ホンダが軽商用EV『N-VAN e:』をHPで先行公開〜価格やバッテリー容量を予想してみた

ホンダは、2024年春に発売予定の軽商用EV(電気自動車)『N-VAN e:(エヌバン イー)』の情報をホームページで先行公開しました。2023年4月にホンダは『四輪電動ビジネス説明会』を実施し、搭載するバッテリーや価格などの情報を明らかにしています。今回、明らかになったことと合わせてお伝えします。

ホンダが軽商用EV『N-VAN e:』をHPで先行公開〜価格やバッテリー容量を予想してみた

軽商用EVで航続距離210kmを目標

ホンダは2023年9月28日に、すでに発表していた軽の商用EV(電気自動車)の関連情報を特設ホームページで先行公開しました。車名は『N-VAN e:(エヌバン イー)』です。

基本的な形は、ホンダのベストセラーになっている軽自動車『N』シリーズにラインナップされている『N-VAN』と同じです。ベース車両を既存のものにすることでコストを抑えています。本格的な量産車として売り出すために、まずはコストがこなれている既存車のコンバートから入るという保守的な手法を採用しています。

『N-VAN e:』

でも、乗り心地がICE車の『N-VAN』とはまるで違うものになるのは想像できます。ICE車からEVにコンバートしたことでまったく別物になるのは、何度も経験してきました。

直近では、日産『サクラ』、三菱『eKクロス EV』でも、ガソリン車とEVがまったく違う乗り物になっていて、EV走行のハイグレード感を実感できます。

それにホンダの四輪は軽自動車から始まっています。そんな歴史を考えると、ここで軽バンからEVを始めるのも納得できる話です。

これまでも、1990年代の『EV Plus』、2020年発売の『Honda e』などのEVを販売はしていましたが、継続して量産するというのにはほど遠い生産台数にとどまっています。『N-VAN e:』は数万台規模になるのは間違いないので、ホンダ初の本格的な量産EVと言っていいように思います。

バッテリーは25kWhくらい?

続けて、一充電での航続距離は、WLTCで210kmを目指して開発を進めているそうです。『サクラ』『eKクロス EV』は180kmなので、約17%増しというところでしょうか。これなら、リアルワールドでも1発で150kmはいけそうです。

その他、給電機能を搭載しているのもポイントです。CEV補助金は、『サクラ』などと同等の55万円(今年度の場合)が出ます。

充電は、50kWの急速充電と、6kWの普通充電に対応しています。日本でも6kW器の設置が少しずつ進んでいるので、バッテリー容量がそれほど多くない軽EVにとって6kW普通充電の利用価値は大きいと思います。

関連して、発表されていないバッテリーの搭載容量を予想してみましょう。

6kWhで5時間なら、単純計算すると30kWhです。『サクラ』などが20kWhなので大幅増です。

なのですが、航続距離から考えると、電費が『サクラ』同等だとするとWLTC180kmを210kmに換算してみると、バッテリー容量は約23.3kWhになります。

一方で『サクラ』ほど電費が良くないとすると、最大で30kWhというのもありえるかもしれません。

間をとって25kWh前後という感じでしょうか? 6kW普通充電に対応していますが、ひょっとしたら最後まで6kWで入るわけではないのかもしれないですし(ちょっと考えにくいですが)、だとすると25kWh〜30kWhというくらいが妥当な線かもしれません。あとは現物が出てからのお楽しみです。

運転支援に関する装備は、衝突軽減ブレーキや車線逸脱など基本的なもの、法的に義務化されているものは装備していますが、自動運転支援に関するものは搭載しないようです。基本的には近距離使用、それも商用なので想定内です。

付記すると、軽商用バンでは初めて、サイドカーテンエアバッグを標準装備するとのことです。

発売時期は当初発表どおり、2024年春の予定です。ホンダ広報によれば、当面は法人向け販売のみになるとのことでした。ちょっと残念な販売方法ですが、いずれは個人販売も予定しているようです。なんとかホンダに頑張ってもらって、1日も早い個人向け販売の開始を祈念したいと思います。

価格は100万円台というけれど

軽商用EVを市場に投入することは、2022年4月12日にホンダが開催した「四輪電動ビジネス説明会」で明らかにされました。その時に、発売時期や価格も概要はわかりました。

例えば2022年の発表時には、軽商用EVは「100万円台」を目指していると説明があり、「これはすごい」と思ったのでした。

今回、価格情報の更新はなかったのですが、なんと、この「100万円台」が、補助金を含めたものなのか、それとも車両本体価格が100万円台になるのかが、わからなくなってしまいました。

2022年4月の発表資料には「商用の軽EVを100万円台で投入」と記載してあるし、登壇した青山真二・事業開発本部長(当時・現 代表執行役副社長)は「商用軽EVを100万円台で提供することを目指す」と説明していて、補助金の話は一切出ていなかったのです。

ところが今回、念のためにホンダの企業広報に確認すると、補助金を入れて100万円台だという回答が返ってきました。何か方針が変更になったのか、それとも最初からそうだったのか、よくわかりません。

【関連記事】
ホンダが2030年までに200万台を目指す電動化計画を発表~各社の電池生産計画もチェック!(2022年5月13日)

恒例、EV車両価格についての妄想

ということで、ここからは恒例の勝手に価格予想をしてみたいと思います。

まず、仮に補助金なしの本体価格が100万円台だったとしたら、かなりのびっくり価格です。給電機能があるので、CEV補助金が55万円、この他に自治体などの補助金があれば、場合によっては新車で100万円を切ります。

