現代自動車が電気自動車用プラットフォーム『E-GMP』を発表〜欧米メディアも高評価

現代自動車グループは12月1日、これから市場に投入する電気自動車(EV)に採用する新しいプラットフォーム『E-GMP』を発表しました。現代自動車グループはE-GMPをベースに、2025年までに23モデルのEVを導入、世界で100万台の販売を目指します。

現代自動車が電気自動車用プラットフォーム『E-GMP』を発表〜欧米メディアも高評価

セダン、CUV、SUVと幅広い車で使用可能

現代自動車グループ(現代自動車、起亜自動車)は2020年12月1日にオンラインで開催したイベント『E-GMPデジタルディスカバリー』で、これからの電気自動車(EV)の共通プラットフォームになる『E-GMP(Electric-Global Modular Platform)』を発表しました。

さらにE-GMPをグループの中核技術と位置付け、2025年までにこのプラットフォームを使ったて合計23モデルのEVを市場に投入し、100万台を販売する計画も明らかにしました。この中には、2020年8月に現代自動車(ヒュンダイ/Hyundai)が立ち上げた新EVブランド『Ioniq』から来年以降に発売予定の『Ioniq 5』『Ioniq 6』『Ioniq 7』や、起亜自動車(Kia Motors)が2021年に発表予定のEVなどが含まれています。

【公式ニュースリリース】
Hyundai Motor Group to Lead Charge into Electric Era with Dedicated EV Platform ‘E-GMP’(2020年12月1日)

E-GMPをベースに開発される車は、セダン、クロスオーバー・ユーティリティー・ビークル(CUV)、スポーツ・ユーティリティー・ビークル(SUV)など多様な車種になる予定です。

現代自動車グループの車両開発センター(Vehicle Architecture Development Center)のFayez Abdul Rahman上級副社長はE-GMPについて、次のように述べています。

「E-GMPは私たちの最先端の技術を結集した、長年にわたる研究開発の集大成です。私たちのBEVのラインナップは新しい革新的なプラットフォームによって進化し、強靱になっていくでしょう」

現代自動車グループが自信を込めて発表したE-GMPの発表内容はメディアにも魅力的に映ったようで、InsideEVs(2020年12月1日付)は、「プレゼンテーションは非常に有望で、競争力のあるものだった」と評価しています。

いったい何がそんなに良かったのでしょうか。

モーターやバッテリー、インバーターなどがセットに

E-GMPがどんなものなのか、見ていきましょう。

まず、発表されたE-GMPは細かな基本性能が明確になっていました。通常、プラットフォームというと車の骨格のようなもので、細かな仕様は車種によってバラツキがあるものです。

けれどもE-GMPは、バッテリーやモーター、インバーター、充電器などを組み込んだ状態での性能を明らかにしています。ざっくり言えば、これだけで走り出しそうなイメージです。

以前から、EVになればベースの車体の上には何を載せてもいい、という話はありますが、それが現実になったようなイメージでしょうか。昔はラダーフレームの上にポコっと車体の“側”を載せたような車もありましたが、今は衝突安全の関係もあってそんな乱暴なことはなかなかできません。でもE-GMPは衝突安全まで考慮していて、“上にポコ” っていうEVがほぼ実現可能になっているのかもしれません。

現代自動車グループはニュースリリースで、E-GMPはプラットフォームをモジュール化、標準化したことで迅速かつ柔軟な開発が可能になったと強調しています。この一文も、“上にポコ” っていうイメージを裏付けているように思います。

もちろん、最終的には実車を見ないとですが、仕様が具体的で、なんとなく期待できる雰囲気を醸し出している気がしました。あ、これは個人の感想です。

ラミネート式バッテリーを搭載か

ではE-GMPの基本性能はどんなものなのでしょう。

まず動力性能は、最高速度260km/hで、0ー100km加速は3.5秒未満と発表されています。なんというか最近のEVは、最高速度は制御することがあるので別ですが、0-100km/h加速は3秒台というのが標準になってきたのでしょうか。とんでもなく出足がいいのは間違いありません。

駆動形式は、基本的に後輪駆動です。現代自動車グループはニュースリリースでも触れているように、エンジン車では前輪駆動が中心でした。でもE-GMPでは後輪駆動にし、追加で前輪にモーターを設置することで全輪駆動にもなるようにしています。

後輪駆動をベースに全輪駆動にするのはテスラをはじめ先行事例はあるのですが、改めて、車の基本的な運動性能を上げるなら後輪駆動が理にかなってるし、EVになることで原点回帰していくんだなあと思いました。前輪が自由になれば、取り回しもラクになります。

