フォルクスワーゲンCEO「電気自動車への移行を早めないとNokiaの二の舞になる」

内燃機関車から電気自動車への移行について、フォルクスワーゲンのCEOが「電気自動車への移行をより早めないと、私たちはNokia(ノキア)の二の舞になる」と危機感をもって踏み込んだ発言をしました。CleanTechnicaから全文翻訳記事をお送りします。

フォルクスワーゲンCEO「電気自動車への移行をより早めないと、私達はNokiaの二の舞になる」

元記事:Volkswagen CEO: We Need To Move Faster On Electric Vehicles Or We Will Follow Nokia’s Fate by Zachary Shanon on 『CleanTechnica
(訳者注※Nokiaは90年代後半から2000年代前半位まで世界の携帯電話市場シェアの半分ほどを占めていましたが、iPhoneの台頭により急速にその姿を消しました。)

電気自動車へのシフトは単純な移行作業ではない

フォルクスワーゲンのCEOであるHerbert Diess氏は、電気自動車への過渡期における、社の厳しい戦いについてコメントを出しました。彼の最新のコメントを紹介する前に、FCAの元CEOであるSergio Marchionne氏が、数年前に明確に指摘したことを書いておきます。既存の自動車メーカーは真の電気自動車競合社となるために、自らの改革を行わなければなりません。業界外の多くの人々は、化石燃料車から電気自動車へのシフトは単純な移行作業だと考えているのですが、実際には大手自動車メーカーにとって存続の危機に立たされる大問題なのです。

以前私が書いたように、古い自動車メーカーは非常に危険な綱渡りをしています。彼らは電動化を早く進めないと死に絶えてしまいます。しかしその一方で、今と同じスケールの生産量を維持しつつ、化石燃料パワートレインから電動パワートレインに移行するには巨額の投資が必要で、座礁資産(※価値が大きく棄損する資産)と埋没費用(※回収できない投資費用)を飲み込む必要があり、しばらくの間財政面がお粗末になります。

Diess氏はこの点をここ数カ月、もしくは数年に渡り、指摘してきたのではないかと思います。彼はこの変化に伴う困難と、失敗の可能性について、投資家と従業員の両方と理解を共有しなくてはならないのですから。

VWのID.3。画像は公式サイトより。

ロイターによると、Diess氏は今日リポーターに「私達は十分早く動けているのか? という大きな疑問がある」と強調しました。これは私が先程述べた綱渡りの話と符合しています。「現行のスピードで続くとなると、かなり厳しい状況になるでしょう」とDiess氏は付け加え、さらに人によっては「クリーン・テクニカ/テスラ信者」テリトリーと呼ぶ域に踏み込み「フォルクスワーゲンはのろのろしているとNokiaと同じ運命を辿る」と述べました。

彼の発言は、フォルクスワーゲン及びそのグループ会社の生産目標引き上げ直後になされました。これからの数年で、Diess氏は拡大を続ける彼の企業を、世界一位の電気自動車メーカーにしたいと考えています。目標がこれでも遅すぎると見る人もいますし、高望みし過ぎだと見る人もいます。フォルクスワーゲン内におり、じっくり考えている人でこの目標が丁度良い、と言う人は恐らくいません。現役大手企業として、完璧にこのような推移のタイミングを見極めるのは非常に難しいことなのです。個人的には、フォルクスワーゲンは良い方向に進んでいると考えています。今日のDiess氏のコメントを見て、改めてそう思わされました。

1週間前に、私は『The 2 Big Questions Regarding Volkswagen’s Future/フォルクスワーゲンの未来に関する2つの大きな疑問』(*恐らくDiess氏はこの記事を読んだのではないでしょうか。私が知る限り、彼はオープン・マインドでこれ以外にもCleanTechnicaの記事を読んでくれています)という記事を書きました。

議題の1つ目は自動運転ですが、これはまたの機会に置いておきます。2つ目が、Diess氏が多くの時間を割いて熟考しなければならないと考えられるオズボーン効果についてです。フォルクスワーゲングループが華麗に電動化の波に乗り、岸まで辿り着くまでの行程を取り仕切るのが私の仕事だったならば、大汗をかいたことでしょう。オズボーン効果とは割れた波の真ん中に坐する巨大な岩のようなものです。私が見た中で、この困難について、自動車メーカーと言う文脈の中で書かれた文章の中で一番良かったのはMaarten Vinkhuyzenによるこの記事(※EVsmartブログではこの記事の全文翻訳を出しています)です。一度目を通すか、もしくは再読を強くお薦めします。

古い自動車メーカーの時代は終わった

フォルクスワーゲンがこの困難に対する簡単な解決策を持つとはまったく考えるべきではなく、Diess氏本人もこの事実を認めたということが、より広く世間で議論されることに繋がり、現在の不安定な状況を強調するのに役立つと考えられます。

ID.3のプレゼンをするDiess氏。画像はVW公式サイトより。

しばしば急進派で、現実離れした人達と評されるCleanTechnica読者のために、フォルクスワーゲンのグローバル・リーダーの言葉で終わりを迎えましょう。「古い自動車メーカーの時代は終わった」と。

