テスラが自動運転でドライバー監視カメラを有効化

米国在住のKevin Smith氏によれば、買ったばかりの新車のモデルYのコントロールパネルを見てみると、ドライバー監視カメラについての記述があったそう。少しインタビューしました。

テスラが自動運転でドライバー監視カメラを有効化

自動運転とは、運転支援機能の一種で、レベル1からレベル5の5段階に分かれています。国産車によく搭載されている、レーダークルーズコントロールはレベル1で、このほかにレーンキープアシストのように、手の力を抜くと車線をまたいでしまう運転支援機能もレベル1です。

レベル2はレーダークルーズのような前後方向、そしてハンドル操作のような左右方向の操作の両方を自動化するものをいいます。代表的なのはテスラがオートパイロットという名称で2015年に販売を開始したもので、現在、当機能が全車両に標準装備となっています。レーダークルーズと同様、停止からすべての車速までの間でコンピューターが自動的に車間距離をコントロールし、カーブも自動的にハンドルを切って曲がることができます。テスラはFSD betaという、一般道でも使用でき、ナビと併用することにより、交差点の右左折、一時停止、歩行者優先などが処理できるソフトウェアを、約2000名のベータテスターで米国の公道でテストしています。
国産車では日産がこの分野で最も早く、プロパイロットという名称で新型日産リーフに2017年からオプション装着。それ以降、ハイブリッド車であるe-POWERのセレナやノート等の売れ筋の車にも装着しています。

レベル2で重要なことは、運転の責任は常時、ドライバーにあり、コンピューターはあくまで運転支援という位置づけであることです。レベル2自動運転では、よそ見運転や手放し運転、運転中のスマホや読書は認められません。よそ見や手放しなどのドライバーの行為は危険に直結するため、車メーカーはドライバーを監視する機能を装着することが義務付けられています。当記事はこのドライバー監視に関するもので、ハンドルにかかる荷重を検出することでドライバーがハンドルを握っていることを確認するシステム、および、車内カメラによってドライバーが目を開いているか、また前方を注視しているかどうかを監視するシステムが主流です。

レベル3-5は、作動中は、運転の責任は車にあります。そのため、運転中、スマホを見たり、読書したりすることは可能になります。ただ法規としてそのような運転が認められるかどうかは別の問題となります。レベル3-5の差は、どの程度の困難な状況が発生した時点で、コンピューターがギブアップするか、になります。レベル3には、速度が一定より高くなったら運転をドライバーに代わるよう強制する、ホンダのトラフィックジャムパイロットのようなシステムがあります。高速道路で渋滞している間は、DVDを見たりするくらいはできるということですね。

レベル3対応車両は非常に少ないですが、これらの車はほぼすべてがカメラによるドライバー監視システムを搭載しています。

レベル4では、通常の気象条件ではほぼ完全にコンピューター任せの走行が可能、レベル5とは、ドライバーが完全に不要なシステムということになります。米アルファベットの子会社であるWaymo(ウェイモ)は、レベル4に加え、緊急時には遠隔地にいるリモートドライバーが、車を遠隔操作できるような仕組みを開発し、実際に複数の米国の都市で営業走行(試験ではない走行)を行っています。

今回のニュースは、今まで主にハンドルの荷重検出によるドライバー監視(以降DMSと記載)を主としていたテスラが、車内カメラによるDMSを採用したということです。実は、テスラは2017年に発売されたモデル3と、モデルS/Xのマイナーチェンジ版であるRavenには、車内カメラをバックミラーに装着していました。内部に詳しいハッカーに寄って、これらは使用されていなかったと証明されています。ハンドル荷重検出によるDMSは国産車でも外国車でも多く採用されていますが、レベル2車両を世界で最も多く出荷しているテスラのドライバーには、ハンドル荷重検出のセンサーをうまくだまして、実際には前を見ないで走行して事故になる事例が複数件報告されていました。自動運転システムによっては急な割り込みに対応できなかったり、急なカーブでレーンを維持できなかっりするシステムもある中、テスラのレベル2は完成度が高いと評価されており、過剰な信頼を寄せるドライバーもいたということだと思います。
参考:テスラのレベル2自動運転機能で、アクセル・ブレーキ操作なし、291km連続走行の動画

本日、新車のモデルYが納車されたKevin Smith氏のTwitterによれば、彼のモデルYにはカメラによるDMSが搭載されていたとのこと。早速画像を見てみましょう。

ファームウェアは2021.4.15.11。これは2021年の4週目のビルドであることが分かります。1月のバージョンですね。ちなみに1万台以上のテスラ車両のファームウェアを追跡しているTeslaFiによれば、このバージョンのファームウェアを持つユーザーは他にいません。この11のブランチ部分が、恐らくDMSに関連しているのではないかと想像できます。

これは全車両標準の、「オートパイロット安全機能」の設定画面。自動運転時の速度制限の設定、前方衝突警告を発するタイミングの微調整、レーン逸脱警告の警告音と実際のハンドル操作によるアシスト、緊急レーン逸脱防止、ブラインドスポット衝突警告、自動ブレーキ、急発進抑制です。緊急レーン逸脱防止はまだ使えないと書いてありますね。自動ブレーキや急発進抑制機能を全車両に標準装備しているのはテスラが初めてだと思います。
12:51更新:当車両は、自動運転用のレーダーが装備されていない車両とのこと。

