日産女神湖ウインター試乗会レポート〜アリアやサクラなど電気自動車のスムーズさを実感

日産が長野県の女神湖で例年開催している試乗会。アリア、サクラなどの電気自動車は、滑りやすい路面でも電子制御による安心感の高い走りが特長です。昨年(関連記事)に続き、モータージャーナリスト諸星陽一氏のレポートをお届けします。

日産女神湖ウインター試乗会レポート〜アリアやサクラなど電気自動車のスムーズさを実感

今年は暖冬で「氷上」試乗は直前中止

日産は毎年冬季にウインター(氷上)試乗会を開催しています。今年のウインター試乗会は、長野県の女神湖をベースとして行われました。本来は結氷した湖上で行う予定でしたが、試乗会の直前に気温が上昇したため氷上試乗は取りやめとなり、周辺道路を利用しての雪上試乗会となりました。

用意された数種のクルマから、自分が乗りたい車種を選んで試乗しました。私が選んだのはアリアB9 e-4ORCEとサクラ、比較用として後輪駆動のスカイライン、4WDのGT-R、セレナとエクストレイルのe-4ORCEにも乗りました。タイヤはすべてノーマルではなくスタッドレスタイヤが装着されています。

アリアB9 e-4ORCEの乗りやすさが秀逸

雪道ではアリアB9 e-4ORCEがじつに乗りやすい印象でした。車重が2トンを超えるアリアですが、前後に160kW/300Nmのモーターを積むので、重量ハンデはあまり感じません。e-4ORCEのシステムによって、4つのタイヤに的確に駆動力が伝わり、コーナーでは4輪独立制御のブレーキングによって、素直な軌跡でコーナリングをこなしてくれます。

きつめの上り坂で急発進をするとちょっとだけ空転してからグリップを取り戻しますが、その「ちょっと」が本当にわずかなものです。エンジン車はどんなに緻密に制御しようとしても、エンジンの燃焼を正確に細かく制御するのは難しいものです。日産の場合、モーターの制御は1万分の1秒で行っているとのことなので、どう頑張ってもエンジン車では制御が追い付かないのです。

次に乗りやすかったのはエクストレイルのeパワーです。eパワーはエンジンで発電した電気を使ってモーターを駆動するシリーズハイブリッドです。エンジンの力は一切タイヤに伝わりませんが、高い出力が欲しいときはエンジン回転が上昇するなどの特徴があります。エクストレイルはアリアよりも350kgも軽く、ホイールベースも70mm短いので動きが機敏になります。アリアがどう頑張っても勝てないのが車両重量で、350kgの差は下り坂での停止距離に影響してきます。

シートベルトのプリテンショナーに感じたこと

ブレーキング時に感じた安全性についての話を少ししておきます。今回試乗したなかでABS作動時にシートベルトのプリテンショナーが働いたのはスカイラインだけでした。スカイラインはABSが作動した瞬間にプリテンショナーが作動してシートベルトで身体が拘束されます。シートベルトプリテンショナーは衝突を想定してシートベルトのたるみをなくしておく装置で、衝突時の安全性を向上するものです。

ほかの車種は衝突時にプリテンショナーが作動するタイプのもので、火薬を使って瞬時にシートベルトを巻き取りたるみを取り除きます。スカイラインも衝突時には火薬を使って巻き取る機構が備わります。ABS作動時に第一段階のプリテンショナーが働いたほうがより安全性は高いわけですし、ABSが作動している(プリテンショナーが作動している)くらい危険な状況であったと、ドライバーに明確に伝えられるので、少なくともアリアやエクストレイルには付いていたほうがいいだろうと感じました。

深いわだちも問題にしないサクラの走り

さて、もっとも小さなサクラですが、これまたじつによく走ります。サクラが軽自動車っぽくないしっかりしたクルマだというのは、さまざまなメディアを通じて報じられていますが、雪道を走るとさらにそのイメージが間違っていないことに気付かされます。

サクラも緻密な駆動力制御が行われているので、すべりやすい雪道であることなどまったく問題にしません。軽量なボディも味方して、ヒラリヒラリと走ります。深いわだちもあまり気にせず走れます。シートヒーターとステアリングヒーターのおかげで室内はかなり快適です。

とはいえ、さすがに氷点下での試乗なのでエアコンのヒーターを使わないワケにはいきません。寒冷地でのサクラの弱点はまさにここにあります。ヒーターを使えば航続距離は確実に短くなるので、計画的に使う必要があるでしょう。エアコンタイマーも付いているので、AC電源につながった状態の出発前にヒーターで車内を暖めることも可能。密閉されたガレージ内でも排ガスの発生がないので安心して車内を暖められます。

日産が誇る最強モデルであるGT-Rにも試乗しました。現在のモデルは419kW/637Nmのスペックを持つエンジンを搭載する4WDです。たしかに乗れば楽しいし、圧倒的なパフォーマンスを持つモデルなのですが、発売開始後16年以上もたっているだけに古さを感じる部分も多いのも事実です。

EVのモーター制御のようにスムーズで滑らかな印象ではなく、いかにも機械が動いている感じがあります。こういう表現が正しいのかは別として、歯車の塊のようなイメージをもった走りです。もちろん、そのフィーリングは楽しく魅力的ですが、雪道に限定してしまうとアリアのほうが一枚も二枚も上手だなと感じる部分がありました。

一方で、「電気の走り」がGT-Rのように円熟した魅力を纏うには、さらなる時間と進化が必要なのかも知れません。

取材・文/諸星 陽一

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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