世界に先駆け中国の「CATL」がゼロカーボンのEV用電池工場を設立

世界最大の電気自動車用バッテリーサプライヤーである中国のCATLが、約9400億円を投じてカーボンニュートラルを達成したバッテリー工場を建設することを発表しました。China Automotive Review元編集長のLei Xing氏によるレポートをお届けします。

世界に先駆け中国の「CATL」がゼロカーボンのEV用電池工場を設立

【原文記事】
Global first: behind CATL’s zero carbon battery factory

世界初の「ゼロカーボン」バッテリー工場の建設へ

世界最大のEVバッテリーサプライヤーが、「称賛の的となるリスト」に世界初のゼロ排出バッテリー工場を載せました。

3月25日にCATLは完全子会社のCATL-SC(Sichuan Contemporary Amperex Technology Ltd.)が月内に世界的なテスト・検査・認証 の権威会社であるSGSからカーボンニュートラルのPAS 2060認証を与えられ、所有する工場が世界初のゼロ排出バッテリー工場となったと発表しました。

CATL-SCは500億元(約9,627億円)をかけ、四川省南西に位置する宜賓市に2019年10月に設立されました。施設の延床面積は4,000ヘクタールで、10のフェーズに分けて作られます。完成時には年間生産量200GWh以上で、世界最大級のリチウムイオンバッテリー生産拠点となります。

よく言われるように、「場所がすべて」です。宜賓市北部には金沙江、岷江(びんこう)、長江という3本の川が横切っているのを始め、合計600以上の大小様々な河川が流れ、恵まれた自然環境と独特な地形が存在しています。そして重要なのが潤沢な水にも恵まれているのです。おかげで工場では80%以上の電気を水力発電で賄い、年間40万トンの二酸化炭素排出量を削減できます。約600のうち9つの、ミディアムサイズの河川には合計500平方キロメートル以上の排水エリアが設けられます。

100%近い原料のリサイクルも目指す

CATL-SCのジェネラルマネージャーであるZhu Yanfeng 氏によると、エネルギーの効率化、運搬、ロジスティクス、生産の継続的なイノベーションに焦点を当てた設立の初期段階に、ゼロカーボン・ロードマップは作られ始めました。したがってこの工場ではより質の良い製品をさらに多く、少ない原料と排出量で作れるのです。

グリーンマニュファクチャリングに関しては、CATL-SCはデジタル生産用にセントラル・コントロールと管理システムを作りました。グローバル・ビジュアル・マネージメントを備えたシステムは生産過程でのロスを劇的に減らし、自動学習をしながら欠陥部分を取り除けるAIビジュアル検閲システムによりスリッティング(※シート状の巻物を所定の幅に切断する)やカレンダリング(※仕上げの研磨)などの行程での不具合検知率が向上しています。生産過程で出た廃棄物はすべてリサイクルされ、ニッケル、コバルト、マンガンなどの貴重な原料の回収率は99.3%に登ります。

エネルギー効率化の面では、工場のスマートマネージメントシステムを開発し、工場のシステムデータや装置作動データの自動収集をすることにより、データの相互活用を可能にしました。一方、工場内部モニタリングシステム、エネルギーマネージメントシステム、オペレーション&メンテナンスマネージメントシステムから成る、システマチックな設備マネージメントプラットフォームが、安全で信頼性があり、効率が良く低排出な操業を可能にしています。エネルギーを大量消費する設備に関しては、包括的最適化アルゴリズムを使い、全体のシステムエネルギー消費量が最低になるよう、各機器の操業パラメータを計算しています。

ロジスティクスチェーンと工場内の運搬もアップグレードされました。大部分で無人のロジスティクス用車両と電気フォークリフトを用いることにより、サプライヤー工場、原料用倉庫、処理工場、完成品用倉庫、顧客用倉庫をゼロ排出で操業できるようにしたのです。同時に、従業員はEVやシェアモビリティの利用を奨励されており、生産現場のあらゆる面においてカーボンフットプリントを減らしています。

脱炭素文化の普及にも貢献

さらにCATL-SCは、カーボンニュートラルの講義、森林公共福祉活動、湖畔でのごみ拾いや分別の学校教育からなるゼロ排出教養プログラムも開設しました。

CATLは、プログラムがカーボンニュートラルの自社目標にとって画期的なものになるとしており、CATL-SCはカーボンニュートラルなバッテリー生産の好例となります。CATLはカーボンニュートラルを達成するためにこの体験を世界中にある10の生産拠点でも再現し、より持続可能な産業エコシステムを構築して世界のカーボンニュートラルのゴールに貢献しようとしています。

今年のCATLは忙しいです。

自社のバッテリー交換ブランド「チョコ-SEB」モジュラーバッテリーパックを使ったEVOGOブランドを1月に開始しました。

2月には上海のリンガン(临港)で、合計28億元(約545億円)をかけたCATLインテリジェント・テクノロジーCTC(Cell to Chassis)プロジェクトと、第2期Ruiting CATLインテリジェント・パワーシステムプロジェクトを開始しました。

そして3月中旬、CATLは4680バッテリーよりも13%容量が大きく、重さ、エネルギー密度、体積エネルギー密度において業界をリードする「麒麟電池」で第3世代CTPテクノロジーをちら見せしました。麒麟電池は4月にあるイベントで正式に発表される予定です。

韓国のSNEリサーチによる最新のデータによると、2021年にCATLが提供した電気量の合計は世界で96.7GWhで、2020年の36.2GWhから167.13%増加し、世界市場の約3分の1を占めています。またCATLは昨年まで5年連続で世界最大のバッテリーサプライヤーとして君臨し続けています。

(翻訳・文/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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