テスラは地球を救えるか? 〜 電気自動車社会実現を急ぐためにやるべきこと

電気自動車は「環境に良い」という決まり文句とともにしばしば語られます。「ガソリン車から電気自動車に完全移行すべき」との論説には賛否両論ありますが、今日はイギリスの電気自動車推進派からのメッセージをご紹介します。『CleanTechnica』の記事から全文翻訳でお届けします。

テスラは地球を救えるか? 〜 電気自動車社会実現を急ぐためにやるべきこと

元記事:Can Tesla Save The Earth? by Andy Miles on 『CleanTechnica

「テスラは地球を救えるのか?」というのは「テスラやその他電気自動車が、私達の環境に対する戦争にどういう影響を与えるのか」という内容をかなり簡略化した疑問です。これは戦争なのです。勝って生き残るか、負けて消滅するかの2つの道しかなく、負けた場合を想像することもできません。

私達はより環境に責任を持ち、持続可能な社会を実現するためにできる事はすべてやらねばならないのです。人間の変化とは、希望が持てる良い結末を迎えるために自発的に行われるか、急激に最も不快な方法で強制的にさせられるか、のどちらかになります。その選択は私達自身に委ねられています。

Montage by Andy Miles, CleanTechnica. World image by NASA.

ロケット花火からヒューズを消せ

人間のすべての行動は環境に影響を与えるものですが、私達に必要不可欠な環境を破壊することなく、快適な持続性を保つ選択をすることは可能です。しかし私達が作り出した温暖化により放出されるメタンガスの量、さらにそのフィードバック現象を考えると、惑星を救うにはもしかしたらもう遅すぎるかもしれません。これまでの人間の行動は、ロケット花火にヒューズを取り付けるようなものでした。50年前にヒューズを消すことは可能だったのですが、そうしないことを私達は選び、そして今ではもう遅すぎるかもしれないのです。

それでも私達は皆、大惨事を回避するためにできる限りのことをせねばなりません。そしてあなたが車を運転するのならば、電気自動車はかなり良い選択になります。しなければならない多くの事のうちのたった1つですが、純電気自動車に切り替えるのは理想的であり、不可欠でもあります。さらに化石燃料産業を早急に終わらせて、100%再生可能エネルギーを使用することも必須です。さらに森林伐採を止め、ものすごい勢いで木を植えて、増え過ぎた二酸化炭素を吸収するのです。

しかしこういう話は他の記事に任せましょう。私がこの記事で取り扱うのは「電気自動車がどのように世界を救えるのか」に終始します。そのためには私達の今日までの足跡と、これからの道筋を見ていく必要があります。それが次の問いかけです。

内燃機関エンジンが滅亡する日

テクノロジーの発達はどの分野も似たような過程を通ります。大企業がタイプライターを大量生産していた時、彼らはワードプロセッサー、そして個人向けコンピューターを後に生み出す電子工学テクノロジーの発展にまったく気付いていませんでした。タイプライターの存在はこれらの新製品が市場に現われるよりもかなり以前に、トランジスター、プリント基板、集積回路が発明された時点で消える運命にあったのです。

車両用内燃機関エンジンの最後が決まった瞬間は、リチウムイオン電池が発明された時でした。それ以前の選択肢は重い鉛蓄電池しかなく、電気自動車を遅くて扱いにくいものにしていました。リチウムイオン電池は車両を動かすのに必要なエネルギー密度と、内燃機関エンジン車よりも良いパフォーマンスを車に与えました。

タイプライター、フィルム使用のカメラ、テープレコーダーがそうだったように、代替テクノロジーが存在しつつも完全に発達していない期間、というのが存在します。(リチウムイオン電池搭載の)電気自動車に関しては、出現したのが2009年前後でした。その頃、テスラ、三菱、日産、ルノーが電気自動車用の計画を立てていました。2010年までには実用性のある電気自動車が出てきました。2010年に、EUは充電インフラ対策と規制の必要性を議論し始めました。そして2014年、法制化がなされました。その年、UKでは急速充電ネットワークの工事が行われていました。2019年現在、世界中で急速充電器は数を増やし続け、電気自動車革命はフルスイングで進んでいます。新しいものが拡大している間に、既に古いテクノロジーは死にかけてセールスは落ちてきています。

