勝負は2022年から?〜マツダ2021年3月期決算説明会で示された電動化の現実

マツダが、2021年3月期 第3四半期決算を発表。2030年までに生産する全てのクルマを電動化する戦略などについて改めて解説しています。公開されている発表資料から、いくつか気になる点をチェックしておきます。

勝負は2022年から?〜マツダ2021年3月期決算説明会で示された電動化の現実

【関連情報】
マツダ決算資料/プレゼンテーション資料(PDF)

グローバルの販売台数は前年比16%減

先だって、初めての電気自動車となる『MX-30 EV』を日本でも発売したマツダが、2月4日、2021年3月期 第3四半期決算を発表。説明会を実施したことが報じられています。決算発表資料はウェブ上に公開されています。今回の決算発表では、それまで400億円程度の赤字としていた業績予想を、販売促進費や固定費などのコスト削減によって「収支均衡」と上方修正したことが注目され、2月5日の国内株式市場ではストップ高になったというニュースも飛び込んできました。

EVsmartブログは経済評論するメディアではないので、ことに「電動化」という観点から、いくつか気になったポイントをチェックしておきます。

まず、グローバル販売台数。3四半期累計で93万台。前年同期比では17万6000台、約16%の減少であったことが示されています。世界中を巻き込む新型コロナ禍の影響で、販売台数が落ち込むのはさもありなんとして。改めて注視しておきたいのが、市場別の販売台数です。3四半期累計の台数をピックアップしてみます。

日本=11万4000台(12.3%)
北米=29万2000台(31.4%)
欧州=13万5000台(14.5%)
中国=17万8000台(19.1%)

日本国内市場の台数割合はほんの12%程度でしかありません。これはマツダに限ったことではなく、ホンダは欧州でやや苦戦といったように市場エリアによる強弱の違いはあるものの、トヨタや日産、ホンダといった自動車メーカーにも共通で、自動車メーカーがグローバル企業であることがわかります。

そして、日本よりも販売比率が高い欧州や中国、アメリカで電気自動車普及が加速しているのはすでにさまざまな記事でお伝えしている通りです。Googleで「欧州 電気自動車」「中国 電気自動車」「アメリカ 電気自動車」など検索してみてください。たぶん、EVsmartブログの記事もいっぱい上位表示される、はずです。

MX-30 EVモデルは欧州で累計1万台を販売

欧州の状況説明の中で強調されているのが、「MX-30(EVモデル)販売は堅調に推移」しており「12月末時点で累計約1万台を販売」したということです。とはいえ、MX-30 EVモデルの日本発売を伝える記事中でもご紹介したように、欧州の電気自動車販売ランキングでは2020年11月に2640台で19位に初登場ランクイン(統計は20位まで発表)したものの、12月にはランク外となっており、年間累計台数でもランク外なので、どのくらい売れているのかは知りませんでした。

検索してみると『CARSALESBASE』というサイトに、ヨーロッパでの販売台数が紹介されていました。

MX-30 EUROPE SALES 2020

2020台数
June30
July1
August139
September1607
October1906
November2671
December3123

2020年の合計で、9477台となっています。1000の位を四捨五入して「約1万台」ということでしょう。

EV SALES』というサイトによると、欧州での電動車(電気自動車とプラグインハイブリッド車)の販売台数ランキングでは、20位のSmart fortwo EV が1万9537台。2020年のMX-30は3月から先行予約を開始したものの、実質8月から約半年間のデリバリー台数です。仮に、2021年は月間2000台ペースで売れたとして、年間で2万4000台なので、今年のランキングでいえばBMW i3の16位くらいに食い込むことになります。月間2500台ペースなら、9位のキアあたりと競り合う位置に浮上しますね。

