メルセデス・ベンツ『EQE』は来年発売〜電気自動車のラインナップが着々と拡充

2021年9月5日、メルセデス・ベンツは従来の『Eクラス』の電気自動車バージョンになる『EQE』の概要を発表しました。バッテリー容量は90kWhで、1回の充電での航続距離はWLTPで最長660km。発売は2022年半ばになる予定です。

メルセデス・ベンツ『EQE』は来年発売〜電気自動車のラインナップが着々と拡充

着々と進むメルセデス・ベンツの電動化

2039年までに販売する車をすべてカーボンニュートラルにする目標を掲げているメルセデス・ベンツは、9月初旬に開催された『IAA MOBILITY 2021』で、現行『Eクラス』の電気自動車(EV)バージョンとなる『EQE』を発表しました。メルセデス・ベンツは同時に『AMG EQS』と『EQB』も発表していて、カーボンニュートラルへの第一歩になるEVのラインアップ拡大を着々と進めてきています。

『EQE』の発売は2022年半ばの予定(日本導入予定は未発表)です。生産は、世界市場向けはドイツのブレーメンの工場で、中国市場向けは北京の工場で行います。

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価格は未発表ですが、「Electric Vehicle Database」はドイツで7万ユーロ(約898万円 ※2021年9月22日時点)と予想しています。

『EQE』は、『EQS』で採用している電気自動車(EV)専用の電気アーキテクチャ『EVA2』(エヴァ2号機ではないです)の2番目のモデルです。メルセデス・ベンツは将来的に、乗用車のEVをすべて専用プラットフォームに統一する予定です。そのためハード、ソフト両面で似ている部分が多数あります。発表された内容を紹介します。

電費は1kWhあたり5km以上を達成

今回発表されたのは、『EQE』の第1弾、『EQE350』です。今後、上級グレードも登場する予定です。時期はまだわかりません。

まずはバッテリー関係から見ていきます。『EQE350』のバッテリー搭載容量は90kWhで、保証は10年または最大25万kmです。

1回の充電での航続距離は、WLTPで最長660kmと発表されています。航続距離をEVsmartブログで使っているEPA推計値にすると、約580kmになります。

この距離は『EQS』の最長752km(EPA推計値)に比べると若干少なめですが、東京から大阪までノンストップで行くことができると考えれば、十分な容量ではないでしょうか。

1kWあたりの電費は、WLTPで5.18~6.67km/kWhになります。最大出力は215kWです。この出力と、90kWhを搭載していることでの車重増を考えると、優秀な電費と言えるでしょう。ちなみに、上級グレード(パフォーマンスバリアント)では最大出力は500kWになる予定です。バッテリーのエネルギーマネジメントは無線(OTA)で更新されます。

もちろん、車が小さくて軽ければ電費はもっとよくなりますが、車種のバリエーションを求める市場の要求がある限り、ワンメイクというわけにもいきません。

とはいえ大量生産、大量消費が現在の気候変動問題を招いていることを考えると、商品ラインナップを根本から考え直すことが必要かもしれないと感じることもあります。気候変動対策を進めつつ会社を存続させるのは容易ではありません。会社誕生の当初から大型の高級車を揃えてきたメルセデス・ベンツのようなメーカーにとっては特に厳しい時代になっていきます。

まあ、電費改善は全自動車メーカーにとって最重要課題なので、各社の技術の見せ所ではあります。これからエネルギーマネジメントがどこまで進化するのか、楽しみにしたいと思います。

「NMC811」バッテリーは自社開発、ドイツ国内生産

『EQEの』バッテリーは10セル構成で、種類は『EQS』と同様に「NMC811」を使っています。メルセデス・ベンツは4月の『EQS』発表時からリチウムイオンバッテリーの組成が「622」ではなく「811」であることを強調しています。レアメタル削減を喫緊の課題と認識していることや、課題解決に向けてメルセデス・ベンツが他社をリードするという意思の現れかもしれません。

生産は、シュトゥットガルトのヘーデルフィンゲン工場で行います。『AMG EQS』発表の記事で、バッテリーの生産地がドイツになるのではないかと書きましたが、『EQE』のリリースで生産地が明記されていました。

メルセデス・ベンツは『EQ』シリーズのバッテリーを、欧米中3大陸の工場から供給するとしています。上級グレードの『EQS』や『EQE』はドイツの工場でバッテリーを生産するのですが、他のグレードはまた違った対応になっているのかもしれません。なおヘーデルフィンゲン工場が使用する電力は、2022年からカーボンニュートラルになる予定です。

ユーザーにとってありがたい、急速充電に対応するバッテリーの温度調節機能もついています。『AMG EQS』の記事でもお伝えしましたが、『EQE』も、搭載している「インテリジェントナビゲーション」を利用して経路探索をすると、充電予定ポイントに合わせてバッテリーを予熱、あるいは冷却して、温度を最適化します。

またバッテリーの温度がマイナス25度未満の場合は動作に適した温度に加熱し、急速充電時にはバッテリー温度が10度未満にならないように加熱するための高電圧PTCブースターヒーターも装備しています。

充電は、急速充電は最大170kW、普通充電は最大11kWか、オプションで最大22kWに対応します。メルセデス・ベンツは最上級の『AMG EQS』でも急速充電は200kW対応までです。

