プジョー『e-208』がついに日本発売! 電池容量50kWhで約390万円〜

2020年7月2日、グループPSAジャパンは、プジョーブランドの電気自動車(EV)『e-208』を日本で発売することを発表しました。内燃機関(ガソリン車)の『208』と同時発売です。売れ筋のコンパクトカーにEVを投入するのはPSAの本気度を示していると言えそうです。

プジョー『e-208』がついに日本発売! 電池容量50kWhで約390万円〜

EVとエンジン車が自然な選択肢になる車

プジョー『e-208』の日本発売に関する発表会は、新型コロナの影響でオンラインでの開催になりました。今回、グループPSAジャパンはICE(ガソリンエンジン)のバージョンと電気自動車バージョンを同時に発表、発売しました。

7月2日の夜7時に始まったオンラインカンファレンスでは、冒頭に『e-208』をメインにしたVTRを流したのが印象的でした。欧州に比べれば日本のEV市場はまだ小さいので、ガソリン車とEVのどちらを中心にするのか注目していたのですが、メーカーの今後の方向性=電動重視、を強く打ち出した作りになっていたように感じました。

【NEW PEUGEOT 208/e-208 オンライン発表会】(YouTube peugeotjapan)

オンラインカンファレンスでの大きなメッセージは「パワー・オブ・チョイス」という言葉でした。グループPSAジャパンの上村学プロダクトマネージャーはこのコンセプトについて次のように説明しました。

「プロダクトはICEでもEVでも、装備、室内も同等に作っています。これまではEVは特別(な車)で高額、ICEは普通の車と位置付けられていましたが、プジョーではパワーソース以外は同等に作り、お客さまの好みによって選択できるような販売方法にしました」

グループPSAジャパンの上村学プロダクトマネージャー。

EVsmartブログでは昨年の東京モーターショーの時に、日本で初公開された『e-208』の概略をお知らせしました。

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この時にもプラットフォームをエンジン車とEVで共有していることをお伝えしていますが、車の形だけでなく、所有し、使うことまで考えた時に「エンジン車とEVのどちらにするか」という選択肢が自然に出てくることを目指すようです。例えばトヨタやホンダではハイブリッド車が普通にラインナップに含まれるようになっていますが、PSAではさらに一歩進んで、パワートレインのバリエーションに「EV」が並ぶということです。

月額のコストをEVとエンジン車で同等にした販売戦術

EVとエンジン車を同じラインナップに並べるという意味を、もう少し詳しく見ていきましょう。

グループPSAジャパンは今回、日本で発売するNEWプジョー208について、ガソリン車では「Style」「Allure(アリュール)」「GT Line」の3つのグレードをラインナップしています。一方、EVの『e-208』では、「Allure」「GT Line」の2グレードになっています。これらの車の装備は、グレードが同じならガソリン車とEVで違いはありません。

あ、EVの場合はガソリン車の装備に加えて、離れた所から充電制御やエアコンの作動指示などができる「eリモートコントロール」や、充電ケーブルが付属しているのが違う点ではありますね。


とはいえ、販売価格は同じではありません。並べると次のようになります。

車種グレード価格(税込)
e-208Allure389万9000円
GT Line423万円
208Allure259万9000円
GT Line293万円

EVの方がガソリン車よりも100万円以上高くなっています。この点について上村氏はオンラインカンファレンスで、「小売価格はEVが約100万円高いが、小売価格だけでなく、所有コストすべてを計算して月々で割ると、あまり差がないという考え方を提供したい。金利、電気代、保険、整備、税金などをすべて加味すると大きな差がないことを訴えていきたい。月々にすると(支払い額に)大きな差がないというのが、パワー・オブ・チョイスの戦略のひとつになっている。そういう中でお客さまのライフスタイルに合わせて、電気を選ぶのかガソリンを選ぶのか、一緒に話しあっていきたい」と説明しています。

オンラインカンファレンスより引用。

税金や燃料費などを含めたトータルの維持費はエンジン車よりEVの方が安いというのは、EVをよく知っている人には既知のことですが、このことを訴えるメーカーが増えるのは、EV市場拡大にとってプラスになるのは間違いないでしょう。

