補助金を使った公共充電スポットが検索できない? エネチェンジ勉強会でわかった驚きの現状

6kW普通充電器を中心とした電気自動車充電サービス「EV充電エネチェンジ」を展開するENECHANGEが、EV充電インフラについてのメディア向け勉強会を開催。「公共充電器情報の公開を義務化すべき」といった今後の課題を指摘して改善を提言しました。

補助金を使った公共充電スポット情報が検索できない? エネチェンジ勉強会でわかった驚きの現状

EV充電インフラへの正しい理解を広げるために

2024年2月15日、「EV充電エネチェンジ」を展開するENECHANGE株式会社(以下、エネチェンジ)が「EV充電インフラ 令和6年度予算への当社見解」と題するメディア向け勉強会を開催しました。

EV充電インフラについては「実際に使ってみないとわからない」側面が多く、まだ日本国内での普及率(新車販売シェア)が低く、EV運用経験がない方も多いメディアの記者さんたちに向けて、現状や課題を説明し、質問に応じるための「勉強会(メディアラウンドテーブル)」です。

エネチェンジでは2021年11月のEV充電サービス事業の開始以来、定期的に同様のラウンドテーブルを開催しています。EV用普通充電器を展開する事業の拡大のみならず、EV充電インフラへの正しい理解を広げ、日本のEV普及に積極的に貢献しようとするアクションのひとつといえるでしょう。

ご承知のように、EVsmartブログの運営会社はエネチェンジです。取材先などで時折「エネチェンジびいきなんでしょ?」的な質問をされることがあります。でも、2021年の事業譲渡時から繰り返し説明しているように、EVsmartブログはあくまでもEVユーザー目線で、公正な情報発信を目指しています。

エネチェンジのニュースをすべからく記事にするわけではないし、ほかの充電サービス事業者のニュースや発表についても、EVユーザーにとって有意義と判断すれば取材して記事にしています。もちろん、疑問や懸念があれば指摘しますが、あくまでもEVユーザー目線で考えた、是々非々(疑問や課題があればきちんと提言する姿勢)の情報発信を重ねています。

「EV充電インフラへの正しい理解を広げ、日本のEV普及に積極的に貢献」したいという思いは、私自身、そしてEVsmartブログ編集部としての理念でもあるということです。

と、前置きが長くなりましたが……。

「公共充電器情報の公開義務化」が課題?

勉強会では、ENECHANGE株式会社の城口洋平CEOが登壇。「電力システム改革の検証に対する当社見解」を説明した第1部に続き、第2部のメディアラウンドテーブルとして「EV充電インフラ 令和6年度予算への当社見解」の説明が行われました。

EV充電インフラに関する説明は、昨年と比較してほぼ倍増した令和6年度の充電インフラ補助金についての見解を示したパート1(関連記事)と、新年度以降に向けた「充電インフラ政策の課題と提言」を示すパート2、大きく2つのテーマに分けて説明されました。

今日、あえて記事としてクローズアップしたかったのは、今後の充電インフラの課題のひとつとして「公共充電器情報の公開義務化」が指摘されたことに、驚きと疑問を感じたからです。

国の充電インフラ補助金の申請要件には、商業施設や宿泊施設に設置する充電器について「利用者を限定せず、他のサービスの利用または物品の購入を条件としないこと=誰でも利用できること」とともに、「充電設備の場所や利用可能時間、メンテナンス等による休止状況および空き状況などを利用者が誰でもインターネット上で確認できること」と定められています。

ところが、補助金を受けて「公共」のスポットとして設置されたにも関わらず、充電器データを第三者の検索サービスに対して開示していない充電サービス事業者があるというのです。エネチェンジでは国内最大のインストール数をもつ充電スポット検索アプリ「EVsmart」の事業を受け継いで「EV充電エネチェンジ」アプリによるスポット検索サービスを提供していますが、情報が開示されない充電器は検索できないケースが多くなります。

EV充電エネチェンジアプリのベースにもなっている「EVsmart Data API」は、日産やフォルクスワーゲン、ENEOS、ナビタイム(EVカーナビ)などにも提供されています。つまり、エネチェンジが情報を取得できない公共充電スポットは、こうした多くのアプリや充電スポット検索サービスを利用するEVユーザーが検索できない充電器になってしまう可能性が高いということです。

エネチェンジ公式サイトより引用。

補助金を使って設置した充電スポットの情報が、日本で最も多くのEVユーザーが利用する検索アプリの利用者に提供されないのは、EVユーザーの立場としては「信じられない」異常事態だと感じます。

