想像以上の大舞台に本格的なチャレンジ開始を実感
2021年7月12日、欧米などで定評のある小型商用電気自動車の日本導入を目指す『HW ELECTRO株式会社』が、東京ビッグサイトの「TFTホール500」(東京都江東区)で『HW ELECTRO 事業戦略発表会』を開催しました。
HW ELECTROが発売する『ELEMO』については、昨年来、EVsmartブログでは何度か紹介してきています。
【今までの記事】
●小型商用電気自動車『ELEMO』を発売するベンチャー企業『HW ELECTRO』の心意気とは(2020年11月29日)
●電気自動車ベンチャー発の小型商用EV『ELEMO』が日本で初めてナンバー取得に成功【密着取材】(2021年4月13日)
●小型商用EV『ELEMO』が「防災」機能を武器に着々とプロジェクト前進中(2021年6月26日)
緊急事態宣言下とあって、会場の席はひとつおきのソーシャルディスタンス仕様ではありましたが、多くのメディアや関係者が参加していました。昨年11月、朝霧高原で開催された『Japan EV Meetup』の会場でHW ELECTRO社長の蕭(ショウ)さんに初めてご挨拶して以来、ELEMOの日本発売に向けた歩みを追い続けてきました。
今回の発表会はメールで案内いただいて「立派なところででやるんだなぁ」と思っていたのですが……。会場に到着して、いきなり受付の行列に驚きました。会場の設えや本職の女性MCさんの司会進行っぷりもお見事。今年4月、袖ケ浦の陸運局で初めてのナンバー取得の現場にも、社長の蕭さんや執行役員の髙橋さん自ら出向き、まさに汗を流しながらプロジェクトを進める様子を取材してきた私としては「いよいよ、ELEMOのチャレンジが本格的にスタートするんだな」と、感慨深いものがありました。
いよいよ7月24日から受注開始
今回の発表会のトピックは大きく2つ。まず、最大のニュースはいよいよ7月24日から『ELEMO(エレモ)』の受注が始まり、納車は11月1日からを予定していると発表されたことです。今まで「7月発売予定」とアナウンスされていたものの、正式な発売日やデリバリー開始の予定が明示されたのは初めてです。
HW ELECTROのウェブサイトを確認すると、ELEMOの紹介ページもグレードアップして公開されていました。
【公式サイト】
●『ELEMO(エレモ)』紹介特設サイト
ELEMOには、2種類のバッテリー容量と、「フラットベッド」「ピックアップ」「ボックス」という3種類の荷室バリエーションが用意されます。今回、すべてのスペックやバリエーションごとの販売価格なども正式に発表されました。公式サイトにも紹介されていますが、スペックや価格を一覧にしてまとめておきます。
ELEMO 主要諸元など | ||||||
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荷室スタイル | フラットベッド | ピックアップ | ボックス | |||
グレード | ELEMO120 | ELEMO200 | ELEMO120 | ELEMO200 | ELEMO120 | ELEMO200 |
全長×全幅×全高(mm) | 3910×1380×1905 | 3910×1440×1905 | 3910×1450×1905 | |||
車両重量(kg) | 900 | 1020 | 920 | 1040 | 990 | 1110 |
最大積載量(kg) | 650 | 450 | 650 | 450 | 550 | 400 |
定員 | 2 | |||||
最高出力 | 24kW | |||||
最大トルク | 120Nm | |||||
最高速度(km/h) | 85 | |||||
