韓国「SKイノベーション」がアメリカの大規模電池工場で起工式を開催

ハンガリーなどに続きアメリカでも大規模電池工場建設を発表していた韓国の財閥系企業「SK Innovation」が、3月19日、アメリカ・ジョージア州のコマース市で電気自動車用バッテリー生産工場の起工式を開催したことを3月20日付けのプレスリリースで発表しました。この工場は「電気自動車市場最大の激戦地のひとつであるアメリカで、重要な橋頭堡の役割を果たす」としています。

韓国「SKイノベーション」がアメリカの大規模電池工場で起工式を開催

プレスリリース
『急成長する米国電気自動車市場に対応。EV市場の前線基地・ジョージア工場の起工式開催』(韓国語)

以下、発表の内容をお伝えします。

アメリカのキーパーソンがSKへの感謝を表明

この日の起工式には、ウィルバー・ロス米商務長官、ブライアン・ケンプ ジョージア州知事など米国連邦政府と州政府関係者、また韓国政府関係者やチェ・ジェウォンSKグループ上級副社長、キム・ジュンSKイノベーション総括社長などのSK経営陣をはじめ、顧客や関係者など200人余りが参加しました。

チェ・ジェウォン上級副社長は「SKの技術力と事業推進力を信じてくれた世界の自動車メーカー、そしてジョージア州の協力のおかげで、起工式を迎えることができた。この工場の起工式は、電気自動車産業の発展とともに韓米経済協力を強化する契機となり、アメリカと世界の自動車史に刻まれる出来事となるだろう」と挨拶。

ウィルバー・ロス商務長官は「エネルギーやケミカルで世界のリーダーであるSK Innovationが電気自動車用バッテリーをここで生産することは、アメリカの経済に新たな活力をもたらすだろう。大統領に代わってSKと地方政府関係者に感謝する」と歓迎。ジョージア州知事のブライアン・ケンプ氏も「ジョージア州史上最大規模の投資が実際に動き始める今日は、住民にとって意味のある日だ」と、SK Innovationへの感謝を伝えました。

2020年までに60GWh/年の生産規模に

コマース市はジョージア州の州都であるアトランタの北東およそ110kmに位置しています。ジョージア州はロッキード・マーティンなど米国大企業をはじめ、インドのタタグループなどグローバル企業が拠点を置き、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラー、 ボルボ、現代・起亜などのメーカー生産拠点が米国南東部にあることから、米国内製造業の拠点として注目度が高まっている立地です。2000人の雇用創出見込みであることなど、計画がもつインパクトの大きさは、以前『EVsmartブログ』でも『韓国SK INNOVATIONがアメリカに大規模電池工場を建設の方向』(2018年12月7日)という記事でお伝えしました。

この工場の敷地は約112万平方メートル(34万坪)と伝えられています。SK イノベーションは、現地法人であるSK Battery Americaを通じて建設費や運転資本として合計で約1兆1396億ウォン(10億ドル)を投資する計画です。

この工場は2021年後半に竣工予定。2022年はじめから量産を開始して、韓国・西山工場の年間4.7GWhの2倍以上、9.8GWhの生産拠点となる予定。さらに、2025年までの累積で約1兆9千億ウォン(16億7千万ドル)を投資して工場を拡大する計画であることを明らかにしています。

SK Innovationでは、電気自動車用バッテリーの需要拡大を予想して、今回の投資を含む中長期的な投資拡大を敢行し、ハンガリーや中国などの工場と合わせて2022年までに60GWh/年規模の生産能力を確保。グローバルレベルの電気自動車用バッテリーメーカーに成長するという目標を掲げています。

60GWhといわれてもピンときませんが、たとえば電池容量100kWhの電気自動車なら60万台、50kWhなら120万台に相当します。ちなみに、ネバダ州にあるテスラの『ギガファクトリー1』は2018年には年間20GWhを達成。近い将来、年間105GWhまで生産量を増やす可能性があることも示唆されています。

ニュースリリースより転載

キム・ジュン社長は「今回の起工式によって、アメリカ、ヨーロッパ、中国など世界の主要自動車市場に生産拠点を設けることになる。SK Innovationのバッテリー事業は世界の自動車メーカーの信頼をより一層厚くすることになる。これにより、SK Innovationバッテリー事業の『ディープ・チェンジ 2.0』(SKグループが推進している業態改革計画)のベースは整った。必ず成功させて企業価値をさらに高める」と強調しました。

中国のBYDやCATL、韓国のLG Chemに加えてSK Innovation。世界の電気自動車シフトに向けて、アジア企業の活発な動きが続いています。

【関連記事】
『BYDは世界最大のEV用電池工場で、トップのCATLを出し抜く構え』(2018年8月2日)
『LG CHEMがポーランドのバッテリー工場を2018年より稼働』(2017年11月27日)

(寄本好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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