リーダーという単語をDiess氏に当てはめるのは適切だと私は考えています。彼は会社が先に進むために難しい決断をし、言いづらいことを言っているのです。古い自動車メーカーの時代が終わった際には、新しい時代に主要な自動車メーカーとして生き残る以上の困難は、恐らくこの産業にはありません。世界で起こっているこの荒波をフォルクスワーゲンがどう乗りこなすのか注目していきたいと思います。

(翻訳・文/杉田 明子)


8 thoughts on “フォルクスワーゲンCEO「電気自動車への移行を早めないとNokiaの二の舞になる」”

  1. 「僕はね…ガソリン臭くて、燃費が悪くて、音がいっぱい出てね、そんな野性味あふれたクルマが好きですね。」
    豊田章男

  2. クルマを趣味とする者以外のほぼ多くのユーザーはクルマなど移動の道具であり、安くて便利であれば電気だろうがガソリンだろうが構わない訳です、電気でどう売るのか・・その根本的な視点が見えず、古いだの改革だの企業側が一方的理想をのべてもねえ・・・

    1. そえとも様、コメントありがとうございます。

      >>安くて便利であれば電気だろうがガソリンだろうが構わない

      おっしゃる通りですね!価格がもっとこなれ、充電なども含め利便性をアップさせることによってのみ、電気自動車の販売は増えていくと思います。まだまだハードルは高そうな記事ですが、いずれ解決していくことを願いたいと思います。

  3. https://teslamotorsclub.com/tmc/posts/4420705/

    おそらくこれがClean Technica の記事の元ネタでしょう。
    VWグループCEOがシニアマネージメントに対しておこなったスピーチの全文と思われます。
    危機感を煽る目的もあったとは思いますが、彼の現状認識は、Clean Technicaの記事から受ける印象よりさらに厳しいものに思えます。

    ・将来、自動車は最も複雑で、最も価値のある大衆向けのインターネットデバイスになる。
    ・この点を考えれば、Teslaが高く評価されていることが理解できる。(Teslaの時価総額がVWのそれに並んだ事実を踏まえた発言です。)
    ・VWの将来はdigital tech group になれるかにかかっているし、そこにしか無い。
    とし、グループの総力を上げて「追加的なキャッチアッププログラム」を実施することが必要だとしています。(「今のペースでは厳しい」とも発言しています。)

    彼のスピード感は、同じドイツ勢でもBMWや、日本の各メーカーのそれと大きく異なります。「自動車産業は100年に一度の変化に直面している」という認識は、各社、マスコミほぼ共通しているように思われるので、この変化のスピードをコントロールできると考えるか、そうで無いかがスピード感/危機感の違いに繋がっていると思います。

    過去を振り返っても大きな変化は秩序だったものではなく、いわゆるdisruptive な変化がほとんどであったように思います。(80年代前半、IBMがパーソナル・コンピューティング革命をコントロールしかかった時期がありましたが、これくらいしか例外は思いつきません。)

    「100年に一度の変化に直面」が正しいなら、大きな変化のスピードをコントロールすることは難しいと考えるのが過去を踏まえた妥当な結論で、そうすると今この瞬間から全力疾走する必要がある・・・。

    巨体を旋回することができるか否かは別として、VWのCEOのスピード感/危機感が正しいように思えます。

    (尚、同じようなタイミングでBMWのシニアマネージメントは以下のような見解を示しています。
    https://europe.autonews.com/automakers/bmw-rd-chief-sees-rising-demand-diverse-multifunctional-powertrains )

  4. タイ、バンコクに行きましたがほぼガソリン車でした。
    ハイブリッドは一日に数台見かける程度で、黒煙モクモクのディーゼルもまだ走ってました。トヨタ6割ホンダ2割その他2割といった感じでした。

    日本車メーカはこういう国にハイブリッドをこれから売りつけていけばまだまだ利益を出せると考えているのでしょうか?高い開発費を使ったので世界中で回収してそれから電気自動車に緩やかに移行したい、ということなのでしょうか?
    そんな時間はないと思うのですが。

    1. 日本のメーカーはガラケー時代から世界に取り残されてましたが
      スマホ時代になってもガラケー時代のやり方を踏襲した結果
      日本のユーザーにもついに見放されてほとんどが消滅の憂き目にあっています
      そのやり方とは、ソフトウェア技術を従来の電気・電子回路の延長線上にとらえ、アップデートをしないやり方です

      結果的に初期の不具合をアップデートでなくせずに次の商品へ
      ということを繰り返し、悪評が悪評を呼び国産メーカーの信用は失墜しました

      高い開発費を使ったのでというよりも、部品メーカー含めた「おつきあい」のためでしょうね。
      良くも悪くもケイレツで結びつきが強いのが日本車メーカーの強みでした

      そういうメーカーがエンジンや変速機そのものだけではなくそのさらに部品を組み立てて…というピラミッドを作っている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です