マセラティ『ギブリ』にハイブリッド登場〜全モデル電動化の第一歩

2020年7月15日、日産アリア世界初公開の一方で、マセラティ史上初の電動化モデルとなるギブリハイブリッドが発表されました。リリースでは「全新型モデルにおける電動化の第一歩」と明記されています。はたして、マセラティならではの「官能的な電気自動車」へと繫がっていくのでしょうか。

マセラティ『ギブリ』にハイブリッド登場〜全モデル電動化の第一歩

本来、EVsmartブログではいわゆるプラグイン車(充電可能な電動モデル)情報に絞って記事を掲載していますが、全車電動化へのプロローグを飾る一台として注目。ジャーナリストの諸星陽一氏の速報レポートをお届けします。

マセラティが電動化への一歩を踏み出した

マセラティ初の電動モデル『ギブリ(Ghibli)ハイブリッド』が発表された。1966年に発表された初代ギブリは2ドアのクーペ&オープンで、4.7リットル(のちに4.9リットル)のV8エンジンをフロントに搭載、リヤタイヤを駆動するFRスポーツカー。初代ギブリのライバルはフェラーリやランボルギーニだった。初代ギブリは1973年にその生産を終える。2代目は約20年後の1992年に登場する。2ドアではあるが、初代のような2名乗りスポーツカーではなく、4人乗りのノッチバッククーペとなり1997年まで生産される。3代目となる現行モデルは4ドアのサルーンで2013年のデビュー。つまり各ジェネレーションはデビュー年に大きく開きがあるだけでなく、そのコンセプトも大きく変わってきた。

さて、本題であるハイブリッドの話に進もう。今回のギブリへのハイブリッドシステムの搭載はマセラティとして初の「電動化」への試みである。採用されたハイブリッドシステムは欧州で主流となりつつある48Vの「マイルドハイブリッド」と呼ばれるもの。エンジンは4気筒の2リットルターボ。ハイブリッドシステムはBSG(ベルト・ドリブン・ジェネレーター)、バッテリー、eブースター、DC/DCコンバーターで構成される。BSGがエネルギー回生とパワーアシスト、エンジンの再始動を担当。eブースターはターボチャージャーと連動する電動の過給システムとなっている。

欧州仕様のスペックシートには、このマイルドハイブリッドを含んだ状態での最高出力として330馬力、最大トルク450Nmの記載がされている。スペックシートでは最大トルクの発生回転数が4500回転となっているが、リリース文には最大トルクの発生は1500回転との表記がある。おそらくはモーターアシストにより1500回転で最大トルクに達し、その後フラットトルクを維持するのだろう。

駆動用バッテリーを車両後方にレイアウトすることで、重量バランスも向上。従来型ディーゼルエンジンに比べて80kgの軽量化も実現しているという。ハイブリッドモデルのカタログスペックの最高速度は255km/h、0→100km/h加速は5.7秒。V6・3リットルのガソリンエンジンを積むギブリの最高速度は267km/h、0→100km/h加速は5.5秒で、ハイブリッドモデルの駿足ぶりはエンジンモデルに劣らないことがわかる。また、エンジンサウンドについてもマセラティらしいものを実現しているという。

マセラティは7月1日にF1技術を導入した完全自社開発の新型V6エンジンを発表している。このエンジンは3リットルで630馬力、つまり1リットルあたり200馬力を超える超ハイスペックエンジンで、今年9月にデビュー予定のスーパースポーツカー「MC20」に搭載されることになっている。

Maserati Ghibli Hybrid. Performance Charged(YouTube)
新型ギブリハイブリッドのイメージ映像。

一方の電動システムはこのハイブリッドを皮切りにスタート、いずれは全車電動化へ進む予定であることが明言された。

マセラティ初のピュアEVは2021年に登場予定だ。車種はマセラティのフラッグシップモデルでもある「次世代グラントゥーリズモとグランカブリオ」と公表されている。すでに8億ユーロ(約976億円)を投資して、イタリアのトリノにあるミラフィオーリ工場における電気自動車生産の準備を進めていることが伝えられている

Maserati starts testing its first 100% electric engine(YouTube)
全車種電動化を発表した際(2020年1月23日)のイメージ映像。

ポルシェが『タイカン』を発売し、フェラーリからもスーパーPHEVと称される『SF90ストラダーレ』が発表された。テスラのように電動だけで勝負しようとするわけではないものの、フラッグシップが電動車に置き換わりつつあるのが実情だ。ICEの販売禁止や厳しい燃費基準などの必要に迫られている側面もある。マセラティもまた多くのスポーツカーメーカー同様に、しばらくはハイパワーエンジンと電動化という2つのパワーユニットを両立させながら、マセラティという官能的なブランドにふさわしい電気自動車を提示してくれることになるのだろう。

(文/諸星 陽一)

編集部追記

冒頭にも記したように、ギブリハイブリッドは充電できないHEV(マイルドハイブリッド)なので、本来はEVsmartブログでは取り上げない車種なのです。でも、マセラティ自身が「全車種電動化への第一歩」と明言しているニュース性を重視して諸星さんにレポートしていただきました。

余談ではありますが、私自身、中古リーフの前はアルファロメオGTに乗っていました。EVsmartブログチームリーダーの安川さんは、テスラモデルSの前の愛車がまさにマセラティのクアトロポルテ。ほかにも、ランチアが長年の愛車だった人など、今、先走ってEVを愛している人には、イタリア車が象徴する「官能的なマイカー」を愛してきた人が多いというのは、経験的な実感でもあります。

欲を言えば、今回のギブリにもプラグインハイブリッドをラインアップして欲しかったという思いはありますが。EV普及にまず不可欠なのは車種のバリエーション。マセラティの電動化参戦を歓迎して、期待したいと思います。さらに、国内自動車メーカーにもこうした「流れ」に奮起して、官能的ではなくてもいいので、100万円台で買える実用航続距離150〜200km程度の経済的でクールな電気自動車をリリースして欲しい、な。

(追記/寄本 好則)

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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