バッテリー種類 | リチウムイオン電池 | |||||
総電圧(V) | 86.4 | |||||
総電力量(kWh) | 13 | 25.92 | 13 | 25.92 | 13 | 25.92 |
一充電走行距離 | 120km | 200km | 120km | 200km | 120km | 200km |
駆動方式 | 後輪駆動 | |||||
サスペンション | (前)独立/(後)非独立 | |||||
ブレーキ | (前後とも)ディスク | |||||
タイヤサイズ | 185/65 R14 | |||||
販売価格(税込) | 2,189,000円 | 2,750,000円 | 2,475,000円 | 3,036,000円 | 2,739,000円 | 3,300,000円 |
充電は200V普通充電のみの対応。「一日働いたらガレージで充電して翌日に備える」使い方を想定しています。充電用のケーブルは別売で価格は60,500円。
また、荷室は単体でも購入可能で、フラットベッドが110,000円、ピックアップ286,000円、ボックス550,000円(すべて税込)です。
次世代自動車振興センター(NEV)のCEV補助金についての説明はなかったのですが、後で確認すると「今、申請中」とのこと。支払い方法についても発表会の中で「リースが活用できるようリース会社と調整中」という説明がありました。蕭さん自身の発表会での説明で「正直、まだ価格は高いと思っているが、電池の原価などを考えると現状ではこの値段になってしまう」と吐露していたように、いろいろと、まさに現在進行形で進展中のプロジェクト&新型車と評することができるでしょう。
現在、日本国内で買える商用車EVは、三菱の『ミニキャブMiEV』だけ。バッテリー容量16kWhで価格が約243万円〜であることを考えると、配達などに電気自動車を採り入れてゼロエミッション時代の先駆けに! と意気に感じるユーザー企業にとっては、13kWhで約220万円〜、25.92kWhで約275万円〜というELEMOは、検討に値する選択肢です。
花キューピットとEV配送の実証実験を開始
もうひとつのニュースが、一般社団法人JFTD花キューピット、株式会社花キューピットと連携してEVで生花を配送する実証実験を開始すると発表されたことです。
「花キューピット」とは、日本全国、さらには世界中の加盟店のネットワークを活用し、届け先に近い加盟店が新鮮な花を届ける生花通信販売システムです。原型となるサービスが始まったのは約70年前の1953年、「花キューピット」という名称で本格的なサービスが始まったのは40年近く前の1984年という歴史があります。
発表会では一般社団法人JFTD花キューピット会長の澤田將信さんが蕭社長とともに登壇。配送距離を短くできる花キューピットのサービスはCO2排出削減とSDGs実現を目指す今の時代にふさわしいことへの気付きとともに「さらなるゼロエミッションを目指すために何が必要か。ELEMOを見て、これだ! と感じた」といった、ELEMOが目指す社会実現への共感の言葉が述べられました。
ただし、今のところはまだ「全国の生花店にELEMOを導入していく」ということではなく、まずは7月末をメドに都心部の生花店にELEMO1台を導入し、実際に生花の配送に活用できるかどうかの検証から始めていくとのことでした。
とはいえ、HW ELECTROとしては荷室の温度や湿度の管理、配送ルートの最適化などを行うアプリを開発して、ELEMOへのIoT導入にも意欲的。今後の状況次第ではあるものの「花キューピットとの連携を活かしてさまざまなチャレンジを広げていきたい」(蕭社長)ということでした。
初めてELEMOに試乗もできました!
