EV放浪記2.0【002】山形へ1100kmドライブ〜協力金式急速充電器をハシゴ

Honda eオーナーの篠原さんがEVライフを探求する連載『EV放浪記』。第2回は東京から山形県へ約1100kmのロングドライブ。カード認証ではなく「協力金」を投入する方式の急速充電器を巡ったレポートです。

EV放浪記2.0【002】山形へ1100kmドライブ〜協力金式急速充電器をハシゴ

山形県では「協力金」方式が多かった!

6月22~23日、1泊2日の日程で東京−山形を往復してきた。所用で訪ねたのは日本海沿い県北部の酒田市。山形市から山形道&月山道路で北西にまっすぐ抜けるルートが効率的だけど、東北中央道を使ったりしながら山形県内をぐるっと回り道。約1100キロのロングドライブで、カードやアプリを使わない非認証式の(協力金を投入する)充電スポットをいくつか訪ねてきた。

東北道都賀西方PA(下り線)。

東京の自宅から首都高経由で東北道へ。SOC(充電率)60%からのスタートだったので、112km走って都賀西方PAで1回目(10→71%)、82km走って那須高原SAで2回目(28→81%)のチャージ。福島JCTから東北中央道へ入る。かみのやま温泉ICで高速を下りて向かったのは、山形県上山市にある「エネルギー回収施設(川口)」だ。協力金方式というのが気になって、訪ねてみた。

同施設では、山形市、上山市、山辺町、中山町の燃やせるゴミを処理している。「エネルギー回収」というのはつまり、廃棄物系のバイオマス発電のこと。焼却熱を利用した蒸気タービン発電で施設の電力をまかなっているそうだ。訪問時、発電量モニターには「1530kW」と表示されていた。その一部を使うEV用の急速充電器(50kW)は、駐車場の建物近くに設置されていた。

エネルギー回収施設(川口)の充電器

さっそく充電させてもらう。30分で自動的に一回切れるようだ。普通に接続してスタートボタンを押すと、充電開始。お隣に設置された金属製ボックスに協力金投入口がある。「地球温暖化防止と再生可能エネルギーの普及のため協力金のご負担をお願いします」「100円/10分毎」という説明文が記されていた。10分間でおおむね6〜7kWhは入るだろうから、100円は安い。バイオマス発電の恩恵に感謝。

足湯まであって10分100円はありがたい

おかわり充電も想定し、支払いは後にして施設を見て回る。目についたのは芝生の広場と大型遊具。子供を連れてきたらいつまでも遊んでいそうだ。排熱を利用した足湯もあるし、敷地内を散歩することもできる。近所にあったら充電が必要なくても通うかもしれない。

足湯で疲労回復

「やはり子供連れで来られる方が多いですね」と話してくれたのは、施設を運営する山形広域環境事務組合のUさん。供用が始まったのは施設のオープンと同時で2018年12月。地域住民の利用が主体だが、県外ナンバーのEVもよく来るとか。利用者は増加傾向で、コロナ禍による自粛が緩和された5月以降は急増しているという。

認証方式ではなく協力金方式にしたのは、施設による地域貢献という意味がある。また、設置に際して調査をした当時「県内公共施設のEV充電器は協力金方式が多かったから」だそうだ。突然の訪問にもかかわらず、気さくに対応してくださった組合の皆さん、ありがとうございました。

30分で充電が終了すると、SOC(充電率)は8%から77%まで回復していた。充電量表示がないので概算だけど、20kWh以上入っている。これならお代わりはいらない。謹んで300円投入。近くに寄ったら、また来ます。ちなみに同組合が運営する山形市内の「エネルギー回収施設(立谷川)」にも同じ充電器があるそうだ(足湯や遊具はなし)。

道の駅ではコイン式急速充電器に遭遇

グリーン電力で快走するHonda eで向かったのは蔵王温泉。じつは半年前に訪ねたときは、温泉街まではたどり着いたものの、雪が降る中でスタッドレスタイヤも空転し始めたので撤退した。雪がないとスイスイ登れる。温泉施設で休憩して、露天風呂に肩までドブン。緑のモミジが目にやさしい。

この日は天童市内のビジネスホテルで一泊。翌朝から観光名所の山寺や銀山温泉などを巡りつつ北上する。あいにく充電器付きの宿泊施設ではなかったので、午前中にはSOCが心細くなった。

