エネオスの次世代SSで感じた「EV時代への可能性」&超小型EVの実車をチェック

ENEOS(エネオス)が展開する次世代サービスステーションの実証第一号店が茨城県牛久市にオープンしました。オープニングイベントに、かねて注目している超小型EVであるKGモーターズの「ミニマムモビリティ」が展示されると聞いて突撃取材。電気自動車時代に向けたいろんな可能性を感じたのでした。

エネオスの次世代SSで感じた「EV時代のライフスタイル」と可能性

SSが給油のための場所ではなくなる日

EV(電気自動車)には社会を変える力がある。そんな可能性を実感できるニュースです。

2024年3月29日、茨城県牛久市にENEOS株式会社(以下、エネオス)の次世代サービスステーション実証第一号店となる「ENEOSプラットフォームひたち野うしくサービスステーション」がオープンしました。何が次世代なのか。最大のポイントは「給油が主役じゃない」ところです。

エネオスは第3次中期経営計画で掲げている「エネルギートランジョン(化石燃料中心から持続可能なエネルギーシステムへの移行の意)の実現」に向けて、サービスステーション(SS)で「強固な顧客接点」と「デジタル活用による新たな価値の提供」を掛け合わせた新たなサービスを積極的に導入する実証を進めることを示しています。

今回オープンしたのは、その実証第一号店。「車と合わせて心も体もリフレッシュ!」をテーマに、「これまでのSSの概念にとらわれず、人々が集う場所とする」ことがコンセプトになっています。

プレスリリースより引用。

余裕のある敷地には、セルフの給油コーナーのほか、ドライブスルーのある「ドトール キッチン」(食事メニューが充実したカフェ)、ENEOSランドリー(直営のコインランドリー)。さらに別棟には、「choco ZAP(チェコザップ)」(手軽なスポーツジム)、「Goo-it!(グイット)」(全身もみほぐし)、「DOOR TO GOLF」(貸切ゴルフシミュレーター)、「Pet Plus(ペットプラス)」(犬猫ペットのトリミング&ホテル)といったテナントが並んでいます。

広々とした洗車場。給油が不要なEV乗りにはありがたい。

さらに、私道を挟んで洗車機が3台並んだ広々とした洗車場。駐車場も余裕をもって配置されていて、「ENEOS Charge Plus」のEV用急速充電器(50kW)が1基設置されています。

急速充電区画は廃プラアスファルト舗装。

目新しいのはテナントなどの施設ばかりではありません。急速充電器の駐車区画は廃プラスチックを原料にしたアスファルトで舗装。隣接するマルシェエリア(イベントなどでキッチンカーなどが集まるエリア)には、路面太陽光発電パネルが敷かれた一画があり、キッチンカーや来客が集まる場所は「パーフェクトクール」という晴天時にも路面温度を抑える技術が導入されています。

路面太陽光発電やパーフェクトクールなど、エコな工夫がいろいろです。

まさに、「車と合わせて心も体もリフレッシュ!」というテーマを具現したサステナブルな空間になっており、これからのカーライフにとってのSSは、給油が主役の場所ではなくなることを実感できたのでした。

給油よりも合理的な充電設備

朝10時のイベント開始直後から、マルシェもミニマムモビリティ展示も賑わっていました。

ガソリンは危険物なので、SSには地下にタンクを埋設したり、防火壁設置の必要があったりと、さまざまな規制があります。そもそも、危ないし臭いので、飲食など清潔なイメージが大切な施設との相性はあまり良くないと感じます。

一方、EV充電設備で扱うのは電気だからクリーンです。急速充電器にはキュービクルと呼ばれる受電設備が必要だったり、充電のためのストールもほぼ給油機ほどのスペースを取るものの、設置場所などの自由度は高まるし、いろんな意味で合理的。

さらに、出力6〜8kW程度の普通充電器であれば、より自由度高く、適切な数の充電設備を設置することができます。いわば、駐車場のオマケ機能としてEV充電を提供することができ、その場所(SS)で展開するサービスは、今回SSのテナントのような業種のほか、理美容店、スーパーマーケットなど、さらに多彩に広げられる可能性を実感できました。

また、今回のSSでさまざまな環境配慮技術が導入されたように、施設の屋根などに太陽光発電パネル、そして定置型蓄電池(パワーエックス「ハイパーチャージャー」のような蓄電式急速充電器でもいい)を導入すれば、災害などの非常時でも電力供給が可能な地域の防災拠点としての役割を担うことができます。

このSSができたのは、つくば学園研究都市にもほど近く、国道6号線と並行する「ふれあい通り」という大きな通り沿い。周辺は複数台分の専用ガレージを備えた戸建てが並ぶ住宅街でした。

EV社会に向けて想像を広げると、周辺住民の多くは自宅で充電できるでしょうから、ガソリンと違って、SSに充電の機能はあまり求められないかも知れません。その代わり、7人乗りSUVとか、スポーティセダンなどの電気自動車をシェアできる拠点になっているなんてのも面白いのでは、てなことも思い浮かびました。

「一人一台」で所有するのは、今回のオープニングイベントで展示されたKG「ミニマムモビリティ」のような超小型EVや軽EVなどにして購入やランニングのコストを抑え、多くの人数で出かけるなど必要な時に必要な車両は借りて使うのが、近未来のカーライフスタイルの選択肢になるのかも、というイメージです。