これまで何度も記事にして紹介し、応援してきたELEMOですが、実は、私はまだ試乗したことがなく、実際の使い勝手や走り心地はどうなんだ? というのがちょっぴり不安な点でした。
今回、発表会終了後、会場に隣接する広い駐車場(?)に設けられたコースで試乗会が行われました。もちろん、案内をいただいてすぐに申し込んだので、受付順に発行された整理券の番号は「2」でした。
広い駐車場をパイロンなどで区切った試乗コースはカートサーキットくらいの規模感。それなりに加速できる直線もあり、街なかでELEMOを配送に使うと……、を想定した走り心地を確かめることができました。試乗に向かうところで偶然、EVsmartブログで試乗記などもお願いしている自動車評論家の御堀直嗣さんに会ったので、本格的な試乗記は後日、御堀さんにお願いすることにしましたが、端的な印象だけを簡単にまとめておきます。
まず、クルマとしての印象は「超小型EVより質感が高く、軽の商用車、たとえばミニキャブMiEVより穏やかな配送用EVに特化した性能」という感じです。
言葉にして説明するのはなかなか難しいのですが、エンジン車を改造したミニキャブMiEVは「エンジン車を代用する小型EV」に仕上げられています。でも、ELEMOはそもそも「小型EVとして、配送などに活用するにはこんな感じでいいんじゃない?」という提示が読み取れるのです。
象徴的なのが「ブレーキの効き具合」でした。今までにも紹介してきたように、ELEMOはアメリカに本社を置く『CENNTRO』社のベースモデルを日本向けに足回りやブレーキなどを改良したモデル。ところが、試乗コースに出て最初のコーナーで感じたのが「おわ、ブレーキ効かない」という印象でした。
後で蕭さんに電話して確認すると、案の定、多くの方から同様の指摘があり、「事前に説明しておけばよかった」と思っていたとのこと。
少し突っ込んで説明を聞くと、マスターバッグなどブレーキペダルを踏んだ力をブーストする装置が付いたエンジン車に比べ、シンプルな機構のEVではブレーキの効き具合が弱いと感じることが多いとのこと。エンジン車でもレーシングカーではマスターバッグを装備しないのが一般的であり、ELEMOのブレーキも「レーシングカーのようにしっかりペダルを踏み込むことが大切」ということでした。
必要以上に過激な加速性能は与えられていないし、心配するほどではないですが、ELEMOを購入して配送などに使う際には、運転するスタッフの方には事前に「ブレーキはしっかり踏まなきゃ効かないよ」という説明はしておくのが安心です。
あとは、梅雨明けを思わせる暑さの中でもエアコンはしっかり効いてくれたし、少しチャレンジングにコーナーに突っ込んでみても安心感のある挙動で走り抜けることができました。
初年度の販売目標は500台とのこと。はたして、どんな街のどんなお店がELEMOを活用することになるのでしょうか。11月以降、ユニークな導入実例があれば、ぜひ取材を重ねたいと思います。
(取材・文/寄本 好則)
寄本様。
私なりに地元の兵庫三菱姫路三菱各2店舗と京都三菱大阪の三菱、岡山の三菱でミニキャブMiEVバンが売られていることを確認してみましたがただの1件も知りませんでした。
調べて連絡するとも言われなかったのが残念ですが
それは置いておいて。
業態変更で今はスズキアリーナの営業をやっている懇意にしてもらっている方から唯一、
本社に法人営業部というのがあるのでそこで扱っているのではないか?
とのコメントをいただきました。
なるほどと思うと同時に郵便局から追加発注でもあるのかな?
