモビリティーの展開にとどまらず、将来的には家庭用蓄電池や災害時の電源としての利用といった活用方法も創造していきます。スマートでクリーン、かつ安心で強靭な社会づくりに貢献したいと思っています」

いつか電動バイクでの日本一周ツーリングを楽しんでみたい、と期待していますし、おっしゃる通り、バッテリーシェアリングの活用範囲は電動バイクだけにとどまらないですよね。Gachacoステーションの整備状況や、来年に予定されている個人向けプランの動静なども含めて、今後も引き続き注目していきたいと思います。

取材・文/篠原 知存

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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