私達の政治家は今すぐ挿げ替えられる必要のある能なしばかりで、変化の速度は遅すぎます。

しかし、地球温暖化と温室効果ガス削減の必要性により、政府は電動化と化石燃料の使用禁止へのサポートをせざるを得ません。古いテクノロジーがもはや売れなくなり、ガソリンスタンドが一つまた一つと潰れ始め、電気自動車が(車として)購入できる唯一の選択肢になるのにそう時間はかからないでしょう。もうすぐ、古い技術を使った大気汚染をする車両が路上走行禁止になるでしょう。排気ガスが、タバコと同じくらい「反社会的」なものになるのです。

なぜ電気自動車の方が環境に良いのか

よく言われるのが、生産過程において電気自動車の二酸化炭素排出量は高く、それに乗ることは二酸化炭素を車の排気管から工場の煙突に移動しているだけなので、環境への解決策にならないという理屈です。これについては多くの研究がなされ、内燃機関車よりも電気自動車の方がクリーンな存在であることが示されています。

その理由としては、発電所の方が車にある少量のガソリンやディーゼル燃料よりもエネルギーとしての効率が良いからで、さらに車体を動かす電気モーターは化石燃料を使ったエンジンよりも3倍効率が良いのです。そして発電所からの排出は、無数に走る個人車両よりもコントロールがしやすいのです。

実際のところ、迫害を受けつつも電気自動車を買おうとしている人達は、自然と100%再生可能エネルギーに寄り添い、迫害から逃れようとします。場所によって充電ネットワークプロバイダーは100%再生可能エネルギーで生成された電気を供給すると宣伝しており、これは大きなセールスポイントになっています。多くの人は家で充電する際、太陽光発電パネルを取り付けるか、100%再生可能エネルギーを提供する会社を選んでいます。私の場合も電気自動車に乗り、完全に100%再生可能エネルギーのみを使用しています。

内燃機関車を作った方が電気自動車よりも排出する炭素が少ないという意見がありますが、この意見が出る前提に私はまったく同意できません。内燃機関車のエンジンとドライブトレインは、電気トレインに比べて非常に複雑な上にスチールでできており、二酸化炭素排出量はより高いものになります。電気自動車全体を見た際に付け加えるべきものはバッテリーのみとなりますが、これはガソリンがフルに積まれたタンクに相当する部位で、この部分は製造されて終わりではなく、車が走り続ける間ずっと一緒に稼働し続けます。電気自動車の方が二酸化炭素排出量が高くなるという意見は、バッテリー付きの電気自動車を空のタンクを積んだ内燃機関車と比べるから出てくるのであり、これは誤解を招くものです。

ガソリンは車の中で燃やされる前から、精製過程及び配送される間に、大量の二酸化炭素排出をします。さらにガソリンを生成する時に、深刻な量のメタンガスが漏れ出します。内燃機関車が寿命を迎えた際には、ガソリンタンクは車両の他の部分と共に廃棄物処理場行きになりますが、電気自動車用バッテリーは容量が80%以下になった際には車体から取り出され、(家庭用)蓄電池などとして数十年再活用されます。そしてようやく使い物にならなくなった時には、その95%がリサイクルされてまた使用されるのです。

ガソリンはディーゼル燃料を使用するタンカーによって運送されます。一方電気はワイヤーで運ばれ、さらにその気になれば、化石燃料をまったく燃やすことなく作る事が可能になります。車の寿命が来るまでに使用するガソリンに伴う二酸化炭素排出量を考えると、内燃機関車は使用前の電気自動車よりもよほど大量の二酸化炭素排出を避けられません。

