アルピーヌの電気自動車『A290』が欧州デビュー/100%EVの「ドリームガレージ」幕開けへ

ルノー傘下のスポーツカーブランド「アルピーヌ」が、100%EVの新型モデル『A290』を欧州で発表しました。価格は発表されませんでしたが、欧州メディアが3万8000ユーロ(約650万円)〜と伝えています。

アルピーヌの電気自動車『A290』が欧州デビュー/100%EVの「ドリームガレージ」幕開けへ

ルノー『5』をベースにした高級ホットハッチ

2024年6月13日、フランス、ルノーグループのスポーツカーブランドである「Alpine(アルピーヌ)」が、電気自動車の新型モデル『A290』を発表しました。

欧州では先行して発売されている『ルノー5E-Techエレクトリック』と同じ「AmpR Small」と呼ばれるルノー日産三菱アライアンスが共同開発したEV専用プラットフォームを活用したホットハッチモデルで、アルピーヌでは「敏捷性、コントロール、使いやすさなどにおいて(同ブランドのフラッグシップである)A110と同様の喜びを提供する」とアピールしています。

最高出力130kWと160kWのモーターを搭載するモデルがあり、装備などの違いで全部で4グレードが用意されますが、バッテリー容量は全グレード共通で52kWhです。車両重量は1479kgということで、BYDドルフィンの1520kg(44.9kWhのベースグレード)より軽量化を実現しているあたりに、スポーツカーブランドとしてのプライドを感じます。

一充電航続距離はまだ認証待ちであるものの約380kmとのこと。計算すると電費は約7.3km/kWh。高速道路を普通に巡航する程度なら、もう少し走れるかも知れません。

欧州仕様の充電性能は、AC普通充電の最大出力が11kW、DC急速充電(CCS2規格)で最大100kWで、双方向機能(V2X)にも対応しています。ブランドやデザインの魅力だけでなく、実用的にもかなりの実力をもったEVに仕上がっているのではないかと感じます。

ADASはもちろん疑似サウンドやブーストボタンも装備

このほか、発表内容から、気になる機能などをピックアップしてみます。まず、ドライブモードは「ノーマル」「スポーツ」「セーブ」そして「パーソナル」の4種類。ステアリングのボタンで切り替えできて、「パーソナル」ではステアリングアシストのレベル、スロットルレスポンス、照明の雰囲気、ドライブサウンド(ギミックのエンジン音が出せるようです)を自分の好みで調整できるとしています。

もちろん先進運転支援機能(ADAS)は搭載。「OV」と記されたステアリングの赤いボタンは「最大出力220hpを瞬時に発揮」する、いわゆるブーストモード。クルマ任せで停止状態からフル加速できる「ローンチコントロール」も搭載しています。

IONIQ 5 NとかアリアNISMOとか、国を問わずスポーティEVの開発者は疑似エンジン音やブーストモード、ローンチコントロール(アリアのNISMOモードも似たようなコンセプトかと)といった機能が好きなようですね。ボタンひとつで出力特性などをダイナミックにコントロールできるのも、EVならではの「楽しさ」ということなのでしょう。

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欧州での価格は約650万円〜

アルピーヌA290。動画配信もされた発表会では価格への言及はありませんでしたが、欧州メディアなどでは3万8000ユーロ(約650万円)〜と伝えています。アルピーヌ・ジャポンでも日本導入を検討しているという報道もありました。

650万円のコンパクトハッチバックというのはいかにも贅沢な買い物ではありますが、A290はアルピーヌブランドの初EVであり「今後、アルピーヌが展開する 100% 電動ドリームガレージの幕開け」としている記念碑的なモデルであることを考えると、日本でも奮発してGETしたいという方は少なくないのではとも思います。

なにより、今回のA290発表で感じるのは、欧州で着々と魅力的なコンパクトEVモデルの選択肢が広がっていることです。アルピーヌA290の姉妹モデルともいえる『ルノー5E-Techエレクトリック』(関連記事)は2万5000ユーロ(約430万円)〜があるし、個性的なコンパクトEVってことならフィアット500eやアバルト500e(関連記事)があり、MINIのEV化も進んで(関連記事)います。

いずれの車種もまだ少々お高い印象は否めません。でも、アルピーヌと同じルノーグループではよりルーマニアのダチアが大衆的なEVである「スプリング」を発売(関連記事)しているし、フォルクスワーゲンは『ID. 2all』を2万5000ユーロ以下で2025年に発売(関連記事)することを示しています。テスラやBYDをはじめとする中国勢、韓国のヒョンデはもとより、欧州では着々とEVへのシフトとEVの大衆化が進展しているのです。

なにより、日本メーカー製の魅力的なコンパクトEVが少なすぎるのが、日本市場の悲しさであること。そして、アルピーヌのA290と「100% 電動ドリームガレージ」宣言に、欧州のEVシフトは本気だということを改めて感じるニュースなのでした。

文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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