リーフe+62kWhのバッテリー温度管理の追加情報と、ZE1の充電プロファイル更新

日産リーフe+62kWhが1月23日に発売されました。発表直後の10日に当ブログでは「EV目線」の速報をお伝えしましたが、その後、バッテリー温度管理などの情報が入りましたのでお伝えします。従来のZE1向けの充電プロファイル更新の情報もあります。

リーフe+62kWhのバッテリー温度管理の追加情報と、ZE1の充電プロファイル更新

冷却機能は備えず「バッテリー温度管理システム(TMS)」が進化

まず、2019年1月9日のリーフe+62kWhの発表を受けて、EVsmartブログチームではさらに情報を探してみました。10日の当ブログでも書きましたが、一般メディアが伝える内容だけではEVを知る人が欲しい「EV目線」情報が充分とはいえないと感じたからです。

著者(箱守知己)からの質問(Q1〜5)と、それに対する情報(A1〜5)が手に入りましたので、列挙してみます。老婆心ながら、リーフ・ユーザーの方には釈迦に説法ですが、「ZE0」とは初代の丸みを帯びたデザインのリーフのことで、「ZE1」はe+62kWhを含む現行の直線的なボディーになったリーフのことです。

Q1. 今回のリーフe+64kWhには、電池の温度管理(冷却など)の機構は付いたのでしょうか?

A1. ⇒ 冷却機能は備わっていません。「日産リーフ」には全て、バッテリーのロングライフ(長寿命化)を実現するための高度な「バッテリー温度管理システム(TMS)」が搭載されています。

これはすでに10日の当ブログで広報からの回答でお伝えした内容と同じですね。並列化で発熱を少なくする戦略が基本ですが、「TMS」で細かく制御(バッテリーを冷やすのではなく、出力などを調整か)しているとのことです。従来とは回路も変わったので、さらにチューニングされていることでしょう。

Q2. 今回のリーフの電池を「NMC111」と伝えているメディアがありますが、正確には「NMC622」ではないでしょうか? LG ChemさんはNMC111は既に製造していないと考えております。

A2. ⇒ NMC系であることは弊社ウェブサイトでも掲載されていますが、比率は公表しておりません。また、仕入れ先情報についても公表しておりません。

公表はされていませんが、世界では「NMC622」が主流なので、このケミストリーが使われていると考えるのが自然だと思います。そして今後、さらに高エネルギー密度の「NMC811」が安定して実用化されれば、同じ容積の二次電池でも電力容量が上げられるので、さらに航続距離が伸びることでしょう。

ただし、NMC811はさらにエネルギー密度が高まっていますし、現在その安定性を確保するのに各社奮闘している(なので、以前公表の量産化がまだ始まっていない)ようなので、電池下部アンダーガードの強化などの物理的強化の対策も必要になるかも知れません。

Q3. 室内スペースはリーフe+62kWhでは変わっていないでしょうか?全高5mm上昇、最低地上高15mm下降とは発表されていますが。

A3. ⇒ 車内スペースは変わっておりません。バッテリー容量が増えた分を室内スペースを変えることなく吸収するために、若干全高と地上高が変更となりました。

すでにお伝えした内容と同じですね。居住性を犠牲にせず、二次電池をより多く搭載した日産自動車の努力を評価したいと思います。

Q4. 電池モジュールは従来通りの「96S(96 Series)」でしょうか?合計288ということなので、従来の96を3つ並列に束ねると288になり、計算が合いますが…。

A4. ⇒ 96直列で、3並列にしているので計288セルです。

これで、10日の当ブログでの予想が当たっていたことが判りました。なお、直列は英語でseries、並列はparallelです。

Q5. 昨年末来、 欧州で話題になっている「バッテリー温度上昇による充電抑制を緩和するプログラム・アップデート」は、昨年夏以来日本でユーザーに提供しているプログラム・アップデートと同じものでしょうか?

A5. ⇒ ご指摘のとおり、同じものです。

新しい「充電プロファイル」への変更について

これに関しては、別のルートから、以下のような情報も入って来ました。

● ZE0(初代リーフ、AZE0を含む)での「夏場の高速走行+複数回急速充電でのバッテリー温度の過度な上昇による亀ランプ点灯」現象を軽減すべく、ZE1(リーフe+62kWhを含む現行リーフ)で急速充電性能を変更しました。

● この結果「充電時間が長い(30分での急速充電量が少ない)」との不満をいただいておりましたことから、「充電プロファイル」を変更し、「急速充電2回/日」までの使われ方でご不満とならないよう、仕様変更しております。(変更仕様の考え方は、欧州で実施しているものと同じです。)

● 現在流れております(ZE1の)生産ラインでは、新プロファイルを採用しております。

● 既販車でご不満が生じましたお客さまには、日産販売店にて新しいプロファイルへの「更新対応」を行っております。

従来の現行リーフ(ZE1)にお乗りの方で、高速走行時の2回目以降の充電速度で困ったことのある方は、日産自動車ディーラーに一度相談してみることもアリですね。ただし、これは「バッテリー保護・長寿命化」とは相反する部分が否定できないと思います。

以前の当ブログの記事で、チームの寄本氏がリーフオーナーに取材して次のように書いています。 → 希望するオーナーには、改善のためのプログラムアップデートが用意されているそうです。購入したディーラーに急速充電の電池温度制限を上げたいと相談してみてください。 ※日産では公式にアップデートの情報は出していません。電池劣化のリスクが高まることでもあるので、慎重に検討するのがオススメです。

実際、バッテリーの寿命のほうが大切だとして、急速充電の速度低下は経験しながらも、あえて「新プロファイル」に更新せずに乗り続けているユーザーもいらっしゃいます。ご自分のリーフの使い方をじっくり振り返って、焦らず選択してください。

(文:箱守知己)

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この記事の著者


					箱守 知己

箱守 知己

1961年生まれ。青山学院大学、東京学芸大学大学院教育学研究科、アメリカ・ワシントン大学(文科省派遣)。職歴は、団体職員(日本放送協会、独立行政法人国立大学)、地方公務員(東京都)、国家公務員(文部教官)、大学非常勤講師、私学常勤・非常勤講師、一般社団法人「電動車輌推進サポート協会(EVSA:Electric Vehicle Support Association)」理事。EVOC(EVオーナーズクラブ)副代表。一般社団法人「CHAdeMO協議会」広報ディレクター。 電気自動車以外の分野では、高等学校検定教科書執筆、大修館書店「英語教育ハンドブック(高校編)」、旺文社「傾向と対策〜国立大学リスニング」・「国立大学二次試験&私立大学リスニング」ほか。

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