これまでのスペックのままなのかもう少し航続距離を伸ばしての発注なのか気になると同時に我々のような個人事業主にも売ってくれないかと期待してしまいます。
軽貨物 さま、ディーラーへの確認&コメントありがとうございます。
現行モデルでありながら、実際にはディーラーで扱えない状況であれば、おかしなことですね。
聞いてみます。
軽貨物さま、みなさま
編集部としても気になっていたので、三菱自動車に確認しました。
記事に書いたように、ミニキャブMiEVは健在です。法人向けが中心ながら、カタログモデルとして継続しているということです。
リン酸鉄で値下げ? など、読者のみなさんの支持と期待が大きい(ことにSCiB待望論)こともお伝えしておきました。
ELEMOにとっては日本市場の中で現状唯一のライバル、となるわけですが。ミニキャブMiEVが起死回生のフルモデルチェンジ! なんてニュースがあれば、小型商用EVのニーズがさらに高まることでしょう。どっちもがんばれーな気持ちです。
最近地元で日本郵便のミニキャブミーブ見かけました。地方都市でも導入が始まったばかりで今後の配達車両更新に伴い当面継続生産するんやないですか!?そうでなければおかしいと思った。
ELEMOのほか、佐川急便が導入予定の配達用軽EVにも興味が行きますが…個人的には唯一CHAdeMOポート搭載のミニキャブミーブを応援していきたいです。電池が変わるのは日産三菱軽規格EV登場後、あるいは電池調達メドがつき次第かな。
※SCiB待望論をメーカーへ伝えて頂き有難う御座いましたm(__)m
日本の軽自動車規格となって発売されれば、赤帽の軽トラがELEMOに変わりそうですね。
それから、軽キャンパーも流行っていますから、ELEMOベースの電動軽キャンパーが出来ると良いと思います。
大木 広士 さま、コメントありがとうございます。
トピックとしては割愛しましたが、発表会でも「軽規格」の話題は出ていました。
年内には軽規格の車両(120タイプのオーバーハングを切断して全長を短縮)導入を目指し、2023年には軽規格を含めた独自開発の新型ELEMOのローンチを目指す、ということです。
そのためにも、まずはこの初号機ができるだけ多くのお店や企業に導入されるといいな、と。
急速充電に対応していないので、長距離走行も想定されるキャンパーにそのまま使うのは厳しいかも、ですね。道の駅などに普通充電設備も広がれば、車中泊を楽しみながらのんびりロングトリップ、なんてのがいいなぁ、と思います。
ミニキャブ ミーブもバッテリーにテコ入れ(リン酸鉄系)で低価格化!とか噂が出てるけど、どうなんでしょう?
私はMタイプに乗ってますが。
アイミーブMタイプ乗りとしては東芝SCiB搭載車種拡大に期待してますー!
あとリン酸鉄・三元系・チタン酸を問わずリチウムイオン蓄電池はBMS(電池管理システム)に不具合があると発火の危険性があるのも確か。海外のテスラ車発火炎上もBMSが電池を制御しきれてへんから起きた模様。
そう考えると東芝はSCiBに最適なBMSを内製[自社生産]したからこそ世界トップクラスの安全性を確保できたんやないですか?そこにMade-im-Japanの魂を見出せるっつーか。
最近東芝は水系リチウムイオン電池の話題で持ちきりですが…もしやこれが次世代SCiB誕生のフラグでっか!?少なくとも2022年にJR東海ハイブリッド特急車両搭載と噂されてますからそう遠くはないですよ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC133670T10C21A6000000/
こんな記事もありますが、ガセネタかアドバルーンということでしょうか。
噂なんです? さま、情報コメントありがとうございます。
リンク先の記事、日経ですし、なにがしかのソースはあるのだと思います。ミニキャブMiEVリン酸鉄説の震源はこの記事なんですね、きっと。
ただ、三菱からはまだアナウンスはないですし、先日、電話確認した際にも明言はされていませんでした。
また、三菱がタイで100万円台のEVを、とか、スズキがインドで2025年、とか、コンパクト(もしくは軽)な低価格EVのニュースが散見されるようになりました。価格はもちろん大事なのですが、少し思うところもあるので、改めて記事にできればな、と思っています。
>現在、日本国内で買える商用車EVは、三菱の『ミニキャブMiEV』だけ。
???3月に、、、
走行距離を稼ぐためにでしょうか、走りはそれなりだとか。
いいのではないでしょうか。
ミニキャブMiEVバン/トラックの後継は日産三菱、トヨタダイハツスズキ、ホンダ
各社の奮闘に期待します。
軽貨物さま
コメント&ご指摘ありがとうございます。
ミニキャブミーブ、生産終了で在庫もない、と報じられてましたよね。実際、ディーラーに注文しても断られるのでしょうか? 未確認です。
また、三菱からまだ正式な終了のアナウンスはないはずで、公式サイトの車種ラインアップにも残っているので、昨日執筆時、ひとまずこのようにしました。
今日にでも、改めて三菱に確認してみます。