ポルシェタイカンの日本プレミア(発表)をテスラオーナー目線でレポート!

2019年11月20日(水)、東京・表参道でポルシェタイカンの日本プレミアが開催されました。発表は100日前にポルシェジャパンの社長に就任したばかりのミヒャエル・キルシュ氏が行い、200名近いメディア関係者が取材に駆けつけました。

ポルシェタイカンの日本プレミア(発表)をテスラオーナー目線でレポート!

【編集部注】発表会が開催されたのは表参道の裏通りにある『SO-CAL LINK GALLERY』という会場です。EVsmartブログチームからは、鳴門スーパーチャージャーがオープンした際にもレポートを依頼したテスラオーナーでもある池田さんと、編集担当の寄本が伺いました。期待すべき『タイカン』の実車を、テスラオーナー目線で見た池田さんのレポートをお楽しみください!

タイカンの横に並ぶキルシュ氏(右)とクワース氏(左)。まるでメンズファッション誌のような1カット。

新社長はアジアマーケットのエキスパート

まず、新社長であるキルシュ氏のバックグラウンドですが、1990年にギーセン大学国際ビジネス経済学部を卒業後、BMWで国際ビジネスコンサルティング等を行い、近年はポルシェチャイナで4年、ポルシェコリアでも3年、COOやCEOを歴任してきた、まさにアジア市場のエキスパートです。基調演説で語られた「アジアとひとくくりにせず、それぞれの国に合わせた戦略が必要だ」という言葉には、日本人経営者に不足する世界的な視点と、世界でも特殊な日本市場に対する理解を併せ持つ強力な人材をタイカンの発売時期に合わせて投入してきたドイツ本社の采配に期待せずにはいられません。

テスラと競合しない明確なポジショニング

ポルシェタイカンの日本プレミア(発表)をテスラオーナー目線でレポート!

どのメーカーも初めて作る高級EVはテスラと比較され、スペックの劣る箇所は槍玉に挙げられます。タイカンも航続距離463km(モデルSは610km ※いずれもWLTP値)、0-100km/h加速2.8秒(同2.6秒)、自動運転機能はなしなど、一見テスラに負けているように思えますが、例えば連続して0-200km/h加速を繰り返してもバッテリーがオーバーヒートしないことや、内装の上質さ、第4のタッチパネルを装備、Apple CarPlayのバンドルと3年間無料ストリーミング、サラウンドビューカメラなど、テスラにはない機能やポルシェオーナーのニーズに応える機能が盛り込まれています。
編注※タイカンターボ(93kWh)の一充電航続距離EPA値は415km、テスラモデルSパフォーマンス(100kWh)は555km。

デザインやテクノロジーについては、プロダクトマネージャーのアレキサンダー・クワーズ氏が完璧な日本語でプレゼンテーション。彼らはこれを「Soul, electrified=電動化された魂」と呼んでおり、まさに作り手の意地や気迫といったエモーショナルな要素が随所から感じられ、実利主義的なテスラとは明らかに違うベクトルが存在します。これまでしかたなく(?)テスラに乗っていたけど、もっと本気で走りたい、もっと洗練されたインテリアに囲まれたいといったユーザーにとっては棲み分けのための新たな選択肢ができたことになります。

また、従来のエンジン車のポルシェから乗り換える方にも違和感なくEVへシフトできるように、インテリアは往年の911のデザインフィロソフィーを踏襲し、エクステリアもルーフの「フライライン」などポルシェらしさをしっかりと守っています。

スポーツクロノパッケージもオプションで用意されるなど、これまで培ってきた伝統がしっかりと受け継がれています。タイカンが古くからのポルシェファンの心を掴むか敬遠されるのかは、実はEVに対する社会的な理解が最後の関門になるのだと思います。

量産車初の曲面LEDディスプレイと、両サイドのおなじみのボタン配置、そして右上にはスポーツクロノが。

EVが社会的に受け入れられる時代

キルシュ氏は基調演説の中で「ポルシェは優れたサービスと感動的な体験を提供するだけでなく、社会的責任を果たす企業でなくてはならない」とも言っています。しかしこれはメーカーだけでなく、オーナーにも言えることです。

最近、「Guilt-free acceleration」という言葉を欧米で耳にします。これはフル加速をする際に騒音や排ガスを撒き散らしながら爆走する後ろめたさをEVであれば感じなくてもよいという意味です。山奥のサーキットであれば、好きなだけスロットルを開けてエキゾーストノートを楽しめばいいのですが、住宅街ではご近所の目を気にしながらノロノロ運転をしている方も多いはず。タイカンは0-100km/h加速が911 GT2 RSと同じ2.8秒と、驚異的な瞬発力を誇るにもかかわらず、いつでもどこでも周囲に迷惑をかけることなく(もちろん安全には配慮して)この力を解き放つことができるのです。

ひとたびこの事実が世間に知れ渡ると、まるで昨今の嫌煙ブームのようにガソリン車は煙たがられるようになることでしょう。タバコをやめた方なら分かると思いますが、これまであんなに美味しいと思って吸っていたタバコも、今では喫煙者を見ると「臭いからあっちに行ってくれ」と心の中で思っているはずです。スポーツカーに乗っている人も「いつかはやめなくてはいけない」と思っていて、どこかで家族に「いい加減EVにしたら?」と背中を押される日もそう遠くないと思っています。

充電インフラは今後の展開に懸念も

ABB製の急速充電器(まだ模型でした)。ゆくゆくはケーブル2本出しになるか?