説明の中で城口CEOは「補助金を活用した充電器は第三者利用を前提とした充電器のデータ提供が行なわれるべき」であり「充電器情報の共通規格を定めること」、また「(設備の遠隔監視や情報取得を可能にする)OCPIの導入義務化」といった改善点を提言しました。

検索できない=利用できない充電器が増えるのは、EVユーザーにとって不利益な状況と言わざるを得ません。補助金を所管する経済産業省の関係者はもちろん、EV充電サービス事業に関わるみなさんに向けて「早くなんとかしてください」とお願いしておきたいと思います。

このほか、「充電インフラ政策の課題と提言」として以下のようなポイントが挙げられました。

EVインフラ政策への課題と提言のポイント
条件の統一普通(基礎)充電 (コンセントとケーブルの上限統一、10%10口)
目的地充電の最低出力の設定総出力増強へ6kW以上に最低出力を設定
用途別の補助対象の明確化と
併用設置の禁止
普通・急速充電器の併用設置の禁止を継続
「EV優先車室」の義務化EV優先車室とコーン設置の義務化による利用促進義務
追加設置の稼働率設定一一定の稼働率が伴わない施設への追加設置における補助金利用の禁止
公共充電器情報の公開義務化補助金利用の公共充電器の情報開示(OCPI義務化含む)
案内標識の出力値表記の義務化200V等の表記ではなく「出力値(kW)」を明記

城口CEOがとくに強調したのが、「EV優先車室」の義務化です。せっかく充電器があっても、その車室(駐車区画)にエンジン車が長時間駐車していて充電できないケースがあります。それを防ぐには充電用駐車区画に「EV優先」であることを示すコーンを置くのが有効で、エネチェンジでは自社でコーンを用意して、充電器設置施設に協力を求めていることが説明されました。

EV優先車室とすることは、設置した充電器の稼働率向上にも繋がります。「追加設置の稼働率設定」という提言は、今後、補助金を活用して充電器を設置する場合には、一定の稼働率を満たす、つまりEVユーザーのニーズが高い場所であるという条件を設けて補助金を認める仕組みにするべきだという主旨です。

城口CEOの説明では、利用時間を増やし、稼働率を上げていくことは、EV充電事業が自立して進展していくためにも必要な、充電サービス事業者の「責任」であることが強調されました。EV優先車室の義務化や稼働率向上(ひいては充電料金やサービスの安定にも繋がるでしょう)への取り組みは、EVユーザーとしても賛同すべきポイントだと思います。

新年度は補助金予算が倍増されて、EV充電サービス事業者間の競争はますます激しくなるのでしょう。でも、充電器情報の共有や、EVユーザーが使いやすい充電器にすることは、競争とは別の話だと感じます。EVユーザーが求めているのは、ただただ「使いやすく便利な充電インフラが広がること」です。エネチェンジはもとより、充電インフラ構築に関わるみなさんには、ぜひユーザー本位でいろんな物事を進めていただけるよう期待しています。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)10件

  1. マンションの基礎充電への補助金について口数制限には反対です。
    一方で限りある補助金で使われない口数を増やしてももったいないので、補助金はコンセントや充電器に出すのではなく、
    専用分電盤の設置
    全車室までの配管とポールの施工
    に対して補助金を出せば良いと思います。

    その上でEVに乗り換えた人が費用を負担にして3kWでも6kWでも好きな充電器(コンセント、配線)を選んで各ポールから分電盤までの配線施工を行えばよいのではないかと。

    まぁこの方法も車室の入れ替えがあると難しいところもあるのですが、
    分電盤設置するなら自社負担で配線施工もまとめて行い、利用開始時に10万円などの配線施工費を徴収すると言う方法であれば抽選問題もある程度解決できそうに思います。

  2. 一般に開放せず公共性のない設置は補助金対象外でしたよね?
    毎年要件確認していないので時によって違うのかもしれないけど、そのあたりをはっきりさせるのが筋で、メディア向け勉強会で見解述べるってのはどうなんでしょうね。
    EVsmartが掲載許可貰えないような意地悪されている事実とか要因とかあるんですかね。
    Enechange傘下になってEnechange競合他社から距離置かれているとか。
    いや、ただの想像ですけど。
    なんかモヤモヤしますねぇ。
    全体的な課題としては、補助金貰って導入して利用させないほうが得、っていう状況を是正すればよく、多く利用されるほど得する仕組みにすれば良いのですが。
    そうなっていないのは利権貪る輩がいるからかもしれませんね。
    充電用車室の問題も充電時間以外は高額な駐車料請求するとか設置者側でできる対策はあるので、利用率高める手法の一つとして採用すれば良いのですし。
    それよりCHAdeMO制御通信にVIN乗せるとか、ETCで充電/駐車料金決済するとかやることある気がしますよ。