バッテリー搭載容量は明らかにしていませんが、従来のリチウムイオン電池に比べてエネルギー密度が約10%アップし、WLTPサイクルで500km以上の航続距離を確保するとしています。バッテリーの形状は「pouch type standard cells」とあるので、リーフのようなラミネート構造のものと思われます。調達先は公表していません。

ただ、2020年12月2日付のロイター通信の報道は、現代自動車グループの研究開発部門の責任者であるAlbert Biermann氏が、「独自のバッテリーを作る必要はないし、SKイノベーションやLG化学を含むサプライヤーとの協力関係には満足している」と語ったことを伝えています。

システム全体のエネルギー効率については、パワーインバーターに炭化ケイ素(SiC)を使った半導体を採用したことで2~3%向上させることができたそうです。また永久磁石式のモーターは、従来のものより最大70%速くなる可能性があると述べています。

トランスミッションの形式は公表されていないものの、SAE(自動車技術者協会=Society of Automobile Engineers)は2020年12月2日付のWEBニュースで、モーターの速度アップを考えるとシングルスピードになると予測しています。

この他にもSAEは、E-GMPのユニークな部分として、ホイールベアリングとドライブシャフトを統合した「統合ドライブアクスル(IDA)」という車軸になっていることを挙げています。ニュースリリースによれば、このような形状は世界初です。

現代自動車グループは、新しいアクスルや、5リンクのリアサスペンションなどによって乗り心地やハンドリング性能が向上するとしています。と言ってもIDAについては簡単な説明しかありません。実際のどんな形状になっているのか、どのくらい変わるものなのか、早く乗ってみたいですね。日本に入ってくれば、ですが……。

急速充電は400Vと800Vのデュアル対応で、V2Lにも対応

充電性能は、ユニークで満足できる印象です。

E-GMPは標準仕様で800V/350kWの急速充電器に対応します。ポルシェなどが採用している出力です。

ただ、現状では350kWの充電インフラが整っていないので、モーターとインバーターを制御することで400Vでの充電時には内部で800Vに昇圧して充電するシステムになっているそうです。現代自動車グループによれば、追加コンポーネントなしで400Vと800Vの両方に対応した充電システムは、世界初だそうです。

現代自動車グループは、すでに欧州のIONITYに投資をしてきています。つまり、欧州メーカーと歩調を合わせて高出力充電インフラの構築を目指しているのでE-GMPが350kW対応になるのは自然な流れと言えますが、CHAdeMOの高出力対応がなかなか進まない日本から見ると、また先に行かれてしまってるなあ……と、ちょっと暗澹たる気持ちになってしまいます。

【関連記事】
韓国・現代自動車と起亜自動車が欧州充電大手「IONITY」に参加(2019年9月30日)

E-GMPは、V2L(Vehicle-to-Load)にも対応しています。最大出力は3.5kW。110Vと220Vのいずれにも対応可能です。ニュースリリースには、家庭用エアコンユニットとテレビの電力を24時間供給できると書かれています。確かに容量があればこのくらいはいけるのでしょう。欲を言えば、V2LだけでなくV2Hにも対応してほしいところですが、ニュースリリースに記載はありませんでした。

さて、そんなわけで、韓国からも黒船が本格的に出港しそうです。といってもこの黒船、日本を素通りする可能性が高いと思うので、国内市場への影響はないかもしれません。でも欧米は違います。

ヨーロッパで、日本メーカーが年間1万台のEV販売を目指すとか、プール制でCO2排出量基準未達の罰金を回避するとか、いろいろと細かいことをしている間に、お隣の国では本格的にEV化を目指すようになってきたようです。小手先ではなく、本腰を入れています。

これを横目に、日本がどう動くのか。もしかしたら対岸の火事、馬耳東風ということかもしれませんが、少しは気にしてくれるとおもしろいことが起きそうなのになあと思う、師走の空の下です。師匠も走る12月ですが、私たちの愛する自動車メーカーはどこに向かって走って行くのでしょうか。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 韓国メーカーは日本市場ではコストパフォーマンスにかかわらず、どうしても販売難しい面があるでしょうね。
    どうせなら、EV出遅れている日本のメーカーにOEM供給でもしたら面白そうです。韓国は近いですから。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。「Yahoo!ニュース 特集」などで災害対応や司法の問題などについて記事を執筆中。また原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に「ハイブリッド」(文春新書)、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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