小型商用EV『ELEMO』が「防災」機能を武器に着々とプロジェクト前進中

日本の電気自動車ベンチャー『HW ELECTRO』が2021年7月に発売を予定している小型商用EV『ELEMO』1台を木更津市に寄贈しました。日本防災教育振興中央会と連携し、今後5年間で3万カ所を目標に、地域の防災拠点に100V電源が使える『ELEMO』を配備していく計画のスタートです。

小型商用EV『ELEMO』が「防災」機能を武器に着々とプロジェクト前進中

木更津市では50台程度を目標に導入へ

2021年6月24日、電気自動車ベンチャー『HW ELECTRO』が千葉県木更津市と「災害時における電動車両等の支援に関する協定」を締結。7月に発売を予定している小型商用EV『ELEMO』1台を寄贈しました。

『ELEMO』はアメリカに本社を置く『CENNTRO』社のベースモデルを日本向けに改良した小型商用EVで、バッテリー容量13kWhの『100』と25.92kWhの『200』という2グレードをラインアップ。このうち『200』には100V1500WのAC出力(コンセント)を標準装備します。

荷物がたっぷり搭載できる上、非常時の電力を供給できる強みを活かして、HW ELECTROでは一般社団法人日本防災教育振興中央会(以下、防教)と業務提携を締結し、今後5年以内に全国で3万カ所以上を目標に「即日運用可能な民間緊急避難所の確保と防災備蓄品を用意」して「地域の方々と共に最低年1回の設置訓練を行うことで災害に備え基盤を整える」取り組みを行っていくということです。

木更津市との協定締結とEV寄贈は、この取り組みの第一歩。今後、木更津市では約50台のELEMOを市内の避難所に導入していく目標であることが示されました。

初めてのナンバー取得を密着レポートしたように、『ELEMO 200』の予定価格は275万円(税込)〜。小型商用車としては高価ではありますが、約26kWhの定置型蓄電池を設置しようとすれば、コストパフォーマンスが高いテスラのパワーウォールでも200万円くらいは掛かります。荷室に防災グッズを収納できて、いざとなれば自走して被災地に駆けつけることができる、まさに「走る蓄電池」としてELEMOそのものが「地域の防災拠点」になる付加価値を考えると、地方自治体にとっては賢明な施策といえそうです。

車載される100人分の防災備蓄品とは

避難所などの拠点に配備されるELEMOに搭載する「防災備蓄品」は、100名分を想定して防教が選定したそうです。すでに『使用方法マニュアル』も用意されていました。

100名想定の備蓄品のアイテム数は30種類。総重量は165kgになるそうです。普通の家庭でも「何を備蓄しておけばいいんだ?」と迷っている方は少なくない(私がそうなので)でしょうから、一覧を転載しておきます。

●車載防災備蓄品一覧

品名形状など数量
折りたたみヘルメット頭囲目安55.5〜62cm1個
軍手滑り止めゴム付き10双
軽量バール900mm1本
標識ロープ(トラロープ)6mm、50m1本
ラップ30cm×50m1個
鉄腕強化ハサミステンレス製1本
カッター折り歯式1本
三角巾105×105×150cm 1枚入り20袋
ソフトガーゼ1号(30×30cm)150枚入り1箱
救急用絆創膏50枚3箱
水(ペットボトル)500ml100本
カロリーメイトロングライフチョコレート 2本入り100箱
トイレットペーパー12ロール入り10袋
アルミブランケット140×210cm100枚
非常用トイレ100枚入り/箱7箱
使い捨て手袋L/100枚入り1箱
強化ポリ袋45ℓ/50枚入り1袋
ブルーシート大1枚1枚
ブルーシート中1枚1枚
LED懐中電灯電池式50個
単四電池アルカリ150本
コードリール10m1個
コンセントタップ6穴 1m1個
USBタップ2A×4穴2個
充電コードmicroUSB1本
充電コードType-C2本
充電コードLightning5本
充電コードマルチ1本
台車150kg耐荷1台

こうした備蓄品は、収納コンテナに詰めて荷室に搭載。もちろん、木更津市に寄贈された1台にも防災備蓄品が搭載されます。

地域のイベントなどでも活躍予定

木更津市では、寄贈された1台を含め、市内各所に配備したELEMOを、地域のイベント開催時などには電源車としても活用していく予定とのこと。

いかに大容量電池を搭載していても、輸入車EVは外部への電源供給は非対応。日産のリーフやアリアはチャデモ(急速充電)の口から電気を取り出すことはできますが、ニチコンの『パワームーバ』など高価で重い専用機器が必要です。100Vコンセント標準装備! が、まずはELEMOの強みとして活用されることになるわけです。

海外メーカーの小型EVを、まずは輸入して販売。電気自動車ベンチャーとして、HW ELECTROのチャレンジはなかなか大変ではあるでしょうが、既存メーカーのEVがなぜか避けて通ってきている「コンセント」に着眼し、防災ツールとして展開していくというプランは、なんだかうまくいきそうな予感もします。防教との連携で「5年以内に3万台」が順調に進むとすれば前途は有望です。

出光タジマが開発する超小型EVは、出光興産のSSネットワークを通じてサブスクやリース、カーシェアで提供。そして、このELEMOは地域の防災拠点への配備を促進。自動車産業を根本から変えるといわれてきたEVですが、ここにきて「どう変わるのか」の具体例が着実にカタチになりつつある気がします。

7月中旬にはいよいよ「ELEMO発売!」の発表会を開催するとのことなので、改めてレポートする予定です。「日本向けに独自仕様の商用EV開発を!」というHW ELECTRO、蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)社長の野望実現を、これからも応援していきたいと思います。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. 写真を見る限り、軽自動車枠に合わせているようには見えませんね。
    日本では横幅が狭いのが不満となります。
    横幅は変更しにくいでしょうから長さを切り詰めるのでしょうが
    佐川急便が採用するというバンとの価格競争になりそうですかね?

  2. 荷台を脱着式のキャンピングシェル(脚が伸びる)の様にして、水・食料コンテナ、医療コンテナ、テント・簡易トイレコンテナ、バッテリーパックコンテナなどを用意して避難所に届けられる体制が出来ると良いと思います。

    1. それをやるなら既存の軽トラで行えばよいので軽キャンパーシェルをつくっている業者さんや行政次第でしょう。
      しかも積載量を考えると軽自動車では不満が出ますからもっと大きな海上とれーらーでやればよいので軽自動車枠では難しいと思います。

  3. 現実的でいいアプローチだと思うのですが。投稿ではありません。簫さんにふりがなを入れてください。読めません。

    1. NOLA さま、コメント、ご指摘ありがとうございます。

      蕭さんのお名前、おっしゃるように、難読ですね。おまけに漢字を誤変換してました。
      蕭さん、失礼いたしました。

      修正して、ルビを入れました。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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