中国における電気トラック事情を読み解く

電気自動車とバッテリーの開発に関して、中国の躍進が目立っています。商用トラックの電動化についても中国は意欲的。中国における最新の電気トラック事情について、アメリカ在住の中国人アナリスト、Lei Xing氏が読み解く記事を、全文翻訳でお届けします。

中国における電気トラック事情を読み解く

元記事/The Chinese electric trucking scene by Lei Xing.

Geelyが発表したHomtruckに大反響

11月初旬にGeely(吉利汽車)は、子会社で商用車両を武器にするFarizon Auto(遠程汽車)から出る次世代スマート新エネルギーセミトラックのHomtruckを発表して世間を驚かせました。

名付けの仕方はテスラ・セミに似ており、多くの時間を車両で過ごすトラック運転手の生活や感情面に寄り添った、まるで家のように感じられるセミトラックを作りたいという開発者の願いが込められています。生産とデリバリーはたった2年強、2024年始めに開始される予定です。

車内にはキッチンも!

Geelyはレンジエクステンダー、メタノール・ハイブリッド、バッテリー交換のオプション付き純電気を含む、複数のパワートレインが選べるアーキテクチャを使ったHomtruckが、 最もクリーンで進化した商用車の1つになるとしています。またLiDAR、ミリ波レーダー、超音波レーダーなどのセンサーや、5GとV2Xを使ったコミュニケーション、OTAソフトウェアアップデートにより、レベル4ハンズオフ自動運転や決められたルートでの隊列走行が可能になります。

Homtruckが中国で発表された中でも最も未来的で進化した、ドライバーフレンドリーな電気自動車であることは、少なくとも仕様書を見る限り間違いありません。Farizon Autoによると、Homtruckは市場に登場するまで2年以上先であるにも関わらず、すでに10,000台以上のオーダーが入っているそうです。

BEVの商用車が急増中

未来的なHomtruckはすぐには見られませんが、近年特に交通セクターの車両群を電動化するなど、国策で新エネルギー車両を過去10年に渡り推進し続けたおかげで、中国では大小様々な電気トラックが路上を走っています。

中国汽車工業協会(CAAM)の最新のデータによると、中国では2021年に入ってから11月終わりまでに約300万台の新エネルギー車両が売られ、2020年同時点から166.8%の増加となりました。そのうち約95%が、乗用車です。新エネルギー商用車ではほぼすべてがバッテリー電気自動車で、同期間で54.5%増の15万2,000台が売れました。

中国では新エネルギー車の販売が急増中。(中国汽車工業協会ウェブサイトより引用)

電気商用車のボリュームは乗用車に比べて見劣りするかもしれませんが、特定のセグメントでは急増しています。大型トラックがその例です。

自動車購入者が加入必須とされる保険のデータによると、中国では11月に1,852台の大型電気トラックが販売され、昨年同月比で668.5%の増加となっています。通年では7,442台で、昨年同月比222.4%の増加です。新エネルギー大型トラックのセールスは10ヶ月連続で増加しており、大型トラック市場の中でも最速で成長しているサブ・セグメントとなっています。大型トラック市場全体は過去数年に渡り大幅に売り上げを伸ばしていたのですが、今年中国ではChina 5とChina 6と呼ばれる排出規制の変更があり、勢いが失速しました。

今年に入ってからの新エネルギー大型トラック販売台数でトップ10に入ったのは、

Sany(三一重工)
Hanma Technology (漢馬科技集団、Farizon Autoの子会社)
Dongfeng(東風汽車集団)
Yutong(鄭州宇通客車)
SAIC Hongyan(上汽車紅岩汽車有限公司)
Beiben(北奔重型汽車集団)
XCMG(徐工集団工程机械股份有限公司)
Nanjing Kinglong(金龍)
FAW Jiefang(一汽解放集団股份有限公司)
Foton(福田汽車)

