カリフォルニア州で電気自動車の市場シェアがハイブリッド車を超えた

カリフォルニア州新車ディーラー協会(CNCDA)は8月14日、2019年上半期の自動車市場の動向をまとめた「California Auto Outlook Vol.15」を公表しました。レポートによれば、カリフォルニア州では乗用車販売が前年に比べて5.6%減少するなど新車市場が緩やかな減少傾向にある中で、電気自動車の市場シェアは前年の4.7%から5.6%に拡大しました。レポートは、2019年の電気自動車販売台数は10万台に届くだろうと予想しています。

カリフォルニア州で電気自動車の市場シェアがハイブリッド車を超えた

【参考】 California Auto Outlook Vol.15(2019年上半期)

このレポートのデータで興味深いのは、電気自動車の市場シェアが2018年にハイブリッド車(プラグインハイブリッド車を除く)を追い抜いていることです。

ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車について、カテゴリー別の登録台数と市場シェアをピックアップしてグラフにしてみました。2019年は上半期だけのデータなので、登録台数は2018年までの数字で比較しています。

電気自動車等の登録台数

グラフはともにCNCDA「California Auto Outlook Vol.15」(Source: IHS Markit)のデータより作成

電気自動車の新車市場シェア

電気自動車のシェアは2016年まで1%台で推移していたのですが、2017年に2.6%になり、2018年には4.7%と倍近くに伸びました。そして2019年の上半期には5.6%と拡大を続けています。同時期のハイブリッド車(プラグインハイブリッド車を除く)の市場シェアは6.8%から4.2%に落ちているほか、プラグインハイブリッド車もそれほど伸びていません。電気自動車の伸びが突出していることがわかります。

日本ではプリウスやアクア、ノートe-POWERなどのハイブリッド車が今でも我が世の春を謳歌していますが、1990年代から電気自動車を市場に取り込む施策を続けているカリフォルニア州では、次の時代への一歩を踏み出したのかもしれません。

でも、これで驚いてはいけません。なんと第2四半期までのテスラの販売台数は、メルセデス、レクサス、フォルクスワーゲン、BMW、スバル、マツダ、キア、ヒュンダイといった面々を追い越してしまっているのです。

主なブランド別カリフォルニア州の乗用車、ライトトラックの新規登録台数
2019年第2四半期2019年上期
トヨタ82621158351
ホンダ60892120749
フォード4649986315
シボレー3444069325
日産2601452927
テスラ1959440085
スバル1967337477
メルセデス1900336848
BMW1810332540
キア1641532488
ヒュンダイ1576630556
ジープ1578930334
レクサス1484129438
フォルクスワーゲン1235323802
マツダ988221037
ラム1057219557
アウディ956018367
ダッジ930218226
アキュラ507610382
インフィニティ33337921
ポルシェ28936561
ボルボ31385889
キャデラック27695314
クライスラー25315243
三菱自動車16764852
ビュイック18493892
ミニ16933695

2019年上半期のテスラの販売台数は40085台で、これより数が多いブランドは、トヨタ、ホンダ、日産の日本勢上位3メーカーと、フォード、シボレーという米ビッグスリーの2社という大御所だけです。EVsmartの読者の方々には、何を今さらと言われそうですが、今のテスラは小規模生産をしている新興自動車メーカーではなく、自動車王国の一角を占める中堅メーカーと言った方がいいようです。株価だけではなく、事業活動に実態が伴ってきたということでしょう。

テスラモデル3のライバルはシビックやカムリ?

プリウスに代表されるハイブリッド車は、原油価格の上昇でガソリン価格が上がった2000年代に、大きく市場シェアを伸ばしました。米国のガソリン価格は長く、1ガロン1ドルが相場と言われていましたが、原油価格が1バレル147ドルに達した2008年頃には、カリフォルニア州などもともと価格が高めだった地域では1ガロン4ドルの大台を超えるのが普通になっていました。(1ガロンは約3.8リットル)

日本で言えば、例えば1リットルあたり120円だったのが、いきなり500円近くになってしまうようなもの。それなりに走行距離の長いアメリカの自動車ユーザーにはたまったものではありません。そんなこともあって、プリウスがかなり売れました。

けれども原油価格が落ち着きを取り戻すと共に、米国での売れ筋ナンバーワンのSUVが復活。同時にプリウスの販売台数も伸び悩みました。

雰囲気が一変したのは、個人的な印象ですが、2010年頃だったように思います。2009年にGMが破綻し、GM-トヨタの合弁事業が解消されたことで閉鎖されていた巨大生産設備「NUMMI」をテスラが購入し、大きな注目を集めたのがきっかけのひとつになったのは間違いありません。

