大和リビングが全社用車をEVに切り替え/充電設備を設置した事業所を現地取材

大和ハウスグループの大和リビング株式会社が全社用車を電気自動車に切り替えて、事業所の駐車場にEV用充電設備を設置することを発表。先陣を切って6台の日産サクラが納車された足立営業所には、6基の200Vコンセントが並んでいました。

大和リビングが全社用車をEVに切り替え/充電設備を設置した事業所を現地取材

脱炭素社会実現に向けた具体的な取り組み

大和ハウスが建築する集合住宅などの管理・運営を担う大和リビング株式会社(本社:東京都新宿区)が、2026年度(2027年3月)までに全国130以上の拠点で利用する全ての社用車(348台)を電気自動車(EV)に切り替えて、事業所の駐車場にEV用充電設備を設置することを、2023年2月2日に発表しました。

取り組みの第一弾として、2022年度中(2023年3月まで)に全社用車の約20%にあたる70台のEV利用を開始。全国36事業所の駐車場にEV充電設備を設置します。東京都足立区の足立営業所に日産サクラ6台が納車され、EV充電設備の設置も完了したということで、早速取材に伺いました。

2台は出払っていましたが、営業所の駐車場にサクラがズラリ!

大和ハウスグループでは環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」を策定し、創業100周年を迎える2055年までに事業活動のカーボンニュートラル実現を目指しています。この環境長期ビジョン実現のための行動計画である「エンドレスグリーンプログラム2026」に基づいて、2026年度までに全社用車をEVに切り替えて、事業所の駐車場に必要十分な数のEV用充電設備を設置することになりました。

第一弾として今年度中にEV&充電設備導入を果たす36の事業所は、すでに「RE100(事業活動のエネルギーを再エネ100%とする国際的イニシアチブ)」を達成しており、集合住宅の1階にオフィスと駐車場があるといった条件で選出したとのこと。70台の社用車がガソリン車から再エネ電力で充電するEVに切り替わることで「年間で約96tのCO2排出量削減を実現できる計画」であり、全ての社用車がEVになる2026年度までには年間約478tのCO2排出量削減を見込んでいます。

日産サクラを選んだのは年度内納車を見込めたから

取材対応とともに現地視察を行うということで本社関連部署のご担当者を含めてたくさんの方にお話しを伺うことができました。左から、本社総務人事部の工藤倫央さん、D.U-NET株式会社事業統括部の青木裕介さん、本社エネルギー事業推進部の柴田孝史さん、エネルギー事業推進部長の峰村博明さん、足立営業所の福田広数さん、足立営業所所長の森永友章さん、D.U-NET株式会社事業統括部の松原隆さん。

取材に伺った足立営業所に納車されたのは、昨年、軽自動車として史上初となるカーオブザイヤーを受賞した日産サクラが6台です。大和リビングでは今までの営業車にはガソリンエンジンの軽自動車を主に利用していました。サクラの走りはガソリンの軽自動車よりもパワフルで軽快なので、運転する社員のみなさんにとってもハッピーでしょう。

今年導入する70台はひとまず全てサクラです。そもそも、日本で市販されている乗用車の軽EVはサクラか三菱eKクロスEVの二車種のみ。今回、サクラを選んだのは、性能が優れていたこと、仕様が会社の条件を満たしていたこともあるようですが、最大の要因は、「年度内に70台」という目標を達成するため、3月までに納車されるのが見込めたからということでした。一時期、受注停止や納期の長期化が懸念されていたサクラですが、最近は少し納期も早まってきた(それでも2ヶ月程度はかかるようですが)様子。大和リビングのようにEV導入を求めるニーズは多いはずなので、やはり、需要にしっかり応える供給力は大切です。