急速充電器は『IONITY』が最大350kWで充電可能な設備を整備しています。けれどもポルシェ『タイカン』も、最大350kWに対応するシステムにはなっているものの、現在は「パフォーマンスバッテリー」搭載の場合で225kW、「パフォーマンスバッテリープラス」の場合で270kWに制限しています。

急速充電出力を上げてバッテリー温度が上がるようであれば効率は落ちますし、バッテリーへの負荷も大きくなります。加えて、急速充電で最大出力が出るのはバッテリー残量が一定以上に減っている時だけで、充電が進めば出力は落ちます。

以前、『タイカン』のスペックが未公表だった時期に、EVsmartブログの記事で急速充電の効率を検討したことがあります。この時は、出力が350kWでも300kWでも、あるいは250kWでも、普段の使用で大きな違いは出ないだろうと考えました。

バッテリーの耐久性や全体効率を考えると、今のところは200kW前後というのが各社に共通したバランス点なのかもしれません。

日本ではCHAdeMO仕様でV2GやV2Hに対応

「EQE350」スペック(2021年9月19日時点)
全長/全幅/全高(mm)※4946/1961/1512
ホイールベース3120mm
最小回転直径12.5m
最大出力215kW
最大トルク530Nm
システム電圧328.5V
バッテリー容量90kWh
一充電航続距離(WLTP)545〜660km
一充電航続距離(EPA推計)486〜589km
電費(WLTP)5.18〜6.67km/kWh
AC充電対応最大出力(kW)11/22(※オプション)
DC充電対応最大出力(kW)170
※サイズは欧州仕様。アメリカ仕様は全長が1mm短く、全高が1mm高い。
※EPA推計はWLTPを1.121で割っています。

最後に、その他のスペックをざっと見ていきます。まず車のサイズですが、現行の『Eクラス』と全長はほとんど変わらない一方で、全幅が100mm以上大きくなっています。全高も57mm高くなっています。

回生ブレーキの強弱とコーストは、パドルシフトで3段階に調節できます。「ECO Assist」機能を使うと最も効率の高い運転になるよう、加減速を調節してくれます。場合によっては信号で止まる時に、ドライバーがブレーキを踏まなくても停止までアシストします。

駆動は、『EQE350』はRWD(後輪駆動)ですが、4WDの「4MATIC」もラインナップされる予定です。時期はまだ発表されていません。

モーターは、『EQS』と同様にローターシャフトに冷却剤を通す『water lance』(水の銛)を採用しています。また1分間に1万回のトルクチェックをして挙動をコントロールする機能も、『EQS』と同様に搭載しています。なんかもう、盛りだくさんです。

さて、EVsmartブログなら最初に出してもいい話題とは思いつつ、最後になってしまいました。V2Xについてです。

『EQE』は、日本ではV2GやV2Hに対応する予定です。先日の『AMG EQS』の記事で、「なぜ日本だけ双方向充電に対応しているのか不思議だ」と書きましたが、理由は「CHAdeMO規格が双方向充電(CHAdeMO協議会では「双方向給電」と呼称)に対応しているため」でした。ナルホド納得です。

けれども、と追加の疑問が浮かびます。CHAdeMO規格がV2X対応しているといっても、実際に使えるようにするにはもう一段階の調整が必要になります。多くの輸入EVが非対応の中、メルセデス・ベンツがなぜわざわざV2X対応にしたのか、理由がわかればお伝えしたいと思います。

なお『EQE』は、欧米向けにはCCS、中国向けにはGB/T、日本向けにはCHAdeMO仕様のコネクターを搭載する予定です。

メルセデス・ベンツ・カーズのマーカス・シーファー最高執行責任者(COO)は『EQE』について、EVのフラッグシップになる『EQS』に採用している最先端のソリューションを、「より多くの顧客がいち早く利用できるようになる」と話しています。プレミアムクラスの売れ筋商品にEVをラインナップすることで、EVに触れる人がさらに増えるのは間違いありません。

来年の発売が待ち遠しい、中秋の名月の夜でした。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 上記書籍の結論を追加いたします。
    「モータの動力特性は内燃機関をはるかに凌ぐので、中期的には車の電動化は間違いなく進む。しかし、その動力源としてバッテリが適切とは思えない」
     このブログは BEV 礼賛派の方が多いと思いますので、いっぱい反論されそうですが、多分、これからのマーケットが決めるでしょう。
     問題は、EUを始めとする政治的動きですが、もう10年もすれば、大幅に修正されるだろうと思っています。

  2. いつも、EVsmartBlog は参考にさせていただいております。
    なるほど、ベンツ価格であれば、BEV もそれなりに使えそうですね。
    ところで下記の書籍を出版いたしました。ご興味あるかたはどうぞ。
    「電気自動車の動力学とモータ設計」
    日本語版 https://www.amazon.co.jp/dp/B08Y86RKS8
    英語版 https://www.amazon.co.jp/dp/B0981QXJY5
    単純化したモータ方程式を用いて、市販の主要BEV, SHV, FCV等の動力特性と電費等を試算したものです。(Ariya, MIRAI2まで)電費計算値は、メーカ公表値とよく一致しています。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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