韓国SK Innovationがアメリカに大規模電池工場を建設の方向

ちょうど1年前、ハンガリーに大規模電池工場を建設すると発表した韓国の「SK Innovation」が、今度はアメリカに大規模電池工場を建設するため、16億7千USドル(1900億円)を投資すると発表しました。現地では2,000人の雇用が生まれることになります。

韓国SK Innovationがアメリカに大規模電池工場を建設の方向

Fred Lambert氏が編集長を務めるEV関連のニュースサイト 「Electrek」 の2018年12月4日の記事をはじめ、いくつかのEV関連ニュースサイトが伝えていますが、SK Innovationはアメリカのジョージア州に大規模電池工場(gigafactory)を建設するため、大規模な投資を行うと2018年11月27日に韓国ソウルで発表しました。前日の取締役会での決定を受けてのことです。(同社公式サイトは韓国語・朝鮮語、英語、中国語で書かれていますが、このニュースは韓国語・朝鮮語版にしか掲載されていません。)

SK Innovationが大規模電池工場の建設を予定しているジョージア州の位置関係。SK Innovationの今回のニュース・リリースより転載。
SK Innovationが大規模電池工場の建設を予定しているジョージア州の位置関係。SK Innovationの今回のニュース・リリースより転載。

同社にとってはアメリカでは初の電池工場で、アメリカ南東部にあるジョージア州ジャクソン郡(Jackson County)コマース(Commerce)に建設されます。生産規模は「9.8GWh/年」です。建設は2019年に始まり、2022年から電池を供給する予定です。CEOのキム・ジュン(Kim Jun)氏は、「『第2の半導体事業』と言われる電池事業で、私たちは意味のある成長を成し遂げ、グローバル・トップ・プレーヤーに成長したい」とその意気込みを語っています。(著者ははじめGeorgiaと英語で読んだ際に「今度はグルジアか」と思いました。世界の電池メーカーはアジアかヨーロッパに工場を建てるトレンドがあるのと、なにせ同社は1年前にハンガリーに大規模電池工場を建てると表明していましたので、しかし、実際はアメリカ南部の「ジョージア州」でした。)

SK Innovationは石油化学産業を中心に成長してきた財閥系企業です。元をたどると、第二次大戦前の繊維企業にその発祥があります。現在では電池の製造をはじめ、情報産業も展開しています。同社では、今回のアメリカでの大規模電池工場も含めると、合計「年産55GWh」の生産設備構築を2022年を目途にめざしています。2018年現在は「年産4.7GWh」なので、4年で10倍を超える規模拡大をめざしていることになります。内訳は:
1. 韓国国内の「西山」に年産4.7GWhで2018年内完成
2. ハンガリーの「コマローマ」に年産7.5GWhで2022年完成予定
3. 中国の「常州」に年産7.5GWhで2022年完成予定
4. アメリカの「ジョージア州」に9.8GWhで2022年完成予定
5. その他におよそ25GWhで、完成時期は未定

ジョージア州は近年、企業が進出しやすい場所として知られています。特に製造業が目立ち、ロッキード・マーティンなどの国内企業だけでなく、インドのタタ・グループや韓国のKIA、ドイツのVWやダイムラー、BMW、そしてボルボなどが操業しています。そうした「供給先」に近い土地で、電池を製造し供給しようと考えています。

夏には、世界トップレベルの電池製造企業である中国のBYDやCATLの動きをお伝えしましたが、LG Chemと並んでそれに続くSK Innovationの動きも、今後さらに活発になりそうです。新しいケミストリーの電池「NMC811」の安定生産が実現するかどうかも気になるところですが、世界の自動車産業が電気自動車に急速にシフトする昨今、電池の供給拡大も喫緊の課題となっています。

(文:箱守知己)

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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