ポルシェ『Taycan Touch&Feel』〜袖ケ浦でひと足お先にタイカンを体感してきました

すでに予約受付が始まっているポルシェの電気自動車『Taycan(タイカン)』。0-100km/hを2.8秒で加速する走りを、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで体感してきました。想像以上にスムーズ&パワフル。そして想像以上にラグジュアリーです。

ポルシェ『Taycan Touch&Feel』〜袖ケ浦でひと足お先にタイカンを体感してきました

電動の「魂」を伝えるポルシェ・ジャパンの催し

キャッチフレーズは「Soul, electrified.」=「電動化された魂」。タイカンはスポーツカーとして世界のトップブランドであるポルシェが、満を持してデビューさせたフル電動スポーツカーです。今まで発表会(レポート記事にリンク)などで実車は目にしていましたが、実際の走りを見たこともなければ、もちろん自分で運転したこともありませんでした。

先日、青木拓磨さんがアイペイスでレースを走ったサーキットです。

2020年9月28日、EVsmartブログ編集部(アユダンテ株式会社)はポルシェ・ジャパンからサーキットでタイカンの走りを体験できる『Taycan Touch&Feel』に招待いただき、チームリーダーの安川さんと、アユダンテ取締役の伊藤さん、そして編集長の私という3名で参加してきました。

サーキット走行とはいえタイムアタックではなく、911の先導車に付いて3周する体験走行です。でも、2周目と3周目のホームストレートでは、120km/hまでを目安にフル加速を体感。さらに、2名1組が交替で、タイカンとエンジン車の911(カレラS)を乗り較べることができるうれしい趣向でした。

インバーター音の演出が思ったより大きい

3周の内容は、ピットをスタートしてまず1周目は「ノーマル」モードで走行、街乗りペースで走行ラインを確認。裏ストレートで一旦停車して気持ちを落ち着けてから最終コーナーへ。ここでステアリングのダイヤルを回して走行モードを「スポーツ」に変更し、ホームストレートに入ったら120km/hまでを目安にフル加速するようトランシーバーで指示が入ります。

2周目は1周目よりもペースを上げて、スポーツモードでのコーナリングなどを体感。もう一度ホームストレートでフル加速を試したら、ペースを落として3周目を走ってピットに戻る、というプログラムでした。

ドライブモードはステアリングのダイヤルで簡単に切り替え可能。

これを、用意された『タイカン ターボS』とエンジン車の911を乗り換えて2回体験することができました。

コンデジで、安川さんと伊藤さんのドライブシーンを少し撮影したので、サクッとアップしておきます。

ポルシェ『タイカンターボS』サーキット試乗

安川さんが運転するタイカンの後部座席でまず気付いたのが、アクセル開度に合わせて聞こえてくる疑似エンジン音、というか演出音が思った以上に大きいこと。後でスタッフの方に伺ったところによると、実際のインバーター音を拾って増幅しているそうです。しかも、ノーマルモードからスポーツモードに切り替えると、音のトーンが少し上がってドライバーの気分も高まる演出がされていました。

911もいいけど、タイカンの加速が気持ちいい!

正直、私自身さほどサーキットを走り慣れているわけでもなく、細かな評価はできません。でも、今回は連続してタイカンと911を乗り較べることができたので、素人ながらに感じ取ることができたこともあります。

まず、ホームストレートでのフル加速。タイカンはアクセルを踏み込んだ瞬間からスムーズ&パワフルに加速しますが、911では、アクセルペダルが床を打ってから圧倒的な加速が始まるまでにコンマ数秒のタイムラグがあります。ポルシェらしい官能的なエンジン音とともに加速する911もいいですが、タイカンの加速の「気持ちよさ」は圧倒的です。

120km/hまで到達するまで2秒とかからない感じ。もっと踏みたい!

ちなみに、タイカンは加速と最高速性能の両立を目指して2速トランスミッションを採用していますが、変速はすべて自動で制御。ドライバーが自分で操作することはできません。

とはいえ、コーナー手前でブレーキングして減速するときには、ヒールアンドトゥをかましたかのように演出音が変わるのが印象的でした。911では実際にパドルシフトでシフトダウンしてみました。と、シフトダウンに合わせてエンジンが唸りを上げる感覚も、久しぶりだったけどやっぱり気持ちいいですね。

想像以上にパワフルでラグジュアリー

安川さんと伊藤さんの後部座席で撮影して、自分でも運転してみた感想として。タイカンの走りは、想像以上にパワフルでスムーズでした。このくらいのスピードで走る分には、ヘアピンなどのややタイトなコーナーでも嫌なロールなどまったくなくて、思ったラインを気持ちよく走ってくれます。

また、運転席に身を沈めた感覚は911が極めている「ポルシェらしさ」が十二分に感じられるのですが、ある程度の速度でサーキットを走るほどに、タイカンならではの「ラグジュアリー」さを感じることができました。2トンを超える車重がもたらす感覚でもあるのでしょう。少々コーナーを攻めてもしっとりと路面を捉えてぐいぐいと前に進める感じ。