そして今、カリフォルニア州に限った話ではありますが、テスラモデル3が販売台数で3位になりました。モデル3より上位にくるのは、ホンダシビックとトヨタカムリだけ。この2台とも、カリフォルニア州では長らく上位を占める定番のモデルです。

モデル3の下を見ると、なんとホンダのアコードが続きます。これもまた、カリフォルニア州ではトップ争いの常連モデルです。その次にトヨタカローラ、フォードFシリーズときて、一時期は人気になったプリウスは17位になっていました。

カリフォルニア州 2019年上期の主なモデルの登録台数(台)
ホンダ シビック39018
トヨタ カムリ33638
テスラ モデル333005
ホンダ アコード27727
トヨタ カローラ25673
フォード Fシリーズ25036
トヨタ RAV424398
トヨタ タコマ22336
ホンダ CR-V19904
シボレー シルバラード17706
ラム ピックアップ16872
フォード フュージョン13190
トヨタ ハイランダー12098
日産 ローグ11539
日産 セントラ10826
ジープ ラングラー10368
トヨタ プリウス10300
マツダ CX-510196
スバル アウトバック10134

ハイブリッド車は、アコードやカムリなどの人気車種にもラインナップされているので、ハイブリッド車全体の登録台数は電気自動車とあまり変わりません。でも、前述したように2018年には、プラグインハイブリッド車を除いたハイブリッド車の登録台数は、電気自動車に抜かれました。この動きをリードしたのが、テスラモデル3でした。

今ではテスラモデル3は、ガソリン車と肩を並べる商品力を持っただけでなく、トップ3を争う人気モデルになっているようです。そしてガソリン価格に目を向ければ、カリフォルニア州では一部地域で4ドルを超え、サンフランシスコやロサンジェルスといった主要都市では3.5ドルが常態化してきました。地球温暖化防止の観点でいえば、パリ協定をはじめとして状況はより厳しさを増しています。

【参考】
NY原油価格、最高値到達から10年の記念日に大幅下落(2018年7月13日付ブルームバーグ)

こうした情勢の中、もともと環境に対する意識が高い人たちが多いと言われているカリフォルニア州では、ハイブリッド車を飛び越して電気自動車に目が向いているようです。その時、モデル3という、通常の使用に耐える性能を備えた車が市場にあったということなのでしょうか。もはや電気自動車は、一部の人たちにとっては普通に車を選ぶときの選択肢に入っているのかもしれません。

ところで日本はどうかというと、リーフはまだまだ上位争いをするほどではありません。2019年1~6月のリーフの販売台数は10541台。同時期のプリウスは約7万台、アクアは約6万台、ノートはe-POWERを含めた全タイプで約6万8千台なので、リーフとはかなりの開きがあります。(数字はいずれも日本自動車販売協会連合会調べ)

車離れが進むとはいえ今でも年間500万台の新車が売れていることを思うと、半年で1万台というリーフの位置づけはちょっと心細いのですが、これから日本でも先進的な市場が育つことを祈るばかりです。

(木野龍逸)

【関連記事】
『ノルウェーで2019年4月期の全車種売上で純電気自動車がトップ7独占』
『テスラ モデル3が市場に出た直後の2月期にヨーロッパで一番売れた純電気自動車になる』

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 半年で1万台しか売れていないリーフですが、それでも連休の高速道路の充電スポットは充電待ちが当たり前の状況になっています。
    車両の普及も大事ですが、インフラ問題の方が重要な気がしています。
    なぜスーパーチャージャーの様に纏めて設置をしないのか不思議です。

    1. この質問は電気屋(電気主任技術者免状保有)がお答えする他あるまい。
      日本の低圧受電電力は最大49kWまでです。50kW以上受電したければ6000Vの高圧受電設備(キュービクル)が必要で設置費が百万円以上になるので充電インフラ拡大の障害にもなっていますよ。
      テスラ社は日本の事情を見越し、どうせ高圧受電ならと4台以上連立設置して大型のキュービクル設備と一緒に効率よく設置していますね。
      対する日産は…3台設置店舗でも1台が低圧受電、2台が高圧受電キュービクルの増設(余裕がなく後付け)です。
      道の駅にQC複数台設置が少ないのも低圧受電がネックとみられます。
      (電柱に取付可能なQCなら工事費低減できますが)

      むしろ改善すべきは家充電インフラの拡大でしょう。特にアパマン住まいの方は大概駐車場に充電器がないのでそこに普通充電環境を整備するほうが早いです。
      電気工事も電線が太いと格段に工事費が跳ね上がりますので、できれば200V/15Aで充電できる環境を増やすべきでしょう。
      道の駅も急速充電ばかりでなく普通充電器併設にするといいですが…これは設置者の意識次第ですね。

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この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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