第100回記念大会となるパイクスピーク決勝レポート〜EV勢は4台が出走&リーフは完走を果たす

1916年に初開催されたパイクスピークは、今年106年目にして100回目を数え、決勝レースが6月26日に行われました。一時はエレクトリッククラスが成立し、現在のレコードホルダーもEVではありますが、今年のEV出走は4台でした。大会の結果をレポートします。

第100回記念大会となるパイクスピーク決勝レポート〜EV勢は4台が出走&リーフは完走を果たす

日本でも広く知られたヒルクライムレースイベント

パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)は、アメリカ・コロラド州にある標高4301mのパイクスピーク山を舞台に誰が一番速く駆けあがることができるかを競う、単純明快なヒルクライムイベントです。一時期、日本人ドライバーの田嶋伸博(通称:モンスター田嶋)選手が大会6連覇したことで、日本でも大きく報道されたこともあって、ご存知の方も多いでしょう。

そのコースは、パイクスピーク山頂へ続く登山道路の一部を使用します。スタート地点の標高は2862m。そこからゴールの山頂までの約20km、高低差約1440mを一台ずつ駆け上がることになります。当初は未舗装路のコースでのヒルクライムでしたが、2012年からはコース全体が完全に舗装されました。ただ、冬の厳しい寒さの影響で頂上付近の舗装は毎年うねり、それを修復する作業が繰り返されています。ちなみに通常は登山道路として営業している有料道路で、大人一人15ドルで頂上までクルマで行くことができます。

現在のこのパイクスピークのコースレコードは2018年にロマン・デュマ選手が駆って走ったフォルクスワーゲンのEV、I.D.Rパイクスピークの7分57秒148となっています。イベントは年に一回のみ、毎年7月4日の独立記念日の前の週末に開催されており、今回は6月26日(日)に決勝となりました。

EV勢の予選は走行2日目に実施

今回、記念すべき100回記念大会には、4台のEVが出走しました。その内訳は、エキシビジョンクラスにテスラモデルSプラッドが2台、モデル3が1台。アンリミテッドクラスに日産リーフが1台となります。このうちの2名は日本人、そして2名はレーサー&モータージャーナリストという肩書を持っています。

パイクスピークの予選は、参加者を3グループに分けて、3日間にわたって行われます。予選セッションが行われるのはヒルクライムのコースを3つに分けた内の一番標高の低い部分であるスタートからグレンコーブ手前までのロアセクションで、練習走行も兼ねたセッションとなっています。

参戦クラスは違えども、エキシビジョンクラス、アンリミテッドクラスともに同じ練習走行2日目となる6月22日(水)が予選日となりました。3つに分けたセクションの内、最も区間の長い区間となるこのロアセクションでは、早朝5時過ぎからスタートした走行セッションで都合4回ほどのアタックの時間を取ることができました。

ランディ・ポブスト選手のTesla Model S Plaid。

結果を見てみると、EV勢最速はランディ・ポブスト選手(#42 2021年式Tesla Model S Plaid)の4分5秒123となりました。続くのは、吉原大二郎選手(#89 2018年式 Tesla Model 3)の4分12秒974。そして大井貴之選手(#234 2021年式日産リーフe+改)の5分5秒511という結果となりました。そしてモデルSプラッドのブレイク・フラー選手(#100 2022年式Tesla Model S Plaid)はこの予選では出走できず。ちなみに今回の予選最速タイムを出したのはロビン・シュート選手(2018 Wolf TSC-FS)で、3分24秒519の記録は過去最速タイムということです。

予選後、ランディ選手は「今年はすごく調子がいいよ。アンプラグドパフォーマンスの足回りもエアロも完璧だ」と大絶賛。その結果に満足しているようでした。

吉原選手がEV勢では最速の総合9位

結果的に、予選はもちろん、練習走行でもタイムが残せず、最終の任意の練習走行でようやく走行を行なったブレイク選手はこの決勝のトップバッターとしてこのヒルクライムを駆けあがることとなりました。といってもブレイク選手はこれまでパイクスピークには1999年から参戦しており、今回で7度目の挑戦となります。当初はシビックやインテグラといったホンダ車&アキュラ車でチャレンジしていましたが、2016年からは#3 2016年式Tesla S P90D(タイムは11分48秒264)、2019年には#3 2018年式Tesla Model 3 (11分02秒802)でも参戦し、過去3度のクラス優勝をしています。

ブレイク・フラー選手。
厳しい気象条件下での走りを強いられました。

真っ先に頂上に上がってきたブレイク選手は「僕はテクノロジー好きで、電池開発にチェレンジしている。それでこのモデルSでの今回の挑戦になったよ。今日はみんな同じコンデションだったと思うけど、非常に難しいドライブだった。でもちゃんと頂上まで上がれて良かった」とコメントしてくれました。ブレイク選手のタイムは12分09秒362のタイムで総合39位(エキシビジョンクラス6位)となりました。

モデル3で参戦、総合9位でゴールした吉原大二郎選手。

続いて上がってきたのは、アメリカに渡りドリフトドライバーとして活躍してきた吉原選手。昨年でドリフトドライバーとしては引退をしているものの、昨年に引き続いてモデル3でこのパイクスピークに戻ってきました。昨年は原因不明のセーフティモードに入っての走行で厳しい走行を強いられたものの、今年は練習走行からそういった症状は見られず、順調な走り出しとなっていました。

