HWELECTROが中型商用EV 『ELEMO-L』を発表〜蕭社長に直撃インタビュー!

商用EVベンチャーのHW ELECTROが、ハイエースサイズの中型商用バンの電気自動車『ELEMO-L』を発表、東京オートサロンでお披露目しました。会場で蕭偉城への直撃インタビューも実現。心意気をお伝えします。

HWELECTROが中型商用EV 『ELEMO-L』を発表〜蕭社長に直撃インタビュー!

HW ELECTROの「ELEMO」シリーズとは

カスタムカーの祭典として来場者数世界最大級を誇る東京オートサロン。41回目の開催となった今年は3日間で約18万人が来場しました。日本の商用EVベンチャー「HW ELECTRO」はオートサロンに初の単独出展。ライフスタイルの提案だけでなく、新たなモデルとして中型商用バンEVである『ELEMO-L』の発表を行いました。

ELEMO-L

オートサロン会場にてHW ELECTROのトップを務める蕭偉城(ショウ・ウェイチャン)社長にインタビューを行い、これまでの歩み、そしてこれからの展望について伺いました。

お話しの内容を紹介する前に、まずはHW ELECTROがどのような会社なのか簡単におさらいしておきましょう。

HW ELECTRO は2019年5月に設立、東京都江東区に本社を置き、商用EVの製造・販売を行う会社です。現在販売している車両はアメリカに本拠地を置く自動車メーカー「容大智造(CENNTRO=セントロ)」のEVをベースに、日本向けにブラッシュアップして、小型商用車の『ELEMO』、軽自動車サイズの『ELEMO-K』を発売。オートバックスセブンと資本提携を結ぶなど各方面と連携したアフターサポート体制構築も前進中。また、ゆくゆくは独自開発の車両も製造・販売を計画しており、輸入商用EVにおけるパイオニアとして、着実にその歩みを進めています。

そもそも、HW ELECTROと東京オートサロンには深い関係があります。HW ELECTROの設立前、蕭社長が同じくトップを務めるタイヤ会社「グッドライド・ジャパン」は2019年の東京オートサロンに出展し、小型商用EVを展示しました。これがのちのELEMOとなるのですが、当時は具体的な日本導入計画がなく、単にグッドライドのタイヤを純正採用する車として展示しただけ、だったのですが……。

予想外に来場者からの反響が大きく、数々の検討を経て、正式に日本へ導入することが決まったという経緯がありました。こうしてHW ELECTROが誕生、日本仕様車はセントロでの車名「メトロ」ではなく日本独自の『ELEMO』と名付けられ、2021年7月より販売を開始。同年11月には日本向けに全長を短くした車両を開発し、日本、すなわち世界初の「輸入商用軽EV」となる「ELEMO-K」をローンチしたのです。

ELEMO-K(手前)

さらに、今回中型商用バンEVの『ELEMO-L』を発表。ELEMOシリーズのバリエーションが拡がりました。

というわけで、オートサロンの会場で蕭社長にお時間をいただき、ELEMO-L発表に向けた意気込みなどを伺いました。

蕭偉城社長。

会場で蕭社長に直撃インタビュー

―東京オートサロン2023への初出展おめでとうございます。会場内や連絡通路でHW ELECTROのバッグを持った人をたくさん見かけました。

ありがとうございます。今回のオートサロンに向けてこのバッグは2万袋ほど用意しました。色もコーポレートカラー(翡翠色)一色にしていますが、皆さん『かわいい』と言いながら貰っていってくださいますね。

―今回のビッグニュースは新モデル『ELEMO-L』の発表と思いますが、導入の狙いは?

以前から、主にハイエースなどをお使いの方々から「もう少し大きい車はないのか」と要望をいただいておりました。既存のELEMOやELEMO-Kよりも大型の車種に対するニーズがあると感じ、導入を決定した流れとなります。

―ELEMO-Lは今後、どのようなスケジュールで販売されますか?

すでにナンバー交付のための各種作業は終了していますが、価格はまだ決まっていません。そして、各アフターサポートに必要な整備マニュアルも作成する必要がありますので、販売開始は6月ごろを予定しています。

―すでに販売しているELEMOやELEMO-Kに関して、売れ行きはいかがですか?

現在までに400台ほど販売してきましたが、そのうちの7割が軽自動車の『ELEMO-K』です。圧倒的に配送用途が多いです。

―トラブルの発生などはいかがでしょうか?

正直言いますと最初のうちはトラブルが多かったです。BMS(バッテリー・マネジメント・システム)が作動しなかったり、ワイパーを長時間作動させるとワイパーモーターがダメになったり。そこで、トラブルはHW ELECTRO側で検証し、逐一セントロに報告して改善する形をとることにしました。また、不具合を追跡しやすくするためにも当初の販売は提携パートナーに限定していました。現在は不具合の改修についてもめどが立って来たので、2023年は販売チャネルもより拡げ、ELEMOとELEMO-Kあわせて3000台弱を販売したいと考えています。

―販売を開始してから1年半ほど経過しましたが、HW ELECTROへの反応や評判はどのように変化しましたか?

