GMジャパンがキャデラック『リリック』日本発売/エントリーモデルのEVも発売予定

ゼネラルモーターズ・ジャパンが、同ブランド初のEV『LYRIQ(リリック)』日本発売を発表しました。価格は1100万円。デリバリー開始は5月以降を予定。2026年にはさらなるEV車種を日本で発売することも明示しました。

GMジャパンがキャデラック『リリック』日本発売/エントリーモデルのEVも発売予定

世界各地で好調なキャデラックのEVが日本上陸

発表会にはゼネラルモーターズのグローバル・キャディラック バイス・プレジデントのジョン・ロス氏が登壇し、スピーチしました。ロス氏は、キャディラックブランドが世界的ラグジュアリーブランドであることを強調したうえで「キャディラックは今後も電動化を推し進め、真のラグジュアリーブランドを目指す。リリックは世界中で販売されているモデルであり、米国においてラグジュアリーEVセグメントのなかで大きな成功を収めている。リリックは2024年までのラグジュアリーEVセグメントでの販売台数は米国で第1位であり、29の州で第1位となっていて、キャデラックブランドはより若くエキサイティングな層に支持されている。米国ではラグジュアリーEVセグメントのなかで76%を占める人気であり、2025年に入ってからは世界中で44%の伸びを示している」と語りました。

さらに、「キャディラックのEVはカナダ、メキシコ、韓国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などでも非常に好調であり、リリックと並んでオプティック、エスカレードIQをグローバルに発売。これはキャデラックが世界中のあらゆるラグジュアリーEVセグメントに参入することを意味する。さらにオプティック、リリック、ビスティックの右ハンドル仕様が登場し真のグローバル・ラグジュアリー・ブランドとなる。右ハンドルのラインナップは、ここ日本だけでなく今後拡大し、世界中で差別化した存在となると信じています」と説明しました。

グローバルでは2020年に発売

さてリリックについて解説しておきましょう。グローバルでリリックが発表されたのは2020年8月(関連記事)。「全世界の年間EV販売台数100万台」を目指して開発された次世代バッテリー「Ultium(アルティアム)」と、第三世代グローバルEVプラットフォームを採用したキャデラックブランドのフラッグシップEVです。

ボディサイズは全長×全幅×全高が4995×1985×1640(mm)。ホイールベースは3085mmとかなり長いものです。プラットフォームはEV専用で、床一面にバッテリーを搭載します。バッテリー容量は95.7kWhでモーターを前後に1つずつ配置する4WD方式を採用します。普通充電とCHAdeMOによる急速充電に対応。普通充電は6kW、急速充電性能は「190kW程度」とのことでした。95.7kWhのバッテリーが実現する航続距離はカタログ値で510km。そしてハンドル位置は前述のように「右」です。

ラグジュアリーEVとして快適性を実現するため、あらゆる部分に吸音材や制振材が施され、ノイズを大幅に減少。フロントとサイドのガラスは二重ガラス、リヤガラスには5mm厚のガラスを採用しています。ボディの四隅に配置された3軸加速度センサーがタイヤの振動を検知し、キャビン内のマイクセンサーで捉えたノイズと合わせて演算することで、その音を打ち消す次世代のアクティブノイズキャンセリングシステムを採用。このシステムにはAKG製のオーディオ機器が使われ、全部で19基のスピーカーを装備。オーディオとして使用する際は全方位から立体的で自然な音場を作り出します。

寒冷地でのドライブを考慮しワイパーヒーターを採用。シートヒーターは前後に装備、フロントシートにはベンチレーションも装備されます。冬季の車内空間を快適にしつつ効率のいいエアコンシステムとして、バッテリーの余熱を利用したヒートポンプ方式を採用しています。

レーダー&カメラ、超音波センサー使ったADAS機構を採用。20km/h以下での走行中に歩行者や自転車に対して発する車両接近通報装置は、完全5度の音程とオーストラリアの古代楽器“ディジュリドゥ”を組み合わせたものとすることで、味のある豊かな警告音を開発したというのですから、いかにもキャディラックというブランドらしい取り組みといえます。

リリックはゼネラルモーターズ・ジャパンが在庫管理をしてディーラーが販売するという方式を採用することで、全国統一の指定価格1100万円(税込)で販売されます。

2026年にはさらなるEV車種を続々投入

発表会ではゼネラルモーターズ・ジャパンの若松格(ただし)代表取締役社長のスピーチもありました。そのなかで若松社長は今後、日本に展開するEVを紹介しました。そのスピーチによると、2026年には3列シートのSUVのビスティックを投入。ビスティックは今の新しいキャデラックの象徴的なデザイン、胸のすくようなパフォーマンス、最新のテクノロジーを満載している3列シートのSUV。アメリカのメディアでは一部このビスティックをEVエスカレードなどというニックネームを付けているとのこと。

プレゼンテーションで紹介された『ビスティック』。

また小型のラグジュアリーSUVのオプティック(もちろんEV)も2026年に日本に導入予定。価格を抑えながら、キャデラックのブランドの価値を忠実に表現。次世代のEV購入者のためのエントリーモデルで、クラス最高レベルの後部座席の居住スペースを確保。内外装も革新的で表現豊かなデザインを特徴としたモデルと紹介しました。

オプティック

キャディラックはハイパフォーマンスモデルを「Vシリーズ」として位置づけていますが、EV初のVシリーズとして設定されるのがリリックV。このリリックVについても2026年に投入とのことで、2026年のラグジュアリーEVマーケットはキャディラックに席巻されそうな勢いとなっています。

写真左から、へクター・ヴィラレアル氏、ジョン・ロス氏、若松格氏。

発表会の最後にはGMアジア・パシフィック プレジデント&マネージングディレクターのへクター・ヴィラレアル氏も急きょ駆けつけて、短いながらも挨拶のスピーチを行いました。1台のクルマの発表にこれだけの幹部が集まるのもなかなか珍しいことで、ゼネラルモーターズがEVにかける意気込みと、日本市場を大切にしていることをうかがえる発表会となりました。

取材・文/諸星 陽一

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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