米国電気自動車セールスを引っ張るテスラを追随するのはポルシェとフォルクスワーゲンか

アメリカの電気自動車市場は、世界的に大ヒットしている『モデル3』を有するテスラがけん引しています。では2位以下はどのメーカーになるのでしょうか。2021年第3四半期EV販売台数シェアの解説を、全文翻訳記事でお届けします。

米国電気自動車セールスを引っ張るテスラを追随するのはポルシェとフォルクスワーゲンか

元記事:After Tesla, Porsche & Volkswagen Lead in Share of Sales Being Electric in USA — 12.2% & 7.6% by Zachary Shahan on『CleanTechnica

先日、テスラCEO(正式にはテクノキングですが)のイーロン・マスク氏が、200人のフォルクスワーゲングループ幹部会議に呼ばれたというニュースが届きました。奇妙な話にも聞こえますが、筋は通っています。VWは車両の電動化に最も真剣に取り組んでいるレガシー自動車メーカーに見えます。

しかし、VWは1人の人間ではありません。何万人もの人が車両製造、エンジン製造、販売、サービス・修理などで働いています。さらにVWグループには様々なブランドがあります。社員の中には会社に純電気自動車へ急いでシフトしてほしいと考えている人もいれば、シフトが不可欠だと思ってすらいない人もいます。ディース氏(VWグループCEO)は前者ですが、電動化を進めるために後者に属する人達を常に説得して回っており、200人の幹部会議にもマスク氏を引き入れたのです。

これらを念頭に置いて、VWのEVシフトがどのような状態なのか、米国市場の他自動車メーカーの状況も少し合わせて見ていきましょう。

純電気自動車しか売らないテスラは、自然に市場のトップにいます。統計を過去数年追ってきた方からすれば、ポルシェがレガシー自動車メーカーの中でトップにいるのは驚くべきことではないでしょう。長い間この位置にいたのです。第3四半期には、12.2%のセールスが純電気自動車(ポルシェ・タイカン)でした。ただし数値は第2四半期の17.7%より落ちています。

ポルシェ タイカン。画像はポルシェ公式より。

米国市場ランキングの表彰台で次に来たのはVWグループに属する別のメンバー、フォルクスワーゲン自身で、セールスのうち7.6%が純電気自動車(すべてID.4)でした。EVシェアが4.8%だった2021年第2四半期から、大きな飛躍です。

フォルクスワーゲン『ID.4』発表〜日本導入は2022年以降で検討中
VW ID.4。画像はVW公式より。

これ以下に関しては、言うべきことはあまりありません。しかし、次に来るのがまたしてもVWグループのブランドで、第2四半期からスコアを大きく落としていることもあるので、アウディにも言及しておきましょう。第2四半期では米国セールスのうち3.8%が電気(e-トロン、e-トロン・スポーツバック)でしたが、第3四半期には数値が1.9%に落ちました。したがってVWのパーセンテージが上がる一方、グループの上位クラスブランドであるポルシェとアウディは少々数値を落としたのです。

第4四半期にはVWグループのブランドはどうなるのでしょうか。あなたはどう考えますか?

残りに関しては、特筆すべきことはありません。すべての自動車メーカーがゼロから設計した電気自動車を持っていない(ガソリン車を改造している)のは言うまでもありませんが、BMW、日産、フォード、シボレーはEVセールスの努力を底上げすべきです(訳者注 ※日産はアリアが初のBEV専用に開発されたプラットフォームを採用したEVとなります)。2%以下のEVシェアでは及第点に達しませんし、個人的には、2021年に10%以下でもダメだと思います。しかしそれではポルシェのみが少しの褒めるに値するということです。VWがもしかしたら第4四半期か2022年に成功組の仲間入りをするかもしれませんが。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)5件

  1. レガシーの象徴と言われ、腰の重かったVW/Audiグループが急速に電動化を進めています。
    現在のJ1やMEBプラットフォームは、特に低圧回路に従来技術をキャリーオーバーしていますので、本当の勝負はPPEであり、その先のSSPだと思われます。

     しかし、この日独両トップメーカーの戦略の違いはなんでしょうか?
     如何にトップが危機感を抱いて、トップダウンで社内外の反対勢力を説得して、協力させるかではないでしょうか?

     また、ここでも再三指摘されている、日系の選択肢の少なさには失望します。
     個人的には、BYD ドルフィンやORA グッドキャットが気になり、特に後者はすぐにでも購入したいと思わせる魅力的なデザインです。(さすが、元ポルシェのデザイナー)

    1. Alex k.様、コメントありがとうございます。
      トップの持つ、危機感なのでしょうかね。。
      日本はどこかで、実際に手を動かしてやってみる、というハンズオンの精神を忘れてしまっているように、私は感じています。恐らく日本の自動車メーカーのトップで、日常的に電気自動車に乗っている方はいらっしゃらないでしょう。これは社員の方も同じで、何かが来た時に試すということをせず、他人の評価をネットで読み、「○○が言ってることによればこうだ」と物事を理解しているように思います。なんだかうまく言葉にできないんですが、経験に基づく判断ではなく、伝聞に基づく判断が重んじられています。自分が小学生、中学生、高校生の時も、振り返ってみれば経験に基づく教育は少なく、理論に基づくものが多かったと思いだすことができます。これは結構大きな問題なのではないでしょうか?

      先日、GMがキャディラックの一部ディーラーを閉鎖することが話題になりました。これは主に小規模かつ、電動化に積極的でない販売店をバイアウトする、という計画だったようで、1年以上前から進められていたそうです。電動化に積極的でなければ、今までのままサービス中心のビジネスモデルで邁進し、その後売り上げが下がって倒産することでしょう。電気自動車では、サービスでは儲けられないからです。電動化=ビジネスモデルの変化、だということを、本当に産業全体で理解する必要があると思います。ディーラーは、今後、オートバックスのようなビジネスモデルへの転換が必要とされるのです。

    1. 安川様
      色々調べたら、そのようでした
      情報ありがとうございます!

      個人的には日本のBEVの将来としてはホンダに期待してます。BEVは本田宗一郎のMM思想とは相性も良さそうですしいい車を作るでしょう。

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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