これは、オートパイロットの動作に関する設定で、当車両はFSDというオプションを購入しているため、二番目以降の選択肢が増えています。FSDなしの場合は最初の1つだけで、オートステアというのが、レベル2自動運転を意味します。ナビゲート・オン・オートパイロットは、ナビを設定することで、自動的に高速道路のレーンチェンジ、ランプへの進入、他の高速道路への乗り継ぎ、ランプから高速道路を降りるまでが自動で走行できる機能。日本以外のほとんどの国で許可されています。次の信号と一時停止は、一般道でオートパイロットを使用したとき、信号や一時停止標識に従って自動で走行できる機能。しかし、この機能には、右左折などは含まれておらず、まっすぐ進むだけです。青信号チャイムはそのまんま。FSDプレビューは、車両の周りの車、人、コーン、ポール、そして犬などをダッシュボード内に表示する機能。プレビューなのでONにしても走行に何か変化があるわけではありません。最後のサモンは、車両をスマホ(米国ではキーも使えます)で前後にだけ動かす機能。不思議なことに、この車両ではスマートサモンが有効化されていません。

スマートサモンは、駐車場内(米国では、駐車場は公道ではありません)で、車を無人で指定の場所に移動させることができる機能。基本的には駐車してある場所から、自分のいる場所に車を呼び寄せる機能となっています。これはFSDオプションを購入していれば使えるはずなのですが、(現時点では)使えない、ということは、何らかの開発が進行中ということを意味します。
12:51更新:スマートサモンも、緊急レーン逸脱防止と同様、レーダーがない車両であるため、一部開発中の機能があるという認識で良さそうです。

テスラが自動運転でドライバー監視カメラを有効化お待ちかねのカメラです!この画面はリリースノートという画面で、ファームウェアのアップデートの履歴を見られるものです。

車内カメラに関するアップデート
バックミラー上部に搭載されている車内カメラで、オートパイロット作動中に、ドライバーが注意を払っていないことを検出し、警告できるようになりました。車内カメラのデータは「データ共有」機能をONにしない限り、勝手に保存されたり送信されることはありません。データ共有の設定を変更するには、コントロール-安全とセキュリティ-データ共有で行ってください。

リリースノートの説明、およびコントロールパネルの記述を見る限り、このファームウェアでは車内カメラDMSはオフにはできないように見えます。

早速Kevin Smith氏にインタビューしましたのでご覧ください!

Q. 今日買ったばかりのモデルYですよね?納車、おめでとうございます!どんな感じですか?
A. 今のところモデルYは素晴らしいよ。以前モデル3を所有していたので、モデルYに乗り換えてもスムースだった。モデル3とモデルYは基本的に同じインテリアで、ちょっと着座位置が高いんだ。自分は(チリ等の)製造品質の問題については気づかなかった。納車はタッチレス(注、人が介在しない、自分で駐車場から車を持っていく新しいスタイルの納車方法)でスムース、すべてが素晴らしい!

Q. KevinさんはFSDオプションを購入したんですか?市街地の自動運転ができるFSDベータには参加していますか?
A. FSDオプションは購入しているけど、FSDベータには参加していないんだ。前に乗っていたモデル3でもFSDオプションは購入していて、今のところ、レーダーがあってもなくても機能はおおかた同じだね。オートパイロットの最高速度は前は90mph(145km/h)だったけどこれは75mph(121km/h)で、スマートサモンと緊急レーン逸脱防止は使えなくなっている。緊急レーン逸脱防止はオートパイロットOFFのときしか効かないから自分は気にしない。いつでも可能な限りオートパイロットをONにして走行しているんだ。
訳者注(12:51更新)、この車両は物理的にレーダーは装着されていないとのことです。新型ですね。

Q. 車内カメラDMSで自動運転レベル2走行を試してみましたか?ハンドル荷重ベースのDMSと比べて、何か違いは感じましたか?
A. この新しいモデルYでは車内カメラDMSが強制になっていて、外すことはできないんだ。車内カメラが撮影したデータをテスラに送信・共有してAIのトレーニングや改良に繋げるかどうか、は選べるけど、車内カメラによるDMSをオフにすることはできない。現時点では、車内カメラDMSによる違いは感じられなくて、ハンドルを握っていない場合の警告も以前乗っていたモデル3と同じくらいの間隔で出る。車内カメラを完全に見えないように覆っても、大きな違いは感じられなかった。私の推測だけど、現時点では車内カメラDMSはトレーニングと検証のフェーズにあって、運転しての違いみたいなものはもっと後で出てくるように思う。

Q. インタビューに回答ありがとうございます。日本のEVsmart読者の方々にメッセージください!
A. 日本のテスラや自動運転ファンの皆さん!こんにちは!テスラの電気自動車やテスラの(訳者注:レーダーを使わない)ビジョンによる自動運転機能の品質や信頼性に満足がいくときが来ると思いますので、それまで少しの辛抱です。政府や議員の方々に働きかけて、電気自動車が車の未来であること、そして支援を依頼してください。日本は化石燃料車を引きずっているようだけど、これは負け戦だと思うよ。日本は素晴らしい技術を持っているし、ロボットやオートメーションにすごく投資しているよね。テスラはこれらの産業を他のどの会社よりも強く動かし続けていると思う。この変化を受け入れ、未来を一緒に作ろう!

Kevinさん、急なお願いにも関わらず快くインタビューに応じてくださり、ありがとうございました。
画像:Kevin Smith氏より許諾
(文章・翻訳:安川 洋)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

執筆した記事