EVの長距離は「トラックロックオン走法」がオススメ〜奈良EV講演会からの提言【01】

大和高田市でのEV講演会へKONA Casualで行ってきました。主催者の「再エネ共同基金」の活動や、東京=奈良を駆け抜けたロングドライブからの気付きや提言をレポートします。まずは、EVの高速道路ロングドライブは、ACCでトラックをロックオンした定速巡航がオススメって話です。

EVの長距離は「トラックロックオン走法」がオススメ〜奈良EV講演会からの提言【01】

EVシフトは普通の人が「できること」のひとつ

2024年5月19日(日)、奈良県大和高田市の「コープなんごう」で開催されたEVイベントの講演に行ってきました。テーマは、予告通り「2024年5月19日。電気自動車って、どうなんだ?」として、航続距離が短い? 充電場所が少ない? といった、いまだに日本では多くの人が勘違いしている「EVへの疑念」について、できるだけ具体的にお話ししたつもりです。

参加いただいたみなさま、ありがとうございました!(撮影/再エネ協同基金スタッフ)

開始時間が少し押して、講演会後の試乗時間が迫ってきたため、用意していたいくつかのネタ(全固体電池? とか)を割愛することにはなったものの、講演会終了後にも会場に残ってくださった何人かの方々とじっくりお話しすることができ、私にとっても有意義な時間を過ごすことができました。参加者のみなさま、ありがとうございました。

地元ディーラー各社が協力して実施された試乗会の邪魔をしない程度に、私のKONAにも試乗してもらえれば、なんて思っていたのですが……。当日は雨模様でなんとなく居場所がなかったのと、翌日の午前中に予定が入ったこともあり、早々に会場を後にしてしまいました。「KONAにも乗りたい」と思っていた参加者もいらしたようで、ごめんなさいでした。

会場に集まった試乗車。(写真提供/よこよこ様)

ならコープで私がEV講演会をやらせていただくのは、2022年12月、2023年5月に続いて3回目でした(関連記事)。このEVイベント主催者である「再エネ共同基金」(公式サイト)は、ならコープグループが中心になって2016年9月に創設された一般社団法人で、会員(再エネふれんず)の方々が省エネ機器や太陽光発電などの設備を導入するための助成や、再エネ利活用の知識を拡げる取組を行っています。

「再エネ共同基金」助成制度の項目と金額(抜粋)
●太陽熱利活用(太陽熱温水器などの導入)=5万円
●木質資源利活用(薪ストーブなどの導入)=5万円
●太陽光発電設備の導入=上限4万円
●定置型蓄電池の導入=上限4万円
●断熱窓へのリフォーム(複層ガラス窓への交換など)=上限4万円
●電動アシスト付き自転車の購入=1万円/1台
●電気自動車の購入=車両価格の1/10(上限5万円)※中古車の可
●V2Hの導入=5万円

ほかにも項目はあり、幅広く助成を行っていることがわかります。再エネふれんず個人会員の年会費1000円で、月に数回程度のペースで開催される講演会やワークショップなど(今回は無料でしたが参加費が必要なイベントもあります)に参加して、再エネや省エネについての知見を深めつつ、こうした助成を受けられる、ということです。

助成の項目を見るだけでも、再エネ活用や省エネ促進といった地球温暖化対策の方法はいろいろあって、EVは「そのひとつ」であることがわかります。また、個人が利便性の高いライフスタイルを維持しながらも、毎日の暮らしの中で大きなC02削減効果を挙げることができるのがEVへのシフトであり、その効果を最大化するためにも社会全体の再エネシフトが大切だ、ってことを改めて肝に銘じる機会になりました。

ACC任せでトラックのスリップストリームをフル活用

復路、東京帰着時の電費履歴。平均で8km/kWh程度って感じ(とても優秀)です。

奈良でのEV講演会へ、私は1月に買い換えたヒョンデKONA Casualで行きました。往復で高速道路を走りつつ、レポートのお題にしようと考えたのが、「電気自動車で高速道路のロングドライブ時には、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などの先進運転支援を活用し、運転の上手なトラックなど大型車のスリップストリーム(イメージ)を90〜100km/h程度の定速巡航するのが楽ちんで電費がいい」ってことです。
(東京=奈良で長く走った東名〜新東名〜伊勢湾岸道などでの一例です)