タイカンの日本仕様の充電器は欧州仕様のCCSではなく、CHAdeMOの150kWを予定しており、国内46箇所のポルシェセンターと東京、名古屋、大阪の公共施設に順次ABB製の充電器の設置を進める計画です。つまり都市間の移動や地方での運用は、インフラが整うまでは自宅充電や、現状はほとんどが50kW以下の公共充電施設に依存することになります。

今後どれだけ公共の150kW CHAdeMOが増えるのか分かりませんが、そもそもタイカンが270kWもの超高速充電をサポートしているのだから、CHAdeMO規格が150kW以上出せない場合、どうするつもりなのか疑問です。個人的には日本全国のサーキットのパドックに充電器を設置し、EVでもスポーツ走行が楽しめるようにして欲しいと願っています。

なお、プロダクトマネージャーのクワーズ氏にハードウェアのアップグレードを提供するつもりがあるのか確認したところ「特に現在はその予定はない」との回答でした。つまり5年後、10年後により速い充電規格のポートが新型車に備えられても、日本仕様の初代タイカンはCHAdeMO 最大150kW対応のままであり、より高性能なものに交換することはできないだろうと、確約はできないながらも個人的な見解を示してくれました。

手前(写真左側)のフィンの下部に指を滑らせると給電口が電動で開閉。キルシュ社長も「Cool!」と自画自賛。最もお気に入りのポイントのひとつとのことでした。

日本でのデリバリー開始は「2020年9月以降」を予定しているとのことです。あと10ヶ月で計画通りCHAdeMOの150kW規格がローンチできて、どこまで充電網が整備されるのか、そしてどのような課金形態なのかなどにも、注視していきたいと思います。

発表会に合わせて、公式の予約サイトも公開されました。購入を検討されている方はこちらのリンク(https://www.porsche.co.jp/sp/taycan/)からお申し込みいただくことができます。

一般の方の展示車両見学は、11月22日(金)~12月7日(土)までミレニアル層をターゲットとした次世代向け独立型ブランドエキシビション「SCOPES Tokyo driven by Porsche」で行われます。詳細はこちらのリンク(https://scopes.tokyo/ ※音量注意)からご確認ください。ただし、実車のドアを開けることはできず、エクステリアのみの見学となります。

イベント会場外観。

実物を見ていただければポルシェの本気度が伝わってきます。ぜひSCOPESに足を運んでみてください。次世代のスマートなスポーツドライビングの象徴として、ぜひとも日本市場で成功してほしいと願っています。

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発表会は午前と午後の2回開催。EVsmartブログチームは午後の部に参加しました。会場一番乗りで最前列に陣取り準備万端の池田さん。

(取材・文/池田 篤史)

この記事のコメント(新着順)7件

  1. そうそう。言い忘れましたが、150kwのチャデモって我々のX相性いいんでしょうか?カプラー変わるんですかね。

  2. モデルXが高速でバンプにイマイチ脚がとられます。タイヤの特性かもしれません。結構怖い。ポルシェなら多分もう少し落ち着くでしょうし。結局飯田にスーパーチャージできそうでないので・・・・・。2021年にレベル3を搭載するなら買ってもいいかな。とにかく、日帰り400キロとか、仕事をして尚且つ帰路200キロの運転はルーティンではオートパイロットなしでは辛い。ポルシェは911ターボの2016年モデルでさえ相変わらずフロント浮いてきます。130キロで中央の白線のソーイングではテスラほどではないが接地がぬける感じが否めない。(テスラはリア)
    タイカンはモーターなのでいいとは思うが、あと疑似エンジン音は要らないと思いませんか?
    オートパイロット次第ですね。

    1. 9月にオーナー 様、コメントありがとうございます。
      モデルXのリアは、もしかしたらアラインメントで良くなるかもしれません。私はVery Lowでアラインメントが合うよう、調整してもらっていて普段それで走行していますが、直進性も良くなっていますし、コーナーでの性能も安定したように思います。プラシーボかも(笑)

      レベル3とまでは行かなくても、レベル2はやはり必要ですね。これからは、あまり車に実際に乗らない方は必要ないと思いますが、ある程度乗る方ほど、自動運転は必須機能になっていくでしょうね。
      疑似エンジン音、私も不要に思いますが、必要という方の気持ちも分かります。多分半年くらいそれで音出して乗ると、もう要らないや、ってことになるのかも?

      今度、こちらに掲示板も作りましたのでよろしければご利用ください。
      https://evsmart-forums.net/

  3. タイカンは自動運転の開発を間違いなく進めています。現地の友人が話してくれました。いわゆるベータ版に付けてこないんですね。多分、ボッシュかどこかでしょう。フルに自社開発はでないから最初に付けないだけでは。

    1. 9月にオーナー 様、コメントありがとうございます。もしかしたら発売まで時間がありますので、それまでになにか発表があるかもしれないですね!実際センサーは先に搭載しておくことはできますし。
      購入されるんですか?

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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