吉原選手の走り。

「今日は朝から完全にウエットで、濃い霧が出ていてコースに出てみると前が見えなくて探り探りで走りました。ミドルセクションに上がってきたら今度は路面がドライになって、装着していたレインタイヤがタレないように気を付けて走りました。アッパーセクションに上がるとまたウエットと濃い霧。アッパーセクションはしっかり視界が確保されていても難しいのに、です。どのくらいプッシュするかってことをずっと考えながら走っていました。なんとかいいタイムで走れて良かったです」とコメント。吉原選手は総合9位(エキシビジョンクラス2位)となる11分06秒205のタイムでゴールしています。

そして、EV勢でもっとも速いタイムで予選を通過したランディ選手の言葉は悔しさいっぱいでした。

決勝はフロントガラスの曇りに見舞われ残念な結果となったランディ・ポブスト選手。

「今日はものすごくフラストレーションを感じるレースでした。今回はヨコハマのレインタイヤをチョイスしました。最初の2マイルはウエットタイヤでもドライの部分もよく仕事をしてくれたよ。グレンコーブからエルクパークまでは良かったけど、その後霧が濃くなったらフロントガラスの内側が曇って来たんだ。デフロスタは付いてるのに操作が分からなくて最悪。だから、まったく前が見えなくて、ベルトを緩めてグローブでフロントガラスの曇りを取りながら走ったよ!
ウエット路面はみんなと同じだけど、自分の場合は窓の外側と内側が曇っているわけだからフラストレーションが溜まりまくった状態。クラッシュだけは避けたいからスロードライブに徹したね。とにかく目をつぶって運転しているような状態はストレスだらけだったよ」

ランディ選手のマシンは横浜ゴムのタイヤを装着。

というわけで、ランディ選手のタイムは11分24秒604。総合19位(エキシビジョンクラス4位)でフィニッシュしました。

大井貴之選手は今回で昨年に続く2回目の参戦ですが、昨年は車両トラブルがあって練習走行にも参加できなかったためルーキー扱いになります。

セミフレーム車に生まれ変わった日産リーフe+は、走行はできるものの、アクセルを全開にすると亀マークが出てセーブモードに陥ってしまうというトラブルを抱えたままこの決勝に臨むこととなりました。

参戦クラスはアンリミテッドクラスということで、出走順は最終盤の67番目となりました。午後の走行ということで、天候の改善もあるのでは、とチーム関係者は願っていたものの……。願いは通じず、午後になっても天候は変わらず。そのため大井選手はだましだましアクセルコントロールを駆使しながら 無事に頂上まで完走することを目指しました。

日産リーフe+改で、トラブルを抱えながらもなんとか完走を果たした大井選手。

タイムは13分37秒568で、総合56位(アンリミテッドクラス9位)となりました。「まずは不測の事態を招かぬよう、今回の目的である“完走”を第一に走りました。コースに慣れてきたこともあり、次の機会があれば、思いっきり走ってみたいと思います」とコメントしています。

終始雲の中でのレースとなったパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの100回の記念大会でしたが、大きな事故もなくレースを終えることができました。最速タイムはロビン・シュート選手の10分09秒525。昨年に続いて山の男の称号が贈られることとなりました。

ブレイク・フラー選手のマシンも装着タイヤは横浜ゴム。公式サイトでプレスリリースも出ていました。

(取材・文/青山 義明)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 遅くなりましたが回答ありがとうございました。
    検索してもかなり複雑で説明しにくいですね

  2. エキシビジョンクラスとアンリミテッドクラスの違いが書かれてないので
    区別の方法がわからないです

    1. おっさん さま、コメントありがとうございます。

      区別の方法、著者の青山さんに確認したところ、下記のような回答をいただきました。
      そもそもクラス分け基準がさほど厳格ではない(もちろん車検はあるのでしょうが)、のがわかりにくさの理由のひとつであるようですね。
      競技でありつつ、お祭り的なイベントでもあるということでしょうか。

      <青山さんからの回答>
      アンリミテッドクラスはその名の通りなんでもありのクラスです。エキシビジョンクラスは、基本的には自動車メーカーもしくはそれに準ずる会社が発売前の車両のチェック等に使用することを目的としたクラスとなります。
      ただ、その区分けはそれほど厳密ではないため、現在のようなわかりにくいクラス分けになっております。クラスの歴代リザルトブレイクを狙うということや、出走順を考えての参戦だったのかもしれません。
      サムライスピードの日産リーフは、パイクスピーク・オープンという区分けが順当ですが、今回は当初2台体制での参戦を目論んでいたため、1チームで2台を面倒見ることを考え、2台ともに同クラスで参戦したほうがいいだろうということで、なんでもありのアンリミテッドになった模様です。ちなみに、エントリー後のクラス変更も可能(別途500$)ですから、このチームもテスラ勢と合わせればよかったんですが、アンリミテッドとエキシビジョンの2クラスは練習走行も一緒だし、敢えて変更する必要はないと判断したみたいです。

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					青山 義明

青山 義明

自動車雑誌制作プロダクションを渡り歩き、写真撮影と記事執筆を単独で行うフリーランスのフォトジャーナリストとして独立。日産リーフ発売直前の1年間にわたって開発者の密着取材をした際に「我々のクルマは、喫煙でいえば、ノンスモーカーなんですよ。タバコの本数を減らす(つまり、ハイブリッド車)のではないんです。禁煙するんです」という話に感銘を受け、以来レースフィールドでのEVの活動を追いかけている。

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