以前のマイカーだったAZE0リーフは、ベーシックなクルーズコントロールは装備していましたが、前車追従式のACCではありませんでした。私が買ったKONAはエントリーグレードの安いヤツですが、ACCはもちろんLKA(レーン・キーピング・アシスト)などの運転支援機能は上級グレードとほぼ同等の性能を発揮してくれます。

先だって、知人のエンジン車に同乗してゴルフへ行く機会があったのですが、エンジン車大好きな知人はせっかく装備されている運転支援機能をほとんど使っていないというので驚きました。数キロの断続渋滞に遭遇なんて時にも、運転支援機能を活用すればとても楽ちん。長距離ドライブでの疲れを軽減してくれるので、ぜひ上手に活用することをオススメします。

95km/h程度で巡航するトラックを見つけてロックオンする

高速道路のロングドライブ時、先進運転支援を活用したテクニックのひとつが「トラックロックオン走法」なのですが、私の経験上、よりスムーズな走りを享受するためにいくつかのコツがあります。

とくに大切なのが「巡航速度」と、「スムーズな走りをしてくれる運転の上手なトラックを見つける」こと。

まず巡航速度は、私の場合メーター表示「90〜95km/h」程度で走ってくれるトラック(大型貨物車としては制限速度オーバーなケースもあるけど)が好みです。これが80km/h台だと、三車線の一番左側を走る時間が長くなり、もっと遅いトラックや軽などを追い越す動きもギクシャクしがち。巡航速度を100〜120km/hとかに上げると、走行車線では遅いトラックに詰まるケースが多くなって頻繁に追い越し車線へレーンチェンジ。追い越し車線ではより飛ばしているエンジン車に煽られたりして落ち着きません。

経験上、メーター読みで90〜95km/hくらいで中央車線中心に巡航するのが理想的。まずは追い越し車線も活用して100km/h程度で巡航しながら、中央車線にお目当ての速度でスムーズに走っているトラックを見つけたらレーンチェンジしてロックオン(ACCは100km/h程度の設定のままトラックを追尾する)、が私なりのルーティンです。

ただ、何十キロも同じトラックを追走していると飽きてくるし、ドライバーさんが気付いて「なんで付いてくるんだよ?」的な動きを見せることがあるので、良い加減なところでペースを上げて追い越し、次のターゲットを探したりもしています。

100km/h巡航したい時は高速バスがターゲット

ちなみに少しペースを上げたい時は、制限速度の100km/h前後(メーター読み105km/h程度が多い)で巡航する高速バスをロックオンします。その場合、前述のようにレーンチェンジの回数が多くなるのはやむを得ません。

ともあれ、巡航速度が90km/hにしろ100km/hにしろ、ターゲットにするトラックやバスは運転の上手なドライバーさんであることが大切。最近は大型車もほとんどがACCを装備していると思いますが、テクニックの差はあります。運転の上手なドライバーさんのトラックだと、左側二車線間、あるいは追い越し車線へのレーンチェンジの判断や動きがスムーズ。逆に、レーンチェンジが唐突&意図不明だったり、速度が安定しない、ふらつきが多いといった信頼できないターゲットからは早々に離脱するよう心掛けています。

あと「スリップストリーム」と表現しましたが、車間距離はACCの車間距離設定で4段階の「1」か「2」くらいで追走します。スリップストリームで実際に空気抵抗軽減の効果が出るのは30m以内なんてことを聞いたこともありますが、あまり接近すると危ないのでACC任せ。それでも、定速巡航時間が長くなり、電費は良くなっている、気がします。

エンジン車ではかっ飛ぶのが好きだったけど……

大きな声で言うことではないですが、エンジン車時代の私は追い越し車線をかっ飛ぶのが大好きでした。でも「EVが気持ちいい」と気付き、ほぼEVしか運転しなくなってからは、90〜100km/h巡航が当たり前になっています。ちょっと大袈裟ですが、エンジン車からEVにシフトすることでもたらされた「行動変容」だと思っています。

脱炭素社会の実現や地球温暖化に立ち向かうため、テクノロジーの進化はもちろん大切ですが、個人として貢献できるお手軽で最善の方法のひとつが、こうした行動変容だとも感じています。

実際に90km/h巡航をしてみると、ACCが普及してきたからでしょう、トラックを追尾する私の後ろにエンジン車を含めた何台かのクルマが並んで隊列走行になることがしばしば(もっと飛ばしたい人はとっとと抜いていきます)です。日本のドライバーの多くの方が「そんなに飛ばさなくていいよね」ってことに気が付きつつあるんだと思います。