昨今の軽自動車は100万円くらいするので、EVがガソリン車より安いならバカ売れすること間違いないと思います。

そうなるとバッテリーやら電子関係の部品やらの供給が追いつくのかどうかも、焦点になりそうです。

なお『N-VAN e:』のバッテリーは、『サクラ』などと同じエンビジョンAESC(現AESCジャパン)になると思われます。

2022年4月発表のEV戦略では、バッテリーについて、日本のEVにはエンビジョンAESC(現AESCジャパン)、北米ではアルティウムか、北米に新設する合弁会社からのもの、中国ではCATLとの連携強化の中で決定、という区分けになっていました。

4月の発表で示された資料より引用。

ところでEVのコストの中でバッテリーの比重がもっとも大きいのは当然のことです。

だとすると、『サクラ』『eKクロス EV』よりも航続距離が長い、つまりバッテリー容量が多くなりそうな『N-VAN e:』の価格が同じ種類のバッテリーを搭載する『サクラ』などよりも安くなったら、業界に衝撃が走りそうです。

『N-VAN e:』の装備を簡素化しても、バッテリー容量が16%以上、場合によっては1.5倍にまで増えることのコストアップを吸収し、さらに価格を下げることができるのかどうか。ハードルはとても高そうです。

補助金を入れて100万円台?

では、もし国の補助金を入れて100万円台になるとしたらどうでしょうか。

これだと、最低で約250万円の『サクラ』などとあまり変わらない価格設定になるかもしれません。でもそれだと、軽バンとしては成立しないようにも思います。

ということは、これもまた間をとって200万円台前半、それもかなり200万円に近いところ、なのかもしれません。

例えば、消費税抜きの本体価格が200万円を切っている、とか。本来、消費税は価格に含まれる(内税が前提)ものなので(元来は売上税という名称でした)、税抜き価格を前面に出すのはいかがなものかとも思いますが、どうでしょう。

もうひとつ考えられるのは、昨今の電子部品やバッテリー素材の価格高騰で、当初に想定していたコストを大きく超えるようになってしまい、補助金を含めて100万円台に方向修正した可能性です。

『サクラ』は、発売当初は233万円3100円からでしたが、2022年12月の価格改定で249万3700円からになりました。当初より10数万円上がっています。

これをホンダ『N-VAN e:』で考えてみると、2022年4月の発表時に199万円程度を想定していたとすると、200万円を超えても不思議はありません。装備品が少ないだけに、バッテリーコストの影響はさらに大きくなります。

ということで、筆者としては、本命:補助金入れて100万円台、対抗:税抜き価格で100万円台、願望:税込み車両本体価格が100万円台、にしようと思います。3択です。クイズダービーです。故篠沢教授が空の上からニコニコしてそうです。

軽EVでは、『サクラ』の受注台数が今年7月に5万台を超えて、日本でいちばん売れているEVになりました。軽自動車は日本独自の規格で世界的な汎用性はありませんが、場合によっては日本以外にも需要があるのではないかと思うことがあります。それがEVなら、なおさらです。

ガソリンよりも、電気の方がインフラの普及状況は上です。再エネ利用など、既存のエネルギー環境に負荷をかけずに供給できる可能性もあります。

そんなわけで『N-VAN e:』は、9月からはインドネシアで公道を使った実証をしているそうです。これまでヤマト運輸が3か月ほど開発に協力し、神戸などでテスト走行をしてきました。

ヤマト運輸は、EVトラック900台を今年度中に導入することを発表しています(関連記事)。中心になるのは三菱ふそうトラック・バスの『eCanter』です。

ホンダの『N-VAN e:』導入に関して、ヤマト運輸から台数など具体的な発表はまだありませんが、まとまった数を入れる可能性は高いと思います。

そうした社用が一巡したら、一般販売が始まるのかもしれません。ほんとはもっと早く発売してくれてもいいと思うし、一般販売をすることでさらに需要を喚起できるのではないかとも思うのですが。

今はまだ、「乗ったことがないのでEVとICE車の違いがわからない」とか「乗ったことはないけどEVは充電などが不安だ」という人が大半なので、触れる機会を増やすことが一番のPRになるように思います。

少しずつ秋の気配が感じられるようになりましたが、季節があと2つ変わると2024年春です。『N-VAN e:』を街中で見るようになるまで、あと少しです。

文/木野 龍逸
※記事中写真はプレスリリースから引用。

この記事のコメント(新着順)4件

  1. 試乗会に来てますが、29.6kWhとのことです。値段は補助金込みでも200は切らない見込みだそうですね。

  2. この車、法人向けの右タンデムシート仕様が素晴らしいです。
    宅配で左寄せで路駐して配達する時に右側から外に出ずに左から出て荷物を下ろせますし、ウォークスルーで荷室に直接アクセス出来るのも非常に使い勝手が良さそうです。
    更にEVならではの、配達で停車中にエアコンをかけっぱなしで運用出来るという利点を活かしてドライバーの疲労軽減も狙えます(エアコンを消すと真夏は配達して戻ってくるまでの僅か数分で車内が蒸し風呂に・・・)、運送業のことを非常によく考えているなという印象で、期待が持てますね。

  3. 今月試乗予定ですが、30kWhだそうですよ。
    商用車の電動化が加速しますね。その電気をどうやって確保するか?
    太陽光も相乗効果で加速しそう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

執筆した記事