EVモーターズ・ジャパンが物流用小型EVトラックを初公開&大型路線EVバスを初納車

商用電気自動車に特化してEV事業を展開するEVモーターズ・ジャパンが、東京で開催された展示会に物流用EVトラックを初公開、導入の相談&交渉を開始しました。また、四国の伊予鉄バスに大型路線EVバスが納車されました。

EVモーターズ・ジャパンが物流用小型EVトラックを初公開&大型路線EVバスを初納車

EVモーターズ・ジャパンとは?

EVモーターズ・ジャパン(以下、EVM-J)は、リチウムイオン電池の技術者であった佐藤裕之氏が2019年に起業、EVのバスやトライク(三輪バイク)などを中心に商用電気自動車の開発や販売を手掛けるベンチャー企業です。EVsmartブログでは設立当初から注目し、2022年6月には北九州市の本社を訪ね佐藤社長へのインタビュー記事を紹介。11月には幕張メッセで開催された「バステク in 首都圏」にEVバスを出展したことなどを紹介してきました。

佐藤社長へのインタビュー記事で紹介しているように、2023年中には北九州市内に自社で開発した商用EVの最終組立工場を建設して稼働させるとともに、ゼロエミッション社会の実現をコンセプトとした体感型EV複合施設「ゼロエミッション e-PARK」を開設する計画が発表されています。

1トン&2トンの物流用EVトラックを初公開

2023年1月25日から3日間、東京ビッグサイトで開催された「第2回スマート物流EXPO」に、EVM-Jが出展。最大積載重量1トンおよび2トンの、ラストワンマイル物流での活用を想定したEVトラックが日本国内で初めて公開されました。

会場内のブースには、『E1』と名付けられた1トン車と2トン車の『E2』が並んで展示されていました。車幅や基本的なデザインなどは共通で、2トン車は全長やホイールベースが50cmほど長くなっています。

EV Motors Japan
E1
EV Motors Japan
E2
日野 デュトロ Z EV
ウォークスルーバン
最大積載量1トン2トン1トン
車両総重量3500kg5000kg3490kg
全長×全幅×全高(mm)5380×1900×26505600×1900×26504695×1695×2290
荷室内寸法(L×W×H/mm)3420×1680×21003920×1680×21002975×1590×1795
荷室床面地上高440mm440mm450mm
最小回転半径5.3m6m4.9m
モーター最高出力60kW120kW50kW
駆動方式前輪駆動前輪駆動前輪駆動
バッテリー容量59.52kWh78.72kWh40kWh
一充電航続距離(WLTC換算)約200km約167km150km

現在、日本国内で発売されている小型EVトラックには、三菱ふそうの『eCANTER』や、日野の『デュトロ Z EV』があります。購入者のニーズに合わせて架装などが施されるトラックのスペック比較は難しいですが、最大積載量や、低床の荷室と運転席がウォークスルーという特徴が共通しているデュトロ Z EVのウォークスルーバンを比較対象として並べてみました。

運転席と荷室はウォークスルー。低床で普通に立って歩ける空間なので、キャンピングカーなどにも活用しやすそうです。

サイズ的に近い1トン車のE1とデュトロ Z EVを比べると、搭載するバッテリーが59.52kWhとデュトロよりも大容量で、航続距離も長くなっています。

EVM-Jの発表では、NEDC値の航続距離としてE1が240km、E2は200kmとされていましたが、日野が公表しているWLTCモードでの国土交通省審査値に合わせて換算しました。NEDC値は日本のWLTC値よりも大盛りになるので、係数として「1.2」(EPA比を元にした概算です)で割っています。実用的な航続距離としては、それぞれ8割程度となるでしょう。

ちなみに、車載用リチウムイオン電池を長く研究開発してきたルーツをもつEVM-Jならではの独自技術である「アクティブ・インバーター」を、今回発表したEVトラックにも搭載。1/100万秒レベルで緻密なモーター制御によって無駄な電流消費を抑え、世界トップレベルの低電費やバッテリーの長寿命化を実現しているとのことでした。

気になる価格。三菱ふそうも日野自動車も、EVトラックの価格は一般に公表していません。推定価格として、eCANTERが1300万円くらい〜、デュトロ Z EVは800万円台〜程度と認識しています。EVM-Jでも価格は教えてくれないのかなと思いつつ、展示ブースで広報ご担当者に質問すると、まだ実車が初めて日本に入ってきたばかりで正式な価格は未定ではあるものの、E1は700〜800万円程度、E2は900〜1000万円程度を目標としていることを教えてくれました。

