電気自動車はガソリン車に比べて火災を起こしやすいのか?

電気自動車の火災事故がいくつか起こり、果たしてリチウムイオン電池で駆動する電気自動車は安全なのか不安に思われる方も多いかと思います。でも、実は電気自動車は、むしろガソリン車より安全かもしれません。

非営利組織バテル記念研究所の調査部長であり、電気自動車の火災リスクの専門家であるスティーブン・リッサー氏は、「ガソリン車の火災事故は、渋滞が起きた場合にのみニュースにする価値が出てきますが、電気自動車の火災事故はそれだけでニュースになります」と言います。

それでは電気自動車の火災リスクに対する様々な疑問に答えていきましょう。

電気自動車はガソリン車よりも火災を起こす可能性が高いのか

簡潔に言って恐らくそれはなく、むしろ安全かもしれないと言えます。絶対に、とはまだ言い切れませんが。

昨秋、米国運輸省道路交通安全局のためにバテル記念研究所が実施した綿密な調査では、2つのタイプの車両を火災リスクの観点から比較し、結果リチウムイオン電池構造からの火災及び爆発の可能性と重症度は、ガソリン車やディーゼル車のそれと同程度もしくは少々軽いと予測されています。

全米防火協会で閲覧できる最新の統計によると、2015年にアメリカでは17万4千件の車両火災が起き、事実上全てのケースでガソリン車が関わっていました。3分間に1件のペースで車両火災が起きていることになります。

テスラ社は、ガソリン車はテスラ製の車両よりも11倍火災を起こしやすいとしています。分析するのに一番良い方法として、10億マイル(16億キロメートル)ごとの比較をする事を提案しています。合わせて75億マイル(120億キロメートル)走行した30万台のテスラ車のうち、火災が報告されたのは40台でした。この場合、10億台中5台の確率で電気自動車の火災が起こりますが、ガソリン車では10億台中55台に火災が起きています。しかしリッサー氏は、現時点では有効な検証ができる十分なデータは揃っていないと考えています。

リチウムイオン電池で動く電気自動車の火災はどうやって起こるのか

リチウムイオン電池に関連して目を引いたニュースはいくつかあり、携帯電話ノート型パソコン、中にはボーイング旅客機というものもありました。しかし電気自動車が関わっている火災事故に関しては、衝突事故もしくは運転中にバッテリーがなんらかのダメージを受けた場合に起こっています。

テスラ社が言うには、「テスラの電池パックが深刻な問題を引き起こすことはほぼ無く、もし起こった場合は、その事故がかなり普通ではないか、深刻なケースです」という事です。

リチウム電池火災で何が起こっているのか説明しますと、1〜2個の電池セルがショートして熱が発生し、それがバッテリー内の化学物質に引火します。これが隣接しているセルに問題を起こし、火が広がり大きくなる“熱暴走”と呼ばれる状態を引き起こします。今年スイスで起こった電気自動車の死亡事故で起こったのは明らかにこのケースでした。

リチウムイオン電池火災はガソリン火災とどう違うのか

一番大きな違いは火がつくまでの時間です。ガソリン火災の場合、ガソリンが火花と接触した時点で即座に引火し急激に広がります。電池火災は通常火を起こす熱量に達するまでに、ある程度の時間を要します。

場合によってはこの時間差はかなり良い方向に働きます。衝突事故に巻き込まれた車両の乗客は、火が回る前に逃げる事ができます。しかし問題もあり、例えば車ががれき等に乗り上げた事によってバッテリーがダメージを受けた場合、ドライバーはそのダメージに気付かないかもしれません。そして火災が起こる原因のダメージを受けてから、かなり後になって出火するのです。この理論で行くと、車が車庫に駐車されてから火災が起こる可能性もあります。さらに電池火災が明らかになった場合でも、テスラ社は救急隊員(消防隊員)に、バッテリーの完全鎮火には24時間かかるかもしれないと警告しています。

電気自動車の火災リスクは減らせるのか

減らせます。リッサー氏や他の専門家もそうなると言っています。

電池をより軽く、効率化するだけでなく、安全にもできる可能性のある新しい原材料の研究が進められています。リッサー氏は言います。「ガソリンはとても危険な原料です。私達は130年の時間をかけたデザインと経験を使って、ガソリン車をできる限り安全にしようとしています。リチウム電池の安全性の研究に関しては、まだ初期段階にあるのです」

リッサー氏の言う通り、電気自動車が搭載するリチウムイオン電池は本格的な活用が始まったばかりです。容量や重量、効率の改良はもちろん、安全性を高める研究の発展に期待したいですね。

※この記事はCNNMoney (New York) First published May 17, 2018: 12:32 PM ETを翻訳、加筆したものです。

(翻訳と文 / 杉田 明子)


6 thoughts on “電気自動車はガソリン車に比べて火災を起こしやすいのか?”

  1. こんにちは。自動車の火災は怖いですよね。
    実は30年近く前、不幸にも友人が車両火災で亡くなっています。事故でガソリンタンクに穴が開き引火、逃げ遅れたとのこと。
    これが脳裏にあり、アイミーブM(SCiB電池)が出たとき素直に「これだ!」と思いました…一般的なリチウムイオン電池だと有機溶媒が燃えますが、SCiBはそれとは無関係で割と安心して使えるからです。
    航続距離の短ささえ克服できれば、これほど使い勝手がよく安心できるEVは他にないと思います。
    いっそのこと三菱はSCiB搭載車種を他にも拡大して「安心して乗れるEV」を拡充してほしいですが…すでにGSユアサと提携している状態では難しいでしょうか?

