現代の電気自動車『IONIQ 5』がワールドプレミア〜予約サイトがダウンするほど大人気?

現代自動車の新しい電気自動車『IONIQ 5』がワールドプレミアされました。EV専用プラットフォーム『E-GMP』を採用し、V2L機能も搭載。ミドルサイズCUVとして魅力的なEVに仕上がっており、欧州では予約サイトがダウンする人気になっているようです。

現代の電気自動車『IONIQ 5』がワールドプレミア〜予約サイトがダウンするほど大人気?

EV専用プラットフォームを採用して登場

2021年2月22日(日本時間23日)、韓国の現代(ヒョンデ)自動車が電気自動車『IONIQ(アイオニック)』ブランドのニューモデルである『IONIQ 5』を欧州などでローンチ、オンラインでワールドプレミアを行いました。YouTubeで11分ほどの動画が公開されています。

IONIQ 5 World Premiere(YouTube)

グローバルサイトのニュースリリースでは、IONIQ 5 が「持続可能で革新的な機能で電気モビリティのライフスタイルを再定義する」ミドルサイズCUVであるとアピールしています。

「CUV」というのは、Crossover Utility Vehicle の略で、乗用車とも共有する比較的コンパクトなプラットフォームを使用して開発される車種カテゴリーを意味しています。SUVのバリエーションではありますが、大型の専用プラットフォームを使うSUVに比べて効率が良く、街なかでも便利で軽快なクルマに仕上がりやすいといった特長があります。

Electric-Global Modular Platform(E-GMP)と呼ばれる現代自動車のBEV専用プラットフォームを採用して誕生したニューモデルであることも強調されていました。E-GMPについては、EVsmartブログでも『現代自動車が電気自動車用プラットフォーム『E-GMP』を発表』(2020年12月5日)という記事で詳しく紹介しています。

リリースではさらに、「IONIQ 5 のローンチに続き、セダンの IONIQ 6、大型SUVの IONIQ 7 でBEVのラインアップを拡大する」ことが示されています。

IONIQ 5 はどんな電気自動車なのか。まずは、発表されたスペックを確認しておきましょう。

IONIQ 5 スペック

Long Range
AWD
Long Range
2WD
Standard Range
AWD
Standard Range
2WD
全長×全幅×全高4,635×1,890×1,605 mm
ホイルベース3,000 mm
バッテリー容量72.6kWh
(北米は77.4kWh)
58kWh
最大航続距離未発表470~480 km(WLTP)未発表未発表
推定実用航続距離(EPA)約380 km約420 km約325 km約360 km
駆動方式全輪駆動後輪駆動全輪駆動後輪駆動
最高出力225 kW160 kW173 kW125 kW
最大トルク605 Nm350 Nm605 Nm350 Nm
0-100km/h加速5.2秒7.4秒6.1秒8.5秒
急速充電電圧400Vおよび800V
外部給電出力最大3.6kW

サイズは4,635×1,890×1,605 mm(全長×全幅×全高)でホイルベースが3,000 mm。日産ARIYA(アリア)が4,595 mm×1,850 mm×1,655 mm、ホイルベース2,775 mmなのでほぼ同サイズ。クロスオーバーSUVを標榜するアリアに比べて、CUVの IONIQ 5 は全高が 50 mm低くややシャープなフォルムであるといえます。

バッテリー容量は58kWhと72.6kWhの2タイプ。それぞれのバッテリー容量に、2WDとAWDがラインアップされている点もアリアと似ています。

一充電航続距離は、大容量バッテリーの2WDで最大470〜480km(WLTP)としか発表されていませんでした。実用に近いEPA基準換算で推定すると、約420km(約5.8km/kWh)となります。参考までにEPAに準じた実用航続距離を推定すると、ロングレンジAWDが約380km(約5.2km/kWh)、スタンダードレンジ2WDが約360km(約6.2km/kWh)、スタンダードレンジAWDが約325km(約5.6km/kWh)となります。いずれにしても実用で300km以上の距離を走れるのは十二分な性能といえるでしょう。
※kWh当たりの電費は発表値からの推定です。

超高速充電とV2Lに対応

急速充電については、400Vと800V、両方のインフラをサポート。400Vの充電器(日本で普及しているチャデモ1.2規格までの充電器など)に繋いだ場合、車両側で800Vに昇圧して充電するシステムは「世界初の特許技術」としています。

グローバルのニュースリリースでは「350 kWの充電器を使用すると、IONIQ 5はわずか18分で10%から80%まで充電できます」と強調されていますが、残念ながらこれは『IONITY』や『Electrify America』が350kW出力の急速充電網整備を進めている欧米での話。仮に IONIQ 5 が日本に導入されたとしても、この性能を発揮できるチャデモ充電網は整っていないのが実状です。

最大3.6kWの外部給電(V2L=Vehicle to Load)機能を備えているのも、新しく登場した電気自動車ならではの大きな特長といえるでしょう。詳細は未確認ですが、V2L用のポート(コンセント)は、車内2列目シートの下と、車外の充電口にも用意されるようです。ちなみに、日本が誇る日産リーフはV2Lを行うには別売りの専用機器が必要で、コンセントはありません。また、今年後半にデビューするアリアにもV2L用ポートは装備しない予定と聞いています。アウトドアレジャーへの思いをかき立てるCUVやSUVといったEV車種ではとくに、今後、ぜひV2L機能を標準装備して欲しいと感じますし、そのあたりをきちんと対応してきた現代自動車、IONIQ 5 はかなり素敵だと感じます。

価格は500万円程度〜?

