ZEVだけで日本市場の攻略へ
2022年2月8日、Hyundai Motor Company の100%子会社である Hyundai Mobility Japan が記者発表会を開催。日本の乗用車市場への参入を正式に発表しました。まず導入されるのは、電気自動車(BEV)の看板モデルである『IONIQ 5(アイオニック5)』と、水素燃料電池車(FCEV)『NEXO(ネッソ)』の2車種です。
受注はすべてオンラインで行い、自社ウェブサイトなどで5月からオーダー受付を開始。7月からデリバリーを開始するとしています。
『IONIQ 5』は2020年2月に発表された最新電気自動車モデルです。EV専用プラットフォーム『E-GMP』を採用したミドルサイズSUVで、Hyundai では「CUV(Crossover Utility Vehicle)」と称しています。バッテリー容量や車体のサイズなど、日本では日産アリアやトヨタbZ4X、スバルソルテラといったBEVのニューモデルがライバルとなりそうです。
発表された『IONIQ 5』の価格など、速報的な比較表にしてみました。
Hyundai IONIQ 5 | Hyundai IONIQ 5 Voyage | Hyundai IONIQ 5 Lounge | Hyundai IONIQ 5 Lounge AWD | 日産 ARIA B6 | トヨタ bZ4X(FWD) |
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全長×全幅×全高(mm) | 4635×1890×1645 | 4635×1890×1645 | 4635×1890×1645 | 4635×1890×1645 | 4595×1850×1655 | 4690×1860×1650 |
駆動方式 | RWD | RWD | RWD | AWD | FWD | FWD |
バッテリー容量 | 58kWh | 72.6kWh | 72.6kWh | 72.6kWh | 66kWh | 71.4kWh |
最高出力 | 125kW | 160kW | 160kW | 225kW | 160kW | 150kW |
最大トルク | 350Nm | 350Nm | 350Nm | 605Nm | 300Nm | 265Nm(推定) |
航続距離(WLTC) | 498km | 618km | 618km | 577km | 470km | 500km前後 |
航続距離(EPA推計) | 約398km | 約494km | 約494km | 約462km | 約376km(推計) | 約400km前後(推計) |
急速充電最大出力 | 90kW | 90kW | 90kW | 90kW | 130kW | 150kW |
価格 | 479万円〜 | 519万円〜 | 549万円〜 | 589万円〜 | 539万円〜 | 未発表 |
未確認ですが、『IONIQ 5』は外部給電にも対応しているので、経産省のCEV補助金は最大80万円のカテゴリーになると思われます。
日産アリアB6(バッテリー容量66kWh)のFWDモデルが、『IONIQ 5 Lounge』というバッテリー容量72.6kWhのモデルと真っ向勝負の価格帯。イギリスではバッテリー容量71.4kWhでFWDのベースモデルが約4万1950ポンド(約655万円)〜でラインナップされたトヨタbZ4Xが、日本ではいくらで発売されるのか。日本のユーザーとしてはますます気になるところです。
さらに、アウディQ4 e-tronやボルボC40 Recharge、メルセデス・ベンツEQA、さらにはフォルクスワーゲンID.4 などを交えた500〜700万円クラスのEV激戦区に、Hyundai IONIQ5も参戦することになります。
IONIQ 5 は車載コンセントを装備しており、外部機器不要で充電口から電気を取り出すV2Lにも対応しています。急速充電は90kW出力器の性能を享受できると発表された上に、ウインカーレバーを右側に配置するなど日本のマーケットに適したローカライズを施したとのこと。58kWhとバッテリー容量をやや抑えたモデルを用意することで400万円台の価格を実現しており、魅力的な「電気自動車の現実的な選択肢」が増えたと評価できそうです。
日本社会の変化に対応
記者発表会では、今回の日本市場参入に向けて、日本法人の社名を「現代自動車ジャパン株式会社」から「Hyundai Mobility Japan 株式会社 」へと変更したことを紹介。そして、「LIFE MOVES」という、Hyundai が提供する新しいライフスタイルを示すキーワードが強調されました。
「日本社会の変化に対応」するプロダクトとして、BEVの『IONIQ 5』とFCEVの『NEXO』という2車種のZEV(ゼロエミッションヴィークル)を投入。3つの戦略で「LIFE MOVES」の提供を目指していくという考えです。
LIFE MOVES with Smart Experience of Mobility
ひとつ目のポイントが「Smart Experience of Mobility」、オンライン販売をはじめとするスマートな顧客体験を提供することです。車両選びから、試乗予約、見積もり、注文、決済、配送情報の確認まで全てをオンラインで完結。購入後の車両点検や整備のサポートまで、ひとつのユーザーIDで利用できるようになるとのこと。
発表会では、納車はホームデリバリーもOK! と説明されました。
2022年2月19日(土)から5月28日(土)まで渋谷区神宮前に「Hyundai House Harajuku」を開設。また、リアルなZEV体験拠点として、試乗や購入相談、点検、整備をワンストップで提供する「Hyundaiカスタマーエクスペリエンスセンター」を、2022年夏に神奈川県横浜市に開業する予定です。修理や整備などについては提携工場と連携、全国をカバーするロードサービスを提供します。
LIFE MOVES with Sustainable Mobility
ふたつ目のポイントが「Sustainable Mobility」、すなわち、『IONIQ 5』と『NEXO』という2車種のZEVで日本市場再参入を果たすこと。今後、車種が追加される場合でも、おそらく『KONA Electric』などのZEVが選ばれていくことになるのだと思われます。
