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メルセデス・ベンツ『EQC』が最大110kWの急速充電に対応〜既販車のアップデートは不可

メルセデス・ベンツ『EQC』が最大110kWの急速充電に対応〜既販車のアップデートは不可

2022年1月28日、メルセデス・ベンツ ジャパンが電気自動車『EQC 400 4MATIC』の価格変更(値上げ)と、チャデモ規格での急速充電を従来の最大50kWから110kW対応へと変更することを発表しました。

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新車価格は960万円に値上げ

『EQC 400 4MATIC』は、2019年7月、メルセデス・ベンツが日本市場に初めて導入した完全電気自動車モデルです。『GLC』ベースの車体に、80kWhのバッテリーと、前後2モーターで最高出力300kWを発揮する四輪駆動システムを搭載。威風堂々、2021年4月に日本導入が発表された『EQA』を引き連れて快走する、現状の日本における「ベンツのEV」の最上級車種です。

2019年の日本デビュー時、400 4MATIC の価格は1080万円〜(税込)でした。その後、2021年には一部装備の見直しを理由として895万円に値下げされていました。

今回の発表は「メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC と GLS 400 d 4MATIC の一部装備およびメーカー希望小売価格を変更」、また「EQC 400 4MATIC が110kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応」という短文のみで、変更後の価格や理由などの詳細はアナウンスされていませんが、公式のカタログサイトを確認すると「960万円」となっています。65万円の値上げ、ということですね。

EQC値上げの理由はアナウンスされていませんが、メルセデス・ベンツ ジャパンでは1月24日にも GLE 300 d 4MATIC など複数車種の価格変更を発表しており、そこでは「一部装備の変更および原材料費の高騰等に対応し」と値上げの理由が説明されています。メルセデス・ベンツに限ったことでなく、世界的なインフレや半導体不足の影響か、自動車はじりじりと高くなっている印象です。

チャデモ急速充電は110kW対応に性能が向上

価格はともあれ、EVユーザーとしては「EQC 400 4MATIC が110kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応」という一文が気になります。従来、EQCはチャデモ規格で最大50kW対応でした。後発のEQAが100kW対応なので、「上級車種であるEQCも高出力対応にすればいいのに」と思わずにはいられなかったのですが、さすが、メルセデス・ベンツです。首都高大黒PAに最大90kWの6口タイプ新型器が開設(EQAで充電レポートしています)されたのを待っていたかのように、迅速にグレードアップしてきました。

実は、日本に導入されている輸入EVには、欧州などでは最大100kW以上の高出力充電に対応しているのに、日本のチャデモ規格では最大50kWという車種が多いのが現状です。以前、『I-PACE(アイペイス)』を導入したジャガー・ランドローバー・ジャパンのご担当者に直接質問したことがあり、 欧米のコンボ規格では100kW対応の『I-PACE』が日本で50kW対応となっている端的な理由は「日本国内の急速充電器普及状況が、おおむね最大50kWとなっているため」ということでした。

ちなみに、自社で高出力急速充電インフラ拡充を宣言して導入されたポルシェ『タイカン』とアウディ『e-tron GT』はチャデモ規格でも最大150kW対応となっています。でも、前出のジャガー『I-PACE』や、グループPSAのプジョー『e-208』、『e-2008』、『DS3』、シトロエン『Ë-C4』などの各車、アウディでも真っ先に導入された『e-tron』は最大50kW対応で、テスラ車もチャデモ用のアダプターは最大50kWです。

合い言葉は「メルセデス・ベンツに続け!」です。超高出力のスーパージャージャー網を拡充するテスラはちょっと別格ですが、輸入各社はもちろん、国産自動車メーカーも今後発売する新型EVは目安として90kW〜100kW程度の高出力急速充電に対応すべき。対応車種が増えていくことで、高速道路SAPAなどへの高出力急速充電インフラ整備への理解が広がっていくのだと思います。

EQC既販車のアップデートは不可

EQCの急速充電性能向上について、メルセデス・ベンツ ジャパン広報ご担当者にいくつか確認してみました。

まず、今回のアップデートは基本的にプログラム(ソフトウェア)の変更のみということです。公式カタログサイト冒頭に、「The EQC 【MP202003】 ¥9,600,000〜」と記されているのですが、この【MP202003】というのが、メルセデス・ベンツ社内のモデル識別コード。今まで末尾【02】だったのが、仕様と価格変更で【03】となったということになります。

プログラム変更のみということだったので、【02】以前、既販のEQCもプログラムを書き換えて110kW対応にアップデートできるのでは? と思ったのですが「それはできない」という回答でした。

うーん、少し残念ですが。それが価格差の理由、と理解するしかなさそうです。

EQCの高出力急速充電対応は、日本におけるチャデモインフラ網拡充と電気自動車本格普及に向けた朗報です。新車購入の補助金額も倍増するはずの2022年。EVに関するさらなる朗報が続くことを願っています。

(文/寄本 好則)

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 貴重な情報を拝読しております。ありがとうございます。
    CHAdeMO Ver 1.3 (130KW)の充電器を開発しているものです。
    今後大容量バッテリー搭載の車種が国内も増えて行くと思いますが
    高出力急速充電器の普及に国とBEVメーカーが積極的に引っ張ってほしいですね。
    機会ができればこのEQCのようなBEVを充電してみたいです!

  • これは興味深いですね。
    Ver1.2が2017年に発行されて200kWに対応し、2018年には既にVer2.0に移行したとCHAdeMO協議会は発表しているのに、まだVer1.xの開発が行われていたとは。
    目的は何なのでしょうか?

    • しるこサンドさま、 ご指摘ありがとうございます。
      CHAdeMOバージョンの表記に誤りがございました。
      申し訳ございません。

      以下に訂正させていただきます。
      誤:CHAdeMO Ver 1.3
      正:CHAdeMO Ver 1.2

      130KWの充電器でテストデータでございますが(CHAdeMO規格のプロトタイプデモ機)
      日産リーフe+(62kwh)の場合、最大充電出力 85kW (235A)を
      リーフ(40kwh)の場合、最大充電出力 53kw (137A)を出します。

      トランスフォーマーを使わない新しいアーキテクチャの充電器ですが
      目標は、
      CHAdeMO規格で150KWの充電器と
      CCS1規格では最大350KWの充電器の完成を目指しています。

    • ご丁寧に回答頂きどうもありがとうございます。
      誤記でしたか…秘密のプロジェクトが存在したのかとワクワクしてしまいました。

      そしてこれまた興味深いですね。
      リーフ 62kWhは200A、同40kWhは125Aまでだと思っていました。

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