EV放電サービス「V2AEONMALL」を使ってみた〜これはいったい何のため?

イオンモールが5月から「V2AEONMALL」というサービスを本格的にスタートしました。自宅の太陽光発電などで充電した電気自動車の電力を、イオンモールの専用機器で放電すると、御礼としてWAONポイントが獲得できるサービスです。利用の実感はどうなのか。サービスが導入された大阪府堺市のイオンモール堺北花田で実際に放電してきました。

イオンモールのEV放電サービス「V2AEONMALL」を使ってみた〜これはいったい何のため?

EVで放電するとWAONポイントが貰える

全国各地に大規模なショッピングセンターを展開するイオンモール株式会社が、自宅の太陽光発電など再生可能エネルギーによる電気で充電したEV(電気自動車)の電気を、イオンモールのサービス実施店舗に設置された専用機器で「放電」すると、WAONポイントをプレゼントする「V2AEONMALL」というサービスを正式にスタートさせました。

EV生活に詳しくない方にはちんぷんかんぷんだと思うので、ポイントを説明しておきましょう。まず、「V2AEONMALL」というサービス名は、チャデモ規格の急速充電機能を備えたEVの電力を家庭で使う「V2H(Vehicle to Home)」になぞらえたもの。ニチコンの「EVパワー・ステーション」など(といいつつ現状はほぼ一択ですが)の専用機器を使うことで、EVに貯めた電力を住宅や施設で利用する、つまり「放電」することができます。

WAONポイントというのは、イオンが提供する電子マネー「WAON」に交換することができるポイントです。イオンモールをはじめとするイオングループの店舗はEV用充電器を設置していることが多いので、EVsmartブログ読者であるEVユーザーの皆さんにはなじみ深いポイントかも知れません。

「V2AEONMALL」は、「イオンモールアプリ」の追加機能として提供されます。私がこのサービスの正式スタートを知ったのは、この機能(ミニアプリ)構築を担当したフェリカポケットマーケティングのニュースリリースでした。リリースでは「ご家庭で発電した電力をEV(電気自動車)でイオンモールに放電していただくと、イオンモールの脱炭素社会に向けた取り組みにご協力いただいた御礼として、後日ポイントを進呈するサービス」と説明されているものの、いったい、イオンモールが何のためにこんなややこしいことを始めるのかといった目的は紹介されていません。

5月のサービスリリース時点での導入店舗は、大阪府堺市のイオンモール堺北花田とイオンモール堺鉄砲町、そして奈良県のイオンモール橿原の3店舗で、今後全国へのサービス展開を予定しているとのこと。5月21日に奈良市内でEVについて講演する予定が入っていたこともあり、関西取材ツアーを組んで、なにはともあれイオンモール堺北花田で「放電」を体験してみることにしたのでした。

イオンモールアプリで簡単に利用できました

利用方法は、リリースで以下のように説明されています。私が実際に操作した際のスマホ画面キャプチャ(クリックすると拡大します)などを添えて転記します。

①「イオンモールアプリ」にて導入店舗を「よく行くモール」に登録の上、「サステナアクション」>EV放電サービス「V2AEONMALL」を選択

②TOP画面「放電する」よりカメラを起動し、スタンドに設置の二次元コードを読み込む
※ご使用時にはカメラおよび位置情報の許可が必要

③電気自動車へ放電コネクタを差し込み、認証後、放電時間を選択(放電は30分単位で選択可能)

④安全確認後、放電開始

イオンモールアプリを知らないとややこしく感じるでしょうが、使ってみると簡単です。私の場合、生活圏内にイオンモールがないこともあり、イオンモールアプリもWAONカードも所有していなかったので、今回の取材のためにインストール&設定しました。放電サービスを使うのは簡単だったけど、新しくカードを発行していると間に合わないのでスマホにWAONアプリをインストールして設定するのが一番ややこしかったくらいです。

60分間で5.9kWhを放電しました

数年後には全国各地で当たり前になっていて(もっと充電しているEVが増えるのとともに)欲しい光景です。

イオンモール堺北花田を訪れたのは5月22日の月曜日。立体駐車場の一角に、普通充電器がズラリと並んでいる様子が素敵でした。V2AEONMALLの放電ステーションは。EV充電区画と同じフロアの店舗入口近くにありました。

放電コーナーの詳細な場所を確認し忘れていたのですが、充電コーナーを目指したら、無事発見できました。

乗り付けたのは取材用にトヨタから借りた『bZ4X』で、もちろんV2Hに対応しています。チャデモ急速充電可能なEVでも、テスラや欧州メーカー製の輸入車、マツダ『MX-30 EV MODEL』の2022年9月以前のモデルなどはV2Hに非対応なので、V2AEONMALLを使うことはできません。

営業開始直後の10時30分ごろに到着。ゼネラルマネージャーの森嶋さんにご挨拶して、さっそく放電を試してみました。時間はアプリで選択できます。今回は、かりゆしウェア以外(ここ数年、私の夏は日替わりでかりゆしばかり……)の夏物アウターが欲しかったので、放電時間を1時間(60分)に設定してショッピングを楽しみました。

最近は衣服の買い物もネット通販やユニクロがほとんどで、デパートへ足を運ぶことも少なくなっていたので、ショッピングモールでメンズファッションの店を探すのも楽しいひとときでした。「HIDEAWAYS」というNICOLEのメンズカジュアルブランドの店で、ニットの半袖パーカーをGETして目的達成。まだ20分以上時間があったので「ききょういも」という焼き芋カフェで大学芋とアイスコーヒーをいただきました。

