※冒頭写真は会津バスが運行するBYD製の「尾瀬バス」
11月の予算要求を元にした記事でした
日経の記事を見て、早速東京都のウェブサイトを掘ってみたのですが、EV(電気自動車)バスやトラックへの補助制度に関するページは見つかりませんでした。はたして、日経の記事は真実なのか。いつごろから、どんな制度が始まろうとしているのか。これは直接担当部署に伺うのが間違いないと考えて、以前『東京都の集合住宅などへの充電設備補助金【申請受付中!】』の取材でお世話になった東京都の環境局地球環境エネルギー部ZEV推進担当課に連絡。担当されているのが環境局環境改善部自動車環境課であると知り、担当課長である堀哲氏に電話で取材することができました。
日経の記事では「都の担当部局が20年度予算編成で約3億円の事業費を要求している」としているものの、具体的な補助金額や車種などへの言及はありません。それもそのはず、日経の記事は、今年11月に発表された東京都環境局の『令和2年度予算要求概要』(PDFファイルにリンク)で、その中に「ZEV普及促進事業」の一項目として「EVバス・トラック導入促進事業」に2億8400万円の記載があったことに基づいているようです。
今後、財務局などとの調整を経て1月下旬に予算原案が作成されて、3月末には議会での審議を経て正式に決定されるスケジュール感。補助対象となる車種や補助額などの計画はもちろんあるのでしょうが「審議の過程で変更になる可能性が高く、まだ詳細を具体的に発表できる段階ではない」(堀課長)ということです。
補助する車種があまりに少ないのでは?
今回、電話取材に先駆けてお送りしたメールで、私が提示した質問事項は、こんな感じです。
●まだ東京都からの正式なリリースがないですが、目途としてはいつごろ正式発表予定でしょうか。
●EVバス、トラックの車種は何を想定していますか。
(現状市販車種としてはeキャンター、BYDのバス、eCOM程度かと)
●小型トラックとして、テスラのサイバートラックも補助対象?
●商用車EVの選択肢が少ない状況についての見解をお聞かせください。
まず最初の正式発表のタイミングは、予算審議後の3月以降、ってことですね。
残りの質問の主旨としては、要するに、東京都が補助するといっても、対象となる商用車EVが日本ではあまりに少なすぎるのでは、ということです。
『eキャンター』は三菱ふそうが「世界初の量産電気小型トラック」と銘打って発売し、ヤマト運輸やセブンイレブンなどが導入しています。
電気のバスとなると、EVsmartブログでもいろんな記事をお伝えしていますが、日本で普通に購入できる市販車は中国メーカーであるBYDくらい。各地で導入されている電気バスの多くは、オーダーメイドの改造車です。
『eCOM』というのは、2019年11月に池袋で運行を開始した『IKEBUS』で話題になりました。群馬県桐生市の株式会社シンクトゥギャザーという会社が開発した低速電動コミュニティビークルで、国交省が普及促進を進めるいわゆる「グリーンスローモビリティ」を代表する車種ですね。
あとは、日産の『e-NV200』とか三菱自動車工業の『MINICAB-MiEV』、商用にも使えるでしょと考えてテスラ『サイバートラック』くらい、かな。いずれにしても、車種のバリエーションは両手の指で十分足りてしまう程度だけ。東京都が打ち出す公的補助の対象としては、いささか寂しい現状です。このあたり、担当部署としてどう考えてらっしゃるのでしょう。
「補助対象の車種は、改造を含めてこれから詳細に検討を進めていきます。東京都としてはZEV(ゼロエミッションヴィークル)普及を進めることが前提にあります。東京都がこうした補助制度を設けることで、事業者がZEVを導入する契機となり、自動車メーカーの開発が進むことに期待しています」(堀課長)
世の中が変わる時にありがちな、鶏が先か卵が先か、みたいなことですが、ニーズがなければメーカーはEV商用車の開発に注力しないし、車種がないからニーズも広がらない、という悩ましい状態に、東京都が喝を入れてくれるって話ですね。
日本でも、EV商用車の選択肢が悩ましいくらいに増えるよう、日本メーカーの奮起に期待しましょう。
(取材・文/寄本 好則)