YouTubeのページに欧州各国のユーザー向けにオンライン予約ページへのリンクが紹介されていました。試しにアクセスを試みましたが、Not found のエラーになってしまいます。唯一アクセスできたオランダ向けサイトの説明によると、ワールドプレミアの直後に特別限定版の IONIQ 5 プロジェクト45 予約サイトを公開したものの、アクセスが集中して一時的にクローズしているとのこと。

発表を見て、エクステリアデザインを含めて「かなり魅力的なEVじゃないか!」と感じましたが、欧州ユーザーの心にも刺さったようです。ベルリンのギガファクトリーが稼働するであろうテスラや、IDシリーズを繰り出すフォルクスワーゲンなどがひしめく欧州で、今後、どのくらいの人気になるか注目です。

リリースでは価格への言及はありませんでしたが、オランダ向けサイトに限定版 IONIQ 5 プロジェクト45 の価格が示されていました。車両価格が5万8995ユーロ(日本円換算約756万円)、付加価値税優遇などを入れると実質4万7943ユーロ(約614万円)とのこと。限定版の詳細はよくわかりませんでしたが、おそらくロングレンジのAWDでしょうから、スタンダードレンジの2WDは500万円程度〜の価格設定になるのではないかと思われます。価格についても、日産アリアと真っ向勝負、の印象ですね。

日本市場への導入は?

今、現代自動車が日本市場で展開しているのはバスだけで、乗用車は撤退しています。でも、こんなに魅力的な電気自動車が発表されたのに日本では発売されないのは残念すぎると感じます。大きなお世話とは承知の上で現代自動車ジャパン広報部に電話して「日本に導入しないのはもったいないのでは?」と確認してみましたが「今のところ何も決まっていない」というお返事でした。

とはいえ、現代自動車ジャパンでは昨年6月にTwitterに『Hyundai Japan』の公式アカウントを開設。IONIQ 5 ワールドプレミアについてもバシバシ情報発信しています。

今年後半から来年あたり、もしかするともしかするのかも知れません。日本のEV普及にとって最大の課題は車種の選択肢が少ないこと。コンパクトSUVの『KONA』をはじめ、『IONIQ』でますます電気自動車ラインアップの拡充が進む現代自動車に、期待して注目していきたいと思います。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)8件

  1. 日本国内には直接関係ないからなのか、日本法人のサイトには上がっていませんが、下記ニュースについての解説記事をお願いしたいです。

    韓国現代自、EV8万2000台をリコール コストは過去最大規模に
    https://www.cnn.co.jp/business/35167017.html

    1. もりか 様、コメントありがとうございます!現代自動車の電池火災に関するリコールについては別の記事を予定しています。少々お待ちくださいませ。

  2. 何処のメーカーでも日本へ参入する時は、日産や三菱、テスラの様に自前の充電網をしっかりと作って欲しいです。
    これ以上、公共の急速充電器を頼るのは無理です。
    上記以外、EV車の各販売店様へ小言です。
    売った店全部に急速充電器設置してないですよね。やる気を感じられません。
    現代自動車はチャンスです。
    後参入のこれらEVメーカーを出し抜く好機です。

  3. 寄本様、いつも楽しく拝見させてもらってます。
    文中、気になったのですが「今年後半にデビューするアリアにもV2H用ポートは装備しない予定」とあります。この時のV2Hポート→V2Lポートの誤りではないかと思いますがいかがでしょうか。
    またこちらは判明していればよいのですが当該車両はCHAdeMO規格を使ったV2X(V2Gと同義)に対応はしているのでしょうか?

    1. ぽたて部長 さま、ご指摘ありがとうございます。

      2カ所タイポしてました。失礼いたしました。
      修正しました!

      発表されているIONIQ5のQC規格は欧州コンボですね。たしかヒョンデはIONITYにも出資してたはず。従って、欧米モデルではV2Hには対応していないと思います。
      日本導入されるとしたら、せめてチャデモ1.2とかの高出力規格対応になるといいですね。

  4. 「V2L用のポート(コンセント)は、車内2列目シートの下と、車外の充電口にも用意されるようです。」これについてですが、詳細は以下のリンクの動画で確認できます。非常に便利だと思います。
    https://youtu.be/5rnvzLmT4-w?t=940

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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