ケータハムが「EVセブン」に続き「EVクーペ」を発表〜電気自動車が成熟の時代へ

5月にEVセブンを発表したばかりの英国ケータハムが、EVクーペのコンセプトカーを発表した。いずれも、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(7月13日から開催)で公式にお披露目されるとのこと。

ケータハムが「EVセブン」に続き「EVクーペ」を発表〜電気自動車が成熟の時代へ

走る楽しさを満喫できる電気自動車へ

1993年から毎年初夏(今年は7月)に開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは、リッチモンド侯爵家の私有地内にあるサーキットで開かれるモータースポーツの祭典だ。新旧を含め、クルマ好きを唸らせる車種が俊足を披露する。英国屈指のコンストラクターであるケータハムが、次世代を担うEVのコンセプトカーをグッドウッドで公開する意味は大きい。

先のEVセブンは、運転の楽しさを追求するケータハムが、EVでどのようなファン・トゥ・ドライブを実現できるか、それを検証するため技術的探究を目的とした。それに対し、今回のEVクーペは、2025~26年に市販することを目指し、その基盤技術を検証するコンセプトカーであるという。市販時の最低価格は、8万ポンド(約1450万円)未満を予定する。

EVクーペの概要は、200kWのモーターを後輪側に搭載する。車載のリチウムイオンバッテリーは、55kWhの容量だ。これらにより、WLTPで400kmの走行距離と、0~100km/hの加速で4.5秒未満の速さを目指す。

軽量化と十分な航続距離の両立を目指す

運転の楽しさを追求する鍵となるのは、ケータハムが追求してきた軽量化による俊足だ。車両重量は1190kgである。EVは、リチウムイオンバッテリーを相当量車載するため、車両重量が増える傾向にある。だが、55kWhのバッテリーを搭載しながら1.2トンを切る車両重量であるところに、ケータハムのこだわりが現われている。ちなみに、60kWhのバッテリーを車載する日産リーフe+の車両重量は、軽い車種でも1670kgである。

クルマの俊敏さをはかる指標の一つに、パワー・ウェイト・レシオがある。1キロワット(エンジン車であれば1馬力)で、何キログラムを走らせるかを比べるのに利用できる。ケータハム・EVクーペの車両重量1190kgを、モーター出力の200kWで割ると、5.95kg/kWだ。これは、ポルシェ・タイカンの数値に近い。つまり、タイカンほどの走りを実感させる潜在能力を持っていそうだということになる。

車体のイラストを見ると、骨格となるフレーム部分はカーボンファイバー製のようだ。

過去、EVといえども軽さが重要だとの認識を明らかにしてきた自動車メーカーに、BMWがある。同社初の市販EVであるi3は、やはりカーボンファイバー製のフレームを用いることで1260kgを実現していた。

カーボンファイバーには、リサイクルの課題がなお残るが、バッテリーさえ交換すればモーターの耐久性はほぼ永久的ともいわれるEVにおいて、ことにケータハムのような趣味性の強いメーカーのEVであれば、カーボンファイバー製の車体を何十年も使い続けながら、愛車を車庫に置いておくといった保有のされ方も想像できる。EVクーペが、カーボンファイバー製の車体を使って軽量化にこだわる意図は理解しやすい。

乗車定員は、2+1を基本とし、2+2も注文可能であるようだ。とはいえ、外観を含め車体のパッケージをみると、2シーターというのが日常的な利用の仕方になるだろう。

55kWhのリチウムイオンバッテリーは、先進的な熱管理を行うと解説されており、150kWの急速充電器を使うと15分で20%から80%まで充電できるという。

先進的という言葉だけで、EVクーペの熱管理の詳細は明らかでないが、先のEVセブンでは、日常的な利用だけでなくサーキット走行も視野に、スーパーコンピュータにも使われているという液浸冷却により、セルを直接誘電性流体に接触させることにより、20分のサーキット走行後、15分で急速充電し、再び20分のサーキット走行ができることを目指すとある。こうした技術開発の成果が、EVクーペにも応用されているのかもしれない。

走りの瞬発力という点においては、0~100km/hで3~4秒という発進・加速性能はEVでは比較的容易に実現可能であり、乗用車かスポーツカーかという区別は加速性能上なくなりつつある。それでも、ポルシェ・タイカンがこだわったのは、その瞬発力を何度も繰り返せる充放電性能である。ケータハムも、そうした運転を楽しむことに特化したバッテリー管理を目指しているといえるだろう。

2026年といえば、同じ英国のアストンマーチンがEVの発売に乗り出す。国内では、レクサスがEV専用ブランドとなる予定だ。今回のケータハムの発表を含め、25~26年という年は、EVが単に普及を拡大するだけでなく、趣味嗜好の要望に応える車種も充実する年になるかもしれない。それはまさに成熟の時代であり、EVが時代の中核になっていくことを予見させるようだ。

文/御堀 直嗣

この記事のコメント(新着順)1件

  1. ケータハムと聞いてSEVEN170(軽サイズ)を連想してしまった(笑)スズキ製エンジン搭載、長さ3.4m×幅1.48m未満に抑えた日本向けモデル
    …しかし軽EV人気の日本向けに日産サクラ/三菱eKXEVのパーツを流用して製作するなら欲しい人はそこそこいるかもしれません。

    それはともかく、テスラとてスポーツEV「ロードスター」から始まっているからこれは期待できるかもです。ただ大きさの4乗に比例して重たくなるからサイズは相当小さくするでしょ。ただでさえ電池が重たいんで乗員保護性能や衝突安全性に不安はありますが、そこは趣味車として割り切るべきかもしれません。

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					御堀 直嗣

御堀 直嗣

1955年生まれ65歳。一般社団法人日本EVクラブ理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。1984年からフリーランスライター。著書:「快走・電気自動車レーシング」「図解・エコフレンドリーカー」「電気自動車が加速する!」「電気自動車は日本を救う」「知らなきゃヤバイ・電気自動車は新たな市場をつくれるか」「よくわかる最新・電気自動車の基本と仕組み」「電気自動車の“なぜ”を科学する」など全29冊。

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