高級車を借りるのは高いとか、繁忙期に予約を取れるのかといった問題はすぐに思い付きますが。世界が脱化石燃料に向かう大きな流れの中で、SSとしても給油以外の新たな役割を確立していかなきゃいけないのは必然です。つまり、EV時代に生き残り楽しむためには、すべからく「変化」が必要だということですね。周辺住民に「外充電のニーズが低いのでは」と指摘しましたが、全国各地にこういうSSが増えるのであれば、道の駅のような「経路充電」スポットとしての役割も期待できるでしょう。

エネオスのチャレンジによって、合理的でクリーンなEVを活用しつつ、私たちの暮らしをより豊かにしてくれるサービスが生まれることを期待したいと思います。

ミニマムモビリティは「運転しやすそう」

EV時代に必然の「変化」を象徴するプロダクトのひとつが、KGモーターズの「ミニマムモビリティ」です。ひたち野うしくSSでは、3月29日(金)〜31日(日)までオープニングイベントを開催。先だってエネオスと「協業に関する覚書」を締結して、先行予約を開始したKGモーターズの「ミニマムモビリティ(プロトタイプ)」の実車が展示されました。

EVsmartブログでは『税込100万円で予約受付開始! KGモーターズが小型EVの量産ロードマップを発表』という記事を紹介するなど、ミニマムモビリティにはかねて注目してきました。とはいえ、実車に乗り込んだことはありません。

今回のオープニングイベントでは、量産に向けて試作した「T0」というプロトタイプの実車を展示。運転席に乗り込むのも可能ということで、31日の日曜日、マイカーのKONAで牛久まで出かけてみました。

現地で説明に大忙しだったKGモーターズ取締役の横山文洋さん。

朝一番、運転席に乗り込ませていただいて。端的な感想は「超小型モビリティとしてはとても運転しやすそう」ということ。そして「思った以上に使い勝手は良さそうだ」ということでした。

「運転しやすそう」という印象のポイントは、足もとのペダル配置が自然(普通の四輪車に近い)で、フォーミュラマシンのようにセンターポジション一人乗りで操るのが楽しそうと感じたのが理由です。今までも、いろんな超小型EVに乗った経験はありますが、運転席からの視界や姿勢がバイクを運転している感じだったり、足もとが狭すぎてペダルの踏み替えがやりにくかったり、左足の置き場がないと感じたりすることが多かったのが実際のところです。その点、ミニマムモビリティの運転席は足もとのスペースにも余裕があって、「ちゃんとしてる」印象でした。

もうひとつ、気になっていたのがカーゴスペースの使い勝手です。コストダウンのためミニマムモビリティのエクステリアデザインは前後シンメトリーになっています。原付四輪規格の一人乗りで、左右にドアはあるので乗員の乗り降りは問題ないとして、今までチェックしてきた動画などでカーゴスペースの使い勝手がよくわかりませんでした。

実車を見ると、カーゴスペースは80cm四方くらいはあってそこそこ広く、後部のガラス部分がガバッと開いてダンパーで止まるようになっていました。軽トラほどの気軽さはないものの、これなら使いやすそうだという印象でした。

この日、展示車にナンバーは付いていたものの試乗はできなかったので、あくまでも見ただけ、座っただけの印象ですが。KGのミニマムモビリティ、想像以上に楽しくて使い勝手のいい超小型EVに仕上がりつつあると感じました。

ただし、「T0」は2025年9月の量産開始に向けて、この後さらに「T1」「T2」と急速に進化していく予定になっている、ほぼハンドメイドのプロトタイプです。3Dプリンターで作ったという樹脂製のパーツが、季節外れの温かな太陽の熱でちょっと変形してしまっていたり、発泡の素材を削って作ったドアなどの内側パネルがちょっとざらついていたり。運転席の座り心地に改善の余地があると感じたりといったツッコミどころはありました。

とはいえ、全体的に「一人乗り超小型EV」としては上出来。新しい生活ツールとして楽しく活躍してくれる予感を十二分に感じることができたのでした。量産に向けて、どんな進化を遂げるか楽しみです。

ENEOS Charge Plus でご祝儀充電

マイカーKONAでの東京=牛久往復ドライブ。満充電からの出発で、牛久到着時にも75%ほどのSOCがあったので充電の必要はなかったのですが。新SS開店(新スポット開設)のご祝儀的に、ENEOS Charge Plus の急速充電器で20分だけ(すぐに80%を超えるので30分やってもそんなに入らないから)充電させていただきました。

ENEOS Charge Plus の充電にはe-Mobility Power提携の充電カードが使えて、私が所有している日産ZESP3なら100分/月の無料充電(月額料金に含まれている)もできたのですが、ここはあえて以前作ったENEOS Charge Plus 会員カードで認証。20分で924円のご祝儀になりました。

守谷SA上り線。充電はせず、写真を撮っただけでした。

さらに、東京への復路では守谷SAに立ち寄ってeMPの新型器をチェック。ニチコンマルチプラグ器が4口に、ABBの最大150kW器(2口)の計6口を備えた充電スポットに進化していることを確認しました。

歩みの遅い日本のEVシフトではありますが、EVを取り巻く風景は、着々と進化しつつあります。

私のKONA Casual(2024年4月15日現在)

総走行距離 2900.6km
平均電費 6.8km/kWh

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 幸せなKONAライフを楽しまれていることが文章から滲み出ていますね!
    中国の影響で欧米のEV 事情が激変する中で日本は平和ですね。私もEVライフを満喫しています。
    ガラパゴスも悪くないかも・・

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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