道の駅とざわの急速充電器。

酒田市へ向かうため、航続距離を考えながらEVsmartアプリで検索して、戸沢村の「道の駅とざわ」を目指すことにした。走っていると、田園風景の中に突然、異国情緒満点の建物が見えてきた。謎めいた風景に戸惑いつつ駐車。急速充電器(20kW)はコイン式だった。初めて体験する機械で、これにも戸惑った。

まずは充電コネクタを接続して、コインを入れようとしたのだが、100円玉も500円玉もカシャンカシャンと戻ってくる。どうやら段取りが違っていて、接続するだけでなく先にスタートボタンも押す必要があった。すると通電試験が始まって、そのあとストップ(課金待ち)する。ここでコインを投入、というのが正しい手順だった。

韓国的な風景を散歩

やっと充電が始まったので、道の駅を探索。どうやら韓流がテーマらしい。言われてみれば建物はそれっぽいデザイン。館内にはK-POPが流れている。物産館は韓国のグッズや食材で埋め尽くされていて、韓国料理店もある。なかなか面白い。売店の女性に「どうして韓国がテーマなんですか?」と聞いたら、「農業交流で韓国の方がたくさん来られたことがあって、それをきっかけに日韓交流が盛り上がったんですよ」とニコニコしながら答えてくれた。

設置されているのが最大20kWの充電器なので充電量は30分で8.5kWh(SOC13→49%)と少なめだったが、異世界に迷い込んだようなひとときを楽しめた。通り過ぎていたら「変わった建物だなー」で終わっていたところ。

道の駅鳥海ふらっとでは旬の岩牡蠣を満喫

道の駅鳥海ふらっと

最上川沿いの国道47号で日本海を目指す。しっとり濡れた緑の風景に癒される。続いて訪ねたのは、遊佐町の「道の駅鳥海ふらっと」。目的地の酒田市内にも充電スタンドはいくつかあったけれど、大回りして秋田県境近くまで北上する。ここもまた協力金方式と記されていたからだ。この流れではちょっと見逃せないでしょう。

国道7号沿いにあって、鮮魚と農産物の直売所を備えたオーソドックスな道の駅。お昼時も近かったため駐車場はほぼ満車。幸い充電スポットは空いていた。急速充電器(25kW)の隣に募金箱を設置したシンプルなスタイルだ。貼り紙には「EV協力金箱 1回500円」とある。充電をスタートさせてから散策。

鮮魚直売所に貼られていた「岩ガキの季節がやってまいりました!」というチラシに誘われて、行列に並ぶ。箱のまま積まれた獲れたての岩ガキからひとつ選んで、窓口で渡すと殻を剥いて洗ってくれた(この日はひとつ800円)。ポン酢とレモンでツルリ。プリップリで美味でした。これぞ海の恵み、旅の醍醐味。

プリップリでした。

30分間の充電量は11.0kWh(SOC32→71%)。25kW器にしてはよく入ってくれたほう。500円を投入。お賽銭じゃないのに、なぜか手を合わせたくなったりして。動作が似ているせい?

蔵王から山形方面を眺める

このあと酒井市と鶴岡市で取材を終えて、帰路に着いた。一般道での充電はあと一回、鶴岡市の「道の駅月山」にも立ち寄った。充電器(25kW)は協力金ではなく、一般的なカード認証式で24時間利用可。残念ながら到着が遅くなり、営業時間外だったけれど、ここもなかなか魅力的な道の駅。なんと「ボルダリング」も体験できるそうだ。やってみたかったなぁ。8.9kWh(SOC23→58%)充電。

帰路の高速道路は、寒河江SAで10.6kWh(SOC37→79%、約20分で切り上げ)、安達太良SAで15.7kWh(SOC15→76%)、都賀西方PAで15.0kWh(SOC16→74%)と3回充電して、日付の変わったころに東京へ帰着。2日間の走行距離は1151km、急速充電9回、平均電費は9.4km/kWhだった。

充電料金の支払いは、認証カードでピッとやるのが楽ではある。でも「協力金」というアナログなスタイルだからこそ、電気のことや設置者のことなどまで、いろいろ思いが及んだように感じた。みんながみんな、コスパや効率を追求しなくたっていいよね、きっと。