電気自動車はより長く付き合える友人

もう一つここで書いておきたいのが、内燃機関車の寿命は20万マイル(32万km)ほどで、その後はメンテナンスにお金がかかりすぎるためスクラップされます。テスラのドライブトレインは100万マイル(161万km)使用できるようにデザインされており、よって電気自動車は寿命がより長いということになります。バッテリーは30万マイル(48万km)ほど走って元の航続距離の80%の容量が残るようになっていますので、この航続距離が適切な長さであれば、これもまだまだ使えます。またこの時点で新しいバッテリーに交換したとすると、さらに30万マイル(48万km)走れることになります。計算上、電気自動車は平均して内燃機関車の倍の寿命を持つので、二酸化炭素排出量を比較する場合、1台の電気自動車に対して少なくとも2台の内燃機関車を考えねばならず、さらにリサイクルに関わる二酸化炭素排出量も考慮に入れる必要があります。

よって一刻も早く、すべての内燃機関車を路上から外し、電気自動車に代えなければなりません。

さてここまですべて前向きに書いてきましたが、まだ「テスラが地球を救う」という文脈にまでは達していません。

電気自動車は20年遅すぎた?

2018年、UKでは237万台の車両が新しいオーナーの元に登録されました。年末の調査で、UKの路上を1年で3,790万台が走ったとされており、よって新車は車両全体の6.25%となります。もしもこのうち10%のセールスが純電気自動車だったとすると、その割合は全体のたった0.625%ということになります。UK内ではどの政府だろうが、いつやろうが、すべての内燃機関車販売を禁止しても、車両全体の7%以下の影響しかないのです。

同じ割合で新しい車が登録され続け、古い車がスクラップされ続けた場合、3,790万台すべての車両が純電気自動車に代わるのに16年かかります。内燃機関車は20から30年は走れるので、この16年を優に超えます。そうなると破滅的な気候変動を食い止めるために必要な行動をとるために残された時間が10年しかないので、明らかにこれでは間に合いません。

政府がすべき事は?

そういうわけで、無理です。今のままではテスラは世界を救えないどころか、交通産業という枠組み内の問題すら解決できません。しかし、だからこそ必要な変化に対して先陣を切れるのかもしれません。次の10年で完全に電気自動車に移行するには、政府の先導が非常に重要になってきます。それは次のようなものになるでしょう。

1. 廃車計画により、年間34万台以上のエンジン車を路上から消す。

2. 今すぐにでも始める必要性があるので、内燃機関の新車販売を来年から禁止する。これにより選択肢は電気自動車か中古車になるので、環境汚染をする内燃機関車が新しく増える事はなくなります。同時に、ほとんどの新/中古電気自動車購入者に補助金を出す。そうでなければ経済的に皆が車を買えません。

3. 所持コストに関して内燃機関車をより高く、電気自動車をより安くできるように、内燃機関車に不利なガソリン税を含む税制の確立をする。

4. 企業に電気自動車改造キットを作らせる。単純に自動車の視点から見ると理想的ではないが、内燃機関車を路上から消すという目的には合っています。捌き切れない在庫を持つディーラーや、良い車のオーナーは改造を選択できます。そのようなキットに取り組んでいるイギリス企業に関するレポートを読んだのですが、既にクラシック・カーの改造用に使えるそうです。規模の経済が達成されれば、値段も下がるでしょう。

5. 改造産業及び自動車オーナーにも補助金を出す。

6. 国として充電インフラ網の整備計画・導入をする。さらにすべての商業施設に追加費用なしでキャッシュレスの支払いができるユニバーサル・アクセスを強制する。

7. すべての有機ゴミが適切に処理されバイオ燃料になるようにする。さらにすべての交通機関用燃料が非化石燃料であるようにする。同時に、燃料生産のために食料用ではない農作物の作成と、主要農業地ではない場所でもそれを生産できるよう農業政策を新しく整える。

8. 車両エンジンで化石燃料を燃やすことを違法にする。

9. 歩道を広くして中心街は歩行者のみが入れるようにする。都市におけるすべての公共交通機関を電気にし、無料にして車の乗り入れを禁止する。

10. 都市間鉄道を国有化して助成金を出し、車に代わる安くて信頼できる乗り物にする。その際鉄道サービスもすべて電気にする。

以上、これはUK用の提言ですが、この基本はどこにでも適用できるはずです。地球を本気で救いたいならば、気弱になってはいけません。これが第三次世界大戦であるかのように振る舞う必要があり、事実そうなのです。

