ドイツで電気自動車シフトによって2030年までに「41万人の雇用喪失」予測発表

産業構造が変わると時代に合わない職種は淘汰され、新しい枠組が作り出されます。内燃機関車から電気自動車へのシフトに伴い出てくる雇用喪失に関する研究結果が最近ドイツから発表されました。CleanTechnicaがこれを独自に分析・レポートした記事を、全文翻訳でお送りします。

ドイツで電気自動車シフトによって2030年までに「41万人の雇用喪失」予測発表

元記事:Germany Could Lose 410,000 Auto Industry Jobs By 2030, Claims New Report by Steve Hanley on 『CleanTechnica

衝撃的な報告をしたNPM

ドイツの「未来のモビリティのためのナショナル・プラットフォーム(NPM=National Platform For The Future Of Mobility=政府によって創設された研究機関)」は、将来人々の移動手段が変わるため、とりわけガソリンやディーゼル車の代わりにより多くの電気自動車が生産されるという理由で、今から2030年までの間に国内自動車産業が最大41万の雇用を失うという報告書を出しました。このニュースはロイター、CNBC、ニューヨーク・タイムズなど世界中で大々的に報じられましたが、この背景には何があるのでしょうか。CleanTechnicaは詳しく見ることにしました。

まずNPMというのがどういう機関なのか見ていきましょう。ウェブ上では次のように自らを紹介しています。

NPMウェブサイト
https://www.plattform-zukunft-mobilitaet.de/?lang=en

私達のモビリティは現在過渡期を迎えており、これから数年間で大きな変化が訪れるでしょう。繁栄、成長、技術革新により社会はさらにモバイル型になり、新しいモビリティの選択肢も出てきます。同時に、ドイツ連邦政府のエネルギーと環境政策ターゲットを完遂することが中心課題となります。
この変化に具体的に取り組むため、連邦政府はNPMを招集しました。その目的は様々な交通手段をリンクさせて温室効果ガス・ニュートラルで環境に良い交通システムを構築し、乗客・貨物両方用に効率的、ハイクオリティで、フレキシブル、いつでも利用でき、安全で、トラブルに強く、良心的な価格のモビリティを可能にすることです。

NPMの運営委員会会長であるHenning Kagermann氏は、「私達はモビリティを総体的、クロスモーダル的(※別々の知覚がお互いに作用する現象)に考えています。これはドイツの交通システムが将来環境に優しく、サステイナブルで手が届く価格になりつつも、ドイツが製造国としての競争力を維持できるようにするためです」と言います。

良いですね。目をギラギラさせた急進派ではなく、未来がどのようになっていくのか、そして来るべき変化にどう備えるのかを、人々が分かるように政府が作ったグループです。論理的で説得力があり、偉大な国家を牽引する人達には適切な方法であるように見えます。

過去の研究に基づいた予測

2018年、フラウンホーファー研究機構ドイツ労働市場・職業研究所(IAB)は2030年までにドイツ自動車産業の雇用は急激に減少するという報告を出しました。これらの研究はそれまでに25%の自動車が電気、15%がプラグインハイブリッドになるという予測を根拠にしています。

しかしドイツが交通セクターの排出量引き下げ目標を達成するつもりならば、この予測数値は低すぎます。従って最新の予測では2030年までに30%の新車がバッテリー搭載電気自動車となっています。電動パワートレインは内燃機関パワートレインよりもかなりパーツが少なくなり、自動生産に適しています。

現在、約27万人のドイツ人労働者がエンジンとトランスミッションを作っています。 Handelsblatt によると、NPMは電気自動車への転換によりこのうち8万8千人が職を失うと予測しています。しかし車を作るにはパワートレインだけではなく、他にも多くのパーツや工程が必要になります。下請け業者やサプライヤー、金属プレス加工業者、エンジニアなどもそこに含まれます。最新のNPMの報告書によると、極端な話、モビリティの変化により自動車製造枠単体で24万、産業全体で合計41万人の仕事が危機に瀕します。

これが理由でニュースは大騒ぎしたのです。41万もの雇用喪失! それも最近出てきた奇っ怪な電気自動車とやらのせいで! 王様に伝えなくちゃ! と。現実にはもう少し含みがあります。NPMの予測はモビリティに関するありとあらゆる変化がすべて起こった場合を前提にしており、ライド・ヘイリングやライド・シェアリングのプラットフォーム、自動運転車の増加が含まれています。

上記以外のお話

ドイツ自動車産業協会(VDA)はNPMの分析にまったく同意していません。「先数年で41万の職が失われるという予想は非現実的で極端なシナリオに基づいて出されています」とVDAの常務取締役Kurt-Christian Scheel氏はHandelsblattに話しました。彼はNPMが、ドイツ市場における電気自動車及びバッテリーのほとんどが国外から入ってくると予想したことに疑問を投げかけます。Scheel氏は「これらの予想は適当ではありません」と言います。

しかしVDAも、エンジンとトランスミッションの組み立てに関して雇用がかなり減るという部分には同意しています。NPMの報告が示唆しているのは、新しい雇用機会やビジネスモデルの再構築を見極めるという課題です。HandelsblattにHenning Kagerman氏は「ドイツが自動車生産拠点として強者であり続け、雇用を創出するためには、バッテリー、パワー・エレクトロニクス、燃料電池などの未来のドライブ・テクノロジーに重要な、(車両に)付加価値を付けるネットワークを可能な限り完璧にドイツ及びヨーロッパ内の環境で維持し、製造しなければなりません」と語りました。

フォルクスワーゲンの場合

フォルクスワーゲンは一歩先を行こうとしています。エンジンとトランスミッションの製造業務を縮小する一方で、IT業務を増やして次数年間で6千人のITエンジニアを加えようとしています。

人生で常にあるものは変化です。時に変化は痛いものです。幌馬車産業が崩壊した時に、それまで馬車用スポークを作っていたすべての人がヘンリー・フォードの工場で仕事を見つけたわけではありません。

技術革新に伴う痛みをどうにか最小限にするのに手を尽くしている政府がいる一方、変化に憤慨してただ非難している政府もあります。ドイツはこの2つのうち、より好ましい方であるようです。

(翻訳・文 杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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