  3. 「EVユーザー目線で、公正な情報発信を目指し」ているとありますが、そうは思えないです。例えば、「課題と提言」の中にある「普通(基礎)充電 (コンセントとケーブルの上限統一」です。国はEV・PHEVの新車販売台数で2030年20~30%をめざしています。だったら、普通充電器設置も「10%10口」ではなく同じ割合を基準にすべきではないでしょうか。もっとも、私は補助金に制限を設けること自体反対です。集合住宅で充電器設置が進まないのは、管理組合での住民合意が得られないからです。設置に制限を設けるとさらに合意が難しくなります。だからといって、無駄な充電器を設けてよいわけではありません。戸建のように個人の意志で設置できるようにするべきで、そのための法制度改正とシステム構築をめざすべきです。もっとも、そうするとエネチェンジの利益には貢献しないと思いますが。
    また、目的地充電の最低出力を6kWにするというのも疑問です。なぜ、3kWでだめなんでしょうか。供給電力の関係で3kWで口数を増やしたいところもあるでしょう。これは、エネチェンジの普通充電が6kWだからそうしたいのだろうといううがった見方をしたくなります。
    「普通・急速充電器の併用設置の禁止」というのも、どういう用途で利用するかはユーザーの自由なので設置者が決めなくてもよいと思います。
    「追加設置の稼働率設定」についても、現在のようにEVの普及率が低く、充電器の数も少ない段階で、厳しい条件を設けなくてもよいと思います。稼働率は普及率が上がれば、将来大きく変わる可能性があります。エネチェンジはそもそも急速充電器の設置もやってないのに、他社の営業の邪魔をしなくてもよいでしょう。
    とにかくEV普及率が低く、現在は補助金に厳しい条件を設けるような段階ではないと思います。

    1. EV smartはエネチェンジに譲渡されたのでエネチェンジに関する記事については割引いて読むようにしています。

  4. あるBMWディーラーのBMWカーオーナーですがこのアプリで登録をお願いしたら充電器がある事を積極的に公開していないとの回答で登録を見送られました。別のEV 検索アプリには掲載されていました。

    自社オーナーを優先的に利用するためが理由で掲載拒否だった様ですが、アプリによって公開されたりされなかったりはやはりおかしいです。
    そして私はオーナーなのでここの充電器をよく利用させていただきましたが、ある時、休日利用は不可にされました。対応に驚きました。

    購入直後しか貸さない様な対応をしているとEV販売しても1年程度しか快適な充電できる環境はなく、他の充電スポットでも条件付けを課して貸す事を拒否していく経験を多々しています。

    メーカー、ディーラー共にEV比率を高めて販売している中、EVユーザーが充電器を探しさまよう状況がないように行政でガイドラインなど制定し、広く公平に利用できる環境と公開をしていくべきです。

    現在戸建てで自宅充電ができるユーザー以外はEVは安心して購入できず、目的地充電はあればラッキーな状況です。

    本当のカーボンニュートラルを高めるには費用と方針、利用のガイドラインなど整備が必要です。

    補助金が公的に使えない所に使われている、
    どこにどのように設置するのがEVユーザーに効率的に利用できるのか、
    公平にお互い気持ちよく使えるのかなど行政と充電業者で考えるべきです。

    カーディーラーもEV車を販売する際、充電環境を継続的に提供すべきです。購入後1年で貸さなくなるとかは詐欺に近いです。

    ディーラーに慈善事業すべきとは言っていません。充電器を設置するとメリットが出るように補助金だけでないメリットも必要に思います。

    EV販売と充電器環境整備はニワトリタマゴの状況ですが営利目的の施設は負担な事を自ら率先しないのが当然かと思います。

    トヨタの普通充電は1時間までとしていますがphevね少量充電 でも十分に充電できません。数台来ても対応できるようにディーラーにはEV販売業者には義務化しないといけないと思います。

    BMWユーザーではBMW Tokyo bayだけはBMWユーザーにbmw車であれば充電を無料で利用でき、普通充電器は8基もありオーナーに安心を提供しています。

    もちろん全利用されることもありますがこのような取り組みはEV販売しているディーラー責任とオーナーに安心と利便性を提供しており、ディーラーのあるべき姿とその努力を感じます。
    残念ながらほとんどのカーディーラーはEV販売する努力が不足しています。
    どうか、行政、ディーラー、充電器業者がカーボンニュートラルを本当に実現できる対応を協力して取り組んでほしいです。

