日本でもEVトラック普及が本格化? 三菱ふそうが施設見学会を開催

三菱ふそうトラック・バスが、EVトラック導入を検討するユーザのための「カスタマーエクスペリエンスセンター」と、同社従業員向けの電動車両トレーニング施設である「eLab」のメディア向け施設見学会を開催しました。とくに小型トラックのカテゴリーで、国内メーカーの動きが活発になってきている印象です。

日本でもEVトラック普及が本格化? 三菱ふそうが施設見学会を開催

施設見学会では電動化への戦略を説明

2021年11月30日、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下、三菱ふそう)から、「お客様に eモビリティとエコシステムのソリューションを体感いただく施設「カスタマーエクスペリエンスセンター」と、 電動車両の従業員向け トレーニング施設「eLab」の プレス向け施設見学会を開催」する旨の案内があり、参加してきました。

三菱ふそうについては、11月15日にも「サステナブル・モビリティ・フォーラム」を開催したことをお伝えしたばかりです。また、11月22日にはヤマト運輸と日野自動車が小型EVトラック『日野デュトロ Z EV』による集配業務の実証実験を開始すると発表したこともお伝えしました。日本国内商用車メーカーの、小型EVトラックに関する動きが活発になってきた印象です。

今回見学会が行われた「カスタマーエクスペリエンスセンター」とは、三菱ふそうが2017年に先陣を切って発売した『e CANTER』(eキャンター)の導入を検討する運送会社などのユーザーに向けて、実車を用いた商品説明や三菱ふそう(ダイムラートラックグループ)の電動化への取組の説明や、充電インフラ体験、希望に応じてEVトラック生産ラインの見学などを提供する取組です。「ディーゼル車よりも高い(詳細な価格は非公表)」電気トラックのeキャンター導入を悩む企業の担当者にとって、疑問や不安を解決するための機会になる、ということでしょう。

専用の建物などがあるわけではなく、神奈川県川崎市内の三菱ふそう本社内にある「FUSO ACADEMY」という、おもに同社従業員向け研修施設を活用して説明会などを実施。本社敷地内に2基設置されている急速充電器での充電を体験したり、周回コースでの試乗も体験できるということでした。

eLab

「eLab」とは、「FUSO ACADEMY」の一室に設置された、同社従業員が電動車の原理などを学び体感するための研修施設です。交流と直流の違いといった電気の基本から、バッテリーとインバーター、モーターが連動した具体的なEVテクノロジーまで、「約120時間分」のコンテンツを利用可能で、修了者は「eMobility expert」という社内資格が得られるとのこと。

現在、今回見学会が実施された川崎本社のほか、下関(山口県)と喜連川(栃木県)の3カ所のトレーニングセンターに「eLab」があり、すでに全国65カ所の販売拠点のカスタマーサービス従業員の研修が完了。今後、大阪と仙南(宮城県)にも同様の「eLab」を開設し、2022年Q3までにさらに70カ所の販売拠点の営業職の研修を行う予定になっています。

実験キットのようないろんなモジュールが並んでいて興味深かったのですが、実際に行われる研修の内容までは公開されず、実験キットを試せなかったのが少し残念、でした。

今回の「施設見学会」は、eキャンターが展示されたセミナールームでのプレゼンテーションがメインイベントでした。

アレキサンダー・ルージングCTO。

登壇したのは、チーフトランスフォーメーション・オフィサーのアレキサンダー・ルージング氏や、三菱ふそうのeモビリティ事業を統括する国内商品計画部の岩崎孝倫部長など。要するに、三菱ふそうの電動化戦略についての説明でした。

●フリート管理を効率化して配送ルートの自動作成などができるアプリによる利便性向上。
●「距離は金なり」〜基本料金を低く抑えて、毎月の走行距離1㎞毎に加算される「変動リース料」を組み合わせた『マイレージリース』の提案。

といったポイントは興味深く、今後、商用車において電動化を普及させるためにも重要な「メリット」になるのではないかと感じました。

「次期モデル」のバリエーションや価格に期待したい!

国内商品計画部の岩崎孝倫部長。

稼働が少なかった月はリース料が安くて、いっぱい走って売上が大きかった月は少し多めにリース料を払うということで、「距離は金なり」をキャッチフレーズとしたマイレージリースの仕組みはユニークで魅力的だと思います。とはいえ、2017年から4年間で積み上げたeキャンターの販売台数はグローバルでもまだ300台を超えた程度に過ぎません。

【関連ページ】
「FUSOマイレージリース」スペシャルサイト

スペシャルサイトから引用。

質疑応答の時間があったので、「前向きな電動化戦略は素晴らしいと思いますが、もっと大切なのは新型EVトラックの車種拡大や、コストダウンで価格を手頃にすることでは?」と質問してみました。

この日は新型車の発表会ではなく、当然、具体的な回答は得られなかったのですが、岩崎部長から「バッテリー容量などのバリエーションを拡げた『eキャンターの次期モデル』開発は意欲的に進めているところ」という答えをいただきました。世界でもいち早く小型電気トラックeキャンターを発売した三菱ふそうだからこそ、EVならではの利点を活かし、補助金をあてにせずともディーゼル車と競争力がある価格の新型EVトラックを、どーんと発表してくれる日が近いことを期待しています。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 三菱ふそうと言って例のタイヤ脱落事故を連想するアレルギー患者も少なくないですが…自身は映画「トラック野郎」シリーズのおかげで克服できてます(笑)…どきやがれ!(爆)
    それはともかく三菱系の商用車はどれも航続距離100kmが目安のようですね。ミニキャブミーブもバン100km/トラック110kmですしw
    ひとまず狭いエリアでルート営業向けにEVトラックを活用してもらい、容量増加のテクノロジーが出てくれば随時拡大する戦法。しかも電池容量が増えると積載可能重量が減るので適正化を図っているのが現状やないですか?!
    そうなると大手物流運送会社や宅配貨物輸送なら80kmでも何とかなる範囲で普及していくはず。現に日本郵便がミニキャブミーブ導入してるやないですか…そこまで頭が回らないエンジン脳の経営者へ啓蒙せな進まへんやないですか?!
    結局は意識改革こそが電動モビリティ普及の最重要課題。政府や行政にその視点があれへんのは問題やでーホンマ!!

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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