ノルウェーと英国ではEV革命によりサービスステーションが生まれ変わり始めた

ノルウェーと英国では電気自動車ユーザーのニーズに応えるため、ガソリンスタンドの改革が始まっているようです。新たなサービスステーションには、充電時間を快適に過ごすための工夫がなされています。全文翻訳記事でお届けします。

ノルウェーと英国ではEV革命によりガソリンスタンドが生まれ変わり始めた

元記事:In Norway & The UK, The EV Revolution Is Reinventing The Gas Station by Steve Hanley on 『CleanTechnica

近未来を見据えた充電スポット

CleanTechnicaのノルウェーデスク長を務めるAre Hansen氏が、オスロ近くの街コングスベルにできた、新しいサークルKサービスステーションに関するノルウェー電気自動車協会Elbilからのニュースを知らせてくれました。政府の積極的な政策により、ノルウェーは人口1人当たりの電気自動車所有台数が世界でトップとなっています。

路上に非常に多くのEVが走っているため、ノルウェーの高速道路沿いにあるサービスステーションに変化が起こるのは避けられませんでした。コングスベルのサークルKは、未来がどうなっているのか想像し直した初のステーションです。一番大きな変化は、EV充電器が前面に配置されている点です。ガソリンやディーゼルを買いたければ、店内エリアの後ろ側まで運転しなければなりません。この店舗には300kWの超高速充電器が6基と、車両2台が同時に充電できる200kWの急速充電器が12基設置されています。1.8メガワットの電気を一度に引き出すことにより、すべての充電器が同時に使われても大丈夫です。

現在、300kWで充電できる電気自動車は出てきません。ポルシェ・タイカンとアウディ・e-トロンGTがそのキャパシティに最も近く、条件が整えば270kWで充電できます。また800ボルトのアーキテクチャを持つヒュンダイ5とキアEV6は最高220kWで充電可能です。サークルKは確実に将来の電気自動車を見据えて準備しています。

地域の電力供給を補完するため、サークルKは屋根に太陽光パネル146台を設置しており、最高で50.38kWの出力があります。さらに地元電力会社の時間割引制度を活用するため200kWhの蓄電システムも備えており、これは将来300kWhに増設も可能です。蓄電設備を設置したことで、コングスベルのサークルKは月に10万クローネ(約124万5,000円)の電気代を節約できます。

急速充電は素晴らしいですが、ユーザーはたった15〜20分でも快適に過ごせる場所を欲しがります。コングスベルのサークルKの2階には50席を有するレストランがあり、1階には居心地の良いラウンジが配置されています。クリーンかつモダンで便利。これがサークルKのリードする未来のEV充電です。

英国での新しい充電スタイル

Electric Forecourtを紹介する動画のスクリーンショット。Gridserveの公式サイトより。

2011年、英国企業のEcotricity は国内高速道路沿いにあるガソリンスタンドの前庭にEV充電器を設置し始めました。そこから10年で多くのことが変わりました。元々あった充電器のほとんどは動かなくなったか、もしくは今のEVドライブに必要なパワーを携えていません。

BBCによると、GridserveがすでにEcotricityを買収し、Ecotricityが150の前庭に設置した300基の充電器すべてを、9月までに最新のものにリプレースすると発表しました。また最大12台の350kW超高速充電器を備えた『電気ハブ』を最低でも50カ所、国内高速道路上のサービスステーションに設置すると話しています。Gridserve充電器の支払いは、スマホのアプリではなくコンタクトレス(非接触型決済)のデビットカードもしくはクレジットカードでできます。

Gridserveは“Electric Forecourts(電気の前庭)”という名称を商標登録し、これから5年で町や市に100以上の充電ハブをオープンする計画を立てています。 各ハブには小売、カフェ、トイレ、電気自動車のことを学べるショールームが含まれます。Gridserveはすべての充電器がソーラー・ファームにサポートされていると話しており、グリッドから使われる電気すべてが、太陽光発電でグリッドに戻される電気量とイコールになるそうです。

英国は2030年の始めに内燃機関車の新車販売を禁止すると発表しています。GridserveのCEOであるToddington Harper氏は、この影響で電気自動車の大衆市場が始まろうとしているのを確信したと言います。「今はさらに多くの充電器を配備する自信が持てます。今までとはビジネスケースがまったく異なっています」。

唯一、人生を通じて変わらないのは、常に変化があることです。かつて小規模ビジネスオーナーはガソリン、オイル、バッテリー、ベルト、ホース、タイヤ、そして地図を自動車の運転者に売って生計を立てられました。その後ガソリンスタンドは、新しいテクノロジーにより車の故障が減ったため廃れていき、ソフトドリンクやスナックの形状をした糖度の高いコーンシロップを売るコンビニに変化しました。現在電気自動車の数が増えたためにまた変化が訪れています。未来のサービスステーションは想像もできないレベルの快適さと利便性を備えたものになることでしょう。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. Bjorn Nylandの5月か6月の動画で、たぶんこのステーションが紹介されていました。休憩用の2階席があるのも同じ。彼がときどき実施する1000kmチャレンジでも出てきた気が。

    充電環境が揃うと1000kmを充電込みで10時間以内で走れるのですよね。モデル3とAudi e-tron GTがそれをクリア。ただし車両側も連続急速充電に耐えるスペックが必要で、リーフ62kWhもレクサスUX 300eも残念ながら14時間以上。やはり自然空冷、数十kW対応では実用的な遠出は難しい。。。

  2. ノルウェーとイギリス、進んでいますね。羨ましい限りです。
    日本は今後10年先を見据えた施策が、6台で合計200kwまでの充電器を、充電渋滞の激しいところにだけ設置とか。
    欧州と比べて20年分は遅れそうです。

  3. 日本はまだ道の駅は20kwhが主流で日産が90kwhをやっとドンドンおくれますね

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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