HW ELECTROだけでなく、さまざまな中国製商用EVが日本に入ってきており、EVへの理解度も上がってきていると感じています。最初に加藤さん(筆者)に記事を出していただいた段階ではまだまだ認知されていませんでしたが、今はすごいです。ただ、それと同時にきちんと検証されていない記事も増えています。例えば、他社の商品が輸入商用EVとして初めてナンバープレートを交付されたという報道もありましたが、実際にはHW ELECTROが初です。不正確な記事を目にすると悲しくなりますね。

また、HW ELECTROが他社と違うのは、アフターサポートをしっかりと提供している点です。日本導入に際してきちんと順序を踏んでおり、整備マニュアルから取扱説明書まで、当たり前の領域をしっかりと行っています。この点に関してはHW ELECTROのボードメンバーに大手自動車メーカー出身の方がいて、『もっと販売するべき』と考える私に対し、『まずはアフターサポートを拡充する必要がある』と主張して、ブレーキをかけてくれました。

故障やクレームが発生しても、しっかりと対処できるようにまずはパートナーだけに納入したのもその一環です。整備マニュアルも必須ですし、その検証も行うと莫大な時間がかかりました。歩みは遅いかもしれませんが、こういった一歩一歩が後々の信頼につながると考えます。競合他社が多く、バッティングもする市場ですが、やるべきことをしっかりとやっていくので、今後に期待していただければと思います。

(インタビューここまで)

蕭社長と話していても、やはりHW ELECTROは誠実な商売を行なっていて、それが着実な事業拡大につながっているのだと感じました。今年もますます成長が期待できそうですし、どんな展開が待ち受けているのか、楽しみです。蕭社長、ありがとうござました。

キャンピングカーのカスタム仕様も展示

日本において、商用EVの選択肢はまだまだ少ないのが現状です。このような中、EVベンチャーのHW ELECTROがシリーズ3車種目の新たな商用EVとしてELEMO-Lを発表したことには意義があります。

2023年1月13日から15日まで、千葉県・幕張メッセで開催された「東京オートサロン」ブースで初公開されたELEMO-L。仕様の概要としては、全長5457 mm x 全幅1850 mm x 全高2046 mm、最大積載量は 1250 kgで、バッテリー容量は43.5 kWhとなります。HW ELECTROにとっては初めての「中型商用EV」となりますが、これはかねてからハイエースと同様のサイズを有するEVを望む声に応えての導入です。ちなみに中国ではバッテリー容量55.9kWhのモデルも販売されているので、今後の反応次第ではより航続距離が長い「ELEMO-L」の日本投入もあり得るのではないかと推測します。

なおオートサロンでの展示車両はどれも左ハンドルでしたが、このまま販売されるわけではなさそうです。

「発売当初は左ハンドルのみで、遅れて右ハンドルを投入予定です。HW ELECTROは今まで配送業者や物流業者などへの BtoB販売が中心でしたが、左ハンドルのままでは導入する業者は少ないと考えます。ましてや、EVであるという時点で少し躊躇する業者もいます。そこで当面の間はキャンプ用途など、ライフスタイル中心の提案を BtoC(企業から消費者へ)で行っていき、BtoB 展開は右ハンドルを導入してから本腰を入れていきます」(蕭社長)との計画があるそうです。

たしかに、トヨタ ハイエースや日産 NV350キャラバンを個人で所有し、旅行や車中泊、キャンプに使う例が非常に人気です。そういったユーザー層へのアピールも踏まえて、東京オートサロン2023では、キャンピングカーにカスタムされたELEMO-Lも展示されていました。

日本における商用EVの現状は?

日本でのEVのバリエーションは、SUVを筆頭に乗用車の選択肢は増えていますが、広義の「バン」型EVはわずかしかありません。現在日本で販売されているのは、HW ELECTROのELEMOシリーズ以外には、三菱『ミニキャブ MiEV』とフォロフライ『EV F1 VAN』の2車種のみ。

物流業者向けの小型トラックでは、三菱『e-CANTER』、日野『デュトロ Z EV』があり、福岡県北九州市に本拠地を置くEVモーターズ・ジャパンが2023年中の販売を予定しているウォークスルーバン『E1』と『E2』を発表したところです。

また、スズキが2023年度に、ホンダが2024年春にそれぞれ軽商用EVを投入予定であることを発表済み。トヨタが『Mid Box』を示唆したり、ダイハツが特許庁に『e-ATRAI』『e-HIJET CARGO』などを商標登録したといったニュースはありますが、まだ実像は見えてきません。

フォルクスワーゲン『ID.Buzz』の日本導入も待ち遠しいところですが、どうやらかなり高価な1台になりそうですし。

この状況を踏まえてみても、HW ELECTROのELEMO-Lは商用だけでなく、乗用としても十分に需要を見込めるのではないかと考えます。事実、トヨタ ハイエースや日産 NV350キャラバンは商用バンですが、それらのカスタムを楽しみ、キャンプやグランピング、車中泊用途にも使う個人ユーザーが一定数存在します。それらの需要において、「中型EVバン」として新たな選択肢を提示することがELEMO-Lには可能(コストパフォーマンスが良い価格になればさらに素晴らしい)です。

東京オートサロン2023で展示された際には、細部の質感など、日本仕様に向けた完成度ブラッシュアップの余地を感じる点もありましたが、HW ELECTROはユーザーからのフィードバックを受け、即座に改修&改善を行うやる気も備えています。正式な日本発売までには、さらに完成度を高めてくれることでしょう。

ELEMO-Lの発表で車種選択肢が拡がって、HW ELECTROの着実な前進に期待しています。

取材・文/加藤博人

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 配達用車両こそ、左ハンドルの需要があります!
    ウォークスルーならば左のドアから乗り降りできますが、左ハンドルならば助手席も積載に使用できます。
    左ハンドルならば危険な逆駐(道路右側への駐車)も減るでしょう。
    是非BtoBにご提案いただきたい事項です。

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この記事の著者


					加藤 博人

加藤 博人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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