目次
電気自動車・PHEVの保有台数
普及率は、販売台数ではなく、保有台数で計算する必要があります。例えば2015年の一年間で販売された電気自動車・PHEVの台数を、それ以外の車両の2015年の販売台数で割り算しても、その年の販売台数シェアにしかなりません。もちろん販売台数シェアも普及を見ていくうえで非常に重要な数字となりますが、携帯電話のように数年で新しい機種に買い替えするような製品と異なり、自動車は耐用年数が比較的長いので、保有台数で見たほうがより正しく動向を把握できると思います。
本記事では乗用車と軽乗用車に限定して、数字を見ていきたいと思います。現時点では電気自動車もPHEVもまだ貨物車を置き換えられるほどの性能が出ていないため売れておらず、比較しても意味がないからです。電気自動車とPHEVの保有台数については次世代自動車振興センターのEV等保有台数統計を使います。
年度 | 2012/4-2013/3 | 2013/4-2014/3 | 2014/4-2015/3 | |
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電気自動車 | 乗用車 | 24,983 | 38,794 | 52,639 |
軽乗用車 | 13,646 | 15,870 | 17,611 | |
PHEV | 乗用車 | 17,281 | 30,171 | 44,012 |
ハイブリッド車 | 乗用車 | 2,833,443 | 3,792,886 | 4,640,743 |
軽自動車 | 288 | 188 | 54,931 |
グラフにしてみると
電気自動車・PHEVは合計してもずいぶんと少ないですね。しかも比較している対象はハイブリッド車だということにご注意ください。まだまだ、電気自動車もPHEVもマイナーな存在なのです。
それでは普及率の分母を出すために全乗用車・軽自動車の保有台数を調べてみましょう。日本国内の保有台数データは、一般社団法人自動車検査登録情報協会(自検協)の自動車保有台数を使います。
年度 | 2012/4-2013/3 | 2013/4-2014/3 | 2014/4-2015/3 |
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普通車(乗用) | 17,297,023 | 17,586,128 | 17,717,203 |
小型車(乗用) | 22,712,327 | 22,234,915 | 21,773,914 |
軽自動車(乗用) | 19,347,873 | 20,230,295 | 21,026,132 |
グラフにしてみると
普通車というのはざっくり言うと3ナンバー、小型車は5ナンバーのことです。グラフでは一緒にしてしまいましたが、3ナンバーは微増、5ナンバーは微減、軽自動車は増加し、総保有台数は微増になっています。
電気自動車・PHEVの普及率
電気自動車・PHEVの保有台数と全乗用車の保有台数が出ましたので、普及率を出してみましょう。2014年4月から2015年3月までの最新のデータを見ても、電気自動車・PHEVは合わせて11万台、ハイブリッド車は469万台、そして全部で6,051万台ですから電気自動車・PHEVをグラフにしてもほとんど見えませんね!表だけにしたいと思います。
年度 | 2012/4-2013/3 | 2013/4-2014/3 | 2014/4-2015/3 |
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電気自動車・PHEV | 55,910 | 84,835 | 114,262 |
普及率% | 0.09% | 0.14% | 0.19% |
ハイブリッド車 | 2,833,731 | 3,793,074 | 4,695,674 |
普及率% | 4.77% | 6.32% | 7.76% |
全乗用車 | 59,357,223 | 60,051,338 | 60,517,249 |
こうやってみると、すでに普及している感のあるハイブリッド車ですらまだ8%弱で、電気自動車・PHEVは0.2%未満、という状況なのですね。政府の次世代自動車普及目標は、2020年時点でハイブリッド車が20-30%、電気自動車・PHEVを合わせて15-20%、燃料電池自動車(FCV)が1%です。ハイブリッド車は仮に全保有台数を6千万台とざっくり入れたとして、目標まで20-8=12%増加しなければなりませんから、あと5年間で720万台=1年あたり144万台。昨年度のハイブリッド車の保有台数の増加は90万台程度ですから、目標達成までにはあと1.5倍の台数が必要ということになります。
問題なのは電気自動車・PHEVです。政府目標が15%ということは、あと5年間で900万台=1年あたり180万台!テスラがネバダ州に建設しているギガファクトリーが電気自動車年間50万台分ですから、政府目標の達成はほぼ不可能のように思われます。
参考:米国のデータ
参考までに米国のデータを見てみましょう。残念ながら米国には車検制度がないせいか、保有台数統計が上手く見つけられなかったので、代わりに販売台数統計を見てみたいと思います。米国には軽自動車はなく、またトラックが日常の足としても使われている背景があり、市場の様子は日本とはだいぶ違います。ちなみに2014年(2014年1月から12月まで)の販売台数第一位は33年連続(!)、フォードFシリーズトラックです。さらに、第二位と第三位もピックアップトラック。2014年の販売台数は乗用車が7,687,619台、ライトトラックが9,154,354台、計16,841,973台です。ここでライトトラックという用語が出てきましたが、米国ではライトトラックには、バン・ミニバン・SUV・ピックアップトラックが含まれています。日本だとミニバンやSUVは乗用車に含まれるので、単純比較は難しいですね。ちなみに電気自動車・PHEVやハイブリッド車の統計はHybridCARSのDashboard、米国での総販売台数はWardsAutoの統計(会員制)を使いました。
それでは表にしてみましょう。
年度 | 2012/1-2012/12 | 2013/1-2013/12 | 2014/1-2014/12 |
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電気自動車 | 14,807 | 47,559 | 63,325 |