取材時はまだ真っ白なボディでしたが、この後、EVであることをアピールするラッピングを施すことになっているそうです。

大和リビングではサクラのような顧客対応で動く乗用車のほか、作業用バンの社用車も利用しているとのこと。当然、2026年までには作業用バンもEVに切り替えていくことになります。現状で市販されている軽バンのEVは三菱ミニキャブミーブだけ(HW ELECTROのELEMO-Kはトラックだし)ですが、2024年の春にはホンダがN-VANをベースとした新型軽商用EVを発売することを発表しています。「一充電航続距離200kmで価格は100万円台~」ということなので、間に合えばこちらを選択することになるのでしょう。がんばれホンダ、負けるな三菱、です。

いずれにしても、具体的な導入を考えるほどに「EVにもっと多彩な車種を!」という思いを抱いてしまいます。多くの企業が脱炭素社会の実現を目指す具体的なアクションとしてEV導入を進めようとしているのに、日本の自動車メーカーがEVの選択肢を十分に用意できていない現状は悩ましいところです。

エンジン車をサクラにしたことで、毎月のリース料などは「1.5~2倍くらい」になったそうです。でも、ビジョンの目標達成に向けたアクションが最優先。切り替えていく車両にはまだリース契約期間が残っているケースもあるのでは? と質問すると「違約金を払ってでも目標の期限内にEVに切り替えます」ということでした。

足立営業所には200Vコンセントを設置

足立営業所の駐車場には、6基のEV用200Vコンセントが設置されていました。第一弾のEV導入は36事業所に70台なので、足立営業所の6台は台数が多い事例であり、営業用の社用車は1台のみという事業所もあるそうです。

充電設備の種類についても、足立営業所はコンセントですが、ケーブル付きの普通充電器を設置した営業所もあるとのこと。そもそも、大和リビングは集合住宅の管理会社です。資産価値向上のために集合住宅の駐車場にEV用充電設備設置を進めることは大切なミッションであると考えており、社用車のEV切り替えや充電設備設置と運用によって、知見やノウハウを確立していくことも見据えています。

EV用コンセントのための電線を新たに引き込みました。
ポールとケースも独自に工夫して設置。施錠できるケースなので、充電ケーブルはコンセントに挿したままでもOKです。

サクラの普通充電受入出力は2.9kW(約3kW)なので、6台が同時に充電すると「3×6=18kW」の電力が必要になります。そこで、足立営業所の駐車場には6台が同時に充電できるよう低圧契約の電線を新たに引き込んだとのこと。消費電力が契約アンペア数を超えないように制御する「デマンドコントロール」には専用機器やシステムのコストも掛かるため、足立営業所では「この方法で実際の電気代や使い勝手はどうなのか」を検証するということでした。

大和リビングが管理する集合住宅は全国で約63万2000戸(2023年1月)もあります。集合住宅駐車場への充電設備設置がEV普及の大きな課題である日本で、「日本一の賃貸住宅トータルサポート企業」を目指す企業自らがEV導入を進めるのは心強いことだと感じます。

EVのあれこれは、実際に使ってみないとわかりません。こうした動きがさらに拡がることを期待しています。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 「足立営業所の駐車場には6台が同時に充電できるよう低圧契約の電線を新たに引き込んだとのこと」とありますが、3相ではなく電灯契約の単独契約で追加は可能になったのでしょうか?

    1. 通りすがり さま、コメントありがとうございます。

      同時充電OKということだったので、「低圧契約ですか?」とだけ確認したので。。。 電灯契約ではなく、三相3線式、だと思います。

    2. 電気技師です。電力会社の契約は1場所1契約の原則があり事務所が低圧電灯引込なら片方は低圧動力引込になる可能性が高いですよ。
      高圧受電のコンビニにEV急速充電器と受電キュービクルを設置する場合は使用区域を区切って申請することになります。そうしないと経済産業局や電力会社が受け付けない裏がありまして。
      自家用電気工作物の電気主任技術者として従事している方なら大抵周知の事実、ただ一般家庭で必要な知識ではないから知らない人が多いんでしょう。
      これからも高圧受電設備管理者の目線で答えます、そこんとこヨロシクですー。

  2. 先日京都に行きましたが、Ioniq 5のタクシーにも驚いたものの、SAKURA のタクシーが走っていたのにはビックリ。営業車こそEVです。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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