    1. ヒラタツ様、コメントありがとうございます。
      SCiBは本当に安全でかつ急速充電特性も良く、あと密度さえ良ければ、、という電池ですよね。東芝さんからも三倍の密度が達成できるというリリースが出ていましたが、三倍で他のリチウムイオン電池と同等程度かそれ以下。車によっては、コストもあるでしょうけど、検討が可能な範囲だったりしないのでしょうか。

    2. ヤスカワ様、返答有難う御座いましたm(__)m
      東芝SCiBの容量が3倍になれば、i-MiEVの航続距離も3倍になる可能性がありますね…もっともそれで重量が大きくなればセル数を調整してくるでしょうけど。
      2倍になったとしても重量が軽くなれば2.4倍くらい走れ、シティコミューターから中距離ランナーになり普通の軽自動車とタメ張れるようになると思います。
      今でこそEVはアーリーアダプターにまでしか行き渡っていませんが、航続距離が2倍になればアーリーマジョリティが出てくると考えられます。
      東芝がSCiB工場を増やすようですので今後に期待したいです…。

      ただ容量が倍になっても問題は電力配電。低圧受電が49kW以下となっている現状をどうにかしないといけないでしょう。
      後輩に冗談半分で「そのうちEV充電器だけの自家用電気工作物が増えてくるよ」と言っておきましたが、すでにテスラが該当している以上、日産三菱なども店舗がない空白ゾーンへディーラー充電器を投入してくるかもしれませんね。むしろそうなってほしいですがww
      あと一般家庭も契約アンペアの追加や電線の張替(太くする)などして6kW充電に対応させないといけません。従来のまま使っていて電線が加熱変色して電気火災などになったら我々電気技術者が世間の顰蹙を買いますので。

      電気設備管理の仕事を25年も続けてきましたので、電気業界が絡む話はピンときます。疑問などありましたら質問くださいませm(__)m

    3. ヒラタツ様、コメントありがとうございます。
      今後低圧の充電設備はなくなっていくと思います。これから電気自動車もだんだん注目されますが、今までの自動車業界と大きく異なるのは、インターネットの存在です。iPhoneの素晴らしさを伝えるのには多くの既存メディアと店舗展開が必要でした。しかし電気自動車はどうでしょうか?今後店舗にどんどん充電設備を設置していっても、利用するのはコストに敏感で時間のある方々に限られてくるでしょう。実際に車を足として使うなら、日本では高速道路やバイパス・国道を使いまくるしか方法はなく、その路線上にアクセスできる充電設備は必須になると思います。今後テスラが設置している方式が理解されてくるにつれ、「なんでうちの電気自動車はあそこで充電できないんだ?」ということになるのではないでしょうか。
      各自動車メーカーは、そろそろ用地獲得に力を入れたほうがいいと思います。
      例えばこれから私が二台目の自動車を買うとして、もしデザインやブランドに大きなこだわりがないなら、良い場所に充電設備を持っている自動車メーカーにするかも知れませんよ(笑)

  2. Yasukawa様返答有難う御座いました。
    そうそう!日産や三菱などEVを製造販売している会社は充電器空白地帯にディーラー店舗のない充電所(変な言い方だ…)を作るべきですよ!
    現に岐阜県でも下呂温泉には日産・三菱ともディーラーがなく設置が望まれているんだとか…その地域でEVを見かけること自体稀なので判ります。逆に日産ディーラー密集地にリーフが多いことを見れば一目瞭然、充電器に近い地域ほどリーフ遭遇率が高いです。
    できればソーラー発電・V2H機器メーカーなどと組んでエコや防災も謳う姿勢が必要です…現に昨年秋の台風による電柱倒壊で2日以上停電が起きた地域に設置すれば住民に有難みが伝わってEVが地方から普及していきますよ。

    景勝地・観光地に設置すれば普通充電であっても利用は多いと推測されます。
    大都市圏・中堅都市ではEV充電器普及率が高く心配も少ないですが、高速道路・有料道路・地方一般国道でのEV充電普及率と充電器数はまだ少ないと感じています。
    もちろん急速充電器1台では充電場の混雑も度々発生するので4~5台あれば有難いと何度も感じました(EV充電待ちは年3回だが充電断念→他所の充電器へ移動は月2回、待たせた経験は記憶にある限り年3回)。
    ※電池容量の少ないi-MiEV乗りなので特に気にしています。せめて現在の充電所は普通充電器+急速充電器各一台にしてほしいですね。
    岐阜羽島のコストコ付近にテスラスーパーチャージャー4連を見てカルチャーショックを覚え、同時に充電場の理想形を見せ付けられましたよ。

    1. ヒラタツ様、おっしゃること、良く理解できます。

      >下呂温泉
      以前行ったことがあります。その時は合掌村の充電器を使わせていただきました。結構温泉街からも近く便利な場所なと思います。どうせ一回は行くしね。
      https://blog.evsmart.net/tesla-model-s/roadtrip-winter-geroonsen/
      Electrify America(米国)もIONITY(欧州)も、急速充電器の台数は一か所に最低5台と決めているようです。日本もそろそろガラパゴス脱出!

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