他の戦争と違う点はただ一つ、敵は私達自身であり、大なり小なりすべての国がその包囲網の中にいるのです。

(翻訳・文 杉田 明子)


5 thoughts on “テスラは地球を救えるか? 〜 電気自動車社会実現を急ぐためにやるべきこと”

  1. 全くの同意見です
    ハワイに住んでいますがゴミ問題や
    排気ガス、ディーゼルエンジンの旧式型バスやトラックの多くが未だに走行しています。人口増加に伴いこれらの環境問題も早期に解決しなければいけない。
    美しい自然や綺麗な空気は地球上全ての人の共同財産です。
    責任をもった企業や個人の行動を願うばかりです。私自身もできる所から始めていますが国の環境対策がとても大事
    SNS等を利用して多くの人々に方向性を早期に示す必要があるでしょう。

  2. そもそもホントに環境に優しい生活したければ、アーミッシュのような自給自足の生活をしないと偽善。電気自動車だろうが、世界中から資源とエネルギーかき集めてかなり環境壊しながら作って走ってるんだから、50歩100歩。
    希少資源が大量にいる時点で詰んでいる。

    1. タカモトクニナガ様、コメントありがとうございます。

      >世界中から資源とエネルギー、希少資源

      人間が経済活動をしていくうえで資源やエネルギーは必要なものですね。それをいかに減らすか、という議論なのだと思います。なんでも「偽善」の一言で片づけられるほど、世の中は単純ではないのではないでしょうか。例えば加工食品なども辞めるべきですよね?

      あくまで、ガソリン車より、資源やエネルギーを少ししか使わないという観点から、著者は電気自動車に注目しているのだと思います。

  3. 3. 所持コストに関して内燃機関車をより高く、電気自動車をより安くできるように、内燃機関車に不利なガソリン税を含む税制の確立をする。

    これに関しては絶望。今やEVは補助金減らされて工場が操業停止したり、アメリカでは燃料税の代わりの税金を新たに課す州があるそうです。
    そもそもコスト高い物を無理やり普及とか只の宗教。コスト高い時点でどっかでエネルギー大量消費で環境破壊してるでしょう。
    自分としては環境保護の方法は特定の方法を神格化して手段を目的化するのはNGだと思います。
    やり方としては環境破壊の度合いに完全に比例したコスト負担させる仕組みだけで良いと思います。特定の方法ばかり肩入れするのはカルト。

    1. タカモトクニナガ様、

      >EVは補助金減らされて工場が操業停止したり、アメリカでは燃料税の代わりの税金を新たに課す州

      まずこちらですが、補助金が減ったのは中国とオランダとアメリカ。工場が停止しているのは中国ですが、EVのトップを走るテスラと日産は工場はフル稼働しており、納車台数はどんどん増加しています。
      燃料税の代わりにEV登録税、というのはあります。日本の自動車税と同じ仕組みの税金ですね。
      ところで、この二点が「絶望」ということの反証になっていないと思います。実際に補助金が減少しているのにも関わらず電気自動車の販売はどんどん増え続けているし、EV登録税の登場にも関わらず燃料税を含んだ化石燃料車の燃料コストより、電気代とEV登録税を足しても全然電気自動車のほうが安い、という事実は変わっていないように思います。

      >コスト高い時点でどっかでエネルギー大量消費で環境破壊

      どのような商品でも、コストは最初は高いものです。60インチの液晶テレビはシャープが最初に発売したのですが、その時の価格は100万円でした。いまはざっと見て10-15万円程度まで下落しています。そこで「エネルギー大量消費で環境破壊」というのは、ロジックが飛躍していると思います。これから大量生産に移っていくにつれ、コストはどんどん下がると思われます。
      そもそもこちらの記事は電気自動車社会を実現するというのがテーマですが、ガソリン車と電気自動車では、明らかに部品点数が異なります。点数が多ければ多いほど、多くの手間がかかり、価格も高くなるはずですよね。

      >環境破壊の度合いに完全に比例したコスト負担させる仕組み

      こちらは賛成です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です