Honda e のプロフィール(2023/6/24現在)
総走行距離:3万8961km
平均電費:8.4km/kWh

文・取材/篠原知存

この記事のコメント(新着順)5件

  1. いろんな意見があっていいと思います
    EV乗りの自分としてはガソリン車の時よりもロングドライブが低コストで楽しめるようになって EVの未知の部分が多いバッテリー特性や充電事情について情報を得られるのは大変ありがたいと思ってます
    ご存知の通りEV普及の為のスペシャル充電プランは段階を追って縮小されこの秋にはかなり旨味も無くなってしまいます
    ほぼ定額や無料で燃料を気にすることなく北海道と沖縄以外の全国各地を下道で回りましたが そんな夢のような時代も終わろうとしています
    それでも現状ガソリン車よりは低コストではあるんですが…

    絶対数が少ないEVの情報はこれからもありがたく触れさせて頂きたいと思います

    1. 24→62LEAF乗りさま
      コメントありがとうございます。

      そう言っていただけると、とても心強いです。
      24kWhから62kWhに乗り換えられたのでしょうか。
      カーライフが激変したのでは!?と拝察します。

      私はまだ乗って2年と少しですが、
      それでも状況が刻々と変わりつつあるのを実感しています。
      ホンダなんて充電カードをやめてしまうという……泣

      そうした変化も含めて、目に映る景色を楽しんでいこうと思っています。
      これからもご愛読いただければ幸いです。

  2. EVは2台ありますが…さま
    コメントありがとうございます。

    クリーナーのたとえ、めっちゃわかりやすいですね。
    厳しいご指摘なのに、うっかり笑ってしまいました。
    しっかり受け止めさせていただきます!

    おっしゃる通りで、私も日々の子供の送迎や買い物利用がメインです。
    ただドライブ(とバイクでのツーリング)も大好きでして、
    あちこち移動するのが趣味になってしまっており、
    EVの楽しみ方はいろいろある、
    という程度に受け止めていただければ幸いです。
    これからもユーザー目線で感じたことを伝えていきたいと思っています。
    引き続きよろしくお願い申し上げます。

  3. それにしてもネット記事、ブログ、YouTubeと、EVとなると、どうしてロングドライブと充電の話ばかりなんでしょうね。1000キロ走ったらどうなった、青森まで行った、大阪まで行ってきた云々。

    ガソリン車も含めた一般のユーザーの利用実態とは、大きくかけ離れているようにいつも感じてます。月500キロ未満、一日にすると16キロ以下が6割近くで、それも年々近距離のみの利用が増加傾向とのこと(損保会社調べ)。ロングドライブ派は実は3割にも届きません。7割は車では遠出しないんですよね。

    環境を考えたら遠出は公共交通機関でしょうし、そんなご時世なのに、なぜかネットは「EVでロングドライブしてみた、急速充電は何回やった」ばかりで、いったいどうなってるの?と感じています。

    多くの方が30分以下しか使わないクリーナーなのに、8時間掃除し続けてみたら、充電が何回必要だった、などというのをあちこちで読ませられたらどうでしょう。他に調べて伝えることはたくさんあるように思うのですけれど。

    1. EVは2台ありますが… さま、コメントありがとうございます。

      ロングドライブレポートの意義。
      ご指摘のように、搭載バッテリー容量が増えて一充電400kmを超えるようなEVに長距離試乗すると「航続距離、たくさん走れます。以上!」と感じます。

      一方で、一般のユーザーはなかなか機会がないからこそ、メディアとして一定の条件における限界性能的な状況をお伝えすることには意味があると思っています。

      私自身例年夏の東京ー兵庫帰省時のレポートを書いています。毎年試乗する車種は異なるものの、車両の航続距離や急速充電性能が向上していることとともに、高速道路充電インフラの進展っぷりを比較評価できる好機となっています。

      今回の放浪記が「協力金式QC」を主題にしているように、インフラ含め、EVの使い方のバリエーションをお伝えするコンテンツとしても、長距離レポートは記事のInterestとして、また、関係各所関係者の方々への事例紹介としての意義もあります。

      また、ようやく上昇の兆しがある日本のEV普及ですが、まだまだ「EVは航続距離がぁ」とか「充電場所がぁ。時間がぁ」といった旧態依然とした偏見をお持ちの方も少なくないと感じています。

      EVの評価として、無策にエンジン車と比べるのはあまり意味がないと思っています。EVカーライフのいろんな要素への気付きを提示できれば、と。

      ご指摘の「遠距離自慢」のような報告だけに偏るのではないよう留意しつつ、EVならこんな風に楽しめる! を、これからもお伝えしていけるよう精進します!

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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