NIOとSVOLTによる噂の円筒形バッテリーコラボ〜まだあらゆる可能性がありうる

9月21日に開催された「2023 NIOイノベーション・デー」で発表されたNIO Phoneに観客が熱狂している中、「自社開発」のセクションでは円筒型バッテリーセルを使った新型バッテリーパックと思われるスライドが表示されました。

NIOとSVOLTによる噂の円筒形バッテリーコラボ〜まだあらゆる可能性がありうる

【元記事】Here’s what we know about the rumored NIO SVOLT cylindrical cell collab: anything is possible by Lei Xing.

円筒形セル開発は着実に進展中?

CEOのウィリアム・リー(李斌)は、「この写真は半年ほど前に撮影したもので、開発は着実に進んでおり、今後適切な時期に詳細を発表する」と述べました。

このバッテリーシステムは、李氏がイベントで説明したNIOのいわゆる「フルスタック開発能力」の12分野の1つですが、スマートフォンのニュースがあまりに衝撃的だったため、話題になりませんでした。

当日披露されたバッテリーパックはカットアウェイモデルで、中の円筒形セルがはっきりと見えていました。このバッテリーパックは李氏が約7ヶ月前の2月24日にホーフェイ(合肥)で開催された2023 NIOバッテリー・パートナー・フォーラムで見せた写真と同一のものと思われます。合肥にあるNEOパークではNIOが自動車や電動パワートレーンを生産しているだけでなく、世界最大のNIOハウス(オーナー専用のラウンジを備えたショールーム)も最近オープンしました。

さらに李氏は、この合肥でBF1と呼ばれるNIOのバッテリー生産工場の建設の第1期工事を開始したと発表しました。加えて、800人以上の優秀な人材を登用して、毎年10億人民元をバッテリーの研究開発に投資することも明らかにしました。

BF1の年間生産目標は40GWhで、これはロングレンジ級のEV 40万台分に相当します。李氏は2022年6月にも、来年発売されるNIOの大衆向けブランド「アルプス」に自社開発のバッテリーを搭載することを匂わせており、アルプスは800Vアーキテクチャを採用しているため充電速度が格段に速いと予想されます。このバッテリーは2024年後半に生産が開始される見込みです。BF1を管理するのは、2022年10月に資本金20億人民元で会社として正式に登記されたNIO電池科技(安徽)有限公司です。

話がそれましたが「自社開発」にカギ括弧を付けたのには理由があります。2023年のNIOイノベーション・デーの1週間ちょっと前に中国メディア36krが、NIOが2018年に長城汽車から独立した中国のバッテリーサプライヤー、SVOLT Energyと合弁会社を設立中と報じました。記事によると、当初の計画ではNIOとSVOLT Energyの両社で合肥から約150km離れた安徽省馬鞍山市にパイロット生産工場を建て、円筒型バッテリーセルを共同開発する予定だったとのことです。

NIOはバッテリーの完全自社開発を断念したのか?本当にSVOLTと手を組んでいるのか?BF1計画は暗礁に乗り上げたのか? 疑問は尽きません。

私がNIOの内部情報筋から聞いたのは、NIOイノベーション・デーで展示された円筒形セルのバッテリーパックは、一部メディアで報じられていた2170セルではなく、間違いなく46〇〇セルとのこと。では、これがSVOLTと共同開発したバッテリーなのでしょうか?情報筋は、「どのような可能性もありうる」と言っていました。(訳注:46〇〇とは、直径46ミリ、長さは色々という意味です)

ひとつ言えるのはアルプス・ブランドの次期800Vプラットフォームでは、より高速充電が可能な46〇〇バッテリーが欠かせないことです。しかし、研究開発がうまくいっておらず、資金が不足しているとのこと。

NIOはBF1用の設備の調達を当面中断し、バッテリーの生産開始を延期したと報じられています。その理由のひとつに挙げられるのが、今年上半期の同社の業績がかなり悪かったことです。そのため、NIOは携帯電話の発売や配送など、他部署にリソースを配分しているようです。

テスラが2020年に開催したバッテリー・デーで4680セルを発表してから3年以上が経ってもまだ量産化できないように、NIOも46〇〇円筒形バッテリーセルを完成させるのに苦労しています。また、EVEのような競合他社も次期BMW Vision Neue Klasse用に46〇〇系の円筒形セルを開発しています。

NIOが来年からの販売を目指す大衆向けブランドアルプスは800Vプラットフォームのため46〇〇バッテリーが必要ですが、そのために安価で大量にバッテリーを生産できなくてはなりません。従って、SVOLTだけでなく他社との協業も含めて、あらゆる可能性を模索する必要があるのです。

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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