ボルボが電気自動車用モーターの自社設計・開発を始める

ボルボは次世代の電気自動車及びハイブリッド車に使う電気モーターを自社で設計・開発することを発表しました。2025年までに新車販売の50%をEVにしようとしている社の目標を助けるための動きですが、実はモーターはボルボ社だけに提供されるわけではありません。全文翻訳記事をお届けします。

ボルボが電気自動車用モーターの自社設計・開発を始める

元記事:Volvo Cars Commits To Developing Its Own EV Motors by Jo Borrás on 『CleanTechnica

※記事リリース時に自社『生産』を始める、としていましたが、『設計・開発』に修正しました。

EVのコア部品であるモーターを自社開発

ボルボは数年前に、2019年以降に出すすべての車両を電動化すると発表し、グリーンな自動車観に一石を投じました。これまでその約束に関しては、ボルボ初の純電気自動車であるXC40リチャージ(※日本ではPHEVモデルのみ発売)を出したことからもうまくいっているようですが、このスウェーデン企業からはさらに色々出てくるようです。電動化の約束を将来にわたって確実に守るため、ボルボは巨額の投資をして次世代の車両に使う電気モーターを自ら設計・開発すると発表しました。

ボルボの最高技術責任者であるHenrik Green氏は、「自社設計・開発をすることにより、e-モーターをこれまでにないレベルで調整できるでしょう」と話しました。「エネルギー効率と快適さにおける全体のパフォーマンスレベルを恒常的に改善することにより、ボルボ独自の電気ドライブ体験を作り上げます」。
(プレスリリースより抜粋)

画像は Volvo Cars公式サイトより。

電気モーターは電気自動車独特の運転特徴の基になる部分で、ボルボのようなラグジュアリーブランドには素速い加速も重要になります。またEVテクノロジーが進化するにつれ、加速と減速の両方にアクセルペダルのみを使うワン・ペダル・ドライビングなどの機能も重要になってきました。自社開発をすることによってソフトウェアとハードウェアの統合はかなり簡単になり、ボルボの自動運転安全性テクノロジーの開発も加速するはずです。

少なくとも、それが今回の発表の裏にある考えです。

今回の投資はボルボの親会社Geelyグループ全体のため

ボルボの新しい電気モーター用ラボが中国・上海で先月オープンしました。このEVラボは、2025年までに50%のセールスを純電気自動車にするというボルボの目標を達成するため、親会社であるGeely(吉利汽車)と協力しながら、当面の間は将来の純電気自動車およびハイブリッド車用の電気モーター開発に力を入れていきます。ただしこのモーターはボルボにだけ使われるのではありません。Geely傘下の他ブランドであるポールスター、Lynk & Co、ロータス、LEVCなども、今回の研究開発の恩恵を受ける予定です。

あなたはどう考えますか。自動車ビジネスに不可欠な、コアの構成部品の自社開発が進んでいくのでしょうか。例えばフォードはそのようには考えていないようです。もしくはGeely傘下の自動車生産をヨーロッパやアメリカから中国本土に移すためのシニカルな計画に関して情報操作をする目的があるのでしょうか。以下に記載するプレス・リリースをチェックして、ボルボの計画についてどう考えるか、あなたの意見をお聞かせください。

ボルボの新しい電気モーター。画像はVolvo Cars公式サイトより。

ボルボカーズは電気モーターの自社設計・開発に投資します(ボルボのプレスリリース)

原文はこちらから。

ボルボカーズは純電気自動車メーカーとなるために動いており、次世代の車両用電気モーターを自社設計・開発するため、大きな投資をすることになりました。今日、中国の上海で電気モーター用のラボが新しく開かれ、社に属する電気自動車部品の開発テスト用施設のグローバルネットワークに加わりました。中国やスウェーデンには最先端のバッテリー・ラボがあり、スウェーデンのヨーテボリではe-モーターを開発中です。

e-モーターはバッテリーやパワーエレクトロニクスと並び、電気自動車の基礎構造となる部分で内燃機関エンジンの役割に取って代わるものです。これら3つの構成部品の相互作用は、プレミアム電気自動車開発において必須となるものです。

電気モーター開発を自社で行うことにより、ボルボカーズのエンジニアは新しいボルボ車の電気モーターと電動ドライブトレイン全体の最適化を押し進められるようになります。このアプローチによりエネルギー効率と全体のパフォーマンスも良くなります。

ボルボの最高技術責任者であるHenrik Green氏は、「自社設計・開発をすることにより、e-モーターをこれまでにないレベルに調整できるでしょう」と話しました。「エネルギー効率と快適さにおける全体のパフォーマンスレベルを恒常的に改善することにより、ボルボ独自の電気ドライブ体験を作り上げます」。

e-モーターにより電気自動車の特徴である即座に反応する加速や、ワン・ペダル・ドライビングと呼ばれるアクセルペダルのみを使って加速・減速をする(ペダルを押し込むか離すかで加減をする)機能などが作られます。

上海にオープンした新しい電気モーター用ラボは先月操業開始しました。主にボルボカーズのSPA 2 モジュラー・ビークル・アーキテクチャをベースに作られる、将来の純電気自動車とハイブリッド車に集中していきます。

e-モーターの設計と開発への投資は、ボルボカーズの気候変動に対するアクションへの熱意と電動化戦略への新たな歩みを象徴するものです。社は2025年までに50%の車両販売を純電気自動車にし、残りをハイブリッドにすることを目標としています。

電動化は会社の包括的気候変動プランの一部で、2040年までにカーボンニュートラルになるよう、すべての生産過程と商品の二酸化炭素排出に取り組むためのものです。プランは電動化によってテールパイプからの排出に対処するだけではありません。会社は生産ネットワークやその他のオペレーション、サプライチェーン、リサイクルや原料の再利用といったものから出る二酸化炭素排出にも取り組んでいきます。

2040年のビジョンに向けた目に見える最初のステップとして、会社は2018年から2025年の間にライフサイクル・カーボンフットプリントを車両1台につき40%減らすことを目標としています。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 今までピストンとかロッドとか気筒とか点火プラグとかを勉強してきたトヨタなどの自動車メーカーの技術者が,会社自体が,三相とか巻線とかリアクトルとか電動機やら電池やらのことを一から勉強しなきゃならないんだから,東大や東工大や名古屋大や高専などを出てたってそりゃあ大変だと思いますよ。

  2. 図を見るとコンバーター一体型でしょうか?
    明電舎なども一体型にして軽量化を図っているようです。
    IMkがどのようになっているのか気にはなりますね。
    しかしながら、例えばIMkベースのBEVの車種展開において叶えて欲しいバンやトラックの場合に
    一体型であることがレイアウトの自由度を奪うようなことになれば、それはそれで必ずしも利点とはならないように思います。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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