後席シートもバケット風になっていて乗員をホールドしてくれます。

インテリアデザインなどを含めて、ポルシェが培ってきた「魂」を電動化するというタイカンの志を実感することができた、気がします。このタイカンでワインディングを走ったら、余裕をもった走りで駆け抜けたとしてもすごく気持ちいいだろうなぁ、という印象でした。

新たな電気自動車はどうしてもテスラと比較したくなるのですが、タイカンは紛れもなく「ポルシェの電気自動車」でした。どちらかというと「究極の走るスマホ」を標榜するテスラ車と比較することは、あまり意味がないと痛感してしまいました。また、ここまで圧倒的な質感に包まれると、航続距離のことなんて語るのがせせこましく感じるほどでした。

といいつつ、タイカン4Sのバッテリー容量はパフォーマンスバッテリーというタイプが79.2kWh、パフォーマンスバッテリープラスが93.4kWh。航続距離はカタログ値で333〜407kmとされています。パフォーマンスバッテリープラスのEPA値は203マイル(約327km)です。目的地充電がちゃんとあればという前提付きで、十分だと思います。

ベースモデルといえる『Taycan 4S』で約1448万円〜、『Taycan Turbo』は約2023万円〜、今回走った『Taycan Turbo S』は約2454万円〜。価格的にもこれぞポルシェ! という高嶺の花ではありますが、文句なしに素晴らしい電気自動車です、ね。

ドライバーズシートからの眺めにも、左右フェンダーの盛り上がりとか時計とか、911から受け継がれた「魂」を感じます。

150kWの急速充電器もすでに完成

ここにきて、欧州メーカーの電気自動車がどんどん日本にも導入されています。でも、他の欧州メーカーとポルシェが一線を画しているのが、充電インフラネットワークへの取組です。

ことに画期的なのが、最大出力150kWのDC急速充電器を独自に開発し、東京、大阪、名古屋など8カ所の「ターボチャージングステーション」や、全国のポルシェ正規販売店のうち21拠点に設置していくこと。

ご承知のように、テスラは高出力のスーパーチャージャーを全国25カ所(2020年9月現在)に整備しています。タイカンもテスラもチャデモ規格に対応していますが、全国に広がっているチャデモ急速充電網はおおむね最大出力が50kW未満。ロングトリップの途中に、大容量電池車を短時間で効率よく充電するには非力です。

ポルシェが独自に設置する150kW器はNCS加盟ではないので、いわゆる30分縛りもありません。高速道路をいったん下りてステーションまで行かなければいけないという手間はあるものの、タイカンのために用意された高出力器でしっかりと充電できる快適さは、これもまたタイカンの「高性能」のひとつといえるでしょう。

今年7月、東京・有明の『Porsche NOW Tokyo』でのお披露目時に紹介したように、まだ150kW用のケーブルが未完成ですが、現在は90kWケーブル仕様で全国の拠点への整備を進めている過程とのこと。まだ電源も入っていませんが、タイカンのデリバリー開始に合わせて稼働を始め、来年後半以降には150kWの液冷ケーブルに換装していく計画です。

独自開発の高出力急速充電器。その名もポルシェ ターボチャージャー!

日本でのタイカンのデリバリー開始は、2021年初頭からになる予定。今回走ったのは欧州仕様のプリプロダクション車両でしたが、11月くらいからは日本仕様のタイカンのメディア向け試乗などが始まる見込みとのことでした。

目の表情と縦型エアインテーク。低く抑えたボンネットのデザインがタイカンを見分けるポイントです。

ちなみに、ポルシェの車は911もパナメーラも面構えが似ています。ことに、タイカンとパナメーラの顔はかなりそっくり。見分けるポイントは、クリッと独立した4灯式LEDヘッドライトと、目尻に垂れ下がっているように見えるフロントフェンダー部の縦型エアインテークのデザインです。試乗前に実車を詳しく説明してくださったプロダクトマネージャーのアレキサンダー・クワースさんの説明によると、このエアインテークでフロントフェンダーに当たる空気をうまく後ろに流すことによって、車幅を狭くするのと同様の空力的な効果が得られるそうです。

そういえば、ほかにいろいろ圧巻のアピールポイントがあるせいか、タイカンのカタログやウェブサイトでもあまりアピールされていませんが、タイカンは0.22という驚異的なCD値を実現しています。うまく写真が撮れなかったけど、床下も完璧にカバーされていました。

ひとつだけ「もったいない」と気になったのが、完璧にデザインされた面構えなのに、日本のナンバープレートは縦の幅が広いので、装着する際には少し上にはみ出さざるを得ない、というところ。なんとも惜しい。こういうところにも規制緩和というか、国際標準に合わせた改革が進むといいですね。

実は、911のナンバープレートも少しはみ出してます。

圧巻のタイカン。日本の街で目にできるようになるのが楽しみです。

もし私にタイカンをポンと買える財力があれば、ガレージにもう一台、911も欲しいなというのは、アクアラインを走りつつ見た白昼夢でした。

(取材・文/寄本 好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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