放電によって獲得できるWAONポイントは30分で24ポイント。今回は60分なので48ポイント獲得です。ただし、獲得ポイントは毎月月末に集計し、翌月21日以降に使用可能になるみたいです。

イオンモールの本部にも質問しました

さて、実際に放電を体験してみても、イオンモールがいったい何のためにV2AEONMALLをやるのかという疑問は解決しません。また、EVから店舗への放電という実証実験は、たしか数年前から行われていたと記憶しています。本部の広報室にメールで質問して得られた回答のポイントを紹介しておきます。

【Q】V2AEONMALL(放電受入サービス)は、すでに実証実験が行われていたはず。この取り組みを始めた目的やきっかけは?

【A】イオングループは2018年にイオン脱炭素ビジョンを策定し、EV100に加盟しています。実証実験は環境負荷低減やEV普及のための検証として実施。

【Q】実証実験の成果とは?

【A】2019年度、2020年度にイオンモール堺鉄砲町において実証実験を実施。一般のモニターを募集し実験したことで、EVを使った電力融通・ブロックチェーン技術についての検証をし問題なく活用できることがわかった。

【Q】まずは関西3店舗からのスタートとのこと。今後の拡大計画は?

【A】検討中です。

【Q】自宅太陽光発電など再エネ以外による電力を放電した場合のペナルティなどはありますか?

【A】とくになし。

ご担当者にじっくりお話しを伺うべきではありますが、今回得られた簡潔な回答からでもその意図を理解することはできた、と思っています。つまり、脱炭素への取り組みをソリューションとして社会に拡げ、顧客である生活者の脱炭素への意識を高めたい! ということなのだと受け止めました。

イオングループの公式サイトを確認すると「イオン脱炭素ビジョン」を紹介するページがあり、「イオンの商業施設の敷地内に設置するV2H(充放電設備)の仕組みを活用し、ご家庭で発電された余剰再エネ電力をイオンの店舗で活用させていただくサービス」にも触れられています。

ちなみに今回のbZ4Xは旅の途中です。自宅太陽光発電(そもそも我が家は未設置だし)で充電することはできないので、先だってZESP3改定とともに「日産販売店舗にて、ZESP3利用で急速充電を行う際の電力を100%再生可能エネルギー化」することを発表した日産のディーラーで充電してから行きました。わざわざ言うまでもないことですが、急速充電無料のZESP2で充電した電力を放電してWAONポイントをGETするなんて所業は、EVユーザーとして悲し過ぎるのでやめてください、ね。

イオンモール堺鉄砲町にも行ってみました

今回私が放電した「堺北花田」と、実証実験も行われた「堺鉄砲町」は、4〜5kmしか離れていない距離。せっかくなので、こちらの放電コーナーも見に行ってみました。また「そういえば」と思い出したのが、イオンモール堺鉄砲町には、BYDのディーラーが開設されたはず、ということでした。

放電コーナー(こちらも充電区画の近く)からエスカレーターで1階に下りると、目の前に「BYD AUTO 堺」があり、放電コーナーがある立体駐車場の同じフロアには、ATTO3の試乗車がありました。モールの中で排気ガスをまき散らすのはダメでしょうから、イオンモールの中にディーラーがあるということもまた「電気自動車だからこそ」の光景であると実感できたのでした。

電気自動車で、少しずつ社会は変わりつつあります。

取材・文/寄本 好則

【EV放電関連記事】
電動車で放電して「実質3万円GET!」〜世田谷区で実証実験がスタート(2019年12月10日)
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この記事のコメント(新着順)4件

  1. 電力の変換損失がダブルで効いてくるし、エコでは無いですね。イオンでの普通充電料金が6kW充電器(少ないが)でも1時間約6kWhで120円。時間をかけてzesp3の普通充電や急速充電の残り時間を、充放電するより、zesp3の残り時間分の電力のやりとりなしにイオンが買い取ってくれる方が、環境にはよろしい。普通充電は6kW/時間で、急速充電は90kW/時間で換算してね。

  2. アリオ八尾とかエンジン車のディーラーがあるショッピングモールなかったっけ?

  3. WAONポイントは1ポイント=1円だそうです。
    5.9kWh48円だとすると余剰電力買い取り業者に売電した方がお得になるような気が(小さい話ですみません)・・バッテリーも痛みませんし。
    電力網から独立している人には朗報かもしれませんが・・
    「駐車料金無料」とか特典が付くのならお得かもしれませんね。

  4. 卒FITを迎えた太陽光発電を持つEVユーザーの場合売電価格は10円/kWh以下の契約が多いですが、卒FIT前ならもっと売電価格は高い。となると約6kWhを48ポイント(円分)で売電するメリットは…。 (卒FITを迎えている立場からしても魅力的には感じず… )
     ポイント還元はあるものの、地球環境への配慮という善意の寄付を募るような印象を感じます。
     このシステムが普及(より多くのEV ユーザーに利用され、AEON MALLがSDGsに貢献していると言える利用率をあげる)にはもう少し仕組みの改善やユーザーへの明確なメリットが必要ではないでしょうか?
     特に都市部のイオンモールでは駐車料金の時間制限も短いですし、放電時間より長くショッピングする場合は、急速充電同様短時間で駐車位置まで戻り移動しなければなりません。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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