メルセデス・ベンツがプラグインハイブリッドモデル『A250e』を日本発売〜急速充電に対応

メルセデス・ベンツ日本がコンパクトクラスとしては同社初となるプラグインハイブリッドモデル『A250e』の日本発売を発表しました。バッテリー容量は15.6kWh。チャデモ規格の急速充電(最大24kW)にも対応します。価格は500万円台。電動車の選択肢がまたひとつ広がりました。

メルセデス・ベンツがプラグインハイブリッドモデル『A250e』を日本発売〜急速充電に対応

15.6kWhの大容量電池を搭載

2021年5月26日、メルセデス・ベンツがコンパクトクラスのシリーズである『Aクラス』に、プラグインハイブリッド車(PHEV)の『A250e』、『A250e セダン』を追加することを発表しました。全国の正規販売店で受注を開始。納車は6月上旬からとなります。ハッチバックの『A250e』は「受注生産」となります。

おもなスペックや価格を、Aクラスのエンジンモデルと比較してみました。

A250eA250e セダンA250 4MATIC セダンMercedes-AMG A 35 4MATIC
サイズ全長×全幅×全高(mm)4560×1800×14604400×1800×14554550×1800×14304560×1800×1410
車両重量(kg)1680169015301570
エンジン総排気量(cc)1331133119911991
最高出力(kW)118118165225
最大トルク(Nm)250250350400
モーター種類交流同期電動機交流同期電動機
最高出力(kW)7575
最大トルク(Nm)300300
駆動用バッテリー総容量(kWh)15.615.6
価格(税込)5,570,000円
(受注生産)
5,670,000円5,170,000円6,460,000円

A250e(ハッチバック、セダンともに)のエンジンは1.4リッターDOHC直列4気筒ターボで、エンジンモデルの下位グレードである『A180』と同じ「M282」という型式です。A180の最高出力が100kWであるのに対して、A250eはエンジンだけでも118kWにパワーアップされています。ちなみに、A180の価格は362万円。A250e(ハッチバック)より約200万円リーズナブルです。

同じエンジン搭載モデルと比較すると、やっぱりPHEVは高い印象ですが、2リッターターボエンジン搭載の『A250』や、メルセデスAMGモデルと比べるとむしろお買い得な感じもします。

電動車としてのスペックで注目すべきなのは、15.6kWhという駆動用バッテリーの容量です。世界初の量産BEVとなった三菱アイミーブが16kWhですから、小型BEV並みにたっぷりの電池を搭載しています。電気モーターのみでの航続可能距離はWLTCモードで70.2km。欧州WLTPでも60〜68km(EPA換算推計約54〜61km)なので、日常的にはほぼ電気自動車として走れると考えていいレベルです。

ただし、PHEVとして格別に大容量というわけではありません。三菱アウトランダーPHEV、エクリプスクロスPHEVが13.5kWh。トヨタRAV4PHVは18.1kWh。BMWのX5 xDrive45eは初代リーフと同じ24kWhですから、駆動用電池の大容量化は世界の流れになりつつあるとも感じます。

チャデモ規格の急速充電に対応

もうひとつの注目点が、チャデモ規格の急速充電に対応したことです。輸入車のPHEVとして、日本では初めてのケースです。購入検討時のライバルとなりそうなPHEVと比較してみました。

A250e(ハッチバック)三菱 アウトランダーPHEVトヨタ RAV4 PHVプジョー 3008 HYBRID4ボルボ XC40
バッテリー容量15.6kWh13.8kWh18.1kWh13.2kWh11.1kWh
急速充電×××
駆動方式FWDAWDAWDAWDFWD
価格5,570,000円4,364,800円〜4,690,000円〜5,650,000円6,490,000円

三菱のアウトランダーとエクリプスクロスPHEV、そしてトヨタのプリウスPHVはチャデモ急速充電が可能ですが、同じトヨタでもRAV4 PHVは非対応。メルセデス・ベンツはもちろん輸入車のPHEVは、今まで急速充電には対応していませんでした。

