テスラの蓄電システム『Megapack』をカリフォルニア州でピーク時の電力供給用に採用

カリフォルニア州ベンチュラ郡では、今までピーク時の電力を供給してきた天然ガス利用の尖頭負荷発電所を作り変える予定で、Strata Solarが事業を受注していました。当初Strata Solarは自ら蓄電システムを構築していましたが、今回正式にテスラのMegapack(メガパック)を使用することになったとのアナウンスがありました。

テスラの蓄電システム『Megapack』をカリフォルニア州でピーク時の電力供給用に採用
テスラのMegapack。画像はテスラ公式より。

Strata Solarの公式サイトによると、この100MW/400MWh(出力/蓄電容量)の蓄電プロジェクトは5月までに建設前の準備をStrata Solarが終わらせ、EPC契約(Engineering=設計、Procurement=調達、Construction=建設)をテスラと結び、建設開始は2020年7月で、2021年の早い時期に運用が始まる予定です。

尖頭負荷発電所は先述したように、電力需要のピーク時にのみ短時間稼働する発電システムです。その性質上大きなコストがかかり、環境負荷も高いものになります。また従来の化石燃料発電所として新たに建築を進めれば、その分のコストと時間もかかります。

しかしテスラのMegapackは、設置に要する時間はたった10時間程となります。電力需要が低い時間帯に蓄電をし、ピーク時に放電という使い方ができるため、送電インフラの負担を軽減し、コストも抑えられます。また高温・乾燥する気候を持つカリフォルニアでは、山火事による送電網の火災が懸念材料でしたが、オフグリッド使用のできるMegapackはその対策としても理に敵っています。

Strata Solarのシニア・バイス・プレジデントであるJoshua Rogol氏は、「テスラは垂直統合ソリューションを持つ数少ないサプライヤーの1つで、安全性、ソフトウェアのパフォーマンス、ハードウェアを1からよく考えています」とGreentech Mediaに語りました。

テスラは2017年に南オーストラリア州ホーンズデールで世界最大のリチウムイオン電池プロジェクト(100MW/129MWh。この時はMegapackではなくPowerpackでした)を成功させており、今回のMegapackを使ったカリフォルニアのプロジェクトの規模はこの時の3倍になります。契約は20年以上に渡る予定で、テスラが得意とするバッテリーパフォーマンスのデータ解析力が、プロジェクトのファイナンス部門の助けになると期待されています。

簡単に設置できてクリーンなエネルギーを蓄えて取り出せるMegapackは、2019年夏に発売されたもので、先日お伝えしたハワイでのプロジェクトにも採用されています。日本では、近鉄がPowerpackを導入した例などがありますが、Megapackの導入事例はまだ報告されていません。日本でもその姿を目にする日は来るのでしょうか。

参照記事:
Tesla secures massive new Megapack project that replaces gas peaker plant『electrek』
Tesla Megapacks tapped for California big battery project『RenewEconomy』
Strata Blazes Ahead With California Gas Peaker Replacement Battery, Taps Tesla 『Greentech Media』
Strata Solar Announces One of Nation’s Largest Battery Energy Storage Projects is Ready for Construction 『STRATA SOLAR』

(文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. ここは電気のプロがお相手仕りますm(__)m発電所一基を作るよりメガワットの蓄電所(!?)を分散設置したほうが安くなる可能性大いにアリですよね!工期工費短縮もできればなおさらです。
    それに発変電設備は需要のピークに合わせて作っているから無駄ができやすい!!第三種電気主任技術者(電験三種)有資格者には至極当然な話です。
    そして蓄電池は負荷の平準化にも役立ちます。石炭火力や原子力などの大型ベース電源は始動停止に時間がかかるうえ一定負荷にしないと効率が悪くなり故障も多くなるため、深夜や休日など軽負荷状態でも一定速度一定負荷で廻さねばならないデメリットがあります。だから平準化のために深夜電力割引があるもので。

    独立型太陽光発電の書籍にもありましたが、従来の鉛蓄電池は「最低限の電力を仕方なく貯める」状態だったのが、リチウムイオン蓄電池の登場で「これからは蓄電池を制するものが世界を制する」とあったのでテスラが将にそれで天下を取るんじゃないかと思いました。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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