以前、運送業者の方とお話ししていて、トラックの燃料代は年間で数百万円と大きなコストになっていて、EVにすると「燃料代はざっくり言って半分になる」と教えてもらったことがあります。電気代が上がっているので差額は小さくなっているかも知れないですが、軽油やガソリン価格も話を聞いた数年前より上がっています。ディーゼルエンジンの1トン車は新車価格で500〜600万円程度が相場のようなので、車両価格としては100〜200万円高くなるものの、ゼロエミッション走行を実現しつつランニングコストを大幅に削減できるE1やE2の導入は、規模の大小を問わず運送業者にとってはかなり魅力的なのではないかと思います。

オプションでルーフにEVM-Jの独自アイテムである「軽量フレキシブルソーラーパネル」の搭載も可能。
E1(1トン車)の積載量。
E2(2トン車)の積載量。

日本仕様の「仕上げ」はまだこれから

会場で展示されていたE1とE2は、展示会の直前に中国からやってきたばかり。ご担当者に聞くと「まだ充電も試していない」ほど、「日本上陸ほやほや」の状態でした。

運転席などの印象はまず及第点。会場ではシステムを起動しないということでメーター表示などは確認できず、広報写真を参照するしかなかったですが、わかりやすく、運転操作もしやすそうです。運転席の左右に取り付けられているモニターはカメラ式ミラー用で、オプション設定になっています。

運転席と荷室を区切るアクリル板に保護フィルムが貼られたままであることに撮影しようとして気づき、その場で剥がす一幕も。

とはいえ、日本のユーザーに合わせた細部の仕上げや安全基準への適合など、日本仕様に仕上げる作業はまだこれから。AC電源を装備するかどうかといった詳細もまだ未定です。北九州に建設中の新工場が今年の秋頃には稼働を開始するのに合わせ、今年の年末くらいを目標に納車を開始したいということでした。

とはいえ、ようやく実車が入ってきて、導入に向けた相談はスタートします。今後は、実際に導入を希望する運送業者の方々の要望なども聞きながら、日本仕様の魅力的なEVトラックにブラッシュアップされていくことになります。

EVトラックの導入時には拠点施設への充電設備の設置も必須になりますが、EVM-Jでは「チャデモ2.0」規格に準拠した高出力急速充電器などの充電器も自社で開発&発売しています。車両そのものの仕様やメンテナンス、さらに充電設備などを含めて、導入する業者とEVM-Jが相談しつつ連携して、EV物流車の未来がカタチになっていく、というイメージですね。

E1とE2は、荷台と運転席が一体型のデザインで、トラックというよりはマイクロバスのような外観です。と思ったら『GVW 4ton 乗合仕様 E01』という、E1をベースにしたマイクロバス(乗車定員10〜13名)もラインナップするとのこと。ラストワンマイルの小型EVトラック、またEVマイクロバスに興味がある業者の方は、EVM-Jにコンタクトしてみてください。

【公式サイト】
EVモーターズ・ジャパン

伊予鉄バスに日本企業として初めて大型EVバスを納車

スマート物流EXPO会場で取材したのは初日の1月25日だったのですが、同じ日、愛媛県の松山市でもうひとつ、EVM-Jのビッグニュースがありました。伊予鉄バス株式会社へ「大型路線EVバスにおいては、国内企業が開発・製造を行うEVバスとして、 全国初となるEVバスを納車」して、出発式が開催されたのです。

納車された大型EVバスは、1月26日から松山市駅~川内・さくらの湯を結ぶ川内線(区間距離18.2km、1日3.5回運行)で走り始めています。

今まで、日本国内の路線バスにEVを導入するケースでは、エンジン車のバスを改造したコンバートEVが利用されており、1台ごとのオーダーメイドなので車両価格が高額でした。すでに導入されているメーカー製のEVバスは、BYDなどの中国か欧州のメーカーで、日本国内のメーカーからはそもそもEVバスが発売すらされていなかったのが実情です。

大型バスに加えて、物流車やマイクロバスもEVへ。新工場の完成を間近に控えたEVM-Jのチャレンジに、これからますます要注目です。

取材・文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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