A250e も、欧州では急速充電(コンボ規格)対応はオプションのようですが、日本導入モデルでは標準装備となっています。ただし、受け入れ可能な出力は24kWまで。40kW以上の高出力器を使っても、充電速度は最大24kW、つまり30分で10kWh程度が充電可能ということです。

メルセデス・ベンツでは『Mercedes me Charge』という充電カードを用意していて、電気自動車の『EQA』や『EQC』を購入した場合は月額5720円の基本料金と、16.5円/分の急速充電が1年間無料(普通充電はそもそも無料)となるのですが、確認したところ、このA250eには『Mercedes me Charge』カードは付かないそうです。希望すれば有料で加入できるのかどうかは再度確認中(追記 ※ 回答があり、ユーザーから申し込みがあればカードは発行されるとのこと)ですが、不可の場合、そして出先で公共の充電器をスムーズに利用したいのであれば、eMPカードや日産ZESP3にユーザーが自分で加入することになります。

【参考記事】
【2021年版 まとめ表】電気自動車用充電認証カード徹底検証(2021年3月13日)

とはいえ、そこはメルセデス・ベンツ。A250e購入者には、スリーポインテッドスターが輝くウォールユニット(交流普通充電器)本体が無償提供されるほか、設置費用10万円サポートが用意されています。

メルセデス・ベンツ公式サイトより引用。無償提供される充電器のタイプなどは未確認です。

コンパクトなPHEVの選択肢が拡大

先のPHEV比較表で、アウトランダーPHEVとRAV4PHVはベースモデルの価格なので400万円台ですが、ともに上位グレードは500万円をオーバーします。A250eの登場によって、輸入車のプジョー3008 HYBRID4や、ボルボXC40など、日本国内でもCセグメント以下の比較的コンパクトなサイズのPHEVの選択肢が広がりました。

A250eは、対話型インフォテインメントシステム「MBUX」を搭載。アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付き)やアクティブステアリングアシスト、ウインカーを操作すると自動で車線変更してくれるアクティブレーンチェンジングアシスト、アクティブブレーキアシスト(歩行者/飛び出し検知機能付)など、メルセデス・ベンツならではの安全&快適装備も満載です。

電動車に興味はあるけど、完全な電気自動車はまだ不安という方にとって、とても魅力的な電動車が登場したといえるでしょう。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. A250eのモーターの最高出力が363kWとなっていますがこれは誤りですね。363kWでは馬力換算で493psにもなります。元々はメルセデスのカタログ自体が誤りなのが原因ですが、正しくは定格出力36.3kW、最大出力75kWが正解かと思われます。

    1. かずポン さま、ご指摘ありがとうございます。

      諸元表の定格出力、小数点が抜けてるのを最大出力と勘違いしたままスペック表に入れてしまっていました。スペック表、修正いたしました。

  2. 本国含む欧州でも急速充電器の設置が進んでいるということなのでしょうね。
    充電方式の違いで日本においては少々残念なのは仕方ないですね。
    しかし、充電カードの基本料金や充電時の課金のこともあって
    プリウスPHVやアウトランダーPHEVでも充電カード作っていない人も多くいるそうなので充電器渋滞には影響しないと思いたいですね。

  3. いつも楽しく拝見させて頂いています。
    質問なのですが、H2Vに対応に対応しているかご存知ですか?もしご存知でしたら教えて下さい。どうぞ宜しくお願い致します。

  4. A250eとA250eセダンでは装備が違うって聞いたのですが本当ですか?

    あとGLA250eは導入されるんですかね?
    EQAを売りたいから日本では売らないみたいな噂がありましたが、それはどうなんだろって思う所です。

  5. 買えませんが乗ってみたい一台です(ディーラーさんの敷居が高そう…)。

    プラグインハイブリッド車の急速充電対応については賛否が分かれることと思います。
    装備されたということで販売店のかたには充電マナーについて(より)周知していただけるものと期待しております。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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