普及率% | 0.20% | 0.63% | 0.82% |
PHEV | 38,585 | 49,043 | 55,357 |
普及率% | 0.53% | 0.65% | 0.72% |
ハイブリッド車 | 434,498 | 495,771 | 452,152 |
普及率% | 6.00% | 6.54% | 5.88% |
全乗用車 | 7,244,439 | 7,585,341 | 7,687,619 |
電気自動車やPHEVにはまだライトラックに該当する車両が少ないので、総販売台数は乗用車のみのものを使いました。すなわち、全乗用車のところにはレクサスRXハイブリッドやクルーガーハイブリッド(日本では生産中止、米国ではHighlander Hybrid)などは入っていませんが、ハイブリッド車のところには入っているということです。
こうしてみると、米国では電気自動車・PHEV合わせて、販売台数ベースでは1.5%を超えたということが分かります。また(ピックアップトラックが大人気ということはもちろんですが)環境車のなかでは、ハイブリッドは減少に転じ、電気自動車やPHEVが増加しています。
しかし日本の総「保有」台数が6千万台に対し、米国の2014年の「販売」台数が1600万台というのは大きいですね。やはり米国は自動車大国・ビッグマーケットということになるのだと思います。
電気自動車やPHEVは上手く使えば電気だけで走行することができ、ガソリン代をゼロにすることができます。代わりにかかる電気代もガソリン代よりはるかに安く(リッター100円で計算しています)、発電所の排出するCO2を考慮に入れても、ハイブリッド車よりCO2排出が少ないです。またモーターで走行するので、低速からの立ち上がりが非常に良く、特に街中での走行フィールは最高です。環境にも良く、お財布にも優しい車がもっと普及するとよいですね。
日本という国は本来、電気自動車がもっと売れて然るべきだと思います。
電気自動車最大の利点は「動く蓄電池」であること。航続距離が短くても、普通のガソリン車ではできない「家庭用の電源を供給できる」ことが最大の売りだと思います。
特に今年は豪雨・猛暑・台風などの自然災害が多発して停電した地域も数知れず、岐阜県など僻地になればなるほど停電時間が長くなった地域が多いので、そんな場所に住んでいる方は電気のありがたみを思い知ったはずです。
かくいう自分も仕事柄そんな地域に出向いたときに停電で困った方々を見てきました…ホントこういう方々に電気自動車のよさを教えてあげたいと思った。
アイミーブ・ミニキャブミーブにはオプションで外付けの100V/1500W供給装置「ミーブパワーボックス」がありますが…これを車内に標準装備したグレードが欲しいと思います。もっとも今の三菱自動車にそこまでする余力があるかは疑問ですが。
地方自治体も電源供給用にEV・PHEVをもっと積極導入するべきではないでしょうか?…ただ財政に余裕がないとできないとは思いますが、でも地方だとガソリンスタンド減少で苦しんでいるから逆に導入のチャンスなのかもしれませんが、そればかりはここで訴求して職員各位に読んで頂く他ありません。
もちろん財政余裕が少なければ中古購入もアリですが…従来の慣行を捨てられない自治体は手の出しようがないばかりに衰退してゆくと思われます。
真剣に災害対策を行っているかどうかがEV保有台数・EV導入率で判るようになれば、住民は安心して暮らせるようになり、それにつられてEV・PHEVも普及してゆくのではないか…ふと思いました。
こんなところで災害対策だなんて大げさかもしれませんが、防災など社会問題にも触れてゆくことがEV・PHEVの将来を左右する可能性が高いと踏んだので書かせて頂きました。では。
ヒラタツ様、ご意見ありがとうございます。災害対策として、EVやPHEVは本当に有効ですが、現時点ではなかなか新しいものを受け入れる力が日本の国自体にあまりなく、時間がかかるのだと思います。
>地方自治体も電源供給用にEV・PHEVをもっと積極導入するべきではないでしょうか?
電気が来ないことはあまり想定していない気がします。ガソリンスタンドだってポンプも電動だし照明消えれば真っ暗。課金機もレジも使えませんのでお金も現金で、おおよその金額で販売するしかなくなります。
発電機は入れていても、蓄電池は入れていないとか。実際のところ地震や津波で道路は寸断されても、電線は地上を通しさえすれば電気を通せますので、復旧も早いのですよね。
新しいものの考え方が出てくると、当然のように産業の構造が変わります。例えば地方自治体くらいの役所なら、発電機より太陽光パネルプラス蓄電池のほうが圧倒的にコストが安く、役に立つわけなんですよね。しかしそうなると発電機の事業者やそれをメンテナンスしている事業者が困る。蓄電池のメンテナンスなんて点検だけですからね。そうなると、新しい考え方を広めないよう、ネガティブな記事を出したりするようなことが起こります。例えば本日ですと、トレンドマイクロという会社が、iPhoneのアプリで個人情報を収集して中国に送信していた事件があったのですが(実際にそのアプリは公開停止になっているので事実は認めている)、日経は「問題ない」という開発元の意見をそのままニュースにして流しています。そういう意味では、現時点の日本において、メディアを読む場合、半分は間違っているまたはバイアスがかかっていると考えないといけない時代になったということなのだと思います。
1%にも満たない普及率なのに数年以内に電気自動車の時代が来るとか
メディアはホント無責任ですね。
今北様、コメントありがとうございます!日本では時間がかかるでしょうね。ただ世界を見ると一概にも言えません。
https://www.curbed.com/2017/11/8/16623686/electric-vehicle-car-emission-transportation
世界の大都市の動向ですが(とはいえノルウェーとかも入ってる)、オレンジ色の〇が2016年度の新車販売におけるEV/PHEVのシェア、濃い青色(ピーコックブルーっていうのかな)が完全電気自動車の販売台数となります。ノルウェーはすでに新車の30%以上がEV/PHEV化され、カリフォルニアのサンノゼ(シリコンバレー近辺です)では10%を超えています。また中国には、日本のEV/PHEVと同じくらいの台数の市場が複数あることがわかると思います。