ただし、欧州各社などから新型EVが続々と投入されていることもあり、そんなには売れないだろうな、という気もします。

2021年の罰金は回避できそう、とのこと

今回の決算発表とは話がずれますが、マツダは欧州のCO2排出量規制で大きな罰金を課せられるのではとする予測がありました。でも、このMX-30 EVの市場投入と、ひとまずはハイブリッド車で基準をクリアするトヨタとの「オープン・プール」によって、2021年の罰金は回避できるのではないかという見方が、日経の報道などで示されています。

とはいえ「2021年比で37.5%のCO2削減」を決めている2030年に向けてますます厳しい規制基準になっていくはずなので、これで安心ということではありません。

「2021年比で37.5%のCO2削減」は、販売台数の多くを電気自動車にしないと達成することはできないレベルであって、欧州はもとよりGMなどアメリカのメーカーも急速にEVシフトしている理由のひとつとなっています。

軸が見えない「電動化マルチソリューション」

発表の中では、「2050年カーボンニュートラル化に挑戦」すること。そして、かねて発表されている「電動化マルチソリューション」についても説明されました。

「2030年までに生産する全てのクルマを電動化する」というスローガンは結構なのですが、電動化を示すソリューションの図に、なぜ「SKYACTIV-X」や「SKYACTIV-G/D」といったエンジンが入っているのか、私にはちょっとよくわかりません。CO2排出削減=燃費性能向上というのであれば、ただの「罰金回避ソリューション」に過ぎないし、導入済みとされている「HYBRID」を含めて、基準がより厳格化される欧州規制には通用しません。

プラグインハイブリッドは「2022年予定」となんだか気の長い提示になっているし、日本では年間500台の計画でようやく発売したEVが、さらりと「導入済み」となっているのも、いかがなものでしょう。

ロータリーエンジンを活用した「REマルチ電動化技術」というのは、おそらくレンジエクステンダーを想定しているのでしょうが、それも2022年予定。説明の中では「2018年の発表時からほぼ計画通りに進んでいる」と語られたようですが、正直、そんなにのんびり進んでて大丈夫ですか? と感じます。

「次世代EV専用プラットフォーム」(イメージ図)も示されました。でも、具体的なEV展開戦略への言及はなかったようです。資料中に示されているイメージ図も、EV専用開発ではないMX-30のプラットフォームかと思われます。

さらに、かねて「人間中心の自動運転技術」としてアピールしている「Mazda Co-Pilot Concept」は、2025年、つまり5年後に登場する予定とのこと。端的にいって「遅い!」です。

「電動化マルチソリューション」を言葉通りに解釈すれば、電動化を進めるための多様なアプローチであるはずですが、やっぱり、説明図で道路の中心にプロットされている「ハイブリッド」が軸になっているのかなと感じます。ロータリーエンジンのレンジエクステンダーとか、マツダのスローガンである「Be a driver.」を体現したコンパクトなBEVとか、もはや世界の大きな方針となっている「電動化」に向けて、マツダの強みを発揮できる道筋はいろいろあるのではないか、と思うのですが。

それとも、マツダの戦略として世界市場における「本当の電動化の勝負は2022年くらいから」という見立てなのでしょうか。2025年、マツダが世界の自動車市場で勝ち残っていることを願います。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. このままだとアップルカーを作るのは日本勢では無理そうですね…
    (仮に実現するにしても関税の関係でアメリカ工場でしょうけど。そういえばテスラファクトリーは元はトヨタとGMの工場でしたね)
    地元の自動車工場が閉鎖するってニュースがあった時に鬱になりそうな話です。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210127/k10012832731000.html?utm_int=detail_contents_news-link_003
    アメリカでもドイツでもはっきり言ってもろ手を挙げてEV歓迎という世論でないのはわかりますが、それでも目端が利く人はどうせ遅かれ早かれそうなると考えているし
    遅かれ早かれといっても(仮にある程度の仕事がなくなるにせよ)早くしたほうがダメージは少ない

    というか、フューチャーファラデーって破産したとかそういう話を聞いてたのに復活したんですかね?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事