    トヨタが本気でEVを販売しない理由もこの状況をみるとわかりますし、日産はnoteのようなガソリンで発電などで本当のEV でないのも日本の車へのカーボンニュートラルの実態が分かります。
    EV は高価だから補助するではなくEVに乗らないと損をするくらいにしないと日本は先進国から更に脱落していくでしょう。

  5. 借家でiMiEVを使用して1年ですが、当初、普通充電設備の設置を不動産屋を通し大家さんと交渉するも結果はNG。近くに某大型家具店の普通充電設備があったので本社にメールで確認したところ、「店舗の利用有無での使用制限はありません」と神対応でした。(特に貼り紙等で告知はしていませんでしたが)
    補助金で設置された充電設備か否かは分かりませんが、「懐が深いなぁ」と感じた次第です。
    残念ながら、機器の更改のタイミングで全店無くなってしまいました。
    記事にあるとおり、国の補助金(国民の税金)を使って設置したのなら、公に利用させないのは、昨今の会社のあり方として逆方向で自社の利益至上主義にみられても仕方ありませんね。

  6. そもそもエネチェンジのアプリ、新しくできた普通充電器が全然登録されてないですが……
    GoGoEVでテラチャージの充電器を検索すると1163件もあるのにエネチェンジだと全然見つからないです
    近所の普通充電器数カ所も数ヶ月前から稼働しているのにいつまで経っても登録されていません
    報告も数が多すぎる上に入力しないと行けない項目が多すぎて面倒くさいです
    これだけ数があるのにテラチャージの認証フィルタはいまだに用意されていないし
    もう網羅的な充電器検索アプリではないということなのでしょうか?

  7. 三菱、日産がphevを売り出して、chademo充電が普及しはじめたころ、高速道路や市役所公共の無料充電も一気にに広まり、充電スポットのweb情報は不足なかったですよ。
    だのに、今頃何の問題があると言うのでしょうか?

  8. 国の充電インフラ補助金を利用してENECHANGE社の普通充電器拡充はEVユーザーとしてとても便利に感じることが増えた一方で、設置場所である商業施設側の認識も不十分だと感じることもまだまだあります。アプリ上に「どなたでもご利用可能です」と表示されていても、実際に充電器を利用していると「店舗利用のお客様ですか?」や「あくまで店舗の駐車場なので…(充電のみの為の駐車は無断駐車に値するというようなニュアンス)」、「(店舗利用の)お客さまが充電器を利用をお待ちなので…」の声掛けを受けることもあります。 こういったことや、駐車場の(店舗利用者以外の駐車を警告する)看板から充電器利用の為だけの駐車を躊躇するといった声も時々耳にします。実際に私が利用するENECHANGE社の充電器も空いている時間が多く、商業施設の駐車場に充電器利用目的で駐車しにくいというユーザーも多いのでは?
     折角公共充電器として設置したのであれば、今以上にわかりやすく、誰もが必要な時に躊躇せず利用できるように、設置施設側とEV ユーザーへの丁寧な説明が必要だと感じています。

  9. 2月13日の「EV充電へのビジョン【04】充電サービス事業者が果たすべき責任」に書いたように登録されない所がある理由の一端がわかりました。ありがとうございます。

    ただ関連したというか他の理由もあるようで、エネチェンジサポートデスクのメールによると1箇所は「設置者が掲載は差し控えてほしい」、もう1箇所は「掲載は保留」という回答だったそうです。記事にあるように補助金をもらっての設置であろうに、そのような回答をそのまま受け取っても良いのでしょうか。

    1箇所は宿泊施設もあるので、宿泊者優先で使わせたい思いがあるのかもしれません。もう1箇所はパチンコ店ですが、こちらも店舗の利用者優先を考えてのことかもしれません。しかし、パチンコ店の方は全国展開しているところで、EVsmartのサイトには同じ系列が211件登録されています。同じ系列とはいえ、地元資本の経営母体の違いにより対応が変わるのかもしれません。(設置業者が開放の原則を説明していないのが一番の問題ですが)

    エネチェンジでは設置者の意向を尊重してこのような丁寧な対応をされているのでしょうが、他の充電検索アプリでは上の2箇所ともすでに掲載されています。そちらはアプリ利用者の情報を一方的に載せているのかもしれませんが、この記事にあるように補助金を受けた充電器は「開放」が原則なのですから、掲載しても問題はないはずです。
    エネチェンジは対応を変更されてはいかがでしょうか。(本県だけでも5箇所のパチンコ店が載っていません)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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