ところで『e-208』に対する補助金がいくらになるのかは、まだ発表されていません。クリーンエネルギー自動車の補助金は現在、一充電あたりの航続距離(JC08)から200kmを減じたものに2000円/kmを乗じた金額(ただし上限は40万円)になっています。このため走行距離が長い方が有利になる傾向があります。

『e-208』は、まだJC08サイクルの距離が出ていないので金額がいくらになるのかは不明ですが、ほぼ満額が出ているリーフ(40kWh)よりも一充電あたりの航続距離は長いので、上限に近くなるだろうと予想できます。ただし、給電機能は装備していないので2万円の増額分はありません。

なお、『e-208』のデリバリー開始は今年10月頃に予定されています。

バッテリーの保証は8年、16万km、70%

ここからは細かなスペックを見ていきたいと思います。基本的なスペックは以下のようになります。ここでは、『e-208』とプラットフォーム『eCMP』を共有しているシトロエン 『ë-C4』を並べてみました。

 e-208 Allureë-C4-100% ëlectric日産リーフX(40kWh)
全長4095mm
4360mm4480mm
全幅1745mm
1800mm1790mm
全高1445mm
1525mm1560mm
ホイールベース2540mm
2670mm2700mm
電池容量50kWh
50kWh40kWh
一充電航続距離

340km(WLTP)
350km(WLTP)322km(WLTC)
約303km(EPA)約312km(EPA)約240km(EPA)
最高出力/トルク100kW/260Nm100kW/260Nm110kW/320Nm
80kW/220Nm
60kW/180Nm
価格約390万円〜未定約382万円〜

※e-208のボディサイズは発表されたICEのもの。
※日産リーフXのプロパイロット(運転支援機能)はオプションで約10万円〜。

こうして見ると、当たり前ではありますが、『ë-C4』の方が若干、大きめになっているのがわかります。ホイールベースも長めです。電池容量は同じなので、床下の搭載場所も変わらないと考えていいと思います。ちなみに『e-208』と、ガソリン車の『208』の床を比べると、若干、高くなっている部分はありますが、ほぼフラットでした。

パワートレインも『ë-C4』と共通と思われます。今回発表された『e-208』は、3種類のドライビングモードで出力を制御しています。モードがスポーツの時には100kW/260Nm、ノーマルでは80kW/220Nm、エコでは60kW/180Nmになります。また回生時の制動力は『D』と『B』の2段階になっていて、『B』にすると回生ブレーキの制動力が上がるようです。ただし、ニュースリリースでもワンペダルでコントロールできるとは書いていないので、完全に停止するところまで回生を制御しているわけではないかもしれません。

バッテリーは床下で、前席の座面下、後席座面下、センターコンソールなどに分割して搭載しています。このためトランクスペースは、ガソリン車でもEVでも同等になっています。

またグループPSAジャパンでは、バッテリーの保証を8年、16万km、70%以上の容量としています。最近、上級車では保証期間が長くなる傾向があるので8年というのはそれほど長いとは言えませんが、こうした保証が明確になってきたのは良い傾向だと言えるでしょう。

もっとも70%というのは少し微妙に感じます。スマートフォンの電池容量もそうですが、80%を切ると極端に使用可能時間が短くなる印象を受けます。また、例えば急速充電時には上限に近くなると入りにくくなるので、容量が減ってくるとそれに応じて一定時間での受け入れ可能量も減ってきます。そう考えると、願望としてはもう少し保証の容量が多いといいなと思いますが、欲張りでしょうか。

急速充電の受け入れは、チャデモの50kWに対応します。欧州モデルはCCS(コンボ)の100kWに対応していますが、日本ではまだ100kW級の充電インフラが少ないこともあって50kWになっていると推察できます。とはいえ、これだと80%まで入れるのに50分かかります。また高速道路SAPAなどで規定されている30分だと、実際には100km分+α程度の電力しか入らないかもしれないので、500kmを超えるようなロングドライブの場合は充電回数が増えて少し骨が折れそうです。

