現代自動車の電気自動車戦略『ストラテジー2025』を改めてチェックしてみた

現代自動車が発表した『IONIQ 5』は魅力的な電気自動車でした。ヒョンデは日本の乗用車市場から撤退していますが、世界市場では急成長。日本ではあまり注目されていなかったものの、どんな電動化戦略をもっているのか、改めて確認しておきます。

現代自動車の電気自動車戦略『ストラテジー2025』を改めてチェックしてみた

2019年発表の『ストラテジー2025』で積極的な電動化を宣言

現代自動車、そして同じ韓国の起亜自動車を含む「現代自動車グループ」は、世界市場の販売台数で、VWグループ、トヨタ、ルノー連合、GMに次いで世界第5位のメーカーです。日本市場では乗用車販売から撤退しているのでやや印象が薄いですが、世界でのプレゼンス(存在感や影響力)は多くの日本人が思う以上に高いと認識しておくべきでしょう。

IONIQ 5

ちなみに、日本では「現代=ヒュンダイ」と表記されていましたが、いつからか公式の日本語サイトやSNSの公式アカウントで「ヒョンデ」と記されるようになっています。2月24日に公開した『IONIQ 5』の記事でもカタカナ社名はヒョンデとしています。

さて、そのヒョンデの電動化戦略。調べてみると、明確な目標を打ち出しているのが、2019年12月に発表された『Strategy 2025(ストラテジー2025)』です。

【関連情報】
Hyundai Motor Unveils ‘Strategy 2025’ Roadmap

このストラテジー2025で、まずヒョンデは「2025年までにスマートモビリティソリューションプロバイダーに移行」することを明示しています。「スマートモビリティデバイスとスマートモビリティサービスを2つのコアビジネスの柱」として進んでいくと説明されていますが、長いカタカナ言葉続出でわかりにくいですね。

「スマートモビリティ」とは自動車だけでなく、パーソナルエアビークル(PAV)、ロボット工学、ラストマイルモビリティを含む、すなわち「乗り物」のスマート化、つまりデジタル化や電動化などを進めていくこと。そして、そのメリットをユーザーに心地よく提供するためのプラットフォームを確立し「スマートモビリティサービス」を提供していく決意であることを意味しています。

と、噛み砕いて説明してみても今ひとつ何が起こるのかよくわかりません。明確なのは、電動化への目標です。

ストラテジー2025では、 2025年までに、ヒョンデは56万台のBEVと11万台の燃料電池電気自動車(FCEV)からなる年間67万台の電気自動車の販売を目指すこと。さらに「主要市場では2030年までに、新興市場では2035年までにEVドライブトレインを搭載したほとんどの新モデルを提供」し、世界の市場で「電動化のリーダーシップを確保し、2025年までにバッテリーおよび燃料電池EVの世界トップ3メーカーの1つになる」ことを宣言しています。

現在の電気自動車販売シェアでは、テスラ、VWに次いでBYDなど中国と欧州のメーカーが名を連ねていますが、ヒョンデはテスラやVWと肩を並べることを目標にしているということです。

2020年 電動車(EV/PHEV)世界ランキング
1位●テスラ=499,535台
2位●フォルクスワーゲン=220,220
3位●比亜迪(BYD)=179,211
4位●上汽通用五菱汽車(SGMW)=170,825
5位●BMW=163,521
6位●メルセデス・ベンツ=145,865
7位●ルノー=124,451
8位●ボルボ=112,993
9位●アウディ=108,367
10位●上海汽車集団(SAIC)=101,385

(出典/EV Sales)

2020年の電動車販売台数ランキングでは、現代自動車は96,456台で11位でした。起亜自動車が88,325台で12位なので、グループで合計するとルノー(日産や三菱を含む)グループと3位を競り合うくらいになりそうです。

ちなみに、日本メーカーは日産が62,029台で14位に入っているのが最上位。トヨタは55,624台で17位。三菱はアウトランダーPHEVが34,861台売れていますが、残念ながら20位に入った中国ベンチャーのNIO(43,728台)にも届かず、世界ベスト20のランキングからは陥落しました。

ともあれ、ヒョンデのストラテジー2025において、日本メーカーはほぼ眼中になし、といえるでしょう。

2020年には「ストラテジー2025」をアップデート

注目すべきなのは、2019年に発表した「ストラテジー2025」を、2020年12月にアップデートしたと大きく発表していることです。

【関連情報】
Hyundai Motor Updates ‘Strategy 2025’ to Accelerate Transition into Smart Mobility Solution Provider

発表では「ヒョンデが「ストラテジー2025」をアップデートして、スマートモビリティソリューションプロバイダーへの移行を加速」することを強調。「EV、アーバンエアモビリティ(UAM)、自律駆動技術、水素燃料電池システムの4つの主要分野に焦点」を当ててビジネスを展開していくことを明示しています。

EVについては、「2025年までに年間56万台のEVを販売する計画」であることに変わりはないものの「専用EVプラットフォームであるE-GMPをベースにしたBEV12モデル以上を投入する」と、さらに具体的に示しています。さらに「最終的には2040年までに主要なグローバル市場で製品ラインナップを完全に電化することを目指す」としています。

EVラインアップの充実だけではなく「充電インフラやバッテリー事業への注力」にも言及。ヒョンデはすでに欧州の急速充電ネットワークである『IONITY(アイオニティ)』に出資していますが、それとは別に「2021年までに韓国に20の高速充電ステーションを建設する計画」など、独自の充電インフラ強化を進めるようです。

また、アップデートで強調されているのが水素燃料電池ビジネスです。ストラテジー2025の発表と同じ2020年12月10日、ヒョンデは燃料電池システムの新ブランド『HTWO』の立ち上げを発表。自動車、船舶、電車など、さまざまな形態のモビリティに適用できる次世代水素燃料電池システムの開発を進め、エネルギー密度が向上した軽量アーキテクチャとして、手頃な価格でパフォーマンスと耐久性を向上させて、高効率で多様な水素自動車のラインナップを提供することを目標として示しました。

戦略の目的は「持続可能な成長」のため

Kona Electric

改めてヒョンデの戦略を確認してみてちょっと興味深かったのが、ゼロエミッションとか地球温暖化対策といった「地球環境」には全く触れられていなかったことです。戦略が目的としているのはあくまでも「持続可能な成長」としています。つまり、FCVを含む電動化は、自動車メーカーとして持続可能な成長を維持していくために、不可欠な「柱」と認識しているということです。当然、電動化にガソリン車であるハイブリッド車は含んでいません。

日本で電気自動車普及が遅れている最大の要因は車種選択肢が少ないことだと思うので、すでにコンパクトSUVを含む複数の電気自動車を揃えており、『IONIQ』ブランドでさらに魅力的なBEVを増やしていくであろうヒョンデ(グループ)の日本市場再参入は、個人的に大歓迎。ますます、日本自動車メーカーの強力なライバルになりそうです。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 現代自動車関連の記事で
    発火事故に一切触れないのは
    なにか意図があるのでしょうか?

    1. 写実主義 様、コメントありがとうございます!現代自動車の電池火災に関するリコールについては別の記事を予定しています。少々お待ちくださいませ。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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