で、セールスの4分の3近くを占め、そのほとんどが元々大型トラックに比重を置いてきた企業です。

一例として、中国最大級の建設機械グループであるSanyは、3つの要因が重なって新エネルギー大型トラックに挑戦しました。まず、バッテリーエレクトリックと水素燃料エンジニア車両開発、生産、セールスに電気技術子会社を通じて早い時期から注力してきたこと。2つ目に電気トラクター、トラックミキサ、ダンプカーなど多様な商品を提供していること、最後にその卓越したクオリティです。10月には、この種の商品としては過去最大のトラックミキサ1,000台を一度に受注しました。

爆発的な成長の大きな理由は、中国の掲げた長期『ダブルカーボン』削減目標で、カーボンピークを2030年、カーボンニュートラルを2060年までに設定しています。他の理由としては、新エネルギー大型トラックが確立された充電ネットワークだけに頼らず、充電とバッテリー交換の両方が可能なモデルとなっていることが挙げられます。新エネルギー大型トラックは、長距離交通用にはまだ向いていませんが、掘削現場、製鉄所、工場、工業団地、港湾、土砂運搬など、長距離を移動する必要がない一部の産業ですでに居場所を見つけています。

この分野で電気大型トラックが人気な理由は、車両そのものというより、今までのディーゼル作業車を使った場合のように国が定める排出削減基準に合わせて休みを入れる必要がなく、より多くの仕事ができるためです。

商用トラックでもバッテリー交換式を推進

トラック用のバッテリー交換ステーション。

例えばChery(奇瑞汽車)は最近、バッテリーの充電・5分での交換が可能な6×4 バッテリー電気トラクターや、こちらもバッテリー交換可能な8×4 ダンプカーの生産を開始しました。人気のSany EV550トラクターもバッテリー交換が可能で、航続距離は200km、電費は170 kWh/100 kmです。

他に新エネルギートラック分野で大きく飛躍しているのが配送車両です。必須加入保険の最新データによると、マイクロバン、軽トラック、マイクロトラック、大型トラックを含む新エネルギー配送車両の販売台数は2021年の11ヶ月間で11,000台となり、昨年同時点より131パーセント増えています。

東風汽車のバッテリー交換式電気トラック。

このセグメントで現役のプレイヤーは

RC EV
Geely(吉利汽車)の子会社Farizon Auto(遠程汽車)
Chery(奇瑞汽車)のKarry New Energy(開瑞汽車)
Dongfeng(東風汽車)
Changan(長安汽車)
Foton(福田汽車)
SAIC Maxus(上汽大通汽車)
SAIC-GM-Wuling(上汽通用五菱汽車)
BYD

です。この分野では15のトップ企業が85%の販売を占めており、2022年には現在の約2倍の20万台が売れると予想されています。

Homtruckが未来の電気トラックユートピアの可能性を象徴しているとすれば、汚れ仕事をすでにしている実用的な電気トラックは現実世界のリアルを体現しています。中国ブランドは現在から近い将来までは電気トラック市場を支配し続けるでしょう。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. レポート掲載ありがとうございます。
    以前に商用車情報をリクエストさせていただいたこともあり、嬉しいです
    近い将来、仕事上での基礎知識としても役立ちそうなお話です。

    ただの感想になってしまいますが、ブランド/メーカーに聞き馴染みが無さ過ぎてあまりリアルな実感が持てないのですが、ケタが違う中国市場のこととはいえ、既に結構な数の台数が出ていることに驚きました。
    あとまた、まだまだプレイヤーが乱立しているという印象を持ちました。やがては数社くらいに淘汰されていくものと思いますが、バッテリー交換式も含め、ガンガン突き進む感じが中国っぽくていいですね。
    商用車の場合であれば、純粋に損得でモノゴトが動きやすいかと思いますのでここでバッテリー交換式が地位を確立できたらいいなぁとボンヤリ想像しつつ、毎月とは言いませんが、半年あるいは年一くらいで情報をアップデートしていただけると幸いです。

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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