まあ、充電休憩を増やせばいいだけとはいえ、せっかくなので、できれば100kWまで対応してほしいところではあります。充電器の出力が低いので電池には優しいのは間違いありませんが、欧州の半分というのは余裕がありすぎです。でも、まずは車が増えないと充電器は増えそうもありませんね。

この他、スマホのアプリから充電やエアコンのコントロールができるのは、前述した通りです。こうした機能は、EVでは「できて当然」になってきました。

ちょっと興味深いのは、ガソリン車とEVで共通なのですが、プジョーがセールスポイントにしている『3D i-Cockpit』というインストルメントパネルです。メーターパネル部分をホログラムで立体的に見えるようにし、情報の重要度に応じて、手前に表示したり奥に表示したりするそうです。これも体感してみないとなんとも言えませんが、EVの場合はガソリン車よりも気になる情報が多くなりがちなので、どう整理されているのかは、アプリで可能な操作や得られる情報のバリエーション、反応速度などを含めて、改めて試乗の機会などで確かめたいと思います。

スペック表には参考までに価格も入れてみました。先日『ë-C4-100% ëlectric』の発表をお伝えした記事では、日本での価格が450万円以下であれば「とても魅力的な選択肢になる」と予想していますが、『e-208』が400万円を切ってきたので、かなり期待できるのではないかと思われます。

また、今年の秋にも日本での発売が予想されている『Honda e』とイギリスでの価格を比較してみました。

Honda e /26,660ポンド(約358万円)〜
e-208 ALLURE/30,225ポンド(約406万円)〜

Honda e の電池容量は35.5kWhで、50kWhのe-208の方が50万円程度高い設定です。Honda e の日本での価格はまだ発表されていませんが、イギリスのケースを当てはめると、やはり350万円前後からになると思われます。「次はEV」と考えている方にとって、ようやく「悩ましい選択肢」が増えてきたといえそうです。日産リーフ40kWhも、今の価格のままでは50kWhの『e-208』より事実上高価になってしまうので、市場から値下げ要望が出てくるかも知れません。

なにはともあれ、売れ筋のBセグメントに、補助金を利用すれば少々オプションを奢っても300万円台で手に入る電池容量50kWhのEVが日本にも登場したのは大歓迎。東京都の場合は都の補助制度もあるので、実質価格は300万円台前半になります。

グループPSAジャパンでは今後、シトロエンでもPHEVやEVを日本に導入する計画をもっています。高出力急速充電が可能な車種が増えればインフラ側にも変化が期待できます。『e-208』の登場が、EVを取り巻くこれからの市場動向、社会情勢の変化のきっかけになるようだとおもしろいと思いました。まずは10月の登場を楽しみにしたいと思います。

(文/木野 龍逸)

5 thoughts on “プジョー『e-208』がついに日本発売! 電池容量50kWhで約390万円〜”

  1. 充電ケーブルの写真の所の書き込みを見ると「6.6kw ON BOARD Charger(opshon11kw)」とありますが
    200V普通充電での規格ということでしょうか?
    こういった車種を選ぶ人がV2Hが出来ない事を重視するとは考えにくいですが、せめて1500Vコンセントは欲しいですね。

  2. 急速充電はチャデモということは、給電はソフトのバージョンアップで対応可能なのだろうか?

  3. 逆に言うと、それをやってこなかったのが日本車メーカーというか
    バッテリーの交換で多額の金がかかるように思わせてしまった(さすがに意図的にやって電気自動車への不信感を植え付けた祖するのは陰謀論でしょうか?)

  4. 10万円高くなっても(その程度には収まらない?)V2H対応にしてもらいたい。

    1. V2Hにして貰いたい理由は、自動車のエネルギーを再エネ化するには電池だし動く社会的ストレージと位置付ける事で早期に脱化石燃料、脱原子力WO達成する事が可能だと見てるからだが、そこは、既存の業界を守ろうとする流れで中々進まないかも知れないが、其処は未来への負債を空くなくするということを考慮し次の社会経済の有り様を含めて議論すべきなのではと思う。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。「Yahoo!ニュース 特集」などで災害対応や司法の問題などについて記事を執筆中。また原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に「ハイブリッド」(文春新書)、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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