発表会では、Hyundai Mobility Japan R&D center 株式会社 デザインチーム チーム長の占部貴生氏と、Hyundai Mobility Japan 株式会社 シニアプロダクトスペシャリストである佐藤健氏が、それぞれ『IONIQ 5』と『NEXO』に乗って壇上に登場し、2台の先進装備や魅力を解説しました。
FCEV『NEXO』は、776万8300円〜。『IONIQ 5』同様に、5月に受注開始、デリバリー開始は7月の予定です。
LIFE MOVES with Freedom in Mobility
今までの常識にとらわれないライフスタイルの変化という意味で興味深い戦略が、3つ目の「Freedom in Mobility」です。Hyundai ではカーシェアリングサービス『Anyca』を提供する DeNA SOMPO Mobilityや、DeNA SOMPO Carlife との協業を展開。
2022年内に『IONIQ 5』 100台、『NEXO』20台を「Anyca Officialシェアカー(Anycaが所有するクルマをカーシェアに利用)」に投入し、おもに東京と神奈川でサービスを提供していくことを発表しました。
また、日本国内で『IONIQ 5』と『NEXO』を購入したオーナーがAnycaのカーシェアに登録し、車両を体験した方がその後車両をご購入された際は, シェアしたオーナーとご購入者双方がインセンティブを得られるプログラムを提供します。
さらに、購入したHyundai 車を Anyca のカーシェアに利用することで有利になるサブスクリプション商品「SOMPOで乗ーる」という仕組みが用意されます。「所有から利用へ」とでも言うべきモビリティの変化は今に始まったことではないですが、Hyundai ではまずカーシェアサービスとの密接な連携から日本市場への浸透を図っていく狙いのようです。いきなり購入するよりもリスクが低いカーシェア利用でブランドへの信頼感醸成を図るのは、理に適った策とも感じます。
3つの戦略を軸に展開する「LIFE MOVES」の提言。今回の日本再進出は「日本社会の変化に対応」するためと説明されましたが、むしろ、Hyundai の新たなサービスや価値提供によって日本社会に「変化を促す」側面もありそうです。
バッテリーは8年間もしくは16万km保証
今回の記者発表会。オミクロン株騒動がたけなわなので、私はオンラインで参加しました。発表会終了後には質疑応答があるということで、事前に質問フォームから以下の質問を送ってみたところ……。
●BEVのバッテリー保証内容は?
●Hyundai として日本国内の急速充電ネットワーク拡充にはどのように関与しますか?
●韓国で生産が始まったと伝えられている『IONIQ 6』など、新型EVの日本への導入予定は?
●昨年報じられたKONAのリコール(バッテリー発火)について、その原因、対応などについて、品質に敏感な日本のユーザーに向けた説明があればお願いします。
オンラインでの質疑応答は数問だけ、数分で終了してしまったのですが。私が送った質問の上2つについては簡単な回答がありました。
まず、バッテリーについては「8年間もしくは16万kmで当初性能の70%を保証」するとのこと。日産リーフやアリアなどと同様の保証内容です。
そして、国内の急速充電ネットワーク拡充への関与については「当面、自社として計画はない」「ユーザーの家庭用充電器はサポートしていく」ということでした。
ともあれ、記者発表会後にオープンした公式サイトを見ると、説明がわかりやすいし、車載コンセントやV2L対応、急速充電の高出力対応など、EVユーザーのかゆいところに手が届く感じの装備&性能がかなり魅力的です。はたして、Hyundai の日本再進出は成功するのか。販売目標台数については「自ら示すのは時期尚早」と明示されませんでしたが、はたして新型BEVが各社から登場してくる今年の夏、『IONIQ 5』は日本でどのくらい売れるのか。楽しみにしています。
そういえば、充電認証カードについて何も説明がなく、カタログサイトにもとくに紹介されていません。用意しない(だとすればオススメは日産ZESP3)のかどうか、追って確認しています、ね。
(取材・文/寄本 好則、冒頭写真撮影/加藤 博人)
>バッテリーについては「8年間もしくは16万kmで当初性能の70%を保証」する
保証に該当した場合の対応方法はどうすると発表されましたか?
三菱:無償で修理・交換を実施 → 新品に交換してくれる
https://www.mitsubishi-motors.co.jp/afterservice/service/warranty/outlander_phev/17model.html
日産:9セグメントを割り込んだ(=8セグメントになった)場合に、修理や部品交換を行い9セグメント以上へ復帰することを保証 → 新品に交換してくれない。
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/leaf/charge/battery.html
保証すると明言するだけでは正直不十分です。
保証適用時の対応方法も非常に大事だと思います。
>日産リーフやアリアなどと同様の保証内容
違いますね。
日産の保証適用=8セグメントになった → 8/12=66.6% なので、70%を保証するHyundaiよりも保証してくれる条件は厳しいです。
アイ・ミーブで経験しましたが、この領域になると容量低下により電池残量の減りは早いが内部抵抗増加によりCHAdeMO充電時の電流低下も早く、正直使いづらいです。
まぁ売れないだろうなぁ。
日本は日本車のホームグラウンドだし、輸入車を買う層は欧州車を買う。あとは少数のファンがアメ車を買うくらい。
過去にサポート放り出して撤退したし、組み立て工場では作業員がスマホで動画見ながら組み立てているし、印象は悪いヒュンダイを買う人はほとんどいなさそう。
値段は驚くほど安いとびっくりしました。EVですので、売れると思います。
EPA航続距離も申し分ないし、トルクも申し分ない。80万円の補助金だってもらえそう。バッテリーヒーティングシステム(冷却は?)あり、ヒートポンプシステムあり。どうかプレコンディショニングもありますように(チャデモへの移動中も可能設定が望ましい)。
ムーステスト結果も、NCAPでの衝突等テスト結果もそれなりに良い。
フランクが57Lとやっぱり、既存自動車メーカー同様にモデル3のものよりも小さい。