最近の大容量EVで電費に優しい定速巡航を心掛ければ、ちょっとした遠出なら経路充電なしで往復できたり、充電回数がグッと減ります。エンジン車とは違うと理解して、電費に優しい運転をすることで、EVの利便性も向上するのです。私のKONAは48.6kWhで大容量とはいえないですが、今回の東京=奈良程度であれば、休憩や食事を兼ねた充電1〜2回ほどで不安なく走りきることができます。

どうしてもエンジン車のようにノンストップでかっ飛びたいという方には理解いただけないと思うけど、私としては「これで十分」と感じています。

そういえば、新東名の三車線区間、中央の走行車線を巡航していると、大容量EVが追い越し車線を駆け抜けていくことがしばしばあります。まあ、私も急いでて電池に余裕がある時は120km/h巡航を選択することもあるし、一概に否定はしないですが、ちょっともったいない。せっかくEVに乗っているのなら、ぜひ一度は100km/h以下の定速巡航を試してみることをオススメします。経路充電の回数とともに、長距離ドライブの疲れがグッと減りますよ。

さて、今回の奈良遠征レポート、実はもうひとつ気付きのテーマがありまして。次回は宿泊施設の目的地充電について報告&考えてみたい(来週早めに公開予定)と思います。

私のKONA Casual(2024年5月25日現在)

総走行距離 5912.8km
累積電費 7.4km/kWh

累積電費は購入直後の5km台から着々と改善中。それはさておき、オドメーターが4カ月で6000kmを超えてしまいそう。任意保険は年間1万kmほどを選択したので、ちょっと調子に乗りすぎ、かな。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)6件

  1.  高速道路での走り方は、まさしく共感できるものですね。
    空気の抵抗がどうかは実感は確かに微妙なのですが、上手いトラックの運転手さんなどの後ろを走っていると安定しているので電費の悪くなる要因が少ないのかもしれないとか、いろいろあるのだと思います。いつもより消費が少ないという実感だけは多少なりともあります。

     いわゆるセカンドカーをEVに変えてからは、気持ちがよくずっとEVしか乗っていません。運転も変わりましたし、旅行の方法もかなり変わりました。以前は自宅と目的地の2点の移動しかないものでしたが、今では道中の寄り道も楽しく以前より旅行が楽しくなっています。特にここ数ヶ月は充電器を巡って、周辺の観光スポットを探し出していろんな面白い発見をしています。

     最後になりますが、奈良での講習会は参加はしていませんが、現地でEVの試乗していました。が、途中で少しだけチラ見させていただきました。
    また、道中の充電器の写真はEVsmartに投稿させていただきます。

  2. トラックの排気ガスの基準値は乗用車よりも高いので、後ろを走って人体に有害な排気ガスを吸い込んでしまうのが問題ですね。

  3. 通りすがり さま、コメントありがとうございます。

    SNSでも、記事を読んでないなって意見を散見してますが。記事中で説明したように「スリップストリーム走法」はイメージであり、ACCによる車間距離を維持しています。
    中央車線を法定速度で巡航しようとした時に、結果として90km+αのトラックをターゲットにするのが一番スムーズに走れる(90km巡航のトラックを避けようがない)という、私の経験的な方法であることをご理解ください。

    イメージとしてわかりやすいかなと思って入れてたリード文の「スリップ〜」を「ACCでトラックをロックオンした定速巡航」にリバイスしました。

  4. 先日は奈良で貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。主催者がスタッフ不足でバタバタしていて寄本さんのフォローを十分にさせてもらえてなかったようで申し訳ありませんでした。わたしの知り合い(ガソリン車ユーザー)も何人か来ていたのですが皆、EVていろんなこと言われてるけどそうだったのか!と目からウロコだったと言っていました。また11月に別団体の主催でユーザー座談会を企画しておりますのでその節は告知等ご協力いただけるととても嬉しいです(よろしければ取材にもお越しください

    1. 伊東さま、コメント&当日はありがとうございました。

      11月のEVユーザー座談会。話者候補の櫻井先生とは、今まさに自治体向けのEV普及マニュアルを作ろうとご一緒させていただいているところ(奈良レポートの第2部で触れる予定です)でもあり、ぜひ告知記事&取材に伺いたいと思っています。

      今後とも、よろしくお願いします。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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