中国海南省政府が2030年以降石油燃料車販売禁止への計画を発表

3月に入り、北京の中国新聞社などが、中国の南部に位置する海南省政府が『海南省クリーンエネルギー車発展計画』を発表。2030年までに省内で石油燃料のエンジン車販売を段階的に禁止することを伝えました。イギリスやフランス政府はすでに2040年以降のエンジン車販売禁止を発表していますが、さらに10年早く禁止されることになります。

中国海南省政府が2030年以降石油燃料車販売禁止への計画を発表

国家レベルのエンジン車販売禁止にも進展か

日本国内でも、朝日新聞やサンケイビズなどのウェブメディアが「海南省政府が2030年にエンジン車販売禁止」を伝えています。報道の概要を整理すると、3月5日に海南省政府が『海南省クリーンエネルギー車発展計画』を発表。計画は2019〜2030年までを3段階に分けて段階的なエンジン車販売禁止の実現を目指すものです。

第1段階(近期)/2019〜2020
公共サービス分野の公務車、バス、周遊タクシーなどを2020年までに新エネルギー車(NEV=New Energy Vehicle)やクリーンエネルギー車に転換し、全体の模範とする。

第2段階(中期)/2021〜2025
郵便車などを含む小型の物流車やレンタカーを2025年までにクリーンエネルギー車に置き換える。

第3段階(長期)/2026〜2030
個人などに関しては乗用車の厳格な総量規制をったうえで、2030年までに全島で100%クリーンエネルギー車とすることを目指す。

中国では、すでに中央政府も2019年以降に排ガスを出すエンジン車規制をスタートさせて、時期はまだ明確ではありませんが国レベルでのエンジン車販売禁止を見据えた計画を検討していると伝えられています。朝日新聞は3月7日のウェブニュースでも「海南省は全国に先駆けた政策が実施される自由貿易試験区で、国家レベルの規制づくりも進展しそうだ」と伝えています。

省の中心、海口市の高速道路。

海南省政府の公式文書を発掘

海南省は中華人民共和国の南端に位置しており、南シナ海の海洋リゾートとして知られる海南島と、西沙諸島、南沙諸島、中沙諸島など周辺の島々が含まれています。海南島の面積は、九州よりも小さく四国よりも大きい約3万3000平方メートル。2009年に省政府が国際観光都市宣言を行い「中国のハワイ」とも呼ばれています。

大気汚染などは観光地としての発展も阻害します。世界に先駆けてNEVへの転換を目指すため、3月1日には『海南省大気汚染対策条例』を正式に施行、3月5日には話題となっている『海南省クリーンエネルギー車発展計画』を発表した、と、『海南日報』などの中国国内メディアが伝えています。

報道をまとめるだけでは心許ないので、海南省政府のウェブサイトで『海南省クリーンエネルギー車発展計画』について、どのような内容なのか調べてみました。

日本でも官公庁のウェブサイトからひとつの書類を探し出すのはなかなか大変ですが、今回のミッションは中国の地方政府の発表文書。中国語はできないのでグーグル先生の力を借りながら約1時間。目的の発表文書を発掘(笑)することができました。

海南省政府の文書公開ページ
『海南省人民政府关于印发海南省清洁能源汽车发展规划的通知』

全文のワードファイルのダウンロードリンクもありました。中国のサイトからファイルをダウンロードすることには尻込みする方もいるかと思うので、全文ファイルを新たに作成してアップしておきます。中国語でぎっしり30ページ以上。序文から「NEV発展の推進は次世代の海南省のために不可欠の取組だ!」的な、かなり熱い内容になっています。

『海南省クリーンエネルギー車発展計画』(ワード文書 ※中国語)

反対意見もまだ根強い?

一方で、省政府が発表したから住民たちも一枚岩でエンジン車禁止に向かう、というわけでなく、やはり反対意見も根強いようです。政府文書を探している途中、政府サイトからリンクされていた『海南日報』の記事に『エンジン車販売禁止のニュースは真実ではない?』と題したニュースがありました。

性急なエンジン車禁止のニュースに住民の懸念が広がっているという記者の質問に対する州環境省職員の「海南省が3月1日に燃料車の販売を禁止し始めたというニュースは正しくない。実際には、自動車所有の実態、新エネルギー自動車の総合的性能、および充電インフラの建設を包括的に評価しながら、販売禁止までのスケジュールを科学的に策定する」という回答を紹介しています。

もっとも、その数日後、3月5日に発表されたのが『海南省クリーンエネルギー車発展計画』なので、2030年にエンジン車販売禁止とすることは、海南省の本気宣言、と解釈できます。

海南省、そして中国政府が本気であることはもう間違いないでしょう。世界のEVシフトが、ますます加速していきそうです。

(寄本好則)

【参考記事】
『各国のガソリン車・ディーゼル車販売禁止の状況』(2017年8月20日)

この記事のコメント(新着順)1件

  1.  ガソリン車の販売を禁止すると、反発が大きいので、私がガソリン車を排除しようとするならば、ガソリン車を禁止するのではなく、ガソリンスタンドの営業並びに、給油行為を禁止します。
     ガソリンスタンドを禁止するだけだと、闇スタンドが流行りそうなので、給油行為自体を禁止しておきます。

     少しずつエリアを広げていけば、結果的に便利な移動手段となったEVが主な移動手段として普及していきます。
     ガソリン車に乗りたい人も、遠くのガソリンスタンドまで行けばガソリン車に乗れるので、そこまで反発はないでしょう。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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